恋愛の心理学

なぜ男性に女性の気持ちが伝わらないのかについての一考察

女性のクライエントさまからよくいただく質問の一つに「彼はどうしてあんなにも私の気持ちに気がつかないのでしょう?」があります。

いわば「私はちゃんと気持ちも言いたいことも伝えているのに、どうして伝わらないのか?」というご質問です。

かつ、彼に何がどう伝わっていないのかが見当がつかない、というお話から、何度もこちらのことばかり伝えるのは嫌だ、といったご意見までたくさん伺います。

今日はそんな「伝えているのに伝わらない」について少し考えてみたいと思います。

さて、男性はものごとを理論的に考え判断することに関しては得意な人が多いです。一方、ものごとを感情的に処理することについては、あまり良く分かっていない人が少なくないのかもしれません。

全く悪気はないのですが、気づかないことが多いのです。

例えば職場でのできごとから男性的・女性的な考え方の違いを見てみると

たとえば、ある職場にC子さんとH子さんがいて「次の人事でどちらかがリーダーになる」という話があったとしましょう。

この二人の上司が男性だった場合、このように考える人がいるかもしれません。

「どちらも頑張ってくれているけれど、2人のうちどちらかしかリーダーになれない。どちらがなったとしても、なれなかったほうには残念だけど割り切ってもらわないと仕方ないし、理解して頑張ってもらいたい。」

そして、リーダーになった方は「認められているということで、〇〇さんの分もしっかり頼みますよ」とはっぱをかけ、リーダーになれなかった方には「ここで腐らずまた頑張ってほしい」と伝え、そこでフォローが終わってしまうかもしれません。

このようなことはよく起きることかもしれませんね。

しかし、C子さんとH子さんは上司に対して以下のように考えていたのです。

「組織上の決まりだから、次の人事ではどちらかがリーダーになって、どちらかかはなれないのは分かっている。ただ、どちらがリーダーに選ばれたとしても、相手に気をつかうだろうし、なれなかったほうは残念な気持ちになったり、そう思いたくないけれど悔しさから嫉妬めいた気分にもなるだろう。だから上司にはそういった部分への配慮を視野に入れてほしい。特にお互いの気持ちをどう扱うかについて、先にしっかり考えておいてほしい。」

これは「うまくやっていくには、どうすればいいか?」という考え方の一つですね。

ここには「お互いがどんな気持ちになるのか?」という視点がある、といえます。

一方、この男性上司の考え方は、いわば「だって一人しかリーダーになれないのだから仕方がないじゃないか」「感情的な問題は個人の問題だから」と考えているのかもしれません。

このようなモノの考え方のベースには「競争心」があります。

「いかにこの競争に勝つか」をものすごく意識している状態で、競争に勝つことに意味を感じている、といえます。かつ、勝つのは自分の実力、負けたということは自分に問題があるのだから、そこは受け止めて割り切ってもらいたい、と考えるわけです。

この考え方も間違ってはいないのでしょう。

が、自分が勝つにも、自力だけで成し遂げている場合ってそんなにないかもしれません。競争心が強い人ほど「成功は自分の力と努力によってもたらされたもの」と考えがちですが、実際は、周囲の人の支え、応援、指導や叱咤激励などによって自分自身が成長してきたという側面も否定できないのではないでしょうか。

だから、あまりに競争をベースにした考え方をしていると、人の気持ちに対する興味が持てなくなってしまい、今回のケースで言えば、その上司が(職責としても、人としても)どのように介入して二人が気持ちよく仕事ができるか、について考えるまでに至らない場合もあり、その結果、職場の雰囲気が変わってしまうこともありえるのかしれません。

ときには支持が得られないとか、部下がついてこなくなる、なんてケースもあり得るのかもしれませんね。(だから更にパワーでねじ伏せるタイプの人もいるのでしょうが。)

もちろん「男性的なものの考え方」をしている人であっても、だから「人のことを考えていない」なんてことはあまりないはずです。

男性的なものの考え方の中で相手のことを考えているのです。

しかし、だからこそ、同じ物事の考え方を他人にも向ける、といえます。そしてその自分の考え方の美点・欠点に気づけていないかもしれません。

だから、C子さんとH子さんのことも、リーダーに選ばれた側を承認することができても、リーダーに選ばれなかったがわのフォローについては「自己責任で」と考えがちなのかもしれません。

また、リーダーになれなかった側に「悔しいよね」とは言えても、「リーダーになれなかったという気持ちを割り切って切り替えようとしているけど、実際はリーダーにも気を使われてしまって居心地が悪くなるし、仕事やりづらくなってる」という部分に対して意識が向かないかもしれません。

もちろん上司も、リーダーになる側、なれなかった側の気持ちを想像してフォローはしたいと考えているでしょう。それは間違いのない事実なのだと僕も思うのです。

が、その気持ちを具体的にどう扱えばいいのかまで、あまり考えていない、と言えるのかもしれません。

これはあくまで一例ですけれど、しかしこの話はいわゆる男性的・女性的なモノの見方違いを示しているでしょう。

そう考えると、この上司は「リーダーになれなかった側のフォローができない」わけですから、自分自身が失敗したり、競争に負けてしまったりしたときにどうすればよいのかという準備はまったくできていない、という可能性がありそうなんですね。

自分がそうだから、上司としても、人の気持ちの面に介入できなくなる可能性があるかもしれませんね。

恋愛の中での考え方の違い、その一例

恋愛においての「女性的なものの考え方」をこのように表現されることがありますよ。

「異性同士、知らない者同士が二人で生きていくのだから、いつもよい気分のときばかりでなく、どうしようもなく悲しい気分になるときや、自分でも受け容れられない嫌な感情にとらわれてしまうこともある。そのとき、どう対処することが必要なのかと考えている状態。

一方「男性的なものの考え方」は、ちょっと違うことがあるようです。

「自分が負けずに頑張っていればそれでうまくいくはずだし、自分が惨めな思いをしないようにしていれば大丈夫。むしろ嫌な気分を感じるようなできごとが起きるから問題になるわけであって、そんな風にならないようにするにはどうしたらいいかと考える」

具体的な事例でいれば、男性は「彼女や奥さんとケンカにならないようにするには?」と考えている人が少なくなくて、ケンカしたり揉めたときのことを考えていない場合もあるよ、ということです。

一方、女性は「もしケンカになったとしても、どのように私を理解し、愛してもらえるのか」というところをとても大事に見ていることが多いようです。

しかし、二人が実際にケンカになり、とても感情的になって衝突した、その時点で男性は「思ったように関係を進められなかった」と、いわば失敗した、うまくいかなかった、と考えてしまうわけです。

女性からすると、二人の考え方の違いがあるのはそもそも当然で、合わないことも分かり合えないこともたくさんある。だから、(方法は別にしても)ケンカを通じて本音でコミュニケーションをしたいと思っている。

なのに、そのときにはすでに彼は撤退モードや殻に閉じこもるモードになるわけですから、とてもじゃないですけど、お互いにコミュニケーションできる状態になくなってしまうわけですよね。

ただ、そんなとき男性の口から出てくる言葉は「君は僕の気持ちを何も分かっちゃいない」ではないかなぁ、と僕は思いますよ。

揉めたくない、負けたくない、失敗したくなかったのに、どうしてこうなってしまうんだ!という気持ちを「何も分かってない」という言葉に乗せているのでしょう、

女性側は、なんとか私の事情や立場をわかってもらいたいと望んでいるにもかかわらず、彼にその気力がすでにないわけです。

かつ、更に厄介なのは「もっと分かり合いたい・うまくやっていきたい」と思っている女性にとって、この男性の言葉はかなり刺さりませんかね?私は彼を分かろうとしていたのに「分かってない」と言われちゃうんだから、痛いし、不安にもなりますよね。

それぐらい「恋愛関係」という言葉は同じでも、お互いが考えていること、望んでいること、目指している状態(目的)が違うのかもしれませんね。

できれば、ここは相互に理解しておくほうがいいのかなぁ、と僕は思ったりしますけどね。分からないことがダメ、ではなく、理解できていることのメリットが大きい、という感じですね。

「人が抱える失敗感」をフォローする視点を持つと、伝わることが増えるかも

人はいつもうまくいくわけじゃなくて、失敗したり、うまくできないことと出会うことがあります。

そのとき、相手が抱える「失敗感」を見て、受け止めて、フォローする視点を持つと、伝わることが増えることもあるのです。

しかし、自分が失敗感を受け入れられないと、他人の同じ感情に気づけないことも少なくないわけです。

だから、実際の恋愛相談の中でも、彼から「君は何も分かっていない」と言われた女性のみなさんに、僕はこのようにお伝えすることがありますよ。

「おそらくその彼は、自分が思ったとおりに二人の関係がうまくいかなくてどうしようもなくなった、と思っているから、動き出してこないのですよ」とも。

ここでの「自分が思ったとおりに」というのは、何もケンカばかりしている、といった目に見えた問題だけではありません。

女性が犠牲しまくっていたり、辛そうにしていたり、いつも不満そうにしていること、機嫌が悪いことも含まれます。

そんなのほっとけ!といった女性のお声が聞こえてきそうなのですが、とにかくその彼が目論んだプラン通りに関係が進まないと、男性はなぜか「うまくいってない・失敗した」と感じることが少なくないようなのです。

そして、自分がそうなったときの準備をあまりしていないのです。

そんなこんなの男性の心理的背景から、多くの女性のみなさんにご提案させてもらっているのは、「あなたがあのとき〇〇してくれたことが本当に嬉しかった」など、事実を事例にあげながら、感謝を含めた感情的なコミュニケーションをしてみてね、なのです。

このように伝えることで、男性はその女性の気持ちを具体的な事実と絡めて自分の中で再認識するのです。

それによって「彼の失敗感(罪悪感)」をなんとなくフォローしているわけです。

これも「自分が思ったとおりにものごとが進まなかったことで凹んでいる男性の気持ち」を回復させるワザといえるでしょうか。

※本記事は2021年11月3日にアメブロ・恋愛テクニックにアップした記事の加筆・再編集版です。

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