ほぼ30代からの”仕事に活かせる”心理学

「私じゃなくてもいい気がして、疲れてしまう」 〜それは仕事だけの問題じゃないかもしれません〜

目を隠す女性

こんにちは、心理カウンセラーの浅野寿和です。

毎週月曜は「仕事と生きづらさ」をテーマにコラムを書いています。

それでは今日のコラムはこちら。

「今の仕事、別に嫌いじゃないんです」

「でも、なんとなく…私じゃなくてもいい気がして」

そんな言葉を、カウンセリングの中で伺うことがあります。

ただ、実際には仕事の悩みそのものとして語られるケースは少ないんです。

むしろ、

  • 長く続く生きづらさ
  • パートナーとの関係の不和
  • 気持ちの浮き沈みや、慢性的な疲れ
  • やる気はあるけど、ふとむなしくなる

といったお話の中に、

ふと、副作用のように出てくる言葉なんですよね。

以前に、「仕事は好きだけど私じゃなくていい気がする」というテーマでコラムを書きましたけど、今日はその話を別視点で眺めてみたいと思います。

「私じゃなくてもいい気がする」…その原因は、本当に「仕事」ですか?

このような「私じゃなくてもいい気がする」という感覚を感じ始めるには、明確なきっかけがあることもあります。

例えば、

  • 職場の上司が変わった
  • 業務の進め方が合わない
  • 職場の方針の変化にモヤモヤする、など

職場環境の変化はストレス要因の一つですし、今までのように仕事をする環境ではなくなったと感じると、文句の一つも言いたくなるかもしれません。

まぁ、変化に柔軟に対応できればそれに越したことはないのでしょうが、それもまた一つの枠のような気もしないでもないですよ。

「変化に柔軟な人間であれ」という枠は間違っていないのでしょうが、「その枠で今の自分を否定する」という構図になることのほうが厄介、といいますかね。

あと、「以前の職場の状況と変わっていないのに、最近やけにこたえる」という方もいます。

この場合は、健康上の問題を見つめたほうがいい場合もあるので、一概に心理的な要因だけで語ることができないものだと僕は思っています。

ただ、健康上の問題ではないのに疲れを感じている、というケースであれば

そこには“心のリソース”の摩耗があるかもしれません。


「今までは大丈夫だった」が、もう効かなくなるとき

たとえば、

  • 心が回復しきらないまま、毎日が過ぎている
  • パートナーとの関係がうまくいかない
  • 家族の問題が長引いている

そんなとき、

「もともと気になっていたこと」が、心に刺さるようになるんです。

つまり、

「仕事が原因じゃないのに、仕事にやる気が出ない」

という現象が起きてしまう。

これは単なる“ネガティブ思考”だとは限らない、と僕は考えています。

むしろ、

「私は、ちゃんと私としてここにいるのか?」

「私の気持ち、どこにいったんだろう」

という問いが、うまく言葉にならずに現れている状態なのかもしれません。

よく仕事のお話の中で、「職場環境が変わった」「人事で畑違いの部署に移動になった」「結婚や転勤を期に居住地から変わることになった」などのお話を伺うことがありますよ。

これも同じことだと僕は思っているんです。

職場環境や居住地などの変化は、ただの変化ではなく、「自分が自分として存在していた感覚」をボカすことがあるのです。

例えば、職場環境が変わって不満があるとして、それは職場環境への不満でありながら、「今までの自分でいられないこと」への文句でもあるのではないでしょうか?

つまり、今までの自分が職場にいたとしても、それではダメだと感じているからこそ、不満が出る。

人によっては、「今までの自分のあり方を否定されたような感覚」を覚えることもあるのかもしれない。

これは一つの、自分という存在の輪郭がボヤッとしはじめている状態、とも言えると思うのです。


自分の「存在」を感じるには、仕事の成果だけじゃ足りない

僕はこれを「自己存在感」の揺らぎと捉えています。

たとえ仕事で評価されていても、環境の変化が大きすぎたり、疲労が蓄積していたりすると、「私がここにいる」という実感は持ちづらくなる。

変化によるよるストレスも、疲労によるしんどさも、自分が自分である、ということを忘れる理由になり得ます。

また、職場などに忠誠心を抱き尽くしてきた方にとっては、環境の変化を受け止めきれない(今までの自分のあり方を維持できない)と感じて、辛くなる方もいるやもしれません。

そのとき、心は、あなたを守るために「感じる力」を一時的に絞っている可能性があるんですね。

むしろ、置かれた環境に対応するために、エネルギーを使って、仕事に、変化した環境に、抱え込んでいるプライベートな問題に対処しようとしている。

なので、自分を振り返る時間だけでなく、その意識さえも持ちづらくなってしまうことが少なくないのです。

まぁ、変化(心理的な危機)が起きてるのだから、悠長なことは言ってられないし、自分の気持ちを確かめている余裕なんてないわ、って感じなんでしょうね。

その感覚。個人的によく分かる気がしますよ、本当に。

ただ、それが続くと「もう自分じゃなくてもいいんじゃないかな」と感じやすくなる。

なぜなら、自分の意識が「自分に向いていない」からです。

自分の扱いが悪意なく雑になっているからこそ、周囲にとっても「別に自分じゃなくていいだろう」と感じやすくなるわけです。


ご提案:“あなたの心”を、立ち止まって見る

「私じゃなくてもいい気がする」

そう思ったとき、すぐに仕事を辞めたり、人間関係を断ち切る必要はないのかもしれません。

むしろ、そう感じるときほど、自分の「心のリソース」が減ってきているというサインである可能性が高いんです。

まずは、立ち止まること。

そして、自分の外側ではなく、内側に視点を向ける時間を少しだけでも持ってみることをおすすめします。

自分の内側を取り戻す、小さな問いかけ

たとえば、こんな問いを自分に投げかけてみてください。

  •  「最近、自分の気持ちをちゃんと感じたのは、いつだった?」
  •  「もうちょっとこうしたいと思ってたこと、どこかで置いてきてない?」
  •  「ただの私として、誰かに接した瞬間って最近あったっけ?」

答えが見つからなくても大丈夫です。

大切なのは、「考えてみよう」と思うこと。

心の中に“私”を取り戻す準備が、そこで始まります。

自己存在感は「自己表現」ではなく、「自己感受」から

よく「自分を出せばいい」と言われますが、実は自己存在感とは「表現」の問題ではなく、まずは“自分を感じる”ということから始まります。

  • 今日はなぜかイライラしてたな
  • 本当はあの言葉、少し悲しかった
  • この空気、ちょっと疲れるな

そんな“小さな感情のかけら”を、スルーせずに拾ってみること。

それが、「私がここにいる」という実感を取り戻す、最初の一歩になります。

なぜこれが大事なのか?

仕事で役に立つこと。
周囲に求められること。
しっかりやれていること。

それらを積み重ねるのはすばらしいことです。

でもそれだけでは、「私がここにいる」という実感にはつながりません。

「自分にちゃんと反応してあげる」
「内側で“今の自分”を受け止める」

この小さな感受の積み重ねこそが、
「私が私として生きている」という、静かだけれど確かな感覚を育てていきます。

もし今、あなたが

「私じゃなくてもいい気がする」「頑張っているのに、むなしい」

そう感じているとしたら。

それは“あなたの心が、立ち止まろうとしている合図”かもしれません。

無理に変わる必要も、すべてをやめる必要もありません。

でも、自分の心と「再びつながる時間」を持つだけで、あなたの中の「存在感」は少しずつ、戻ってくるはずです。

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最後に

ふと「私じゃなくてもいいかも」と感じるとき。

その感覚には、ちゃんと理由があります。

でもそれは、あなたの価値がないからではないですよ。

ただ、あなたの心が「自分を見て」というサインを出しているだけなのかもしれません。

仕事も人生も、誰かのために頑張ってきたあなたへ。

“ちゃんと感じること”が、あなたの人生を取り戻す第一歩になるかもしれませんね。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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