甘すぎない恋愛心理学

失恋が教えてくれる、「ある気づき」について ~心が痛んだときに見える無意識のパターン~

遠くを見つめる女性

こんにちは、心理カウンセラーの浅野寿和です。

失恋は、誰にとっても苦しい経験、といえるかもしれません。

それは自分の価値を否定されたような感覚を伴い、時に深い自己不信を引き起こすこともあります。

ですが、長年カウンセリングを行っていると

「失恋の痛みそのものが、ある“大切な気づき”の入り口になることがある」。

そんな場面に多く出会ってきました。

もちろん痛みを無視した話ではありません。

失恋がもたらす痛烈な痛みは癒やされるべきものです。

ただ、今日は「失恋が教えてくれる、心の深層にあるテーマ」についてお話ししてみたいと思います。

今日のコラムはできれば、「今、辛すぎない状態」の時に読んでもらいたいと思います。

 


よくあるお声:「なぜあんな相手に惹かれたのか」

失恋直後は「別れた痛烈な後悔」をお伝えいただく方であっても

しばらく気持ちが落ち着いてくると、お伝えいただく言葉があります。

「冷静になってみれば、あの人の言動には違和感があった」

「本音では合わないと思っていたのに、どうしてあんなに惹かれたんだろう?」

そう語る方々の多くは、当初は「相手に問題があった」と見ているのかもしれません。

そして、そう思うお気持ちも、僕なりに理解できる気がします。

けれど、少し時間が経って冷静になると

「惹かれてしまった自分」

に対する疑問が浮かび始める方がとても多い。

僕はそんな印象を持っています。

実際、失恋や喪失の後の心理プロセスは、失った悲しみを受け止めて再配置する前に「なぜあの人を選んだのか?」と疑問視するものだ、と言われていますしね。


失恋に隠れた「心理パターン」という鏡

僕たちは「心の奥にある未完了のテーマ」によって、特定の人や関係性に引き寄せられることがあります。

たとえば――

  • 「もっと自分の意見を言えるようになりたい」というテーマを抱えている人が
  • 「強く自己主張する相手」に惹かれる。

あるいは――

  • 「優しさを我慢とすり替えてしまう」パターンを持つ人が
  • 「感情表現が苦手で距離のある相手」に恋してしまう。

そんなふうに、恋愛は時に“無意識の自己課題”を映し出す鏡にもなるのです。

もちろんそれがいいかどうかは別の話ですよ。

ただ、そういった内面の動きがある、という話です。


感情の波に隠れた、深層の構造を読む

失恋の直後は、怒りや後悔、悲しみが大きく揺れ動きます。

けれど、その感情の下にあるのは

「何を期待していたのか」

「どんな自分を見てもらいたかったのか」

「何が“満たされなかった”と感じたのか」

といった、私たちの“深層心理の構造・あり方”です。

事例:なぜ「冷たい人」に惹かれてしまったのか?

たとえば、ある30代女性のご相談です(掲載のご許可いただいた話に創作を加えたフィクションです)。

彼女は「いつも淡泊で、何を考えているかわからないタイプの男性」との恋愛が長続きせず、毎回深く傷ついていました。

けれど話を丁寧に聞いていくと、彼女の中にはこんな「前提」があったのです。

「自分から近づかなければ、誰とも深くつながれない」

「相手は私をちゃんと見てくれるとは限らない。だから、私が頑張らなきゃ」

この前提があったからこそ、

「自分を求めてくれない相手」=「自分の努力を引き出してくれる存在」

として惹かれてしまっていたのです。

実際、彼女の幼少期には「頑張らないと見てもらえない家庭環境」がありました。

つまり、彼女にとって「冷たさ」は、どこか懐かしい安心感すら含む「未完了のパターン」だったわけです。

失恋は確かに痛みを伴いましたが、彼女がそのパターンに気づき、

「そもそも私は、“がんばらなくても愛されていい存在”なんじゃないか」

という視点を持てたときから、関係性の選び方がゆっくりと変わっていきました。

失恋がもたらすもう一つの意味 〜再構築の起点〜

失恋は、関係性の終わりであると同時に、

「自分の心のパターンを再構築する起点」になることもあります。

自分がどんな人を選びやすいか、

どんな場面で我慢をしていたのか、

どんな期待を抱いていたのか――

この心の深層心理の構造を、たとえば親子関係や過去の恋愛の影響、人生のプロセスそのものなどから見つめていくことは可能なんです。

が、それは「なぜそうなるに至ったか」の事情。

もちろんその事情を理解することはとても重要なことです。

ただ、この心の深層構造を見つめ直すことは、「今の自分のあり方」と向き合うことで可能になります。

つまり、失恋という願わくば経験したくない出来事が、今の自分やその恋愛傾向を理解し直す大きなキッカケをくれることも少なくないんですよね。

そうした「見えなかった自分」に気づいたとき、

私たちは同じ選び方を繰り返すことから、少しずつ離れられるようになるのです。


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最後に〜痛みの中で見つかる、本当の自分〜

やはり失恋は辛いものです。

けれど、そこには感情だけでは語りきれない「気づき」の種が眠っていることもあります。

それは、決して反省や後悔のためのものではなく、

「今の自分が、どんなテーマを抱え、どんな道を歩もうとしているのか」

という、心の深い場所からのメッセージかもしれません。

感情を否定せず、でもそれだけにとどまらず、

自分の内面と丁寧に向き合ってみること。

それが、次の一歩を支えてくれる力になると、僕は思っています。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
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