こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
今日は、読者の方から届いたこちらのご質問にお答えしますね。
あと、ご質問者さまから、いろいろとご感想をいただきました。ありがとうございますm(_ _)m
なにかしらお役に立てていたら幸いでございます〜。
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ご質問内容はこちら
浅野先生への質問
お久しぶりです。前回も、前々回も、あたたかなご回答をありがとうございました。
読み返すたびに、自己探求の補助線を発見することができています。
浅野先生のお言葉によって、「近しい人との関わりへの抵抗感」が発動してる瞬間を感じられるようになりました。
そして、アプリでの婚活をいったん休止したある日、SNSのDMで頻繁に連絡を取り合う仲になる男性が現れました。
彼は私に、10年前(!)と5年前と3か月前に、それぞれファンメール?のようなものをくれていました。
信用できる共通の友人がいることと、SNSに上がっている複数の写真を見る限り、素敵なお人柄がうかがえました。
「男性だし」と考え、長らく返信もせずに放置していたのですが、何とはなしに「その日」は返信してみようと思えたのです。
それからほぼ毎日やりとりをするうちに、なんだか日常に色がつくようになったのです。
初めての彼氏以降まったく感じることのなかった、ふわふわとした恋心です。
しかし、それは最初だけで、だんだんと気が重くなってきました。
そして、DMでもかわいらしくない態度をとる自分に気づいてきています。
「いずれ会いましょう」という話をお互いするものの、日程が決定しないままです。
一見あちらのハードワーカーぶりが原因に思えるのですが、わたしは「近しい人との関わりへの抵抗感」がまさに発揮されていることを感じています。
「ハードワーカーなようだし、なんだかストイックな人そうだし、きっと怠け者な私は嫌われる」と大暴れするエゴの声の下に「会ってみたいよ」と願う本当の声にも気づいています。
浅野先生にお伺いしたいのは2つで・・・
・会ったことがないのに恋をすることはありえるのでしょうか?
・会う予定が立たない今、私が学ぶことがあるとすればそれはなんでしょうか?
ハードワークをする人の気持ちもとてもわかりますし、働くことはもともと大好きだったので、願わくば、わたしもまた バリバリ漫画を描いて、結婚もして、願わくば子供も欲しいと考えています。
ネタ募集ネーム:ポーチドエッグさん
会ったことがない人に恋をするのは、「普通に起きえる」こと
ではまず「会ったことがないのに恋をすることはありえるのでしょうか?」というご質問からお答えしますね。
会ったことがない相手に恋心を抱くことは、普通にあり得ます。
それがどのような恋心なのか(相手を理想化しているのか、それとも純粋な興味関心を向けているのか)などは別にして、「好意を抱くことはあり得る」でしょう。
以下は「会ったことがない人に恋をする理由」の一つの考え方としてお示しする例です。
感性豊かな方は相手を感じ取りやすい傾向がある
例えば、ご質問者さまのように(いただいたご質問から僕が推測している部分ですが)
- 言葉から相手の誠実さを読み取れる感性
- 感情の微細なニュアンスに敏感
- 誰かのために頑張れるハートの持ち主
こうした方は、テキストベースのコミュニケーションでも恋心が芽生えやすくなるかもしれませんね。
確かに、会ったことがない人に一方的な恋心を抱くのは、リアルな人間関係のか変わりに対する回避行動であったり、いわば“妄想”のようなものである場合もあるでしょう。
そこは僕の否定しませんよ。(まさにケースバイケースです。)
ただ、顔や実態が見えないにせよ、相手の言葉などで思い描くイメージが鮮明になるタイプの方の場合、純粋に相手に興味を持つことだってあり得ると思うのです。
もし、そうだとしたらこれは「あなたの感性が反応した」ということなのかもしれませんよね。
デジタルコミュニケーションの研究から
デジタルコミュニケーション研究──特にWalther, J.B.(1996)による「ハイパーパーソナルモデル」では、こう説明されています。
受け手の “理想化” が起きやすい
テキスト中心のやり取りでは、相手の情報が限定されるため、受け手が「自分に都合のいい形」で相手を解釈しやすくなる、とされています。(これを「相手の理想化」と呼びます)
相手も“良い部分だけ”を送りやすい
送り手は自分の見せたい部分だけを選択して表現しやすく、ネガティブ要素は隠しやすい。
この「選択性」が、やり取りの印象をさらに良くします。
“良い印象→好意的な返信→もっと良い印象…” のループが起きる
Walther はこれを“強化ループ(フィードバックループ)”と呼び、やり取りを重ねるほど親密さが増幅されやすいと述べています。
その心の奥では「自己回復」が動いている
また、一般的に恋心が動くとき、多くの人は「その相手が特別だからだ」と考えます。
しかし実際にはそれ以上に、あなた自身の心の回復プロセスが動き始めたサインであることが多いのです。
心が疲れ果てているとき、余裕がないときほど、恋心ってなかなか抱けないんです。
相手を好きになるということは、ある意味で相手の影響を受けることを決めること、ですからね。
余裕がないのにそんなの無理、と無関心になることが多いんです。
が、何らかの理由で、少しづつでも自分の心が回復してきている段階であれば、好きなものや人に興味を持つことができる。
だから、ご質問者さんは、”ふと返信してみよう”と思えたのかもしれないな、と僕は見ている部分もあります(実際にお会いしたことがないので確かなことではないでしょうが・・・。)
それは、どこかで「他者とつながりたい」という本来の感性が、もう一度息を吹き返した瞬間なのかもしれない。
だとしたら、それはある意味で喜ばしいこと、と言えるのかもしれませんね。
ではなぜ、恋心のあとに“気が重くなる”のか?
あと、どうして恋心の後で気が重くなるのか?についてもサラッと触れておきます。
まず、僕たちは好意を抱くと、”緩む”のです。
好きなものや人に囲まれていると、リラックスするといいますか、心も体も緩和する傾向があるんです。
が、実際に会ったことがない人と関わる、というプロセスや、相手にどう思われるだろうか?と考えてしまう場合、”緊張する”のです。
この緩和と緊張の差が大きいと、まぁ気が重くなる、みたいな感覚を感じることもあるでしょうね。
あと、見逃せないのが、「親密さへの“抵抗”」が作動している場合です。
・一歩近づく
→ 愛着システムが動く
→ すると同時に「防衛」も作動する
これは愛着理論でもよく知られた反応のことですね。
特に、
- 頑張りつづけて認められてきた人
- 弱さを見せたくない人
- 自立が美徳になっていた人
こういう方は、親密さの入口で
・気が重くなる
・かわいくない態度が出る
・距離を取りたくなる
という反応が出やすいんです。
逆に言えば、そう思わなくて済む相手や関係のほうが気楽だと感じやすいんですね。
会えない今から、あなたが学ぶべきことがあるとしたら
さて、もう一つのご質問
「会う予定が立たない今、私が学ぶことがあるとすればそれはなんでしょうか?」
についてもお答えしますね。
個人的には、あえてそこまで考える必要はあるのかな?と思う部分もありますけど(^^;
もし学びのテーマをあげるとしたら、こんな感じじゃないでしょうか?
会えないという事実がもたらす感覚を大切にすること
やっぱり興味や好意を抱く相手に会えない、となると、いろいろと感じることがあると思うんですね。
この感じる気持ち、感覚を大切にすること。
少なくとも否定的に取り扱わないことが大切かな、と思うんですね。
むしろそれは心が感じ取っていることがある、ということなので、これを抑圧したり否定するのではなく、「そっかぁ、そう感じてるんだね、私」と扱ってあげること。
これは一つ、自分の感情を大切にする視点としての学びになると思うんですね。
これは自己存在感を回復する練習でもあります。
とはいえ、感じていて苦しいことまで無理に受け入れてねってことではないんですよ。
そんな場合は、人と分かち合う(人に話す)ことが重要ですよね。
今のこの状況で感じることを否定しない
また、「近づきたい私」と「怖い私」の両方を否定しないことでしょうかね〜。
どちらかを消そうとするほど、自分が苦しくなります。
- 本当は会いたいと思ってる
- でも嫌われそうで怖いとか、しんどくなったらどうしようって思う
- また相手のために頑張ってしまいそうで怖いかも・・・
もし、こういった気持ちが湧き出てきたら、そこで自分と向き合うといいと思うんですね。
心のパターンって、いわば”その状況”にならないと発動しないことって多いんですよ。
日常の中では発動しないこともたくさんあります。
だからこそ、今のこの状況で感じることを否定しないで、例えば・・・
「また相手のために頑張ろうとしている自分がいるなぁ、それもありだけど、しんどくなるまでやる必要はないよね、でもそれってどうしたら実現できるんだろう?」
みたいに、自分を一歩前に進めていくといいんじゃないでしょうか?
“元・超自立の私”ではなく、“今の私でつながる”を意識すること
まぁこう書くと「このカウンセラー、すげー怖いことをしれっと書きやがる(^^;」と思われると思うんですけどね。
長く背負ってきたパターンや役割ではなく、「フラットな自分」のままでつながるというプロセスを学び始めることなんだと思うんですよね。
人って、素晴らしい部分にほれて、ダメな部分には幻滅する、なんて側面がありますけどね。
大人になればなるほど、この差が縮まっていくものですよね。
「えーあなたってこんな部分があるだなんてありえない」とは思いにくくなる、というか。
もちろん相手の一部を自分が扱えないなら、それはそれで仕方なしなのですが・・・。
つまり、自分の中でも、人とのつながりでも、「自分もそう見られてんだよな、それでいいいんだよね」と思えるようになっていくと楽ですかね。
これは、“今の私”を許可する練習にもなりますよね。
等身大の自分や今の自分で相手とつながる、いわば強力な準備体操になるので。
その上で恋心が動いた、としたら、それは紛れもない好意だと思いません?
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最後に
ポーチドエッグさんはこう書いてくださっています。
「会ってみたいよ」という声。
「怠け者な私は嫌われる」という声。
どちらにも気づいている、ということが素晴らしいわけですよ。
ここ、より“本心”に近いのは、僕から見るとこうです。
もう一度つながりたい。だから怖い。
親密さには必ず怖さが伴います。
特に自立型の人は、必ず一度つまずきます。
だからこそ、いい意味で”怖がっていい”んです。
また、この手の怖れは、ある意味今の自分を守るためにも作用しています。
つまり、もしかすると危険が近づいているから怖がっている可能性もある。
だから、怖れを丁寧に扱うことは自分のためになることなのです。
無理に焦らず、急がず。
しかし、怖いからと言って「誰かとつながりたい気持ち」までを消さないこと。
このスタンスを取ることができるかどうか。
(この怖れにどれだけの”緩和”を当てるか、なんてことを僕は考えますけど・・・それはまたカウンセリング内の話ですねぇ。)
すると、それこそ自分自身をよく知ることにもなりますし、自分の反応がよく分かると「受け入れないほうがいい関係」も分かってきます。
このように、自分の反応をよく知ることで、人生は確実に前に進んでいくものだと僕は思いますよ。
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