夫婦のための心理学

なぜかパートナーの「ダメな所」ばかり気になる心理

風船をふくらませる女性

こんにちは、カウンセラーの浅野寿和です。

今日のテーマは、恋愛や夫婦関係、あるいは非常に近しい仕事仲間との間で、多くの人が(もしかしたら無意識に)陥りがちな、ある苦しいパターンについてです。

それは

「相手のことを大切に思っているはずなのに、なぜか相手の『ダメなところ』ばかりが目についてイライラしてしまう。でも、放っておけなくて、結局自分が何とかしようと必死になってしまう」

 という、あの感覚。

「私がしっかりしなきゃ」「この人を支えられるのは自分しかいない」「この人のここさえ変われば、もっと良くなるはずなのに…」
そんな風に、相手のことを思い、良かれと思って行動している(はずな)のに、なぜか心は疲弊し、関係はギクシャクし、そして報われない感覚だけが募っていく…。

もし、あなたがそんなループの中にいるとしたら、それは単なる「相性の問題」や「相手の問題」だけではないのかもしれません。その裏には、あなた自身の心の深い部分にある、「愛し方」のパターンと、その根底にあるかもしれない「恐れ」が隠れている可能性があります。

今日は、その複雑な心の絡まりを、少しだけ丁寧に紐解いていきましょう。

「イライラ」と「お世話」が奇妙に同居する心理状態

パートナーの弱さや欠点、あるいは「もっとこうすればいいのに」と思える部分。それが見えると、妙に心がザワつき、イライラしたり、時には軽蔑に近い感情さえ湧いてきたりする。

ここまでは、人間関係の中では、ある程度は自然な反応かもしれません。

しかし、問題なのは、そのネガティブな感情を感じながらも、同時に「でも、私が何とかしなければ」「この人を助けなければ」という、強い衝動に駆られてしまう点です。

まるで、イライラしている相手のことが、心配で心配でたまらない、というかのように。あるいは、その「ダメな部分」を正すことが、自分の使命であるかのように。

そして、頼まれてもいないのに、相手の問題に介入したり、尻拭いをしたり、あるいは「あなたのためだから」と、相手を変えようとコントロールしたりしてしまう。

その結果、どうなるでしょうか?

相手は(たとえ感謝したとしても)根本的には変わらなかったり、あるいは逆に反発したり、依存的になったりするかもしれません。そして、あなたは「こんなに頑張っているのに、なんで分かってくれないんだ!」と、さらなる不満や、報われない感覚、そして深い疲労感を抱えることになる。

まさに、悪循環といえるかもしれません。

パートナーの「影」を背負おうとしてしまう心理

この「イライラしながらも、お世話してしまう・介入してしまう」という一見矛盾した行動の裏には、いくつかの心理的なメカニズムが隠れていると考えられます。

1. 境界線がなくなってる?(心理的癒着かも)

自分と相手の区別が、なんだか曖昧になっていませんか? 相手が落ち込んでいると、理由もないのに自分までどん底気分になったり。

「私が何とかしなきゃ!」と、相手の課題まで自分の責任みたいに背負い込んだり。

まるで二人羽織状態… それ、気づかないうちに結構クタクタになりますよね。(小声)

考える女性
おせっかいを焼きすぎる恋愛を繰り返す心理とその対処法おせっかいを焼きすぎる恋愛を繰り返してしまう、というご相談 大切な人が悩んでいたり、苦しんでいる様子が見えるとき こちらから、つ...

2. 相手に「自分の何か」を映してる?(無意識の同一視・投影かも)
パートナーの「ここが許せない!」という部分に、異常に心がザワつく時。それって、実は自分の「認めたくないイヤな部分(影)」や、過去に確執のあった「許せなかった誰か(例えば親とか?)」の姿を、相手に重ねて見て、過剰に反応しているだけなのかも。相手を変えたいんじゃなくて、自分の内側のザワザワを止めたいだけ…だったりして?

2.その根底にある「自己目的化した愛」

そして、これらの心理的メカニズムを駆動している、さらに根深い動機があります。

それが、私が「自己目的化した愛」と呼ぶものです。

なぜ、あなたは境界線を越えてまで相手の課題を引き受けたり、相手の「影」を自分が何とかしようとしたりしてしまうのでしょうか?

それは無意識のレベルで、こんな悲しい思い込みがあるからかもしれません。

『相手の影(問題や弱さ)を私が引き受けなければ、愛されない・価値がない』と。

つまり、「愛されるため」「自分の価値を証明するため」という、「自分のため」の目的のために、相手を愛し、支えようとしている。それが「自己目的化した愛」の正体です。

それは、純粋な相手への思いやりというよりは、ご自身の根深い自己否定感や、「条件付きでしか愛されない」という過去からの学びに根ざしていることが多いのです。

聞こえはいいけど、壮大な「自己犠牲」…なんですよね、これ。(でも、相手はそれを望んでる? いや、そもそも気づいてる…?)

この「愛し方」の、核心的な苦しさ

この「自己目的化した愛」に基づく、「相手の影を背負う」という関わり方の最大の問題点は、それが決して、あなたの本当の自信や、深い自己承認には繋がらない、ということです。

いくら相手のために頑張っても、それは「相手の課題をクリアした」だけであり、あなた自身の「存在価値」が満たされるわけではありません。

むしろ、相手が変わらなかったり、感謝されなかったりすれば、「やっぱり自分はダメなんだ」「自分のやり方は間違っているんだ」と、さらに自己否定感を深めることになりかねません。

そして、心のどこかで「これだけやってあげているのに」という見返りを求める気持ちが生まれ、それが満たされない時に、愛情が恨みに変わってしまうことさえあるのです。

これが、このパターンの核心的な苦しさです。愛しているはずなのに、報われず、消耗し、自信も持てず、関係もギクシャクする。

変化の始まりは「一つの問い」から

では、どうすれば、この苦しいループから抜け出せるのでしょうか?
パートナーを変えようとすることではありません。相手の心理を分析することでもありません。

まず、ご自身の内側に、深く、そして正直に、問いかけることから始まるのだと、私は思います。

「私は一体、誰のために、何のために、この人生を生きているのか?」

この問いに、すぐには答えが出なくても構いません。

ただ、この問いを胸に、ご自身の行動の動機、感情の動き、そしてパートナーとの関係性を、改めて見つめ直してみること。

「相手のため」と思っていたその行動は、本当に相手のためだったのか? それとも、自分の不安や無価値感を埋めるためではなかったか?

「愛している」と感じているその気持ちの奥に、どんな期待や恐れが隠れているのか?

そのように、ご自身の根深い「生き方のパターン」に光を当て、理解していく勇気を持つこと。

その気づきだけが、あなたを「父(あるいは母)を癒やす子ども」や「パートナーの影を背負う救済者」といった、重く、そして不毛な「損な役回り」から解放し、本当の意味で「自分自身」を生きるための、変化の始まりとなるのです。

そして、その先にこそ、パートナーとも、より対等で、自由で、そして心からの愛情に基づいた、新しい関係性を築いていく可能性が開けてくると思いますよ。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー
恋愛・夫婦関係・対人関係・性格・生きづらさなど様々なお悩みに心理学でお答え。活動歴16年し、9,000件を超える臨床実績。口癖は「どんなことにも事情があるよね」。名古屋・東京・オンラインでカウンセリングを行う現場主義のカウンセラー。
ご案内

【シンプル。でも実はちょっと複雑】大人のための心理学メール講座(無料)

恋愛・夫婦関係・生きづらさ…。

変化の時代をしなやかに生きるための「心の基盤」をつくるヒントが満載。

週3回(火・木・土)にお届けしています。

カウンセリングのご案内

あなたの「変わりたい」気持ちに、理論と感覚で応えます。

複雑に絡まった思考や感情を紐解き、あなたらしい「本来の力」を引き出す個別セッション。まずは詳細をご覧ください。