恋愛の心理学

無価値感に関する一考察 〜私にはいつも何か足りない気がするなら〜

私にはいつも何か足りない気がする

ご相談の中に「私にはいつも何か足りない気がするんです」というお話があります。

例えば、「なかなか結婚できない(彼ができない)のは、私になにか足りないからではないか」「努力しても自分をいいと思えないんです」といったものがその典型例ですね。

他にも、パートナーに厳しいことを言われるのは、仕事で失敗してしまうのは、学校の先生から厳しくされるのは、私になにか足りないからだ、といった事例もありますね。

また、自分から人に「あなたは何かが足りないのよ」と言って揉めた、なんてケースもあります。

いわば、何かしらうまくいかないことがあると、つい「私は何かが足りない」と考えてしまうパターンだと言えます。これは無価値感、私には価値がないと感じている状態、と考えることもできますね。

私になにか足りないと感じつづけていい気分になることはないですから、できればそういった気持ちを整理して、理解して、手放して自分の気持ちを立て直しておきたいところですよね。

ただ、例えば失敗しても、誰かに興味を持ってもらえなくても、もしくは「私にはなにかが足りない」と感じても、落ち込んでしまう人もいれば、前向きな気持を持つ人もいるでしょう。

この違いはどこからやってくるのでしょう。今日はこの無価値感について少し考えてみたいと思います。

よろしければお付き合いください。

 

「私にはなにか足りない」と感じることで生じる不安と焦り

さて、多く無価値感にまつわるご相談を伺うとき、ご相談者様が最も悩まれている部分は「私にはなにか足りないと感じることで生じる不安と焦り」のようです。

「私にはなにか足りないのではないか」と感じるからこそ、漠然と「うまくできないのではないか」という不安を抱えておられる方が少なくないようです。

だから、「うまくやらなきゃ」と考えてしまいすぎる人も出てきます。言い方を変えれば「気を使いすぎる」って感じでもあるんですけどね。

 

例えば、与えられた仕事がうまくこなせない、という悩みがあったとしましょう。

確かに、今、与えられた仕事がうまくこなせないならば、自分の経験や、知識や能力的な部分の不足があるかもしれませんよね。

ただ、これは誰にでも起きることですし、自分自身が学ぶこと、経験することで補えることではないでしょうか。今だけではなく、ちょっと長い目で見れば(自分の意欲次第ではありますが)「解決できること」ではないでしょうか。

しかし、「自分にはなにか足りないのでは?」と悩まれている方って、そうは考えないことがあるようです。

「今、自分に能力がないことが問題。今、与えられたことができないことが苦しい。」

そんな風に強い不安や焦りを感じてしまうのかもしれません。

だとしたら、今、自分が仕事をこなせないこと自体が問題になっているし、自分を責める理由になっている、というふうに考えることができそうですね。

少し長い目で見て、自分自身の経験・成長を見るのではなく(もうちょっと自分を信頼してあげる感じではなく)、今、この瞬間に自分にできないことがある、ということに強く反応している、と見ることができそうなんです。

ただ、もしそうだとしたら、僕たちは多く自分を責めまくらなきゃいけなくなると思うのです。なぜなら、どんな人も未経験の物事の前では初心者だからです。できないことだらけですよ。

こんな例えもどうかと思うのですが、僕が今からサーフィンをするとしたら、正直、波どころかボードにすら乗れないと思いますよ(^^;

他にも、今まで経理畑で長年貢献してきた方が、いきなり営業に回るとしたら、営業さんとしては未経験で初心者となるわけですよね。

それで自分をボッコボコにしていては身が持たないと思いませんか?

が、ボッコボコにするわけではないにしろ、強い不安や焦りを感じてしまうなら、「なぜそう感じるのだろうか」という部分は見つめておいてもいいのかもしれませんね。

無価値感は「自分は誰のためにもなっていない」という感覚でもある

さて、この無価値感は「自分には価値がない」という感覚をもたらすものですが、では「何を目的で」「何を対象にして」自分には価値がないと感じているのだろうか、という部分に意識が向きにくいようです。

むしろ、強い不安や焦りを感じてしまうこと、それにどう対処するかばかりに意識が向いて、なかなか「なぜそう感じるの?」とは考えられなくなる場合も少なくないと僕は思うのです。

ただ、多く無価値感を感じて悩まれている方って、「自分は誰のためにもなっていない」とお感じになっている方が少なくないんですよ。

今の自分は職場のために何も貢献できていない。

今の私は彼のために何もいい影響を与えられていない。

私は夫や家族のためになにもできていない。

そんな感覚を感じている方が少なくないんです。そう感じている自分を責めているような状態、といった感じでしょうか。

それぐらい「役に立てない」「誰のためにもなれない」と感じることを嫌がっているし、ずっと苦しんでこられたのかもしれません。

今、何もできないとか、何も貢献できない自分でいることが苦しく、だから長い目で自分を見て信頼することが難しくなる。

それはまるで「私はまた役に立てない・誰のためにもなっていない」と感じているようなものですから、想像するだけで本当にしんどいと思うのですよ。

そんな感覚をずっと感じていれば、そりゃチャレンジもしたくなくなるでしょうし、自分のことを肯定的に捉えることも難しくなると思うのです。

ただ、これ、逆に言えば「役に立ちたい」という気持ちがあるってことなんです。

ちゃんと「人のために何かを与えることの価値」を知っている、ということにもなりそうです。

だから、少し深呼吸して、冷静になって、「自分をどう見つめ、どんな行動をしていくか」をお考えになる方がいいと思うんです。

多くの方が「何もしたくない」と感じているわけではないからです。むしろ「役に立てないかも」と不安を感じるから、何もしないほうがリスクがないと感じているだけなのです。

そして、何もしないと何も変わらないということをご理解されている方も、たくさんいらっしゃって、だから焦るのだと思うのです。

今の自分にできることを意識して行動しましょう

そんなときは「焦ってすぐに役に立つ自分になること」を目指すのではなく、「ちゃんと誰かのためにいい影響を与えられる自分に成長すること」を考えてみたり、「今の自分にできることを受け容れること」を意識してみるといいと思います。

言い換えるならば「自分には貢献できることがある」「与えられるものがある」と感じ取れるかどうか、です。

できないことに意識を向けつづけるのではなく、今の自分にできることを大切にできるかどうか。

もちろん無価値感は「自分には価値がない」という感覚をもたらすので、今の自分にできることがあったとしても「価値がない」と感じやすくなってしまいます。

が、ここでそのような見方を続けると、更に不安と焦りが強まってしまうし、どこか手詰まり感ばかり感じることになるでしょう。

 

ここではネガティブに考える部分と、ポジティブに考える部分との両面をバランスよく持つことが大切なんですよね。

確かに今すぐ無価値感を手放すことは難しいこともあるでしょう。実際にカウンセリングでも扱わせていただくのですが、やはり感じ方の変化をもたらすにはそれなりに時間がかかる場合があります。

実は、ネガティヴな物事の見方をしていると、どんなことでも時間がかかるものなんです。いい意味で言えば慎重、ミスが少ないということなのですが、今の自分にできないこと・感じ取れないことを理解できるようになるには、それなりの時間が必要になることが少なくないんです。

逆に、ポジティブな物事の見方をしている部分は、それなりのスピード感が出てきます。悪い意味で言えば熟考しないということになるのですが、今の自分にできることを認めて表現していくことで、それなりの変化や自信を感じやすくなるのです。

つまり、「自分にはできる」と感じられるものが多いほど、スピード感は出る。しかし、そこで自分を過小評価するとスピードが遅くなる。また自分を過信しすぎてしまうとミスが多くなる、ということでもあるんですよね。

どちらにもいい面とそうでは内面があるので、このバランスを取ることが大切なんですね。

だから、つい「自分には価値がないのでは」と感じやすいならば、まず「今の自分にできること」はちゃんとお認めになる方がいいでしょう。それがたとえ些細なことであっても、ちゃんと価値があると意識して認めることです。

それが「嫌だ」とか「抵抗感を感じる」なら、それは無価値感というより罪悪感の影響を考えてみましょう。

そもそも根っこに「私は誰の役にも立てていない」という強い思い込み(罪悪感)があれば、自分を認めることが苦しくなってしまうのです。誰かの役に立ちたいという気持ちがあったからこそ、それができない自分を強く否定してしまうし、許せなくなるのです。

ただ、ここで自分を責めたり罰しても、誰の役にも立てないし、自分自身が苦しい思いをするんだな、と考えてみてください。ここはちょっとしんどい部分ですが、必要ならば誰か信頼できる人のサポートを得ながらでも、自分を認める方向で前に進んでみてください。

今、できないことがあってもいいんです。むしろ、できないことはありますし、なくなりません。

だから、まず今できることを認めて、ある程度のスピード感をもって表現していくことです。

挨拶ができる、人のために仕事を手伝うことができる、相手のためになにかできることはあるでしょう。

ここを表現するかどうか、なんです。ここがある程度表現できてくると、不安や焦りも弱まる可能性があります。

ただ、一つ注意点があって、無価値感が強くなるとどうしても「自分の気持ちが伝わりにくい人」から攻略しようとしてしまう人が少なくありません(^^;

例えば、今揉めている彼や夫、とか、苦手な姑、職場の上司などがその典型例です。

もちろんそういった人達と関わっていくことは大切なことなのですが、いきなり高い山を登らなくてもいいじゃないか〜が、僕の本音です。

ちゃんと自分を受け止めてくれる人、理解してくれる人、もしくは「この人だったら分かってくれそう」と感じる人から先に表現するんです。そしてそれを習慣づけていくことです。

諦めずに、コツコツと「相手のために貢献できる・喜ばせることができる」という経験を積むことがとても大切です。

そもそも無価値感、罪悪感というものは「自分自身が誰かの役に立つ・喜びになる」ということができない自分を罰するような感情です。

だから、今、自分にできることを使っていくことも大切なことですよ。そして僕たちカウンセラーは、そんなみなさんのお気持ちを受け止めたり癒やしながら、「ここ、こうすれば行けるんじゃないっすか」なんて作戦会議をする相棒みたいな存在なのだろうなーと僕は思っています。

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