「この人、何を考えてるのかわからない」
恋人や夫婦関係で、ふとそんな違和感を抱いたことはありませんか?
たとえば
- 一緒にいる時間は長いのに、会話がうわべだけ
- 相手が何を感じているのか、表情だけでは読み取れない
- こちらから話しかけないと、ずっと無言
- 返ってくるのは「別に」「なんでもない」ばかり
こういう状態が続くと、
「この人、本当は何を思ってるんだろう?」と、不安になるものです。
でも、この“不安”の正体って、
「何かをされたから」ではなく、「何も伝えられていない関係」にいることによって生まれるものなんですよね。
そこで今日は「何も言わないパートナーの心理状態を覗いてみる」をテーマにコラムを書いていきますね。
よろしければどうぞ。
Index
パートナーに何も言わない人の心理状態を覗いてみると
さて、「パートナーに自分の気持ちを伝えられない人」は、いったいどんな心の状態にあることが多いのでしょうか?
ここ、興味ありませんか?
というか、実際のカウンセリングでも、かなりご質問をいただく話でもあるので、すべてではありませんが、カウンセリングなどでよく見られる心理状態を、いくつかご紹介します。
1:「言ってもわかってもらえない」という学習経験
過去の恋愛や家庭で、「自分の気持ちを伝えたのに否定された」「怒られた」「スルーされた」という体験があると、人は“伝えること=怖いこと”という認識を持ちます。
その結果、「言わない方が安全」という戦略を取るようになるわけです。
むしろ、自分の気持ちを伝えることが大きなリスクだと感じているのですね。
2:自分の気持ちに自信がない
「こんなことで不満に思うなんておかしいのかな?」
「私が気にしすぎなだけかも…」
「本当に伝えるほどのことかな?」
こうした“疑い”の感覚が強いと、自分の中で気持ちを却下してしまい、口に出すことができなくなります。
このように考える傾向がある人は、いわば「自分の外側に正解を探す」クセがついている事が多いですよ。
つまり、自分にとっての正解ではなく、相手にとっての正解を常に探し、その上で行動したり、言葉を紡いでいる。
それがいつも自分の思いとは異なるものであったとしても、相手の考え、言動に合わせてしまう。
もちろんそれが優しさだとも言えるのですが、やりすぎると「自分の考えや気持ちのあり方を無視しすぎて、自信がなくなってしまう」のですね。
その結果、何も言えなくなるというか、自分の気持ちを言わなくなるのです。
3:気持ちを言語化するのがそもそも苦手
これは性格や育ち、性差の影響もありますが、「何を感じてるの?」と聞かれても、言葉が出てこない人は意外と多いです。
- 考えてはいるけど、まとまらない
- うまく説明できる気がしない
- 変に言って関係がこじれたらどうしよう
といった“不安や不器用さ”が、沈黙を選ばせる背景になっていることがあります。
これは個人特性の側面とも言えるし、過去の経験からくるもの、とも言えます。
まぁ何でも言葉にできることが正しい、とも言い切れないわけなので、こうなってしまうのは「しゃーない」と、受け止めておきたいところではありますよ。
ただ、恋愛など男女関係の場合、何も言わないことは関係を悪化させやすいファクターなので、自分らしくいると関係がこじれる、なんてこともあるようです。
4:関係性を壊したくないという強い恐れ
実はですね、僕の臨床経験上「何も言わない・言えない人が感じている心理」として、これが一番多いだろうと、僕は推測しています。
「これを言ったら、関係が壊れるかもしれない」
「相手を傷つけたくない」
「重いと思われたくない」
「あえて言わず、飲み込んでおいたほうがいいだろう」
そう思えば思うほど、「思っていることを言わない」という選択をしがちです。
「関係を壊したくないから、言わない」。
これも大人だからこそ取れる選択、といいますか。
いわば「空気を読む」ように、相手との関係を重視するからこそ言わない、というね。
これが間違った選択だといい切れる人っているんでしょうか?
でも皮肉なことに、その“壊したくない”気持ちが、逆に距離を生み出してしまうわけですよ。
「空気を読む」が“何も言わない”を正当化してしまう
また、「空気を読む」って言葉がありますけど、これ、一見とても大人の振る舞いに聞こえませんか?
場を壊さない、空気を悪くしない、相手に不快感を与えない。
日本的な人間関係において、かなり重宝されるスキルでもありますよね。
でも、この「空気を読む力」が強い人ほど、いつの間にか「自分の気持ちは、出さない方がいい」という前提を持ちやすいのです。
たとえば
- 相手の顔色を読んで、言葉を選びすぎてしまう
- 相手が疲れてそうだから、話しかけるのをやめる
- 今言っても重くなるだけだろうなと思って、胸にしまう
- あえて言わないことで、“わかってる感”を出してしまう
こうした選択は、短期的には確かに「波風を立てない」かもしれません。
でもそれが長期化すると、「沈黙がデフォルト」になっていくわけですね。
この状態が続くと、相手は
「私には話してくれない」「信頼されていないのかも」
と、「わからなさ」と「さみしさ」を蓄積していきます。
ここでのポイントは、
「空気を読んで話さなかったこと」は、相手にとっては「何も感じてないのと同じ」に見えることがある、という点です。
・・・何を当たり前のことを書いているんだ?と思いますよね?
そうなんです。どう考えたって外側(他人)から見れば当たり前のことなんです。
が、本人は「何も話さない姿は、パートナーに対して何も感じていないとの同じに見えるとは思っていない」可能性が非常に高い。
自分としてはいろいろ思っているけれど、気づかないうちに、「相手のことを考えてるのに、何も伝えてない人」になってしまっているわけです。
なので、「あなたは私のことを何も考えていない」と言われる羽目になり、そこで驚いたり、反発したくなる。
いいか悪いか別にして、「考えているけど何も言わない」という状態が、相手をさみしくさせていたり、不安にさせている、という理解が少ないのかもしれません。
なぜ人は「言わない」を選ぶのか?
人は誰でも、感情を表現するのに勇気がいります。
- 誤解されたらどうしよう
- 重いと思われたら嫌だな
- 話すほどのことじゃないし…
- 空気壊したくないし…
こうした“ちょっとした躊躇”が、日々の関係の中で繰り返されるうちに、「黙るのが安全」になっていくんです。
特に、空気を読むことに慣れてきた人ほど、
「相手が嫌がらない言動」だけを選ぶようになります。
でもその結果、「あなたは傷つかない代わりに、伝わらなくなる」わけです。
「言わない理由」は様々あれど、根っこに潜む心理はこれ
ここまで読んで、「それって、私かもしれない」と思った方へ。
まずお伝えしたいのは、“言えない”こと自体が悪いわけではないということです。
そこには、あなたなりの不安や気遣い、やさしさがあったはずです。
でも、もし今の関係に「距離」や「わからなさ」が生まれているなら、その優しさの裏側で「関わることへの怖れ」が強まっているのかもしれません。
「関わること」を英単語で表現すると、様々な訳が出てきますが、その一つにこの言葉がありますね。
”commitment”(コミットメント)
つまり、関わることへの責任。
もう少し心理的な解釈を加えると「相手と関わり続けるという覚悟や意思」です。
これは、いわゆる「愛の一つの要件」とも言われる場合があります。
が、何らかの理由でこれを怖れると、まぁ何も言わない、言えない、苦しい、といった状態になりやすいのです。
つまり「Fear of Commitment」(関わりへの怖れ)こそ、何も言わない人の深層心理のあり方の一つ、といえます。
そして、この怖れを感じないために「相手と距離を取る」「優しくいようとする」「自分からは何も言わない」「黙る」「相手のペースを優先しようとする」ということが起きる。
これは一つの補償行為(自分が怖れを感じないための埋め合わせの行動)とも言えるわけです。
が、まぁそこまでネガティブに考えすぎる必要もないかな、と思います。
ただ、自分自身が「伝えること、関わることにちょくら及び腰になってる」ぐらいの認識はあっていいかな、と思いますよ。
*
また、「パートナーが何も言ってくれない」とお悩みの方は、「相手が親しい関係を恐れている」と考えてみてもいいかもしれません。
ただし、あなた自身が親しい関係を恐れている場合や、今まで相手に我慢を強いた場合は別なので、そこを都合よく「相手は親しい関係を恐れているのね」と解釈しないように(笑)
それは関係をぶっ壊す地雷になりかねないのでね〜。
自分自身が「何を考えてるのかわからない」と言われたとき
もし、あなた自身が
「パートナーにそう言われたことがある」としたら、それは、冷たいからでも、不誠実だからでもないのかもしれませんね。
ただ、あなたが「黙ること」に慣れすぎてしまっただけかもしれません。
- 表情で伝えた“つもり”だった
- 気づいてほしいと思っていた
- わかってくれるだろうと信じていた
けれど、相手は“受け取る側”であると同時に、“不安を抱える側”でもあるわけですよ。
そして、不安を感じた人は、やがて“距離”をとるようになります。
それは相手が冷たいからではなく、「何を受け取っていいかわからない」状態にあるからなんです。
つまり、パートナーから「何を考えているかわからない」と言われたら、あまりいい気分がしないかもしれませんが、「相手はあなたのことを究極的にはネガティブに捉えていない」と考えてみる方法もありますよ。
「伝える」ことは、相手のためだけじゃない
自分の気持ちを伝えること。
これは当然ですが、伝え方次第で揉めもするし、更に理解し合えることもあります。
うまく言えないこともあるし、衝突になることもあるでしょう。
ただ、何も言わない選択で繋がれる関係って、よほどの信頼があるか、もしくは、言わなくてもわかる、ぐらいのそばにいる時間の長さが必要です。
むしろ、多くのパートナーシップのトラブルって、「分かったつもりで相手を解釈して撃沈」という形が多いので、なかなか無言で信頼を構築することは難しいですよ。
だからこそ、「想っていることを可能な限り分かりやすく伝える」って大切なことなんです。
これが実現できると
「今の関係に、自分の本音を置ける場所がある」
お互いがそう思えるようになりますからね。
これはとても大きな安心につながります。
そしてそれは、相手のためであると同時に、自分の存在を“感じてもらう”ためでもあるんですよね。
言葉にするって、練習でできるようになる
ただ、実際「自分の素直な気持ちを伝える」って、ほんとうに難しいことです。
どう伝えたらいいかわからない。
どう思われるか怖い。
それでも黙っていると、関係が遠くなる気がする。
そんなふうに感じている方も、少なくないはずですし、これは特別おかしな悩みじゃありません。
ただ、気持ちを言葉にすることって、実は気持ちの整理を重ねたり、心について学んだり、感情にふれる練習で少しずつ上手くなっていきます。
「これは言ってもいいことなんだ」
「え?相手はこの言葉を知りたかったの?マジか・・・」
「この伝え方なら、相手も受け取ってくれるかもしれない」
そんな感覚を、誰かと一緒に探っていくことで、自分ひとりでは見つからなかった“伝え方の選択肢”が広がることがあります。
僕のカウンセリングや講座は、「あなたの心を整理しながら、言葉になる前の気持ちを扱う場」でもあるんですよね。
いつでも、あなたのそばにある選択肢のひとつになれたら。
そう思っています。
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最後に:よりよいパートナーシップには、“伝えること”が必要
人間関係って不思議なもので、「何も争いがないのに壊れてしまうこと」があります。
平和で静かで、むしろ何も起きていないように見えていても、そこには「伝えなかったこと」が積み重なっていたのかもしれません。
大切な人にこそ、ほんの少しの言葉を届けることで、関係はあたたかくなります。
もし今、
「わかり合えていない気がする」
「何を考えているのかわからないと言われた」
そんな違和感を抱えているなら、少しだけ「沈黙」の構造を見直してみると、違う関係の景色が見えてくるかもしれませんね。
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