すれ違う夫婦の心理

夫婦の価値観が合わないのはなぜ?心理から見える“すれ違い”の正体

「最近、夫と話してもかみ合わない…」

「なんかズレてる気がするけど、うまく言葉にできない…」

そんな声を、カウンセリングの現場でよく耳にします。

夫婦関係において、“価値観の違い”はしばしば問題の根源とされます。

でも、それは「合う/合わない」という単純な話ではありません。

むしろ、「なぜその価値観を持っているのか」「なぜ譲れないのか」 そうした“背景にある心理”が見えてくると、すれ違いの見え方も変わってきます。

今日は、「夫婦の価値観が合わないのはなぜか?」という問いを、 心理的な土台から丁寧に見つめていきたいと思います。


価値観は“育ち”で作られる:親から受け継いだ“当たり前”

僕たちの価値観の多くは、家庭環境、特に“親”の影響を強く受けて形成されます。

親がどんな考え方をしていたか。 何を良しとし、何をNGと教えてきたか。 何を努力と呼び、何を怠惰と見なしたか。

こういった日常の積み重ねが、「無意識のルール」になり、 大人になった私たちの「当たり前」の土台を作っていきます。

例えば、

「家事は女性がやるもの」
「家族は一緒に食卓を囲むべき」
「男は弱音を吐かないほうがいい」
「ありがとうは言葉で伝えるべき」

すべて、“誰かの当たり前”であり、“誰かにとっての育ち”なのです。


「親の価値観」と「自分の意志」のせめぎ合い

ただ、大人になるにつれて、僕たちは“親の当たり前”から 少しずつ距離を取り、自分自身の価値観を見出していくようになります。

誰かに影響されたり、恋愛や仕事、挫折や成長を通して、「自分はどう生きたいのか」を少しずつ考えるようになる。

このプロセスは「脱理想化」とも呼ばれます。

つまり、親の価値観が“絶対”ではなくなること。

でも、だからといって親の影響がゼロになるわけではありません。

むしろ、無意識下では

「親をがっかりさせたくない」
「親のように頑張らなければ」
「親に認められる生き方をしなきゃ」

といったメッセージが残り続けることもあります。

この“意識では抜け出したつもりなのに、無意識では縛られている”状態が、 夫婦関係の中で、思わぬ形で顔を出してくるのです。


夫婦関係は“二つの育ち”の交差点

結婚とは、二人の人生をすり合わせていく営みです。

つまり「二つの育ち」が出会い、影響を与え合い、時にぶつかるということ。

夫婦で価値観がすれ違うのは、むしろ“当然”のことなんです。

片方は「家族は毎週一緒に出かけるのが当然」。
もう片方は「休日は自由に過ごして当然」。

片方は「子どもは厳しく育てるべき」。
もう片方は「まずは話を聞くことが大事」。

この違いは、「どちらが正しいか」ではなく、「どうしてそう考えるのか」に目を向けたとき、 はじめて理解が始まります。


自分の価値観が否定されるとき、人は防衛する

夫婦の価値観が衝突したとき、僕たちはつい、 「どうしてわかってくれないの?」と感じます。

でも実は、自分の“育ち”や“信じてきたもの”が否定されるとき、 人は本能的に防衛反応を起こすんですね。

その防衛の形にはいろいろあります。

  • 感情的に怒る
  • 無口になる
  • 相手を否定する
  • 被害者的になる

これらの背景には、「否定される=自分の生き方を否定された気がする」という、根深い痛みがあるのです。

つまり、「価値観の対立」は、「お互いの生き方を守ろうとする戦い」でもあるわけです。


価値観の対立を“善悪”で語り始めるとき

長引く価値観の対立が続くと、 次第に「正しい・間違っている」の世界に入っていきがちです。

これは心理学でいう「二極化思考」に近い状態。

  • 私は間違っていない、悪いのは相手だ
  • 私のやり方が正しい、あなたはおかしい

こうなってくると、お互いをパートナーではなく“裁く相手”として 見てしまうようになります。

すると当然、関係に温かみや信頼が入り込む余地がなくなってしまうんです。


“分かり合う”のではなく、“持ち寄る”という感覚

夫婦関係において、価値観の違いがあっても大丈夫なときって、 「お互いが、相手に良い影響を与えていると感じているとき」なんです。

  • 相手に理解してもらった実感
  • 自分の価値観も大切にされている実感
  • 対話を通じて合意が生まれるプロセス

このとき、僕たちは「正しさ」ではなく「つながり」で生きている感覚になります。

価値観はすり合わせるものではなく、持ち寄って育てるもの。

違う“育ち”を持つ者同士が、「二人の価値観」を作っていく。

それが、成熟した夫婦関係の一つのカタチだと僕は思います。


どうしてもつながれないことも、悪ではない

ただし最後に大切なことを一つ。

「どこまでいっても、話がかみ合わない」
「どうしても、互いの世界に踏み込めない」

そういうこともあります。

そのとき、「別れる=悪いこと」と単純には考えなくていいと思うんです。

むしろ、「これ以上、自分をすり減らさないための決断」も、「癒しの一部」として受け止めていいのではないでしょうか。


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最後に:価値観の違いは“対話のきっかけ”にもなる

夫婦の価値観が合わないということは、 見方を変えれば「より深く話し合えるチャンス」でもあります。

自分の価値観に気づき、相手の育ちに興味を持ち、 新しい価値観を一緒に育てていくこと。

そこに、小さなロマンスと、大きな絆が生まれることもあるんです。

すれ違いが起きているときほど、対話の種が転がっています。

「なんでわかってくれないの?」ではなく、「私は、こう育ってきたから、こう思うんだ」と語るところから。

よかったら、そこから始めてみてください。

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浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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