“空気を読む”は便利です。けれど、続けるほど自分が薄くなる。
相手を責めたいわけじゃない。むしろ好きだし、ちゃんと関係を大事にしたい。
そこで今日は、やさしさを残したまま「私」を守る伝え方について考えてみたいと思います。
Index
察しすぎるのは、優しさの裏返し。だから「伝えること」に意味がある。
いわばお察しさんや忍耐女子さんが、相手の気持ちを察して先回りして動くのは、怠け者だからでも“都合のいい人”だからでもありません。
そもそも都合のいい人とは、「相手にとって都合のいい人になるという形で、自分が傷つかないようにする」という意図があります。
まぁ、それも一つの生存戦略なんですけどね。
多くのお察しさん、忍耐女子さんの心の中には「相手を想う気持ち」が溢れています。
相手の負担を減らしたい、場を整えたい。
そんな思いや配慮の裏返しなんです。
ここを自分の中で疑ってしまったり、「私が傷つきたくないから察しすぎている・・・」と否定したりすると、余計に言えなくなってしまうんですね。
特に、黙ってしまうと、その場は静かでも関係の軸が少しずつズレます。
また、「私が気づく」「私が合わせる」が常態化すると、相手は“それが普通”だと学習し、対等さが薄れていくこともあります。
なので、どうしても「気持ちを伝えること」で「相手との境界線」が必要になってくる。
相手を遠ざける線ではなく、関係を保つ支柱として、ですね。
伝えられない“怖さ”の正体
「嫌われたらどうしよう」「面倒くさい人に見えるかも」
実はこの怖さの多くは、衝突への恐れと誤解される恐れだったりします。
また、家族関係などで「自分の気持ちを理解されない」という経験を積み重ねた人にとっては「伝えたって無理だよね」という諦めという防衛が先に入り込みます。
だからこそ、「伝わってほしい」という期待はあれど、失望をすることを怖れて何も言わない人も少なくないのです。
ただ、その沈黙もまた誤解を生むリスクがあるのですよ。
相手に
「何も言われない=満足している」
「何も言わない=これでいい、今に問題はない」
と受け取られたら、望んでいない形の安定が固まってしまうわけです。
事例:Cさん(仮名)のケース —「好きだからこそ、言えない」をほどく
※実在の個人を特定しないために構成を調整した架空ケースです。
Cさんは30代の女性。ご相談はこうでした。
「彼のことは好き。でも、このままだと関係を続けるのが難しい。どうしたらいいでしょう?」
お話を聴くかぎり、彼は悪い人ではありません。むしろ優しい。
ただ、Cさんの気持ちが彼に届いていない。そのための小さなズレが積み重なっていました。
それでもCさんは、自分の気持ちを言うことに強い抵抗がある、とおっしゃいます。
背景:伝えないのは“自己防衛としての優しさ”
Cさんは、子どもの頃から察するのが得意なタイプ。
家族や友人の空気を読み、「伝えると迷惑」という思い込みを育ててきました。
ほんとうは、伝えたいことがたくさんある。家族も友達も大切。でも、伝えて“届かなかったら”がこわい。
だからCさんにとって「伝えない」は、自分の真心を守る戦略でもあったのです。
セッションで扱ったこと(要点)
最初にお伝えしたのは、「伝えないことにも役割がある」という事実でした。
Cさんが言葉を飲み込んできたのは、不誠実だからではなく、自分の真心や関係の安定を守るための工夫だったはずだ、と。
ここを否定しないでスタートしましょう。
そうお伝えると、Cさんの肩の力が少し抜けました。
そこで二人で、「何を守ってきたのか」を丁寧に言葉にしていきます。
家族や友人を大切に思う気持ち。
できるだけ波風を立てたくない願い。
もし伝えて届かなかったら傷つくかもしれないという拒絶への怖さ。
Cさんはずっと“私の中にある好き”を守りたかった」のでしょう。
イメージを使ったセッションを用いて、彼女の中にある好きという気持ち、そしてそれを守り続けてきた自分自身を彼女に受け止めてもらいます。
*
その上で、Cさんの気持ちを短い言葉にして、“私”を主語に伝えやすい形で整えていきました。
「これなら言えそうです」
こうして生まれた短く・やさしく・具体的な言い方は、Cさんの境界線を冷たくするためではなく、関係を長持ちさせるためのツールなのです。
このツールを「やさしさを残したまま伝えるミニルール」としてまとめると、こんな感じなんです。
やさしさを残したまま伝えるミニルール
- 主語は“私”(アイ・メッセージ):相手を裁かず、自分の内側を差し出す。
- 事実 → 気持ち → 希望の順:説明ではなく短い地図を渡す。
- お願いは具体&期限:抽象は不安を増やし、具体は不安を減らす。
- 一度で通すより、軽く分けて:小さく投げて、小さく戻す感じ。
【使い方のコツ】
超重要なことは「相手の事情を理解しているサインを見せたり、相手がこちらを傷つける人という前提で話さない」ということ。
分からない相手に伝えようとするのではなく、相手はこちらのことを考えているという前提で話すって感じです。
この”こちらのマインドのあり方”は見えないけど、相手に伝わりますよ〜。
結果とその後
Cさんは「自分の気持ちを伝えても関係が壊れない」の小さな成功体験を得て、自分の気持ちを伝えられるようになっていきました。
その結果、察する時間、忍耐する時間が減り、彼との関係で切ない気持ちを抱える時間も減ったそうです
逆に言いたいことがわんさか出てきて、いらつく時間が増えたそうですが・・・(^^;
ま、そのイライラもそのうち落ち着きますよ、ちゃんとコミュニケーションしていればね。
こうして見えると、「伝えないこと」は悪なのではなく自分を守るツールだった、ということですね。
そのうえで“伝えたい”自分が顔を出したとき、使えるのが短く・やさしく・具体的な言い方です。
*
また、こんなこともお伝えしましたね。
それが「うまくいかなかったときのリペアフレーズ」です。
こう、「伝えることが苦手な人」ほど、気持ちの伝え方だけじゃなく、うまく伝わらなかったときのリペアフレーズがすぐ思いつかない人もいらっしゃるんですよね。
ま、どんな事も知っているかどうかで変わるってことなんですよ。
伝え方を知らないのに伝えられないように、リペア方法を知らないとうまく立ち回れない、といいますかね。
うまくいかなかった時のリペアフレーズ
-
言いすぎたかもと思ったら
「言い方が強かったね。責めたいわけじゃなくて、私はこうできると安心する、を伝えたかった。もう一回、短く言い直していい?」
-
相手が黙ったら
「急に受け取るの難しかったよね。いったん時間おこう。意図だけメモで送るね。落ち着いたら読んで。」
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まとめ:優しさは“使われるもの”じゃなく、“使いこなすもの”
「伝えない」は、自分を守る手段。
「伝える」は、ときに関係を長持ちさせる方法。
どちらを選択するかは、みなさんの状況次第なんでしょうね。
ただ、「察して動く」を続けない、手放すのであれば、今日、ひとつだけ試してみてください。
小さな成功が、あなたの「私らしさ」を静かに支えてくれます。
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