自分らしさ・生き方に悩むとき

「このままずっと一人?」将来の不安が止まらないときに必要なのは、「計画」よりも“自己存在感”だった

遠くを眺める女性

「このまま、この仕事を続けていていいのかな?」
「このまま一人で過ごすって、どうなんだろう?」

そんな“もしも”の不安が、頭の中でぐるぐると回りはじめる。

静かな夜なのに心はざわつき、時計を見ればもう午前1時。

眠らなきゃと思うほど、余計に目が冴えてしまう──。

・・・カウンセリングでも、こうした話をよく伺います。

仕事はうまくいっていないわけじゃない。

生活も今すぐ破綻するほどの問題はない。

それでも、「このままの延長線上に、自分の望む未来はあるのか?」という疑問が浮かぶと、心が落ち着かなくなる。

将来のことを考えるのは悪いことではありません。

むしろ計画性や準備のためには必要なことです。

でも、それが“止まらない”状態になると、私たちの心身には大きな負担がかかります。


脳が不安を増幅させる理由

将来のことを考えるとき、脳は「予測」という作業をします。

ただ、人間の脳は進化の過程で「危険や損失を見逃さない」方向に発達してきました。

そのため、不確実な未来を前にすると、脳は安全を確保しようとして、「悪い予測」や「最悪のケース」を優先的に考える傾向があります。

これを心理学では「ネガティビティ・バイアス」と呼びます。

例えば、仕事で「この案件は失敗するかも」と思えば、脳はその可能性をくり返し検証し続ける感じですね。

これを僕は「一人で思考をぐるぐる巡らせてばかりだと、おおむねネガティブ思考になるよ」なんて言い方で話していることも少なくないのですけども。

その結果、不安が不安を呼び、心の中で“雪だるま”のように膨らんでしまう場合があるわけですな。

これはある意味、僕たちに備わった要素の問題で、前世がどうのとか、与えていないからどうの、という話とはちょっとズレている話なのです。

(とはいえ、人に貢献したり与える行為がもたらすプラスの効果もあるので、まぁ自分なりに与えて生きる人生を選ぶほうがいい結果を得やすくはなると思うんですけどね。)


不安が暴走するときの共通点

さて、不安が膨らみすぎてしまうとき、背景にはある共通点があります。

それは、「今の自分がどうあるのか」と「今後、自分がどうありたいか」が見えていない ということです。

未来は常に不確実です。

もし、自分の中に「私はこういうふうに生きていたい」という軸がないと、未来を測る物差しは、他人の評価や社会の基準だけになります。

たとえば・・・

「みんな結婚しているのに、私だけ一人でいいの?」
「同期が昇進していくのに、このままでいいの?」

基準が外側にしかないと、状況が変わるたびに不安が再発しませんかね?

これは、不安を絶つことができない構造です。

だからこそ「自分がどうありたいか」を意識することは重要。ただ・・・

なので、みなさんも

「そんなときは自分がどうありたいかが明確になる事が重要」

という話をよく聞くと思います。

もちろんそれも、未来への不安に飲み込まれないために大切なことには違いがないです。

ただ、「今の自分がどうあるか」という感覚があまりにネガティブであると、「今後の自分をうまく描くことができない」という状態にもなりかねないのですよね。

実際、カウンセリンの現場にいると、

「未来を思い描く今の時点での自分に対するイメージや捉え方」が、あまりにマイナスなものになっているがゆえに「自分がどうありたいか」を思い描くことすら抵抗感を感じる、なんてお話を伺うことも稀じゃないんです。

ときには「自分がどうありたいか」が、ほぼ「ファンタジー」となっている人さえいます。(いいか悪いか別にして、あまりに現実感がないって意味ですね)

こうなると、不安をブロックするためには空想の世界に逃げないといけない、というパターンを作ることにもなりかねないのですよね。

だから、「今の自分を(ときに見つめることはしんどいかもしれないけど)きちんと捉えておく」ということはとても重要なことではあるんですよ。

特にマイナスな視点ばかりで見ない、ということが重要かなと思います。


自己存在感と将来不安の関係

ここで出てくるのが「自己存在感」というキーワードです。

自己存在感とは、簡単に言えば「私はここにいていい」「私は私でいい」という感覚です。

これはいわゆる自信とは少し違います。

いわゆる自信は「できること」によって上下しますが、

自己存在感は「できる・できない」に関わらず、自分の存在を認められる感覚です。

この感覚があると、不確実な未来を前にしてもこう考えられます。

「どうなるかはわからないけど、私はこうしていきたい」

逆に自己存在感が低いと、こうなります。

「どうなるかわからないし、私には選べる力もない」

同じ「わからない未来」でも、前者は選択肢として受け止められ、後者は脅威として感じられます。


軸がある人は、不安に飲まれにくい

自己存在感がしっかりしている人は、未来を予測するときに、「外の基準」ではなく「自分の基準」を優先できます。

だから、同じ将来の変化を前にしても、それを「怖いもの」ではなく「選び取れるもの」として扱えるのです。

もちろん、不安をゼロにすることはできません。

ただ、不安に“飲み込まれない”状態はつくることができます。

それは「私という存在の輪郭」を取り戻すことで可能になるのです。


「未来への不安をゼロにする」は難しい

ここまで聞くと、「自己存在感を持てば今のこの不安はゼロになるの?」と思うかもしれません。

ただ・・・正直に言うと、「不安を完全になくす」のは現実的ではないし、おそらくゼロにはならないと思いますよ。

なぜなら、不安はそもそも“生き延びるための機能”。

つまり、なくすとしたらそれはそれで問題が起きるってことなんです。

もし完全になくせたら、危険や問題を予測できず、逆にリスクにさらされまくる、ってことになります。

だから大事なのは、「不安をゼロにする」のではなく、「不安との付き合い方や距離感を整える」ことなんですよね


不安の暴走を止めるためにできること

ただ、あまりに強い不安が暴走しているときは、その暴走を止めるためにできることはありますよ。

いくつかご紹介しますね。

「考える時間」に枠をつける

将来について考えることを、1日の中で15〜20分だけ「自分で予約」するのです。

それ以外の時間に不安が湧いてきたら、「それはまた予約時間に考えよう」と自分に言い聞かせる。

脳に「考えるタイミングは別にある」と覚えさせるのです。

今できる行動に変換する

「老後が不安」なら、貯蓄や健康習慣の一歩を今日から始める。

「一人が不安」なら、趣味や人間関係の小さな広げ方を試す。

抽象的な不安を、具体的な行動に落とし込むと、脳の暴走は少しずつ収まります。

「今ここ」の安全を確認する

不安に飲まれているときは、脳が“未来”に行きっぱなしです。

深呼吸をして、部屋の温度、椅子の感触、周囲の音など、五感で“今”を確かめます。

これは一つのマインドフルネス的な方法とも言えるんですけどね。

なかなかうまくいかないときは、カウンセリングセッションで実際に取り組む方法もありますよ。

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まとめ:未来を思う前に、自分を取り戻す

将来の不安を減らすためには、転職や結婚、引っ越しなど

環境を変える選択も有効な場合があります。

しかし、それ以上に大切なのは「未来を測る自分自身の軸を整えること」です。

自己存在感は、今すぐ完璧に作り上げる必要はありません。

日々の小さな選択や、自分の気持ちに正直になる瞬間を積み重ねることから始まります。

未来は予測できませんが、

「私」という存在を軸にして立っていられるなら、

その不確実さは脅威ではなく、可能性に変わっていきます。

もし今、「このままでいいのかな」という不安で眠れない夜を過ごしているなら、

まずは未来のことを考える前に、自分という存在に目を向けてみてください。

未来は、あなたが「どうありたいか」という軸の上で、初めて形を変えていきます。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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