母親との関係は、恋愛や夫婦関係にどう影響するのか 〜距離感がうまく取れなくなる心理〜
こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
恋愛やパートナーシップの中で、
「また同じところでつまずいている気がする」
「近づきたいのに、どこかで身構えてしまう」
そんな感覚を抱いたことはありませんか。
なんとなくパートナーとの距離の取り方だけが、なぜか毎回似てしまう。
カウンセリングの現場でお話を伺っていると、こうした感覚の背景に、
母親との関係で身についた“人との距離感”が残っている場合に出会うことがあります。
まぁ、この話は「恋愛がうまくいかないのは母親のせい」という単純な話ではないんです。
が、その影響を無視できる話でもないんですよね。
実際、母親との関係があまり良くなかったとしても、安定した恋愛や夫婦関係を築いている人は、たくさんいます。
ただ、母親との関係の中で覚えた「近づくときの緊張」や「離れるときの感覚」が、
大人になってからの恋愛の中で、どこか似た形で立ち上がることもあります。
この記事では、母親との関係そのものを評価したり、誰かを責めたりするのではなく、
恋愛の中で感じる“距離の取りにくさ”が、どこから来ているのかを、
少し心の仕組みとして整理していきます。
Index
恋愛に忍び込む「距離感のパターン」
母親との関係がどこかうまくいっていなかった場合、
恋愛や夫婦関係の中で、似たような“しんどさ”を感じることがあります。
たとえば、
- 近づこうとすると、なぜか身構えてしまう
- 相手に踏み込まれると、急に距離を取りたくなる
- 逆に、離れそうになると強い不安が出てくる
こうした反応って、
人と親密になるときの“距離感の取り方”が、すでに体に染みついている
そんな感じに近いのかもしれません。
母親との関係は、人生でいちばん早い段階で体験する「近さ」や「距離」の関係です。
そこで覚えた、
- どこまで近づいていいのか
- どこからが危険なのか
- どの距離なら自分は傷つかずにいられるのか
そういった感覚が、大人になってからの恋愛の中でも、
無意識の基準として顔を出すことがあります。
頭では「今の相手は母とは違う」と分かっていても、
体のほうが先に反応してしまう。
そんな経験、思い当たる方もいらっしゃるかもしれませんね。
無意識の「再演」
この距離感は、頭で変えようと思ってもなかなか変わりません。
なぜなら心は「安全だった方法」を優先するからです。
たとえば・・・
母親に対して本音を言うと必ず否定された経験があれば、恋人にも本音を飲み込むクセが残る。
逆に、母親に放っておかれる寂しさを経験していれば、恋人との距離が少しでも開くと強い不安が出る。
これは過去の関係を、今の関係で“再演”してしまうパターンといえますね。
そして本人は、「なぜか同じような恋愛になる」と感じやすくなります。
「優しい沈黙」という落とし穴
ここで少し立ち止まって見ておきたいのが、
「優しいつもりで黙る」という関わり方です。
人とぶつかるくらいなら、何も言わないほうがいい。
相手を傷つけるくらいなら、自分が引いたほうがいい。
そんなふうに考えて、
言葉を飲み込むことを選んできた場合もあるかもしれません。
たとえば、母親との関係の中で、
衝突を避けるために沈黙を選ぶ場面が多かった場合。
その「黙ることで関係を保つ感覚」が、
恋愛や夫婦関係の中でも、
無意識のうちに使われることがあります。
本人としては、
「相手を思って言わない」
「波風を立てないための配慮」
そのつもりだったりするんですよね。
ただ、この沈黙は、相手から見ると、
- 何を考えているのかわからない
- 距離を取られているように感じる
- 壁を感じる
そんなふうに受け取られる場合もあります。
とくに、近しい関係であればあるほど、「知りたい」「わかりたい」という気持ちは自然に出てきます。
何も言われない状態が続くと、それ自体が、関係の中で緊張を生んでしまうこともあるんですね。
母親との関係で身についた認知やパターンが残っている場合
ここまで読むと、
「じゃあ、母親との関係を変えないといけないの?」と感じる方もいるかもしれません。
この点については、少し整理して考えてみる余地があるんですよ。
たしかに、母親との関係の中で、
「近づいても大丈夫だった」
「意見を言っても関係が壊れなかった」
そんな体験を重ねられる場合、人との距離感が少しずつ変わっていくこともあります。
ただし、それがすべてのケースに当てはまるわけではありません。
今の母親とは落ち着いて関われているけれど、過去の母との関係が、どこか心に残っている場合もあります。
「今のお母さんとは話せるんだけど、子どもの頃の母の記憶は、今でもしんどい」
こうしたお話も、カウンセリングの場では珍しくないことなんです。
そして、それもまたとても自然な感覚だと思います。
子どもの頃というのは、自分で距離を選んだり、関係を調整したりする力が、まだ十分ではありません。
その時期に体験した関わり方や感覚は、「近しい人と関わるときの前提」として、そのまま残りやすいんですね。
たとえば、
- 自分はあまり力がない
- 近づいても状況は変わらない
- 期待しても応えてもらえない
こうした感覚が、言葉にならないまま残っている場合もあります。
これは、「過去の母との関係で身につけた回避の仕方」だけでなく、
自分自身についての理解の仕方が、そのまま続いている状態とも言えます。
「母をどうするか」ではなく、「身についた関わり方」に目を向ける
だからこそ、ここで大切なのは、
母親との関係そのものをどうにかすることを視野に入れながらも、
母親との関係の中で、自分がどんな近づき方・離れ方を身につけてきたのか
そこに気づいていくことだと、僕は考えています。
「母親との関係改善」が目的になると、
どうしても、相手を変える話や、自分を責める話に寄りやすくなります。
一方で、
「私は、こういう距離感を覚えてきたのかもしれない」と整理できると、
今の人間関係の中で、少しずつ調整できる余地が見えてきます。
「子どもの視点」に留まり続けると、調整が難しくなることもある
ただし、この整理を進めるときに、ひとつ引っかかりやすいポイントがあります。
それが、「母に対して、子どもの立ち位置のままで考え続けている場合」です。
この位置にいると、母の反応や影響が大きくなりやすく、自分で距離を決める感覚が持ちにくくなります。
なので、自分が大人の立ち位置に立っておくことも大切なんですよね。
ここで言う「大人の立ち位置」とは、
母を理解し、評価し、許す、ということだけではなくて、
母と自分は別の人間で、自分は自分の距離を選んでいい
そう捉えられる位置に立つ、という意味です。
そのほうが結果的に、自分の心の負担が減る場合も少なくありません。
恋愛は「母との延長」だけで決まるものではない
確かに母親との関係が影響を持つことは、確かにあります。
ただ、それは「恋愛でも必ず同じパターンを繰り返す」という意味ではありません。
恋愛や夫婦関係は、母との関係では得られなかった安心や安全を、後から経験し直せる場でもあります。
近づいても大丈夫だった。
意見を言っても、関係は続いた。
そうした体験を重ねることで、「母との延長」ではない関係が、少しずつ現実のものになっていきます。
こちらの”恋愛と母親にまつわる心理”もどうぞ
- 親の恋愛パターンを引き継ぐ私たち 〜社会的学習と「愛し方の癖」の心理学〜
- 嫌いな母に近づくのは嫌だから「恋愛や結婚というプロセス」に葛藤する
- 「愛深き忍耐女子と家族関係」が今の恋愛に影響する!という心理解説
- 母と話すと、なぜこんなに消耗するのか |母との関係が、恋愛や人間関係まで影響する理由
まとめ
母親との不仲が恋愛や夫婦関係に影を落とすことは、確かにあります。
でも、その影響は100%絶対と言えるかと聞かれれば、
その後の、いい大人との出会いによって再学習されることもありますよね、と思います。
だから、こんな記事を書いておいて・・・ですが(^^;
「私の恋愛がうまくいかないのは母のせい」と言い切るのも変なのです。
ただ、影響はあるよね、結構ね、というスタンスで捉えてみてください。
そして、母親との関係を見つめ直してみようと思われたら、もちろんいつでもお手伝いしますよ。
このサイトでは、
「人は裁かない。でも、構造はごまかさない。」
というコンセプトで、夫婦や家族の関係の中で揺れやすくなる“心の立ち位置”を、心理学の視点から整理しています。
「離れるべきか」「我慢すべきか」
そんな二択で考え続けて、少し疲れてしまったときに。
今の関係を、今の自分のままで扱い直すための場所として、このサイトを使ってもらえたらと思っています。
一人で抱え続けなくていい時間|個人セッション
そのときのあなたの状態に合わせて、対話を重ねていく個人セッション。
夫婦の問題は、努力や話し合いだけでは整理しきれないことも少なくありません。
- 何が正しいのか分からなくなってきた
- もう十分考えたはずなのに、答えが出ない
- 自分の感覚が鈍っている気がする
今の夫婦関係をどう扱っていくのか。
続ける/距離を取るといった判断も含めて、理想論だけでなく、現実的な選択肢を一緒に整理していきます。
誰にも知られることなく、今の状況を丁寧に扱う、あなただけの時間です。
対面(東京/名古屋)・オンラインで対応しています。
今までのあなたに、新しい視点を足す”心理学講座”
心理学講座は、「こういう見方もあるのか」という発見を、ゆっくり増やしていく場所です。
毎月テーマは違いますが、夫婦関係に活かせる心理を扱う講座を開催することもあります。
オンライン受講できる講座もご用意しています。
一人で考えすぎる日常から、少し離れるために|無料メールマガジン
まだ誰かに頼るほどじゃないけれど、
このまま誰かとの関係のことを、一人で考え続けるのは、少ししんどい。
そんなときの、「考えすぎないための視点」を、週3回(火・木・土)お届けしています。

