こんにちは。

心理カウンセラーの浅野寿和です。

「家族としては大事だけど、前みたいな気持ちには戻れない」

夫からそう言われた瞬間、
言葉の意味が頭に入らなかった、という方も少なくありません。

怒られたわけでも、拒絶されたわけでもない。

でも、何か大事なものが静かに切り離されたような感覚。

「じゃあ、私はどうしたらいいの?」
「まだ一緒にいたいと思っている私は、重いのかな」

感情が追いつかないまま、日常だけがいつも通り続いていく。

洗濯物を干しながら、夕飯を作りながら、
「さっきの言葉」の意味だけが、あとから何度も胸に戻ってくる。

今日は、そんな“立ち尽くしてしまった場所”から、

このテーマを一緒に整理していきたいと思います。

今回は、僕のブログにお寄せいただいたご質問を元に、

夫の心理を整理しながら、

妻としてどう受け止めていけばいいのかを心理学の視点で解説します。

いただいたご質問はこちら

浅野さんへ質問です。

カウンセリングでお世話になっています。
ブログネタになれば、そして自己理解の助けがほしく質問しました。

1年前、単身赴任の夫と喧嘩以降距離をとられていましたが、
先日話をする機会がありました。

夫は私の言動に対して、
自分の頑張りや努力を否定されたとずっとわだかまりがあるのだと話してくれました。
自分の解釈なのかもしれないけど、と付け加えて。

そして、
「自分は社交的でもないし、人間関係は上手くもない、だから根に持ってしまう」
「家族としては大事だけど前みたいな気持ちには戻れない」
「一緒にいるのがいいか分からないし苦しい」

とも言われました。

そして、
「そんな自分と一緒にいたいと思うのか?」と聞かれたのです。

その後の自分の気持ちなのですが、
わだかまりは彼の問題で私にはどうにもできない。
謝罪はしたので、あとは待つしかない。

それから、
「どんな彼も愛したい、受け入れたい、そんな自分になりたい」
という気持ちも出てきました。

でも、まるで女神かマリア様にでもなりたいと思っているような感覚のような気もして。
与えたい忍耐女子に拍車がかかっているのか?と思ったり。

質問は、
夫の発言の私の翻訳は適切か?
そして、私の今の覚悟は客観的にどう見えるか?です。

ネタ募集ネーム:AIさん


本当に苦しいのは、「夫の心理がわからないこと」だけではないのかもしれません

こういう場面で、まず知りたくなるのは夫の心理だと思います。

なぜそんなことを言うのか。

本当はまだ気持ちはあるのか。

それとも、もう戻らないという意味なのか。

もちろん、その整理は大切です。

ただ、このご相談を読んでいて僕が強く感じたのは、奥さまの側にも、かなり大きな揺れが起きているということなんです。

たとえば、

  • まだ一緒にいたいと思っている自分
  • でも、相手の苦しさも分かろうとしている自分
  • 謝ったのだから待つしかない、と思う自分
  • それでも「どんな彼も愛したい」と願ってしまう自分
  • けれど、その願いに少し危うさも感じている自分

このあたりが、全部同時にあるように見えるんですよね。

だから苦しい。

そして、苦しいのに、すぐに手放すこともできない。

ここは、確かにしんどい場所だと思います。


夫が「気持ちが戻らない」と言うときの心理

ではここから、夫側に何が起きているように見えるのかを、少し整理してみます。

断定はできませんが、今回の言葉は「関係を壊したい」というより、「今の自分では支えきれない」という苦しさに近いのかもしれません。

夫自身が自分の立ち位置を見失っているサインとして出てきることが多いんです。

ちょっと嫌な話かもしれませんが、本当にもう関係継続が無理だと思うときは「別れよう」と言うか、家から出ていく人も多いですから。

努力が認められなかったと感じている

夫が「気持ちが戻らない」と言うとき、

その背景には「自分の頑張りを分かってもらえなかった」という感覚があることが多いですね。

例えば、

仕事や家庭のために努力してきたのに、それが「当然」と受け取られていたように感じた。

その積み重ねが、「自分の存在は軽んじられている」という感覚を生みます。

もちろん、そんなことを口にするわけじゃないでしょうが、どこかで報われない思いを抱えているのかもしれません。

ただ、この報われない思い、奥さん側が夫の努力を適当に扱ったという事実があるなら、それが原因になるでしょうが、そうではない場合は、夫側の自己承認不足や自分の扱い方の問題である場合もありますね。

「役に立てない自分」に陥る無力感

多くの男性にとって、

役に立つこと=自分の価値になりやすい。

だからこそ、

「自分は妻を幸せにできない」
「夫としてダメだ」

そう感じた瞬間、心が一気に折れてしまうことがあります。

その結果、「もう前には戻れない」という言葉が出てくるんですね。

「気持ちが戻らない」の背景にある“無価値感”

また、今の夫の状態を作っている理由の一つに、無価値感の影響が考えられます。

ここで大切なのは、

パートナーや家族なんてどうでもいいというわけではない、という視点です。

むしろ、

「大事だからこそ、報われないのが辛い」

「今の自分では支えられない」

そんな思い込みから、距離を取ろうとすることも少なくないんですよ。

自分を責め続ける「自罰」の心理

「自分なんて価値がない」と感じる感覚を、心理学では「無価値感」と呼びます。

これはしばしば、自分で自分を罰する形で現れます。

「こんな自分が一緒にいると、相手を不幸にしてしまう」

そんな思考に、知らないうちに囚われてしまうのです。

愛情を受け取れない心の仕組み

実際には妻が愛していても、

「俺はそれに値しない」と思ってしまうと、愛を受け取れない。

結果として、与えられた愛情すら「負担」や「申し訳なさ」として処理してしまいます。

そんなとき、妻が「もっと愛さなきゃ」と頑張るほど、夫は「やっぱり自分は足りてない」と落ち込む場合もあります。

こうして、お互いに愛しているのに距離が広がるという悪循環が起こりやすくなるんですね。


今回は「今の自分では支えきれない」という告白に近いのかもしれません

断定まではできないのですが、今回のご相談文からうかがえる範囲で言うと、

「関係を切りたい」よりも、「今の自分ではこの関係を支えきれない」

という苦しさの方が前に出ているように見えます。

「自分は社交的でもないし、人間関係は上手くもない」
「根に持ってしまう」
「一緒にいるのがいいか分からないし苦しい」
「そんな自分と一緒にいたいと思うのか?」

こうした言葉の流れを見ると、奥さまを責めたいというより、自分自身のしんどさや不全感に飲まれているようにも読めるんですよね。

そして、その背景には、

「自分の頑張りや努力を分かってもらえなかった」

という感覚がかなり大きくあるのでしょう。

もちろん、夫の受け取り方の影響もあるのだと思います。

実際、ご本人も「自分の解釈かもしれない」と付け加えておられますしね。

ただ、人は一度「自分は軽んじられた」「分かってもらえなかった」と感じると、その痛みを起点に関係を見ることがあります。

すると、相手の愛情まで素直に受け取れなくなることがある。

「愛されていない」ではなく、

「愛されても、自分はそれを受け取る位置に立てない」

ということが起きるのです。

「どんな彼も愛したい」という気持ちは、きれいごととも言い切れないのだと思います

また、このご相談の中で、とても大事に感じたのが、

「どんな彼も愛したい、受け入れたい、そんな自分になりたい」

というところです。

これ、外から簡単に見ると、

「自己犠牲では」
「我慢しすぎでは」
「忍耐しすぎでは」

と言いたくなる人もいるかもしれません。

でも、そう単純な話ではないのでしょうね。

人は、本当に大事な相手が苦しんでいるように見えるとき、すぐに白黒をつけられないことがあります。

相手の言葉に傷ついている。
でも、相手の苦しさも感じてしまう。

離れたほうがいいのかもしれない。
でも、簡単に離れたくない。

そういう気持ちは、今の関係を大切にしている方ほど感じることだと思います。

ただ一方で、ご本人がすでに気づいておられるように、

「これは愛なのか、それとも“そうありたい自分”にしがみついているのか」

という問いも、ここには含まれているように見えるんですよね。

「女神かマリア様にでもなりたいみたい」という違和感は、たしかに放っておけない部分かもしれませんね。

それは、自分を良い形で保ちたいという意味ではなく、

自分のつらさや怒りや無力感を、きれいな“愛”に変換しないと持っていられない

ときにも出てくる感覚だからです。

妻側の愛し方が「背負い込み」にならないようにしたいですね

こういうとき、奥さま側はつい、

  • 待つべきか
  • 支えるべきか
  • 愛し続けるべきか
  • それとも少し引くべきか

と、正しい態度を決めたくなるものだと思います。

でも実際には、いま必要なのは、すぐに正しい関わり方を決めることよりも、

「自分はいま何を抱えているのか」

「彼の苦しさと、自分の苦しさを、どこかで一緒くたにしていないか」

を少し分けて見ていくことなのかもしれません。

夫の痛みを理解しようとすることは大切です。

でも、夫を理解することと、奥さま自身のつらさが消えることは同じではありません。

そこを一緒にしすぎると、

「どんな彼も愛したい」が、だんだん「私がこの関係を背負わないといけない」に変わっていくことがあるのです。

こうなりすぎると、夫側の無力感や無価値感はどんどん膨らんでしまいます。

これは、背負うことが悪いのではなく、背負うとそういった心理状態になりやすい、という意味ですね。


見直したいのは、「私は何を引き受け始めているか」なのかもしれません

今回のご質問は、

  • 夫の発言の翻訳は適切か
  • 私の今の覚悟は客観的にどう見えるか

というものでした。

で、僕の感覚では、翻訳そのものは大きく外れていないように見えます。

かなり丁寧に受け取っておられると思います。

ただ、覚悟については、

そのお気持ちの強さに感銘を受けつつ、素晴らしいですね、とだけお伝えすることは少し違う気もするんですよね。

なぜなら今の段階では、覚悟の中に

  • 愛したい気持ち
  • 見捨てたくない気持ち
  • 自分の痛みを引き受けたい気持ち
  • 関係を壊したくない気持ち
  • 理想の自分でいたい気持ち

が、かなり重なっているようにも見えるからです。

なので、ここで本当に見たいのは、

その覚悟の中に、あなたの不安を押し殺す気持ちが強くなってるのではないか、という部分。

自分をケアせずに愛そうとすると、夫が受け取れなくなってしまうので。


妻ができる具体的な関わり方

ここからは、奥さん側が「どの立ち位置に立って関わるか」という視点で整理してみます。

「気づけなかったこと」を一度だけ謝る

「あなたの気持ちに気づけなくてごめんね」と、

一度だけ、素直に伝えること。

繰り返す必要はありません。

むしろ謝罪を重ねすぎると、夫の無価値感を強めてしまいます。

前に戻すより「今の夫」を理解する

「前みたいに戻ってほしい」という気持ちは自然です。

ただ、それを押し出すほど、

夫は「応えられない自分」を突きつけられて苦しくなります。

「今のあなたを理解したい」

その立ち位置の方が、関係は動きやすくなります。

ただし、「私はあなたを理解したい」と強く押すのは避けましょう。

やればやるほど、夫側の無力感や無価値感を刺激しかねませんから。

大切なことは、まず、今の二人を受け止めることです。

お互い、傷つけたり、苦しめるつもりなどなかった。

でも、今の関係はそうなってしまった。

辛いことだけど、本意ではないけえど、今はそういった関係になっている。

・・・このように、焦って関係を変えようとするのではなく、今の関係をなかったことにせずに前に進めていくことです。

そう受け止めることで、あなたも夫も、その中でも一緒に時間を過ごしてきた事に気づけると思うんです。

そこではじめて「どうして二人は一緒にいようとしたのかが見えてくる」といいますかね。

その気持ちを確認せずに、こちらが背負えばいいと考えると、関係のバランスが壊れてしまいがちなんです。

「あなたがいてくれることに意味がある」と伝える

夫は「役に立っていない」と思い込んでいることが多いもの。

だからこそ、役割ではなく、存在そのものに意味があると伝えることが大切です。

とはいえ、夫側は素直に受け取らない事が多いはず。

それでも伝えることには意味があります。

注意点としては、相手が苦しそうなのに伝え続けることは避けることです。

関係改善の兆しが見えてくれば、相手から「俺のいる意味はあるの?」と聞いて来ることも少なくないです。

それまでは、一度伝えたらあなたの中できちんと信じて関わることをオススメします。


夫婦関係を修復するために大切なこと

自分の無価値感を手放すことも必要

奥さんの側から、「私が至らないから」と自分を責め続けると、関係はさらにこじれます。

「私も不安だけど、一緒に考えたい」

その立ち位置こそが、修復の第一歩になります。

ただ、奥さん側の気持ちが揺れることもあるでしょう。

その時の支えや感情を整える場は、持っておきましょう。

完璧に分かり合おうとしない勇気

「全部を理解しなきゃ」と思うほど、苦しくなります。

むしろ、

「分からない部分があってもいい」

そう思えたとき、お互いの心は少し楽になります。

小さなやり取りの積み重ねが信頼を戻す

大きな答えよりも、日常の小さな会話や行動の積み重ねが、気持ちを少しずつ近づけていきます。

夫婦関係の改善の中で、ドラマのように大きな答えが出ることは稀です。

なんとなく関係が戻り、なんとなく気を使わなくなっていくことが少なくないです。

だからこそ、奥さん側の気持ちが置いていかれやすい、という側面もあるのですけど・・・。

そんなときは、僕とじっくり対話でもしていただいて、今起きている状況を整理して腑に落とすことオススメします。

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まとめ

夫の言葉を丁寧に受け取ることは大切です。

ただ、その苦しさまで全部自分が引き受けようとしなくていいのだと思います。

「どんな彼も愛したい」という気持ちが悪いわけではありません。

でも、その願いの中に、愛だけでなく、見捨てたくなさや、自分を保ちたい思いが混ざることもあるのでしょうね。

だからこそ、今すぐ“正しい覚悟”を決めることより、

自分が何を引き受け始めているのかを見つめること。

そこから、夫婦関係をもう一度見直すことはできるのかもしれませんね。

今日は以上です。

何か参考にしていただけますと幸いです。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛・夫婦・仕事・生き方の中で、「ちゃんとやってきたはずなのに」そんな感覚を抱えやすい人のご相談を多くお受けしています。 個人セッションでは、個々のご相談を心理学の視点で整理して、明快に言葉にしていく個人セッション(カウンセリング)が人気。 キャリア17年・臨床実績10,000件/東京・名古屋・オンライン対応。リピーターさまが多いカウンセラー。口癖は「どんなことにも事情があるよね」。
夫婦のお悩みを、ひとりで抱え続けてきた方へ|夫婦カウンセリング

このサイトでは、

「人は裁かない。でも、構造はごまかさない。」

というコンセプトで、夫婦や家族の関係の中で揺れやすくなる“心”と今の関係を、心理学の視点から整理しています。

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