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「結局人が怖くて信じられないんだよな」と思ったときの処方箋
人が怖い、人が信じられない、人と親密になれない、というお声は僕のもとにたくさん届いています。
例えば、こんなケース。
「いつも職場の人と打ち解けられません。私によくしてくれる人がいても、つい近づいてほしくないと思ってしまいますし、距離をおいてしまいます。」
「私のことを好きになってくれる人がいても、お断りしてしまいます。その人がいい人だと思っても、どうしても受け入れられないっていうか。基本的に相手から迫られるとダメなんです。でも、好きな人を追いかけることならできるんです。だからいつも片思いばかりで・・・。」
「人から褒められても素直に喜べないんです。それって本当?本心なの?ってつい疑ってしまうんです。やっぱり私、性格悪いですよね・・・。」
こう言った思いを感じるからこそ、更に「もう誰も信じない」「誰とも関わりたくない」と思ってしまうものかもしれませんね。
追いかけるならOK。迫られるとNG。
このようなご相談をいただく方にはある特徴があります。
「自分から追いかけるならOKだけど、相手から迫られるとNGだ。」
例えば、自分から好きになって追いかけることはできるけど、相手から好きだと言われると気持ちが萎える。
自分から相手のために行動するのはいいけど、相手からなにかされる状況になるとだめ。
自分から親切にするのはいいけど、人の親切はつい断ってしまう、などなど。
これってある意味無意識といいますか、ついそうなってしまうもので、自分でもなかなかコントロールできないものかもしれませんね。
だから、悪気なく断ってしまう、逃げてしまうという方が少なくないんですよ。
自分でも「そうしたいわけじゃないけど、ついそうなってしまう」と思われている方が多いし、だからこそつい人の好意を断ったり、人を信頼できずにいる自分に失望してしまうのかもしれません。
ただね、だからといって自分を諦める必要はないのかもしれませんよ。
こうなるにも「事情」があるわけで、その事情を理解してものの見方、感じ方を変えていくことで、ある程度この状態は改善していけると僕は思っています。
ただ「自分の内面でどんなことが起きているのか」を理解していくことは必要かもしれないですね。
これも一つの「投影」
このような「結局人を信じられないのは私だ」と感じる状態を分析していくと、このように捉えることができます。
「私は人を信じていない(ようだ)。だから人も私を信じていない(だろう)と感じているのではないか。」
つまり「自分の感じ方を相手に映し出す」という投影の可能性があります。
そう感じるから「相手が自分のことを信じていないのであれば、私も信頼することはできないよね」と理解している状態なんです。
自分のことを信じていない人を信頼するなんて・・・なかなかできないですよね?
だから「人を信じられない」と思う。自分に対して良くしてくれる人であってもそう感じるのです。
ゆえに「人を信じていないの私」という言葉が使われるわけですが、ポイントは「悪意がある人ばかりじゃないよ」という部分でしょうか。
人を信じたい、人の愛情を受け入れたいと思っても、どうしてもそれができずに悩まれている方もいるってことです。
人を信じて傷ついたら、という怖れ
このようなケースで最も手強いものは「もし、私から人を信じて傷ついたらどうしよう」「裏切られたらどうしよう」「騙されたらどうしよう」という怖れでしょうか。
つまり、今までの対人関係の中で「傷ついた」「裏切られた」「騙された」といった経験をしたことがあるからこそ、そう思うってことなんでしょう。
ただ、私達はそんなに親密ではない人との関係で傷ついても、そこまで深いダメージを追わない可能性が高いのです。(負うこともありますけどね)
このように感じる理由としてよく登場する心理的背景が「親密な人との関係」。
例えば、家族、仲間、パートナーなどでの間で「傷ついた」という経験でしょうか。
特に自分の気持ちを受け止めてもらえなかった、だとか。
相手のことを気にして、自分が辛い気持ち、苦しい気持ちを抱えたことが申し訳なくて、我慢して伝えなかった、だとか。
自分なりに相手のことを思っていたことが、相手に伝わていなかった、などの経験から、「自分ってなんなんだろう」「自分の存在って意味あるんだろうか」と感じたことのある方も意外と多いようなんですね。
相手のために考えたこと、行ったこと、我慢したことが、相手のためになっていない、もしくは、相手に伝わらず自分の言動や存在を軽く扱われてしまった(ように感じた)。
そう感じる現実を見て「自分ってなんてちっぽけなんだろう」と感じ、この感覚がずっと心のなかでくすぶり続けているなんてこともよくあることなんです。
つまり「自分がちっぽけだと感じる」→「だから、人もそう思っているに違いない」と思いこんでいる状態になるということですね。
この思い込みがあると、どれだけ素敵な人があなたに好意を持って近づいてきたとしても、その思いを受け止めることができないのです。
「相手はどうして私に対して良くしてくれるのかが分からない」と感じるわけです。
もちろんこのように感じることがダメってわけじゃないですよ。
自分を見失ってしまうようなできごとがあり、その事情によってあなたのものの見方、感じ方が決まっている可能性があるよ、というなんです。
NOが言えない・ハードワークしてしまうという問題
また、特にこの悩みを抱えている人ほど、ハードワーカーになる傾向があります。
これは「自分は人を信じていない」という罪悪感から生じる補償行為であることが多いんです。
人を信じていない自分は人一倍犠牲的に働かなきゃいけない、頑張らなきゃいけない、って思っちゃうわけです。
(かつては、もっと家族のため、母のため、父のために頑張らないと、自分には意味がないんじゃないかと家族を背負っていた可能性がありますね。)
その結果、何でも引き受け過ぎたり、人にNOと言えずにいたり、まぁかなりしんどい思いをされている方も少なくないのですよ。
これも罪悪感の影響と言えばそうなりますが、これ、ホントしんどいですよね。
自分が人を信頼できないから、そもそも信じられない人を周囲に置くことも
また、自分を信じられないでいる状態でいると、恋愛・夫婦関係にも影響が出る場合がありますね。
例えば、なぜか自分が信頼しがたい人をパートナーとして迎え入れる、というケース。
どこか「自分を信じられないとき」ほど、人に信じてもらったり、良くされても、その思いを素直に受け取ることができないわけですよ。
ここで相手の好意を「お断り」しなきゃいけなくなる。
このお断り、つまり拒絶することが「辛い」んですよね。相手の善意、好意を疑ってしまい、断ることを続けることが心苦しいんです(罪悪感を感じるのです)。
だから、そもそも相手の思いを受け取らず、NOと言っても大丈夫な人と関わるなんてことも起きるんです。
こうなると、パートナーからの愛情や好意を受け取りたいんだけど、そもそも受け取りにくい環境ができてしまう。
この状態の中で「なぜ愛されないんだろう?」と考えてしまう方もしばしば存在します。
そこで導き出す、この疑問に対する答えが「私の愛が足りないのか」「私の努力が足りないのか」「自分に魅力がないからだ」という場合も少なくないんです。
なぜなら「人の好意を受け取れない・断ってしまう」という自分自身の行動が罪悪感を刺激しているので、「自分が悪いのだ」「自分に何かが足りないのだ」と感じやすい心理状態が出来上がっているからですね。
確かに、あなたが悪意がなくとも人の好意を拒絶したとしたら、相手はあなたに否定的な意見を持つかもしれません。そこで自分がつらい思いをするかもしれません。
が、しっかりその心理的背景を見つめていけば、それもまた致し方ないこと、その問題は起きる事情があるのだ、と考えることもできるのです。
被害者意識に惑わされず、自分自身を見つめ直すこと
このような「人が怖くて信じられない」という問題は、「そもそもは人を信じたい・愛したい」という思いがあるからこそ生じます。
まだ人を信じ、愛することを諦めていないからこそ悩むのではないでしょうか。
そのあたりに僕は可能性を見出すのです。
きっとあなたは大変な思いをされたであろうに、しかし、あなたの愛情や情愛は未だなくなっていないのなら、そこに可能性を感じるんです。
もし、あなたがこのような悩みを持っているなら、まずは焦らないことです。(^^;ってことを仕損じるより、じっくり時間をかけて自分と向き合ってみることをおすすめします。
僕がなぜそうお伝えするのか、その理由は「罪悪感」にあります。
この問題を癒やしの方向に向けていくプロセスって、「私が人を信じていない」「私は人との関わりや愛情を拒絶している」という罪悪感を扱うことなんですよね。
この罪悪感が超絶手強いんです(^^;
自分のことをどれだけ「頑張ってきたよね」「一生懸命だったよね」「いっぱい傷ついたよね」と受容や承認を向けても、「でもさ、結局は人を信じてないのは私だし、拒絶してきたのも私じゃない?」という痛みが生むエゴの声に引っ張られてしまうんです。
すると、たとえ誰かに認められても、愛されても、更に「申し訳ない」って感じるようになるんですね。
どれだけ自分を承認しても、自己肯定感を高めようとしても、自分が傷ついた事情を理解しても、実際に人を怖れず関われない自分がいるなら、いつまでも否定的に捉えてしまうことが続いてしまいます。
僕もこのあたりの感情の手強さ、痛感しているところです。
だから、このようなケースでは「心理的な側面の理解」と「現実の行動」の両面からアプローチしていくことが必要なのではないか、と僕は考えています。
*
まずは、自分が人を信頼できないと思うのは、信頼してまた傷つくことが怖いと感じているからだ、と理解することからはじめてみましょう。
そして、傷つくことを怖れている自分を闇雲に責めたり問題扱いしないこと。
しゃーないんです。そう感じるには理由があることが多いのですから。
・・・とお伝えしても、なかなかそんな自分を許せるものではないのかもしれません。
「それって体のいい言い訳じゃないの?」とか思っちゃうかもしれませんよ。
ただ、僕は言い訳じゃないと僕は考えています。
「それって言い訳じゃない?」と考えることこそ、素晴らしい自分を隠し、罪悪感を選び、自分を傷つけるための言い訳なんですよね。
何度も書きますけど、そもそも自分が誰かのために良かれと思って、という行動を指定な限り、人に裏切られた、人との関係で傷ついたなんてことは起きないはず。
その自分、本来の自分にもう一度取り戻していくために必要なのは、言い訳でも、罪悪感でもなく、痛みを癒やすことです。
傷ついたこと、分かってもらえなかったこと、自分をちっぽけに感じたこと。
その事実を一旦受け止めることです。その時涙が出るなら出し切ることです。辛いなら、辛いって言っていいんです。そういった心の声はカウンセラーに投げてみてほしいんです。
そのうえで、自分の心の根っこにある真実を知ることなんでしょう。
「私はかつて、誰かを愛そうとしていた」「人と仲良くしたいと願っているんだ」「大切な人を喜ばせたいと思っていた」
その自分をもう一度見つけることです。
そのために、自分を理解されなかった悲しみは洗い流すことですし、自分の素晴らしさを受け止める心の器を作る意味でも、「自分の良いところ」をコツコツ見つめて承認していくことを続けてみてほしいのです。
自分にダメを出していても、自分の価値を受け止める心の器ってできませんからね。
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また、行動面では、かんたんな「人との関わり」を増やすことが大切ですね。
僕がよくご提案するのは「気持ちの良い挨拶だけ、こだわってやってみてください」、というお願い。
挨拶は相手に好意を伝える行為でもあるので、なかなか続けると自分の気分が変わってきます。
相手を知らなくても、信じなくても、挨拶だけは通じるものなのでとにかく便利で効果的なエクササイズです。
また、普段から「ありがとう」という言葉を意識して増やすことも効果的です。
感謝や愛情ってのは、自分の中で感じ、表現すればするほど、自分の中で強化されていくもの。使わないといつまで経っても実感できないものなんです。
だから、ありがとうございます、お陰様で、お世話になります、助かります・・・なんて言葉を使う頻度を増やしていくだけで、ゆっくりと自分のことを「いいね!」と感じやすくなりますね。
それでもまぁ「でもさ、そんなことしたって私ってそんなにいい人間じゃないかもよ」という疑いは消えないかもしれません。人が怖いと感じる感覚をすぐに手放せないかもしれません。
結構な確率で僕もそういったお声を伺います。
でもね、それでいいんです。人である以上、人に対する警戒心ってすべて手放せるものではないと思います。理想を語ればすべての人にハートを開く人になれればいいのでしょうが、実際、理想だけを追いかけて自分に失望するぐらいなら、そもそもの目的のハードルを下げたほうが得策です。
過剰な警戒心、恐れではなく、自分が苦しまない程度の警戒心であれば毎日心地よく生きられるものでしょう。まずはそこを目指すイメージを持ってもらいたいな、と思っています。
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最後になりますが、実際のカウンセリングでは、過去のハートブレイク、家族関係の問題など、更に深く心を見つめていくこともありますが、ここはなかなか一人では見つけられない部分かもしれません。
もし気になったならカウンセリングを使うというのも一つの手かもしれません。
僕がこの問題を扱わせてもらうなら「そりゃ罪悪感の影響ですね」なんてことはあまり重要視しません。
たしかに理屈ではそうなんですけど、その根っこの愛情、思いと、そこに横たわる痛みや悲しさを僕なりに扱わせてもらいますし、まぁまぁ無理しなくていいっすよ〜というスタンスでサクサク癒やしを進めさせてもらいます。
癒やしって理屈じゃないから。実際の人と人とのふれあいで起きることですから。
なので、「カウンセリングを受けたほうが変化が早かった」とおっしゃってくださるクライエント様もいらっしゃいますよ。
また、自分でこの問題に取り組んでいくなら、今できること、無理のない程度でできることを確実に続けていくことがおすすめですよ。
とにかく焦らないこと。コツコツやるってのがポイントなんですよね。
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