こんにちは。心理カウンセラーの浅野寿和です。
忘れられないあの人のこと。
思い出すたびに胸が苦しくなって、「どうしてこんなに引きずってるんだろう」って、自分でもよくわからなくなる。
でも、「本当に好きだったから?それとも、執着してるだけ?」
そんなふうに、自分の気持ちの“正体”を見失うことって、ありますよね。
愛情とは「相手の幸せを願う気持ち」、執着とは「何かにしがみついている状態」。
一番の違いは、「相手を尊重しているか、自分の不安で行動しているか」です。
一見、似ているようで真逆なこの2つ。
この記事では、愛情と執着の境界線を、心理的な視点から整理していきます。
Index
愛とは?執着とは?その違いを一言で言うと

愛とは、「相手の幸せを願う気持ち」。
執着とは、「自分の不安から、何かにしがみついている状態」。
つまり、一番の違いは「相手を尊重しているか」「自分の不安で動いているか」です。
「愛」と「執着」の心理的特徴とその違いを解説します
さて、心理的に見た「愛」と「執着」の特徴とその違いをさらに詳しく解説していきます。
愛とは
愛:特定の他者や物事に対する深い愛情やいつくしみの感情。
自分と相手の境界を保ちつつ、相手の幸福や自由を願い、尊重する姿勢。
成熟した自己と他者の間に生まれる“自発的なつながり”です。
執着とは
執着:自分自身の心が何かに囚われて自由を失っている状態。
相手やなにかを通じて自分の不足を埋めようとする心理。
場合によっては、相手をコントロールしたくなる、不安からくる行動。
一覧で見る「愛と執着の違い」
では、愛と執着の違いを一覧にするとこのようになります。
項目 | 愛情 | 執着 |
---|---|---|
動機となる感情 | 相手を思いやる気持ち | 自分の不安や怖れ |
行動の目的 | 相手の幸せを願う | 相手を支配・コントロールしたい |
感情の状態 | 安心・信頼がある | しがみつき、自由さを感じられない |
手放せるか | 相手の意思を尊重できる | 「手放す=失う」と感じる |
愛と執着の違いは”実感”に出る
また、あなた自身が“実際に生じる気持ちや感覚”も、違いを見極める大切な指標です。
そもそも愛は、相手の幸せや自由を願い、与えたい気持ちをもたらしますから、何も奪わず、自分も相手も傷つけません。
また、相手との心の境界線が明確になっている状態なので、「相手と自分が違う存在だ」という認識が成立しています。
よって、自分の心が自由で、軽やかで、良い気分になります。
*
一方、執着は、自分自身が失いたくないなにかにしがみついている心理状態です。
失うことへの怖れや不安が強くなり、それを解消するために「何かにしがみつきたい」という気持ちをもたらします。
ときには、相手との境界線が曖昧になり、自他の感情の区別がつきにくくなります。よって執着の対象のあり方で、気持ちが振り回されたり、一喜一憂することが増えます。
何より、執着しているとき、私達の心は苦しく、窮屈さを感じ、自由を感じられません。
ただ、これも一つの心理的な防衛反応だ、ともいえます。
何かにしがみつくことで心のバランスを保とうとしている、とも言えるのです。
とかく、執着の根にあるものは、満たされなかった想いや、癒されていない心の傷であることが多いのです。
過去に置き去りにされた気持ちが、執着という形で心に残ることがあります。
愛と執着が見極めにくい理由
ただ、「愛と執着は見極めにくい」と感じることも少なくないはずです。
たとえば、「好きな人に連絡したい」「もっと一緒にいたい」と思うこと。
もう別れた人のことを「大切に思ったり、また会いたいと願う」こと。
ここには「あなたへの好意(好き)」があり、「あなたがそれに価値や意味を感じている」という状態があるはずです。
この「好意」が、「愛と執着を見分けることを難しくする」と考えられるんですね。
「好き」だからこそ、よく思うわけですから。
ただ、「好き」には違いないけれど、気持ちの面で苦しい、辛い、不安、落ち着かない。
そう感じるなら、「執着している可能性」を見つめてみてもいいでしょう。
愛と執着の「違いを見分ける」3つの問い

では、どうすれば自分の気持ちが「愛」なのか「執着」なのか、見分けることができるのでしょうか?
ここから紹介する3つの問いに、自分なりに答えてみてください。
- 今、私の気持ちは自由を感じられているか。それとも窮屈に感じているか?
- 相手の自由や幸せを、心から願えているか?それとも自分の不安から逃れたいのか?
- もしこの人や状況が変わっても、自分の人生を歩めると思うか?
そうすることで、あなたの“今の気持ち”がどこから来ているのか、整理しやすくなります。
執着の対象は何も恋愛だけとは限らない
なお、執着の対象は恋愛に限りません。
仕事、お金、過去の栄光、親や子ども、パートナーや配偶者・・・。
何にでも、人は執着する可能性があるのです。
共通しているのは、「不安の裏返しとして、何かにすがるようにして心を保っている」構造です。
”背負い込み”という執着の形も存在する
また、一見、愛のように思える執着の形も存在します。
「背負いこみ」がその典型例ですね。
たとえば、「まるで相手を助けなければならない」と思い込む形で、相手に“しがみついている。
そんな無自覚で悪意のない執着となっている場合もあります。
ただし、執着は“いい・悪い”で判断するものではなく、本来は癒やされるべきものだと、僕は考えています。
「執着」に気づいたときの3つの対処ステップ

では、執着に気づいたとき、どのように対処すればいいのでしょうか?
ここでは「執着に気づいたときに使える3つの方法」をご紹介します。
1:急に手放そうとしない。「その気持ちを聞いてあげる」ことから始める
無理に「執着はダメ」と抑え込むと逆効果です。
まずはその執着の奥にある「満たされなかった思い」「本当はどうしたかったのか」に耳を傾けていきましょう。
そこにはどんな気持ちがあるのかを、丁寧に受け止めていくことです。
2:今の自分は何を恐ているのかを明確にする
執着は「失う怖さ」から来ていることが多いです。
なので、その“失いたくないもの”が何かを明確にすることで
(たとえば、相手の愛情?相手とのつながり?大切にしてきた物の価値?自信?などと振替し、紙にき出して見つめてみる、など)
執着の理由が整理されていき、気持ちが楽になることもあります。
3:執着ではなく、“想い・願い”として整えてみる
たとえば「愛されたい」「一緒にいたい」は執着ではなく想い・願い、とも言えますね。
その願いに気づければ、「どうすればその願いを健全な形で叶えられるか?」という発想に転換できることもあります。
しがみついてしまうと、自分が苦しいだけでなく、執着しているものにも良い影響を伝えることができなくなりますからね。
ただ、執着する理由として
- 自己肯定感の揺らぎ(「自分には価値がない」と思ってしまう)
- 過去の人間関係での愛着不安や見捨てられ体験
- 心の安心感を得るために、“しがみつくように”何かを求める癖
このような、自分自身を正しく評価できなかったり、過去に大切にされたかった想いなどが影響していることも少なくありません。
こういったときは、心のプロと相談しながら丁寧に自分と向き合うことをおすすめします。

執着の中にも“想い”はある
ただし、「執着はいけないこと」だと思ってしまうと、なかなか執着を手放すくとは難しいのです。
我々がなにかに執着する、ということは、少なからず、執着しているものに好意や価値を感じています。
逆に言えば、価値のないものに執着することはないのです。
つまり、安易に執着を否定するということは、「誰かを真剣に想ってきた気持ちそのものを否定してしまうこと」にもなりかねません。
たとえば、離れていった相手にずっとこだわってしまうのは、それだけ「その人の存在が自分にとって大切だった」という証拠。
あなたにも執着するだけの「想い」があったはずです。
だからこそ、「執着は悪いことだ」と判断せず、「どうしてここまで苦しい思いをするのか、その理由を見つけて整えること」が大切なのです。
この視点を持つことで、自分を楽にする「手放し」に近づいていきます。
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最後に
たとえ今、自分の想いが「愛」ではなく「執着」だったと気づいたとしても、落ち込む必要はありません。
それはあなたが、誰かや何かを大切に思った証には違いないのです。
人は、心を守るために執着します。
だからそれは「心の叫び」であり、「愛し方を学ぶ途中の姿」でもあります。
この文章が、少しでもあなたの心を軽くし、ほんのわずかでも自由な気持ちで明日を迎えられるきっかけになれば、嬉しく思います。
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2021年1月27日にリクルート社「セキララ・ゼクシィ」様から取材のご依頼をお受けして、私が監修しました「執着心」についての記事がアップされています。
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