すれ違う夫婦の心理

こんなに受け入れているのに、なぜ彼は心を許してくれないのか? 〜愛しているのに距離ができる心理〜

すれ違う男女の図

「私のこと、信頼してくれてるんだよね?」

恋愛や夫婦関係の中で、

「私はここまで受け入れているのに、なぜ彼は心を許してくれないの?」

と感じたことはありませんか。

彼のことは好き。

優しくしているし、支えたいと思っている。

しかし、パートナーが

  • 気持ちを打ち明けてはくれない
  • 弱音を見せてくれない
  • なんとなく他人行儀な距離を感じる

そんなとき、「私じゃダメなのかな」「何が足りないんだろう」と

自分を責めたくなることさえあるかもしれません。

でも、それは「あなたの思いや愛が足りないから」ではないことも少なくないのです。

この“心を許してくれない彼”の背景には、繊細な防衛と不安の構造が隠れています。


彼が心を許せないのは、「必要とされたいけど、怖い」から

一見すると、「彼が心を閉ざしている」「距離を取っている」ように見えるかもしれません。

しかし実際には、彼の中にも「本当は必要とされたい」「信頼されたい」という思いがあるんです。

ただ――その願いを確かめるのが怖い。

もし「あなたなんていなくても平気」と言われたら、

自分の存在そのものが揺らいでしまう気がする。

だから、彼は先に心を閉じる。

これが男性に多い“防衛的な反応”です。


実は、彼と同じ不安を女性も抱えている

「本当は支えになりたい」
「私が彼の安心の場所になりたい」

そう願う女性ほど、

「それを重いと思われたらどうしよう」
「必要とされなかったらどうしよう」

という怖れを抱えています。

つまり、お互いが“必要としてほしい”と思いながらも、確かめるのが怖い。

この“怖れでつながっている関係”は、想像以上に多いんです。

一見、平和で安定して見えるけれど、

その裏には「信頼したいのにできない」「愛したいのに踏み込めない」という

静かな緊張が流れています。


「心を許さない関係」は意外と“居心地がいい”

このような関係って、衝突が少なく一見穏やかに見える傾向があるんです。

お互いが相手の不安をなんとなく理解し合えるから、ケンカにもならず、同じ空気を共有できる。

そこには”それなり”の居心地の良さがあるんですよ。

でも、しばらくするとこんな感覚が出てきます。

  • 一緒にいるのに、なんとなく寂しい
  • 話していても、どこか熱がない
  • もっと近づきたいのに、踏み込めない

ここで多くの場合、女性が先に動きます。

「私のほうから寄り添えば、彼の心も開くはず」

「私が動けば、関係は変わるかもしれない」

その思いは誠実で素晴らしい。

でも、ここに一つだけ落とし穴があります。


「踏み込む愛」が、彼の安心を壊すこともある

女性が踏み込むとき、そこには「怖さを超えようとする力」が働きます。

「怖いけど動けば変わるはず」という希望のエネルギーですね。

けれど、それが強すぎると、

彼は“自分が安心できていた距離”を一瞬で見失うんです。

「彼女の愛に応えられないかもしれない」

「ちゃんと受け止められる自信がない」

そう感じた瞬間、男性は無意識に距離を取ります。

音信不通、LINEの返事が遅い、会話が減る……。

それは「あなたを嫌いになったから」ではなく、

**「怖くて、どうしていいかわからなくなった」**という状態なんです。


愛で押すより、“理解で支える”

では、どうすればいい?という話なんですけどね、

まず大切なのは、「彼の不安やあなたに見せる態度を変えようとしないこと」。

そして、「彼の不安を見抜ける目を育てること」です。

なぜなら、彼の防衛を変えようとすればするほど、

「また心を閉ざさなきゃ」と彼は感じるからです。

一方で、あなた自身の中にある

「本当に愛されてるの?」「必要とされてるの?」という不安にも目を向けること。

この不安を感じないようにと“行動で埋めようとする”のが、

心理学でいう補償行為。

しかしそれは、自分の価値を見失う原因にもなります。


「彼が心を許してくれない=私じゃダメ」ではない

そんな等式が成立するなら、この世は地獄です。

お互いを尊重できる関係こそ、人間の成熟が感じられる関係。

一時的に相手の依存を引き受けることはあっても、

「求められない=価値がない」なんてことはあり得ません。

むしろ、多くの大人は「心を許したいけど、怖い」と感じているだけ。

その“怖れ”を見て、理解しようとするまなざしこそ、関係を育てる力です。


心の距離を縮める第一歩

あなたの中にある

「愛されたいのに怖い」「必要とされたいけど不安」

という気持ち、否定せず、静かに見つめてください。

不思議なことに、人は感情を受け入れると、影響力が弱まります。

そのとき初めて、“試さなくても信じられる関係”が生まれます。

彼を動かすのは、あなたの「我慢」でも「頑張り」でもありません。

安心しているあなたの姿こそが、

彼にとって“心を許しても大丈夫かもしれない”というサインになるのです。


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最後に

この「心を許してくれない関係」は、僕のカウンセリングでも扱う機会が多いテーマのひとつです。

「彼が何を怖がっているのか」
「自分の中のどんな不安が愛を止めているのか」

この2つの視点が整うと、関係は驚くほど静かに、でも確実に変わっていきます。

もし今、「彼と向き合いたいけど、どうしていいかわからない」という場所にいるなら、焦らなくて大丈夫です。

あなたの中に“安心感”が戻ったとき、関係は自然に深まっていきます。

そのためにあなた自身が今、何をしてみようと思うか。

自分を整えてみようと思うのか。それとも、彼のことをもっと理解したいと思うのか。

どちらもカウンセリングでサポートさせていただけることではありますけどね。

まずは一歩前に踏み出してみるのもいいんじゃないでしょうか?

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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