ほぼ30代からの”仕事に活かせる”心理学

「疲れた…でも頑張りたい」の正体は心の“省エネモード”?理論で紐解く心と体の声

腕組みする女性

こんにちは、心理カウンセラーの浅野寿和です。

「なんだか、ずーっと疲れている気がするんだよなぁ…」

「前はもっと情熱があったはずなのに、最近なーんにもやる気が出ない…」

「特に不幸なわけじゃない。むしろ恵まれてるはずなのに、なんでだろう、幸せだなぁって心から感じられない…」

そんな風に、理由がはっきりしない慢性的な疲労感や、意欲の低下、喜びを感じにくい状態に、ため息をついちゃう。

そんなお声を伺うことって少なくないんです。(医学的な要因によるものではない、という前提ですよ。)

毎日頑張っておられるからこそ、そうお感じになるのかもしれませんよね。

ただ、よくよくそういったお声を伺っていくと

どこか疲れを感じている状態なのに、どこかで「こんなんじゃダメ」「もっと頑張らないと」「周りはもっとちゃんとやってるのに…」なんて、自分を奮い立たせようとされている方も少なくないようです。

実際、そんな声、内側から聞こえてきたりしませんか?

「疲れて動けない自分」と「それでも頑張りたい(頑張らなきゃいけない)自分」。

この、まるで正反対の力が心の中でせめぎ合っているような、しんどい葛藤。

実はこれ、あなたの心が「省エネモード」に入っているのに、アクセルを踏もうとしている状態なのかもしれません。

今日は、この「なんだか分からないけど不調」な“省エネモード”の正体を、いくつかの心理学的な「理論」を手がかりに紐解いていきます。

そしてその状態からどうやって抜け出していけばいいのか、そのヒントを探っていきましょう。

あなたの心と体は「省エネモード」に入っていませんか?

まず、「心が省エネモードになっている」とは、どういう状態でしょうか?

それは、心と体が、様々な理由からエネルギーを節約しようとして、活動レベルを意図的に(あるいは無意識に)下げているような状態だと考えることができそうです。

具体的には、冒頭で挙げたような症状に加えて、

  • 集中力が続かない、頭がぼーっとする
  • 人との交流が億劫になる、引きこもりがちになる
  • 感情の起伏が少なくなる、あるいは鈍くなる
  • 睡眠の問題(寝すぎる、眠れない、途中で目が覚める)
  • 食欲の変化(過食、拒食)

といったサインが現れることもあります。

大切なのは、これらのサインを「怠けている」「根性がない」「わがままだ」と自己否定の材料にしないことです。

これは、あなたの心と体が、何らかの理由で「今はこれ以上エネルギーを使えません!」と悲鳴を上げている、正当な防衛反応であり、重要なメッセージなのです。

なぜ「省エネモード」になるの? 心理学からの2つの視点

では、なぜ私たちの心や体は、このような「省エネモード」に入るのでしょうか?

そのメカニズムを理解するために、いくつかの心理学的な視点がとても参考になります。

ここでは主なものを2つご紹介します。

視点1:心と体を守るための神経系の「シャットダウン」

私たちの自律神経系には、身を守るための非常に原始的なプログラムが備わっています。

逃れられないほどの強いストレスや脅威に晒されると、エネルギー消費を抑え、感覚を鈍らせて現状をやり過ごそうとする「シャットダウン(凍りつき)」モードに入ることがあるのです。

これはポリヴェーガル理論などで詳しく説明されています。

慢性的なストレス下では、このモードが長引きやすいと言われます。

これが「省エネモード」の神経生理学的な背景の一つです。

視点2:心身のエネルギー(資源)枯渇への対処

もう一つの視点は、私たちのエネルギーや意欲といった「資源」は有限だ、という考え方です。

仕事や人間関係などでストレスが続き、心身の資源が枯渇してくると、私たちは無意識にそれ以上の消耗を防ごうとします。

これは資源保存理論などがこれを示唆しています。

活動を控え、感情的な反応を抑えることで、エネルギーを節約しようとする。これも「省エネモード」に繋がる心理的な動きです。

つまり、「省エネモード」とは、神経系のレベルでも、心理的な資源管理のレベルでも

「今は活動を抑えて、身を守り、エネルギーを温存すべき」

という、ある意味で合理的な反応として生じている可能性があるのです。

「省エネモード」と「頑張りたい」の綱引きが生む苦しさ

さて、ここからが本題の「葛藤」です。

心と体は「休め」「動くな」「感じるな」と、全力でブレーキをかけている(省エネモード)。

それなのに、私たちの意識(あるいは社会的な役割、内面化された「べき思考」)は、「いや、頑張らなければ」「もっとできるはずだ」「休んでいる場合じゃない」と、アクセルを踏もうとする。

これをよく「ブレーキとアクセルを同時に踏んでいる状態」なんて例えられるんですけど、僕はそう見ていないんですよねぇ(^^;

むしろ、アクセルは踏みたいのにギアが入らず、エンジンだけが虚しく空回りしているような状態に近いと思うのです

自分自身の意識では頑張ろう!と本当に思ってるし、幸せになりたいと感じている。

エンジンは動いていそうなんです、思考や想いレベルのね。

しかし、実際にそういった指令を心や体に伝えても、めっちゃから回ってる感じがする、といいますかね・・・。

これは仕事だけでなく、恋愛でも夫婦関係でもなんでも同じじゃない?って僕は思いますよ。

頑張ろうと思う、けど、虚しい、みたいな感覚が生じる瞬間といいますか。

これが「生きづらい、けど、頑張りたい」という葛藤の正体なのかもしれません。

気づいていないけれど、とてつもないエネルギーの浪費をしている状態といいますかね。

具体的には

  • 動けない自分を「怠け者だ」と責める(自己批判)。
  • 頑張れないことに罪悪感を感じる。
  • 周りと比べて焦りを感じる。
  • 「本当はどうしたいのか」がますます分からなくなる。
  • アクセルを踏んでも進まない(ように感じる)ため、さらに無力感が深まる。

この内なる戦いは、本当に疲れますよね。

ただ、だからといって、あなたが悪いというわけじゃないんです。

むしろ、限界まで頑張ってきたあなただからこそ、陥りやすい状態なのかもしれません。

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心と体の声に耳を澄ます:「省エネモード」からの回復ヒント

疲れたけど頑張りたいと思う状態から抜け出した女性

では、この苦しい綱引き状態から抜け出し、もう少し楽になるためには、どうすればいいのでしょうか?

鍵は、「頑張ること」を一旦脇に置き、まず「心と体の声(=省エネモードのサイン)」に、丁寧に耳を傾け、応えてあげることです。

「省エネサイン」を認め、受け入れる

「疲れた」「やる気が出ない」「楽しめない」

これらの感覚を、「ダメなこと」と否定しないことですよ。

「ああ、今、私の心と体は、エネルギーを節約しようとしてくれているんだな」

「守ろうとしてくれているんだな」

そんな心と体からのサインの存在とその意味を、まずは受け入れてみてください。

自己批判ではなく、自己理解から始めてみてほしいんです。

意識的な「休息」と「安全」の確保

省エネモード(特にシャットダウンモード)から抜け出すには、「ここは安全だ」「休んでも大丈夫だ」と心と体に教えてあげる必要があります。

意識的に、何もしない時間、ボーっとする時間、安心できる人や場所で過ごす時間を作りましょう。

深い呼吸、温かい飲み物、自然に触れることなども、神経系を落ち着かせ、安心感を高めるのに役立ちます。

「頑張る」のハードルを一時的に下げる

「頑張りたい」気持ちも大切にしたい。そのお気持ちもわかります。

ただ、心と体が省エネモードの時には無理は禁物といいますか、無理をすると省エネモードが続いてしまうんですよ。

なので、「頑張りたい気持ち」は認めながら、実際の行動内容のハードルは下げてみてください。

「今の私でも、これならできそう」と思える、本当に小さな小さなステップに見直してみましょう。

例えば、「1つだけメールを返す」「今日は明日の資料作りまでにする」など。

ハードルを下げたステップを一つこなした事実、それを「できた!」と認める。

この小さな成功体験が、少しずつエネルギー(資源)を回復させます。

今まで無理してきた人ほど、「この程度で自分を褒めるなんて」と思うかもしれませんが、それを続けた結果が今なんだと考えてみてほしいですね。

「心の解像度」で、本当のニーズを探る

「疲れた」「やる気が出ない」の奥には、どんな本当のニーズが隠れているでしょうか?(休息?安心感?繋がり?意味?自己肯定感?)。

省エネモードのときこそ、普段見過ごしている自分の深いニーズに気づくチャンスでもあります。

自分の心の内側(感情、感覚、欲求)に丁寧に注意を向け、解像度を上げていくことで、今、本当に必要なケアが見えてきます。

※ちなみに、この「省エネモード」が長期化したり、その背景にある要因(過去のトラウマ、慢性的なストレス環境など)が根深い場合は、やはり子供時代の経験や親子関係が影響していることも多いです。

これはカウンセリングで丁寧に見ていく部分となりますね。

まとめ

「なんだか疲れた」「やる気が出ない」「幸せを感じられない」…でも、心のどこかで「頑張りたい」とも思っている。

この辛い葛藤は、あなたの心と体が、過剰な負荷に対して「省エネモード」に入ることで懸命にバランスを取ろうとしているサインなのかもしれません。

その背景には、神経系の働きや、心身のエネルギー(資源)を守ろうとする、心理学的な「理論」に基づいた、ある意味で合理的な反応が隠れています。

大切なのは、その「省エネモード」の自分を責めるのではなく、その声に耳を傾け、必要な休息と安心を与えてあげること。

そして、「頑張りたい」気持ちも否定せず、今の自分にできる「ちょうどいい」一歩を見つけて、自分に優しく許可してあげること。

この「休む自分」と「進む自分」の両方を認め、バランスを取っていくことこそが、「生きづらさ」と「頑張りたい」の綱引きから抜け出し、持続可能で、あなたらしい穏やかな日々を取り戻すための鍵となるはずです。

焦らず、ご自身の心と体の声に、丁寧に寄り添ってあげてください。

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ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー
恋愛・夫婦関係・対人関係・性格・生きづらさなど様々なお悩みに心理学でお答え。活動歴16年し、9,000件を超える臨床実績。口癖は「どんなことにも事情があるよね」。名古屋・東京・オンラインでカウンセリングを行う現場主義のカウンセラー。
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