恋愛の心理学

愛し合う勇気

愛し合うには勇気が必要

多くの方が「大切な人と愛し合いたい」と願っておられると思うのです。

しかし、人の心というものは不思議で、愛し合いたいと願っていた人と疎遠になったり、うまく関われなくなったり、こちらから近づくことができなくなることが起こります。

いわゆる愛憎〜愛していたからこそ憎い〜という話は、「恋愛感情はプラスとマイナスでできているし、傷ついたときについ被害者意識を持つと相手が憎く感じますよ」という解説が妥当かなと思うのです。

ただ、相手への憎しみがあるわけじゃないのに、愛し合うことができない、というケースもたくさん存在します。

どこかうまく愛し合うことができないから、友達夫婦化したり、かりそめの平和の中で過ごしていたり、仲はいいけどセックスレス状態になっていたり。

そんな停滞した関係性から、問題が生じることも少なくないんです。

最も一般的な問題は浮気と別れです。二人が愛し合うのではなく、ただ一緒にいる時間を長く過ごした結果、パートナーの浮気が発覚したり、自分が浮気をする側に回ったり。

もうこのまま一緒にいてもつまらないな、と思うから別れを切り出してみたり、切り出されたり。

もちろんその他にも、病気、燃え尽き、無感覚・無感動など、さまざまな気持ちの面での症状が出てくることがあります。

このような問題の心理的背景には「愛し合うことができずにいた」というものが存在することが多いのです。

二人の心が繋がれていなかったから問題が起きた、ということです。

 

愛し合う関係と愛し合っていない関係

では、愛し合う関係と、そうではない関係の違いとはどこにあるのでしょうか。

一つ事例を上げましょう。

Aさんカップルは、お互いに仕事を持ち、お互いに毎日忙しく仕事にいそしむ二人。Aさんたちは、二人の時間をとても大切にしていて、忙しい中で会う時間、連絡を取る時間を大切にしていました。お互いの話を聞くだけでなく、相手への気持ちを素直に伝えあい、いつも親密な感覚を感じられる関係を持っていました。

Bさんカップルは、お互いに仕事を持ち、お互いに忙しく仕事をこなしていました。Bさんたちはとても気遣いができる人たちなので、相手が忙しいときはそっとしておこうと考えました。お互いに一人の時間も大切だと考えた上での決断でした。だから、会う機会も月に何度か程度におさえ、その時間が来ることを楽しみにする毎日です。普段もそんなに連絡を頻繁にすることはありませんでした。

この2つのカップルの話、どちらがいい悪いという話ではありません。きっとどちらも幸せな感覚を感じるはずです。

ただ、どちらが「より愛し合えている関係なのか」と僕なりに考えるなら、やはりAさんカップルになるでしょう。もちろんBさんカップルに愛がないとは全く思いません。が、愛し合えているか、と聞かれれば、断然Aさんカップル、となります。

 

では、愛し合うとは「いかに二人でいる時間を過ごすか」ということなの?と思われるかもしれませんね。

いいえ、僕の考えではそうではありません。

二人でいる時間が短くとも愛し合えているカップルは存在します。遠距離出会いを育み幸せになっているカップルも、お互いが忙しくしながら幸せに過ごされているカップルも僕は知っています。

ここでの「愛し合う」ことの意味とは「自分の弱い部分も素直な気持ちも伝えられている」ということなんです。

 

弱さを隠すことは自然だか、弱さを隠しつづければ相手の愛をはねのけてしまう

例えばこんなケース。

彼女は気遣いができる穏やかな方で、周囲からもいい評判が立つようなタイプ。それをちょっぴりプレッシャーにしてしまうタイプでもありましたが、それもいい緊張感として仕事に打ち込み、職場でも信頼されておられました。

彼女のキャリアはある意味順風満帆で、プライベートでは彼がいて、彼も誠実でとても自分を大切にしてくれる人。だから「あとは結婚、かな」と彼女も考えていらっしゃったわけです。

が、ここで青天の霹靂。彼が「別れたい」と言い始めたというわけです。

その彼は彼女に言います。

「君と一緒にいても先が見えないというか、今の関係は続けられないから、別れたい。」

彼女はパニックになります。どうして彼がそんな話をするようになったのか、その事情が見えないからです。

さらに彼はこう続けます。

「きっと君にはいい人ができるはずだから。君には幸せになってほしいと思ってる。」

彼女はその言葉を聞いて更に混乱し、意味が分からなくなります。

だったらこれからも一緒に、と彼女は彼の気持ちを引き止めますが、彼の反応は変わらず。

嫌いになったの?と彼女が聞くと、彼はそうじゃない、と答える。

「何が問題なの?」と彼に聞くと、彼はとても重要な言葉を彼女に話します。

「本当は「他に好きな人ができた」とか嘘でもいいから言えば、辛いけどすんなり別れられたのかもしれない。でも実際にそんな人はいないし、君には嘘をつきたくないと思った。

でも、一緒にいても楽しめないし、好きとか、嬉しいと思えなくなった。きっとこれは僕の問題だ。だから、もう今の関係は続けられない。いつ言おうかずっと迷っていたけど、今日はちゃんと伝えようと思って。勝手な話でごめん。」

それからの彼女はすがっちゃいけないと思いながらも、彼との関係に執着し、やり直したいと思うばかり。なんとか彼とやり直す方法はないか、といろいろ探した、というわけです。

このお話を僕なりに解釈するならば、これはいわゆる「愛が宙に浮いたような関係」なのです。

彼も彼女も愛情を与えられる人。相手のことを大切に思える人。

だからこそ、愛が宙に浮いた。そしてさまよった。

この状態、二人の関係にに耐えきれなくなったほうが別れを考え始める、というケースそのものではないか、と思うのです。

 

僕たちには自尊感情〜自分は誰かの喜びである〜を感じたいと思っています。

特に、愛する人、好きになった人の喜びになりたい、と思うものですよね。きっと皆さんも同じでしょう。

しかし、自分から愛しても相手の喜びになれていないと感じたとしたら、それはただの苦痛でしかない、というわけです。

だから、与えられた愛にはちゃんと反応する、ということが求められる、というわけです。

受け取る、感謝する、相手の愛や思いに委ねることが求められるのですね。

 

しかし、普段から自立的に生きている方、愛することにこだわる方、自分からの作為にこだわる方ほど、自分の弱さを隠し、受け取らないことが増えます。

自分のことは自分で、という考え方が逆効果となっているイメージですね。

例えば、パートナーに「いつもありがとう」と感謝もするけれど、言葉だけじゃダメではないですが、どこか挨拶・礼儀といった意味合いが強く、自分の気持ちが動いていないわけです。

だから、与えた側、相手も感動しないし、嬉しいって思えない。

今回の事例は、きっとそんな時間が長く積み重なったんでしょう。

もし僕がこのようなご相談を受けたら、このようにお伝えしますかね。(実際の提案は省略しますけど。)

「彼を追いかけたい気持ちは分かりますよ。ただ、今は少し気分を落ち着けるようにしておきましょう。そのためにできることを今しましょう。

今、彼を強く求めても彼は困るだけでしょう。今のままでは近づけないですよ。

そもそも彼はずっとあなたの気持ちを求めていたのでしょうから。

ただ、彼の話しぶりを見れば、彼があなたのことを嫌いになって別れたわけではないようです。しかし、彼はあなたという好きな人との間で辛い気持ちを感じたから、別れたいと言っている。

今の彼は「僕の気持ちを分かってくれ」といっているようなものです。それは彼にとっての最大の弱さであり、彼が誰にも見せない自分そのものではないでしょうか。

そして彼は弱い自分を見せるかわりに、自分からあなたの前から去ろうと考えた。

だとしたら、僕はお二人はそっくりだなぁ、と見つめますよ。

お互いに、自分の弱さは最後の最後まで見せない。

社会性が必要な環境と同様の態度で恋愛していたんでしょうか?

だとしたら、どちらかに限界が来ても不思議ではないですよね。

彼はあなたを喜ばせたり、緩めたり、笑顔にしたかったのでしょう。そしてきっとあなたも同じ気持ちのはず。

だから、あなたが今のまま、ショックを抱えて傷ついたまま相手とは関われないですよね。傷ついたあなたを見ればきっと彼の気持ちは遠ざかる。今の彼は加害者でしかないですからね。

でも、僕もサポートしますから、あなたのその心の痛みを癒やし、ちゃんと相手の気持と向き合うことができたなら、彼と話し合うことができるかもしれません。

その可能性にかけてみたいと思うなら、こう考えてみてください。

あなたは彼の気持ちをどれだけ理解できていましたか?きっと好きでいてくれるはず、と思っていなかったでしょうか。

もちろん悪意なんてないはずですが、しかし少し思い出してみてほしいんです。

どんな物事でも同じですが「今のままでいい」「これでいい」と思っていると、相手の気持ちを見逃し、相手の愛情やヘルプメッセージをスルーし続けるものです。

それこそ、彼が苦しんだ気持ちの向こうにある、「あなたを喜ばせたい」という気持ちだったのではないでしょうか。

もちろんあなたが受け取れなかったにも事情があり、しょうがない話、とも言えるんです。だから自分を責める必要はありません。

ただ、そういう意味では、あなたもまた彼にとって悪意のない加害者、といえます。

辛い話かもしれません。けれど、ここを受け止めないと次には進めないんです。

つまり、あなたは彼に愛されていたんです。彼の愛に包まれていた。でも、それをあなたが拒んだ。気づかないうちに拒んだ。二人が愛し合うことを拒んだ。

彼はそのことを言わずに去ろうとしているようなものです。彼もあなたの前で弱い自分を見せられなかったのです。

その気持ち、分かってあげようって思ってくださいますか?

そしてあなたももっと素直な自分、弱い自分、見せてよかったのかもしれませんね。彼はいつも手を広げて待っていてくれたのではないでしょうか。

でも今は、あなたの弱さを差し出しても彼の気持ちは取り戻せないでしょう。

今できることは、あなたが今の彼を理解し、受け入れること。彼がどんな気持ちで「未だ好きなあなた」に別れを告げたか想像してみてください。

その上で、素直な気持ちを伝え、彼に感謝し、彼の弱さをまるっと受け入れてあげる側に回ることです。

その辛さが理解できたなら、きっともう一度話し合えるかもしれませんよ。」

 

愛し合うことは弱さを見せる勇気である

僕たちの世界にこんな格言があります。

「万策尽き、力を使い果たし、もう与えられるものがなにもないと感じたとき、唯一差し出せるものがある。それが何もできない弱い自分である。」

これを僕は「本当に相手を愛し、信頼できているなら、相手の前にひざまずくことだってできるはず」と表現します。

愛し合うとは、相手の弱さを自分の強さで包み、自分の弱さを相手に捧げること。

しかし、僕たちは自分の弱さをついつい隠してしまうものではないでしょうか。

ただ、逆の立場になって考えてみれば、相手の弱さを知ることすら許されずにいると、その状況から逃げたくなるものです。

自分の目の前で頑張り戦い続け、燃え尽きていきそうなパートナー、親、子供、家族、仲間、などの姿を見ると、自分を責めてしまうものです。

どうして自分を頼ってくれないのだ、と言いたくなるものでしょう。

どうしてそんなに無理ばかりするのだ、と言いたくなるものでしょう。

それは相手の問題だと分かっていても、しかし葛藤することが少なくないのではないでしょうか。

その結果、もう相手の一緒にいられないと別れを切り出す人もいるわけです。

 

だから、僕はこう考えます。

「愛し合う」とは、勇気である。

相手の前で素直で弱い自分をさらけ出す勇気である。

自分の弱さを受け入れないで、自分だけ強くいようとすることが悪いとは言いません。

ただ、自分を愛する人がいる、と考えるなら、これは何を意味しているのかを考えてみてもいいのかもしれません。

そして、愛し合う勇気が持てたとき、きっとその関係は更に深い絆となっていくものなのです。

必要なのは、弱さに入り、受け入れる勇気。

この勇気こそ本当の勇気なのだと僕は思いますよ。

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