深読みさんと忍耐女子

彼の愚痴に疲れた。恋愛で「支えすぎてしまう女性」の心理と本当の願いに気づく方法【読者相談】

彼の愚痴に疲れた女性

浅野さん、はじめまして。

30代女性です。今の彼と付き合って2年になります。

彼はとても優しいところもあるのですが、仕事でのストレスが大きいようで、毎日のように愚痴をこぼします。理不尽な上司への不満や同僚への苛立ちなどを、延々と聞かされることが多いです。

私は「彼を支えたい」という気持ちで、なるべく共感して「大変だね」「頑張ってるよね」と声をかけたり、彼の努力を褒めたりしています。最初はそれでよかったのですが、最近は正直、疲れてしまう自分がいます。

彼の話を聞きながら「私は彼を応援しているのに、なんで私はこんなにしんどいんだろう」と思ってしまうことも増えました。

結婚の話も出てはいるのですが、彼は「お金に余裕がないから結婚式も子どもも考えられない」と言います。私は本当は子どもも欲しいし、結婚式もしたいと考えているので、その温度差にも不安を感じています。

自分の中にある願いが本物なのか、それとも「みんながしているからそう思っているだけ」なのかも、正直よく分かりません。

彼を支えることと、自分の気持ちを大事にすること。その狭間で揺れている私に、何かアドバイスをいただければ嬉しいです。

ネタ募集ネーム:サンダルウッドさん

サンダルウッドさん、ネタのご協力ありがとうございますm(_ _)m

丁寧に気持ちを言葉にしてくださってありがとうございます。

では、僕なりのご回答です。よろしければご覧になってください。

彼を支えたい気持ちは素晴らしい。でも「疲れた」と感じるのは心からのサインかも。

まず、あなたが「彼を応援し続けながら、自分の本音を見失っていること」に気づいている。

それ自体がとても誠実で、人を大切にできる証拠なのでしょうね。

そもそも自分が本音を失っている、つまり、出会った当初のように彼を応援できていないことを悩む時点で、いい人確定、って感じですよね?

ただ、どうにもこうにも彼の愚痴が続くと(それを批判したいわけじゃないですが)、うんざりしてしまうこともあると思うのです。

こうして「疲れ」を感じているのは、決してあなたが弱いからではなく、心からのサインだと思います。

少し心理学的に見つめると・・・

人は相手の感情を長く背負い続けると「共感疲労」を起こします。

僕のようなカウンセラーや医療従事者、介護職、支援職のみなさんにも起こることですが、恋愛でも同じことが起きるだろうと推測できるんです。

相手を想う気持ちが強い人ほど、自分の感情より相手の感情を優先してしまうんですね。


彼の愚痴に疲れるのは「愛がない」からではない

「彼を愛しているのに、愚痴を聞くのがしんどい。じゃあ私は冷たい人間なのか?」

そんなふうに自分を責める女性は少なくありません。

でも実際は逆じゃないかな、と思います。

相手を想うからこそ、相手の苦しさを自分に取り込んでしまうような人もいます。

また、相手の苦しさに寄り添いきれない自分を悔いている方もいます。

もっと言えば、私がいるのに彼の愚痴が収まらないことで、自己批判的(私っている意味あるのかな)な視点を持つ方もいます。

そりゃ一緒にいると疲れますよね。

もちろん、彼の愚痴の影響もあると思うのですけども。

だからこそ、彼に対して「もっとこうあってほしい」と願う気持ちもでてくると思いますよ。

でも、それって愛がないってことなんでしょうか?

そりゃ近い距離でずっと愚痴を聞き、支えておられたならば、「勘弁してよ」って思っても不思議ではないんですよね。

そうやって頑張って応援していると、いつしか彼を応援することが”仕事”のようになっていくこともありますよ。

だから、ついついロマンス的な感情の話が遠ざかってしまうといいますか。

今、自分の本当の気持ちがわからなくなるのは

「彼との関係は本当に恋愛なのか、それとももはや仕事や作業なのか」

みたいな振れ幅の中で悩まれているからではないかな、と僕は思う部分もありますよ。

もちろん「好き」じゃなきゃ傍にいられないんですけど。


「支えすぎてしまう恋愛」に隠れている心理

ここで少し、心理学的に整理してみましょう。

1. 自己肯定感の影響

「私が頑張れば関係はうまくいく」と無意識に思っている女性は、自己価値を「相手の役に立つこと」に置きがちです。

その結果、相手の問題を自分の責任のように感じてしまいます。

2. 幼少期の学び

幼少期に「我慢して周りに合わせる」経験が多かった人は、大人になっても同じ役割を恋愛で担ってしまうことがあります。

つまり「いい子」「頼れる人」として振る舞うクセですね。

3. 投影のメカニズム

「私が至らないから彼は幸せになれないのかも」と考えてしまうのは、自分の中の自己否定を彼に投影しているケースです。

本当は彼が自己否定を抱えているのに、それを自分の責任にしてしまうんです。

愛するために「自分を差し出しすぎる」パラドックス

恋愛の中で「相手を幸せにすることこそが、自分の愛の証だ」と感じる人は少なくありません。とても愛情深い証拠なのですが、その気持ちが強すぎると、どうしても「自分を後回し」にしてしまいやすくなります。

最初は「支えたい」という純粋な気持ちだったのに、気づけば「支えなければならない」と思い込む関係に変わってしまう。これがいわば、愛情の強さゆえに起きるパラドックスなんです。

そしてもうひとつ、ここが大事なところなのですが──

自分を差し出しすぎると、相手は安心よりも“依存”で答えるようになることがあります。(自分を差し出すこと自体が悪いわけじゃありませんよ)

人は本来、自分の足で立ちたい生き物。

でもパートナーが常に「支えてくれる」前提になると、彼の中に「どうせ支えてくれるから、甘えてもいい」という無意識の習慣ができてしまう。

これは意地悪とかズルいとかではなく、人間の自然な心理反応でもあるんですよ。

基本、人間って楽な方に流される生き物ですから・・・。

結果、あなたが支えるほど、彼は自分の足で立つよりもあなたに寄りかかるほうを選んでしまう。

つまり、あなたの愛が強すぎるがゆえに、関係がアンバランスになってしまうわけです。

これは「あなたが間違っている」という話ではないのです。

むしろ、あなたの愛の力はとても強いし、それだけ効いている、って話なのです。

ただ、今は「一人で背負いすぎる構造」を作っているみたいですね、ってこと。

だから大切なのは、支えすぎることをやめることではなく、「私は私を大切にしてもいい」「彼をアテにしてみてもいい」というバランスを保つことです。

そのとき初めて、彼も「自分の足で立って彼女と並ぶ」ことができるようになるのです。


自分の本当の願いに気づくためにできること

実はサンダルウッドさんのご相談の中に、とても大事なヒントがあります。

「子どもも欲しいし、結婚式もしたい。本音かどうかは分からないけど、そう思う自分がいる。」

これが大事なんです。

「本音かどうか分からない」と思っても、出てきた気持ちはあなたの心からの声。

まずは否定せずに「そう思っているんだな」と受け止めてみましょう。

その上で、次のような取り組みがあってもいいのかもしれませんね。(カウンセリングなどでサポートさせていただくことも可能です。)

ステップ1:「私は何に疲れているのか?」を言葉にする

愚痴を聞くこと自体なのか、彼の将来性に対する不安なのか。

言葉にするだけで気持ちは整理されます。

ステップ2:「私はどうしたい?」を相手抜きで考える

彼を想定せず、「私は結婚式をしたい」「私は子どもを持ちたい」など、自分だけを主語にして書き出してみましょう。

ステップ3:「条件ではなく感覚で幸せを考える」

心理学の研究でも、幸福感は「状況」よりも「本人の感じ方」が大きく影響することが分かっています(Diener, 2000)。

「お金があるから幸せ」「子どもがいるから幸せ」と条件で決めるより、「どんな時間を幸せと感じるのか」を意識すると、自分の本当の願いが見えやすくなります。


僕のボヤキをひとつ

でもまぁ、恋愛ってほんとに「支える力」が強い人ほど、疲れやすいって傾向はあるのかもしれません。

「相手のためにここまでやれる私、すごい」と思っていいのに、なぜか「こんなに疲れてる私はダメだ」と責めてしまう。

まぁ、それも自己責任っちゃーそうなんですけど、そう言ってしまうと味気なさ過ぎるって思いますけどね。

ただ、「支える力がある人だからこそ、自分も満たされる関係を選ぶ権利がある」とも言えるんですよね。

だから、今の関係を大切にしながらも、「私が満たされる」ということについて考えていく方法もありますよ。

彼との関係を見つめ直す中で満たされていくなら、それもよし。

そうではない部分で満たされていくなら、それもよし。

そんな感じでね。


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まとめ:自分のための幸せを願っていい

いかがでしたでしょうか?

今日の話をまとめると

  • 彼の愚痴に疲れるのは、愛情がないからではなく「支えすぎているサイン」
  • 支えすぎる恋愛の背景には、自己肯定感の低さや幼少期の学びが関わっていることもある
  • 自分の願いを言葉にし、相手抜きで「私はどうしたい?」と考えることが本当の願いにつながる
  • 恋愛は「相手を支えるだけの関係」ではなく「お互いに満たし合う関係」であっていい

彼の将来を思う気持ちは大切にしつつ、同じくらい「私の幸せ」にも光を当ててみてください。

それが結果的に、彼との関係を守る力にもなるはずです。

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