こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
今回もネタ募集企画にお寄せいただいたご質問にお答えしたいと思います。
テーマは「妊活とパートナーシップ、そしてその男性心理」。
妊活がうまくいかない。レス気味。気まずい空気。避けられる日々。
そして突然、「別居したい」と言われた。
“子どもが欲しい”という話をしていたのに、なぜ夫は距離を取るのか。
「別居したい」と言う夫を引き止めれば引き止めるほど、心が遠のいていく気がする。
この記事では
- 妊活のプレッシャーで夫が距離を取る理由
- 「愛情があるのに別居を望む」心理構造
- 関係修復のために今できる関わり方
を、心理カウンセラーの視点で整理しています。
Index
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先生へ質問させてください。
妊活のプレッシャーに耐えられず、別居したいと言った旦那さんの心理状態についてです。
結婚7年目になる旦那さんから、4ヶ月ほど前に別居したいと言われました。
私たちには子どもはいませんが、いずれ欲しいねと言っていました。ですがなかなか授かれず。
私も35歳を越えており、職場にも私の妊活を考えた人員配置など考慮してもらえたため、作るなら今年がいいなと伝えていました。
ですが、旦那さんもプレッシャーからか上手く出来ないことが続きました。
(元々私たちはレス気味でした。)
別居を言われる少し前から、旦那さんは私のことを避ける素振りを見せ、笑顔がなかったり、素っ気ない態度が続きました。
そして別居したいと言った理由が
私が子どもが欲しいのに自分が出来ないので申し訳ない
罪悪感しかない
今は子どもが欲しいかもわからない
一緒にいるのがしんどくなった
とのことでした。
私も子どもは欲しいですが、子どもが欲しくて結婚したわけではない。
あなたといたくて結婚したんだ。
子どもが出来なかったなら2人で過ごすのもいいと思うと伝えました。
ですが、旦那さんの気持ちはなかなか変わらないようで、避けられたままです。
旦那さんは自分のコンプレックスを私に投影してるから私を避けるのかなと思うのですが、私と別居したところで根本的な問題は変わらないと思うのです。
旦那さんは周辺で妊娠報告を聞いても素直に喜べないと言っていました。
心の奥ではまだ旦那さんも子どもが欲しいんだと思います。
私は離婚も別居もしたいと思っていません。
どうすれば旦那さんと関係を修復していったらいいかアドバイスをいただきたいです。
ネタ募集ネーム:べーぬさん
修復の鍵は「説得」ではなく「無力感を刺激しない関わり」に切り替えること
べーぬさん、ネタのご協力ありがとうございます。
なるほど、ご主人さまが妊活のプレッシャーから別居を望んでおられるのですね。
あなたから引き止めても避けられたまま。
それは本当におつらい状況ですよね。
では、なにかお力になれればと願いながら、僕なりの見解をお伝えしたいと思います。
*
まず最初に結論からお伝えします。
妊活のプレッシャーで夫が別居を望むとき、
関係修復の鍵は「正しい言葉で説得すること」ではなく、
夫の無力感(=自分を責める感覚)を刺激しない関わりへ切り替えることにあります。
べーぬさんはすでに、とても大事な言葉を伝えています。
「子どもができなくても、あなたと一緒にいたい」。
これは本当に大切な言葉ですよね。
最大級の愛情表現でもある、と僕は感じます。
ただ、夫側の状態によっては、その言葉すらも“やさしさ”として受け取れず、
逆に心を追い詰める材料になってしまうことがあります。
その理由を、ここから丁寧にほどいていきますね。
妊活で男性が感じやすいプレッシャーとは
「妊活」とは、妊娠を望む男女が行う準備のことです。
医学的な治療だけでなく、妊娠に向けた知識を得たり、生活習慣を整えたり、タイミングを合わせたり。
つまり、日常の中に“結果が出るまで終わらない課題”が入り込む営みでもあります。
僕自身も妊活経験があるので、日常のリズム、妻の様子などたくさんの変化を目の当たりにしたことがあるんですよ。
なにより、妊活の負担は、特に奥様の身体面はもちろん、
「期待」と「結果が出ない現実」が並走することが、心理的な負荷になります。
特に男性側は、妊活が始まった途端に、
関係の中で「役割」を背負い直すような感覚になりやすいことがあります。
うまく言葉にできないまま、でも確実に、プレッシャーだけが増えていく。
そして、自分では何もできていない、という感覚を感じやすくもなる。
そんな状態かもしれませんよ。
夫が別居を望むときに起きやすい「3つの心理構造」
ここからは、べーぬさんのケースにも当てはまりやすい「心の仕組み」を整理します。
ポイントは、夫が“あなたを嫌いになった”というより、
夫自身が自分に耐えられなくなっている可能性です。
1. 無力感:「自分のせいで、相手の望みを叶えられない」
妊活がうまくいかないとき、男性が強く刺激されやすいのが「無力感」です。
これは単に「うまくできない」という話ではなく、
自分の影響で、パートナーの望みを叶えられない
という感覚に近いものです。
大切な相手が望んでいるのに、自分はそれを“出せない”。
そして、相手の時間(年齢、仕事の調整、人生設計)にも関わっている。
ここに、強い負荷が生まれます。
2. 罪悪感:「一緒にいるだけで、責められている気がする」
罪悪感が強くなると、現実の夫婦関係がどうであれ、心の中でこういうストーリーが立ち上がります。
- 相手は本当は怒っている(はずだ)
- 相手は失望している(はずだ)
- 自分は許されない(はずだ)
ここが厄介なのは、
相手がどう思っているかではなく、
自分が自分をどう裁いているかでストーリーが決まってしまう点です。
いわゆる「思い込み」というものですよ。
べーぬさんがどれほど誠実に「子どもができなくてもいい」と伝えても、
夫の中では
「そんなことを言わせてしまっている自分」が許せない
という形で、さらに罪悪感が上乗せされてしまうことがあります。
3. 回避:「感じ続けるくらいなら、距離を置きたい」
無力感や罪悪感は、長く感じ続けると人を消耗させます。
その結果、心はバランスを取るために「回避」を選びやすくなります。
回避とは、冷たい人になることではなく、耐えられない感情から距離を取る反応です。
だから、
- 同じ空間にいられない
- 笑顔が消える
- 寝室にこもる
といった行動が出てきます。
そして“全部壊す”ほどではないけれど、近い距離も無理。
だから「別居」という中間の選択肢になることもあります。
「子どもができなくてもいい」と言っても夫の気持ちが動きにくい理由
べーぬさんは、愛情として正しいことを言っています。
ただ、夫が罪悪感の中にいるときは、その言葉は“救い”として入らず、別の意味を帯びることがあります。
- 「本当は欲しいのに、我慢させてしまっている」
- 「気を遣わせている」
- 「優しい言葉を言わせてしまっている」
つまり、夫が抱えているのは「子どもが欲しいかどうか」だけではなく、
“自分の存在が相手の人生を狂わせている気がする”
というレベルの自己否定に近い感覚かもしれません。
本当に誰かのことを大切に思う人は、しばしばこう思います。
「自分ではないほうが相手は幸せだったのではないか・・・」と。
それぐらい、相手を幸せに、笑顔にできないことを悔いるのです。
ただ、ここに入ってしまうと、話し合い以前に、
まず「同席する」こと自体がしんどくなるんですね。
なぜなら、諸悪の根源は自分、という理解が入ってしまっているから。
もちろん、諸悪の根源でもなんでもないんです。
ただ、感情としては「無力感」を感じるので、それを覆うように自分を罰するわけです。
だから、同席は「裁判・審判の場」のように感じてしまう、という感じですね。
関係修復の方向性:「お互いがお互いの味方」になるための順番
では、どうしたらいいのか、ですね。
ここで大事なのは、“正しい結論”に二人を連れていくことではありません。
二人が同じテーブルに戻ってこれる状態をつくることです。
そのために必要なことは、必ずしも妊活について話す、とは限りません。
ざっくり言うとこんな感じです。
- べーぬさん自身の心の足場を整える(孤立しない/追い込まれない)
- 夫の無力感を刺激しない関わりへ切り替える(説得・正論・結論の提示を急がない)
- 「感情の共有」から話し合いを再開する(目的の確認はその後)
具体的に、今できる関わり方
ここからは実践の話です。
べーぬさんが「離婚も別居も望まない」のであれば、
まずは“距離を縮める”より、“距離の質を変える”ほうが安全だと思いますよ。
1. 話し合いを急がない(=結論を先に取りに行かない)
夫が罪悪感の中にいるとき、話し合いは「裁判」になりやすいです(夫の心の中で)。
だから、いきなり
- これからどうする?
- 別居はだめ
- 子どもがどうこう
という議題に入りすぎないほうが、結果的に近道になります。
2. 入口は「気持ち」だけにする
夫の言葉が少ないときは、議題ではなく感情の入口が要ります。
例えば、次のような短い一言です。
- 「最近、しんどそうに見えるんだけど…今どんな感じ?」
- 「今すぐ答えはいらないんだけど、あなたが一人で抱えすぎてないか心配」
- 「責めたいわけじゃない。状態を知りたいだけ」
ポイントは、結論を取りに行かないことと、“裁かない”前提を先に置くことです。
3. 「私はこう思う」を短く言って、相手に委ねる
夫が回避に入っているときは、長文の説明は“正しさ”として刺さりやすいです。
なので、あなたの意思を言うときは短く。
「私は離婚したいわけじゃない。
でも、あなたがしんどいなら、今の距離の取り方は一緒に考えたい」
ここでも大事なのは、夫を動かす言葉ではなく、同席できる言葉です。
なにより奥様が先に「味方」を持ってください
ここは、少しだけ強めにお伝えします。
べーぬさんは今、夫の状態と、子どもの問題と、自分の年齢と、職場の配慮と、将来の不安を、ひとりで抱えています。
この状況で「寛容に」「理解して」「余裕を持って」は、正直きついです。
理想的な夫との向き合い方(つまり正解や正論)というものは確かにあるけれど、
あなた自身もお辛い中で、それを無理に実行することにはやはりリスクが伴います。
だから、べーぬさん自身が先に
- 話せる人
- 気持ちを支えてくれる人
- あなたの幸せを一緒に考えてくれる人
を持ってください。
それは夫に勝つためではなく、夫と戦わないためにです。
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妊活に限らず、無力感やすれ違いが関係に影響するケースについては、
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まとめ:夫の別居は「拒絶」ではなく「無力感からの退避」かもしれない
妊活のプレッシャーで別居を望む夫は、あなたを嫌いになったというより、
自分の無力感と罪悪感に耐えられず、そこから距離を取ろうとしている可能性があります。
だからこそ、関係修復の第一歩は「説得」ではありません。
無力感を刺激しない関わりに切り替え、同じテーブルに戻ってこれる状態をつくることです。
そして、そのためには、べーぬさんが先に孤立しないこと。
べーぬさんが“支えられる場所”を持つこと。
そこから、ようやく二人が「味方同士」として話せる可能性が上がっていきます。
べーぬさんとご主人の関係が、少しでも良い方向へ向かうことを願っています。
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