恋愛と男性心理

彼と距離が縮まらないのはなぜ? 男が心に抱える“空白”の正体と、近づくための心理学

男性の写真

どれだけ一緒に過ごしても、どこか“距離”を感じる。

笑い合えるのに、心の奥までは届かない気がする。

恋愛や夫婦関係でこうした“見えない壁”を感じるとき、多くの女性は「私の愛し方が足りないのかも」と自分を責めがちです。

だからこそ「今、彼はどんな心理状態なのでしょうか?」というご質問が飛んでくるのだろうとも思います。

ただ、心理学的に見れば、これは「彼が抱える心の空白」に関係している場合が少なくないのですよね。

ん?心の空白?なにそれ?って思いました?

そうですよね(笑)

ただまぁ、この”心の空白”という曖昧な言葉でさえ、心理学的な見解を示すことができます。

そして、この心の空白を理解できると、関係はよりグッと深まっていくということも実際にはありえます。

この記事では、その“空白”の正体と、そこに踏み込みすぎずに理解する方法を解説します。


男の中にある、誰にも触れさせない「心の空白」

男性には、心の奥底に“誰にも触れさせない領域”を持っていることがあります。

表面的には社交的、協調的であっても、その内面に誰にも触れさせない聖域のようなものを持っている、といいますか。

もちろん女性の皆さんがお持ちの場合もあるのですけど。

それは過去の失恋やトラウマ、隠しておきたい過去などとは少し違う、もっと静かで、もっと深い“心の空席”のようなものです。

イメージとしては”心のなかに誰も座っていない席が存在する”みたいな感じ。

その空席自分が座ることもないわけではないのでしょうが、実はどこかで”自分を理解してくれる誰か”のために開けている席、のようなものなんです。

いつか、その席に座ることができる人と出会いたい。そう願っているような、しかし諦めているような、そんな感じなんですけどね。

もう少し簡単に表現するとしたら・・・

男の心には、「誰にも触れられたくない場所」があって、恋人でも家族でも、そこだけは入れない。

そこには、昔の痛みや失敗じゃなく、“自分でありたい気持ち”が眠っている、というか。

だから、そこに無理やり踏み込まれると、彼は壊れそうになる。

それが“心の空白”の正体でもあるんですよね。

”心の空白”を心理学て見つめると・・・

これ、あえて心理学でいえば、これは自己同一性(アイデンティティ)を守るための防衛領域と言えそうです。

ただ、その空白を誰かに愛されることなんておそらく望んでいないのです。

「自分であり続けたい」という無意識の欲求が働く場所といいますかね。

その空席は、かつて信じた「自分の理想」や「守りたかった何か」をしまっておく“心の金庫”のようなものなんです。

そのため、どれほど愛してくれる女性であっても、そこに踏み込まれると「自分が壊れてしまう」と感じやすいのです。

だから、彼は笑顔の裏でその“空白”を静かに守るのです。

とかく年令を重ね、社会的責任や立場を背負う人ほど、この空席の存在はより明確に感じることになるんだと思うんですけどね。

ただ、この空席は、目の前に愛すべきパートナーがいたとしても、よほどのことがないと見せようとはしない、といいますか。

これが漠然とした、感覚的な”差し出した愛情への拒絶”のように感じられることもあるのだと思いますよ、女性のみなさんにとってはね。

ナルシシズムではなく、“いい意味でのプライド(誇り)”

この防衛を「自己愛の強さ(ナルシシズム)」だと誤解する人も多いですが、実際は少し違うバア医もあると僕は思いますよ。

それこそ「誇り」や「尊厳」の層。

多くの男性は、自分の無力さや弱さを認めるよりも、“自分はこうありたい”という理想を守ることで心の均衡を保っていることがありますからね。

だから、女性の愛がどれほど深くても、その誇りに触れるような言葉や態度を取られると、無意識に防衛が起こるんです。

「愛されたい」よりも「ただ、何も言わず理解されたい」

それが男性の深層心理にある、静かで穏やかなニーズなのかもしれません。


愛が深まると、包みすぎてしまう女性たちへ

一方、女性側にもこの“空白”を見つけたとき、引き起こしやすい心理パターンも存在しますよ。

それは「彼を愛するために、自分を差し出しすぎてしまう」というパターンです。

「相手を支えることが、私の愛の証明」

「彼を幸せにできれば、私は価値のある人」

そう感じる優しさの深い女性ほど、相手を包みすぎてしまう。

もちろんその相手を包む思い自体は素晴らしいものです。

が、いつしか、“支えたい思い”が“支えなければならない思い”に変わってしまう。

そして、自分を差し出しすぎると、男性が与えるよりも”依存”で応えるようになることもありますしね。

ただ、この男性が見せる依存は本質的に満たしたい依存なのではなく、表面的な依存であることが少なくないです。

つまり、別に女性に依存しなくても生きていけるレベルの依存を見せているだけに過ぎない、という場合も少なくない。

ただ、心の空白に触れられると、男性もそう入っていられなくなります。

どこか「自分を保てなくなる不安」から、さらに空白を閉ざしてしまうのです。

つまり、どこか愛が深い女性ほど、男性の心のそこはかとない空白を埋めようとする。

しかし、それを埋めることがかなり難しいと感じてしまう。

ときには、思いが伝わらなくて苦しくなる。

でもその男性が持つ心の空白は、埋めるためのものではなく、尊重するものだとしたら・・・。

その視点に切り替えることができると、関係を壊さずに済むこともありますよ。


“支える側”にいる限り、空白には近づけない

多くの女性が「彼を支えたい」と願います。

その気持ちは本当に尊いものです。

けれど、“支える”という思いそのものが、男性が抱える”心の空白”をさらに遠ざけてしまうことがあります。

なぜなら、それは「対等な関係」でしか見せられない領域だからです。

たとえば、女性に支えられる側に立つ男性であれば、無意識に「壊れてはいけない」「強くあらねば」と自分を律します。

その結果、支えられながらも孤独になっていく。

そして彼がその孤独に気づいた瞬間、

「この関係に、もう意味を感じないかもしれない」と考え始める。

逆に、男性が“支える側”に固定されたまま空白を抱えていると、その関係は“役割”にはなっても、“親密さ”にはなりにくいのです。

もちろん、「彼女の思うようにさせてあげたい」と心から願う男性もいます。

けれど多くの男性にとって、気づいてほしい何かを抱えながら、ずっとそばにいる女性を支える意識ばかり持ち続けることで、さらに”心の空白”が際立つこともあるのですよ。

そうなってしまった、愛ある男性ほど、明確な理由は理解できないまま、再び心の扉を静かに閉ざしてしまうようになるでしょう。


“愛される”より、“理解される”関係へ

恋愛はしばしば「愛されるかどうか」で揺れます。

けれど、成熟した関係は「理解し合えるかどうか」で決まります。

そこには、いわゆるギバーだ、テイカーだという二元論はありません。

そもそもどんな人にもギバーの要素があり、テイカーの要素があるものですしね。

そういった要素をまるっと包括したうえでの「理解」と「尊重」が求められている、といいますかね。

だから、無理に彼の心の空白を埋めようとしない方が良いケースも多いのです。

ただ、「そこにそういう世界があるんだな」と理解すること。

これって僕達カウンセラーのまなざしと似ているんですけどね・・・。

そのまなざしこそが、彼の心に安心を与えます。

“愛される”より、“理解される”。

それが、男性が最も深いところで求めている関係の形なのかもしれません。


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まとめ

「彼と距離が縮まらない」と感じるとき、

それはあなたの愛が足りないからでも、彼の心が冷めたからでもないというケース、結構多いですよ。

そうではなく、“心の空白”という、誰の中にもある構造が関係していることがある。

特にお互いが大人であればあるほど、そうなりやすいです。

そして、この空白は、支えよう、触れよう、理解しようとすればするほど相手が遠ざかるという性質がある。

けれど、尊重しながら見つめていれば、少しずつ光が差して溶けていく。

ここでの”愛”とは、相手の内側に踏み込むことではなく、踏み込まなくてもお互いが共にいられる安心をつくることなのかもしれません。

そのとき、ふたりの距離は静かに、でも確実に近づいていくのでしょうね。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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