恋愛の心理学

「恋愛感情がわからない」と感じる深い心理と向き合い方

悩みの中にいる女性

「恋愛感情がわからない」という、静かな悩み

こんにちは、心理カウンセラーの浅野寿和です。

周りの友人たちは恋愛の話で盛り上がっている。映画やドラマでは、情熱的な愛が美しく描かれている。

でも、自分の中では

「人を好きになるって、どういう感覚なんだろう?」
「『愛してる』と言われても、正直ピンとこない…」
「恋愛感情そのものが、自分には欠けているんじゃないだろうか?」

そんな風に、「恋愛感情がわからない」という、言葉にしにくい、そして誰にも打ち明けにくい悩みを、一人で抱えていらっしゃる方がいるやもしれません。

それは、時に深い孤独感や、「自分はどこかおかしいのではないか」という自己否定感にも繋がってしまう、切実なテーマだと思います。

この記事では、なぜ私たちが「恋愛感情がわからない」と感じてしまうことがあるのか、その背景にあるかもしれない深層心理について、いくつかの視点から、皆さんと一緒に、ゆっくりと考えていきたいと思います。

ただ本記事は「こうすれば恋愛感情がわかるようになる」という単純な答えを提供するものではありません。

むしろ、ご自身の心の「なぜ?」に光を当て、ご自身への理解を深め、そして、そのありのままの自分を(まずは)受け容れていく、そのプロセスへの「招待状」のようなものだと、捉えていただければ幸いです。

「恋愛感情がわからない」その理由は様々です

まず、大前提として、「恋愛感情がわからない」と感じる理由は様々であるということです。

例えば、

  • 感情の感じ方、表現の仕方は人それぞれ
    生まれ持った気質や、これまでの経験によって、感情の機微に対する敏感さや、それを「恋愛感情」として認識するプロセスは、本当に人それぞれです。
    情熱的に燃え上がるような感情だけが「愛」ではありません。穏やかな安心感、深い信頼感、相手の幸せを願う静かな気持ち… それらもまた、愛の形と言えるでしょう。
  • アセクシャル・アロマンティックの可能性
     恋愛感情や性的欲求を、そもそも他者に抱かない、あるいはほとんど抱かない、というセクシュアリティ(アセクシャル、アロマンティック)の方もいらっしゃいます。それは、個性であり、尊重されるべきあり方です。
  • 人生のタイミング
    人生の特定の時期(例えば、仕事や他のことに集中している時、あるいは深い傷つきから回復するプロセスにある時など)には、恋愛への関心が薄れたり、感情が動きにくくなったりすることもあります。

大切なのは、「社会が定義する『恋愛』」や「他人の基準」に、無理に自分を当てはめようとしないことかもしれませんね。

ただし、「以前は感じていたはずなのに」「本当は感じたいのに、感じられない」といった感覚がある場合、あるいは、その「わからなさ」が強い苦痛を伴う場合、そこには、より深い心理的な要因が隠れている可能性があります。

此処から先の話はこの前提の上で書き進めますね。

なぜ「恋愛感情がわからない」のか?〜考えられる深層心理

では、「恋愛感情がわからない」という心理について、カウンセリング経験や、心理学的な知見から、いくつか考えられることを挙げてみましょう。

過去の傷つき体験による「感情の麻痺」

過去の恋愛や、あるいは幼少期の親子関係などで、深く傷ついた経験(裏切り、拒絶、喪失、あるいはもっと深刻なトラウマ体験など)があると、私たちの心は

「これ以上傷つくことを避けるために、感情そのものを感じにくくする」

という防衛機制(感情の麻痺、解離など)を発動させることがあります。

特に、「好き」という感情は、相手に期待し、心を無防備に開くことでもあるため、過去にそれによってひどく傷ついた経験があると、無意識のうちに「好き」と感じる回路自体を閉ざしてしまうことがあるのです。

親密さへの深い「恐れ」

人と深く、親密になること自体に、強い「恐れ」を抱えている場合、恋愛感情は育ちにくいかもしれません。

親密になるということは、自分の弱い部分や、隠しておきたい部分(影)をも相手に見せることでもあります。

「本当の自分を知られたら、拒절されるのではないか」「近づきすぎると、相手に飲み込まれてしまうのではないか(境界線の問題)」といった恐れが根底にあると、心が「好き」という感情にブレーキをかけてしまうのです。

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「自分には価値がない」という無価値感・自己否定感

「自分なんかが、誰かに愛されるはずがない」「自分には、人を愛する資格がない」という、根深い自己否定感。これが強いと、他者からの好意を素直に受け取れなかったり、「どうせうまくいかない」と最初から諦めてしまったり。

あるいは、そもそも「恋愛感情」というポジティブな感情を、自分自身に「許す」ことができない、ということが起こります。

「価値がない」と感じる自分が、幸せな恋愛をするなんて「矛盾している」と感じてしまうのです。

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「感情」と向き合うことへの不慣れさ

育った環境などによっては、そもそも自分の感情(喜び、悲しみ、怒り、恐れなど全て)に気づき、それを感じ、言葉にすること自体を、十分に学んでこなかった、という場合もあります(アレキシサイミア/失感情症に近い状態)。

そうなると、「恋愛感情」という、非常に複雑で、時に矛盾した感情の波を、的確に捉え、理解することが、特に難しくなってしまうのです。

「いびつな愛」のパターン

「相手の期待に応えなければ」「相手を救わなければ」といった、自己犠牲的な「いびつな愛」のパターンを繰り返してきた人は、純粋に相手を「好き」と感じたり、相手からの愛情を「受け取る」喜びを感じたりする回路が、うまく機能しなくなっていることがあります。

無理をしてでも「与えること」「尽くすこと」が愛だと信じ込んできたため、「ただ好き」「ただ愛される」という感覚が、分からなくなっているのかもしれません。

これらはあくまで可能性の一部であり、複数の要因が絡み合っていることも少なくありません。

「恋愛感情がわからない」自分の向き合い方

では、「恋愛感情がわからない」と感じる時、私たちはどうすればいいのでしょうか?

繰り返しになりますが、「無理に感じようとする」「感じない自分を責める」のは、多くの場合、逆効果です。

そこで、自分を上手に向き合う視点をいくつかご紹介します。

「わからない」という感覚を、まず認めること

「そうか、自分は今、『恋愛感情がわからない』と感じているんだな」と、評価や判断をせずに、ただ、その状態を認識します。

その上で、「なぜ、わからないのか?」を焦らず探求してみましょう。

この記事で挙げたような可能性をヒントに、ご自身の過去の経験や、心のパターン、根底にある恐れや信念に、少しずつ光を当ててみます。

「もしかしたら、あの時の経験が影響しているのかな?」

「自分には、こういう恐れがあるのかもしれない」と。

感情全体への感受性を育む

恋愛感情だけでなく、日々の生活の中で感じる、ささやかな感情(嬉しい、悲しい、腹が立つ、ホッとするなど)に、もっと意識的に気づき、それを感じ、言葉にしてみる練習をするといいですね。

つまり、あなたの感情の解像度を高めることが、恋愛感情への気づきにも繋がるかもしれません。

生理的な問題がないなら、感情は感じられないのではなく、何らかの理由で感じないようにしている、と見たほうがいいと僕は考えています。

つまり、恋愛感情も感じないのではなく、感じると苦しい、辛い、怖いのか、それとも別の理由で感じないようにしているのか。

だとすれば、自分を癒やしながらも、感情に対する感度、感受性を取り戻していくことで、恋愛感情を取り戻す事ができる場合もあるのです。

「自分を大切にする」実践

やはり、ここに戻ってきます。

「価値があるかないか」に関わらず、まず自分自身を労わり、ケアすること。

自己肯定感という土台が安定してくると、他者との関係性における恐れが和らぎ、新しい感情を感じる余裕が生まれてくることがあります。

「恋愛」以外の繋がりの価値も認める

友情、家族愛、尊敬、仲間意識など、世の中には多様な「愛」や「繋がり」の形があります。

必ずしも「恋愛感情」だけが、人間の繋がりの至上の価値とは言えないと思いますよ。

ご自身が心地よいと感じる、他の繋がりを大切にすることも、豊かな人生に繋がります。

最後に 〜答えは、あなたの中にある〜

「恋愛感情がわからない」という悩みは、時に私たちを深い孤独感を感じさせます。

ただ、その「わからなさ」の背景には、あなたが生きてきた歴史があり、あなたを守るための心の働きがあり、そして、もしかしたら、まだ出会っていない、あなた自身の新しい可能性が隠れているのかもしれません。

だから、焦るよりも大切なことは、ご自身の心と、正直に、そして優しく向き合い続けることなのだと思います。

もし、そのプロセスが一人では難しいと感じられるなら、信頼できる友人や、あるいは私たちのような心理カウンセラーに、その探求の伴走を頼ることも、選択肢の一つです。

あなたの心が、少しでも軽くなり、そしてあなたらしい「繋がり」や「幸せ」の形を見つけていけることを、心から願っています。

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