甘すぎない恋愛心理学

彼はなぜ結婚に踏み出せないのか?“好きなのに前に進めない”男性心理

すれ違う男女

さて、今日は最近伺うことがまた増えてきたお話を少しまとめようと思います。

「彼とは仲良しだし、私のことを大切にしてくれてる。でも、結婚とか将来の話になると急に黙るんです」

…これ、共感される方多いんじゃないでしょうか?

この「今と未来」に対する彼の態度のギャップ、女性にとっては不安ですよね。

「愛されてないの?」「私との未来を考えてないの?」と感じても不思議じゃありません。

でも、僕の臨床経験から見ると、これは必ずしも「気持ちがない」からではなく、男性特有の心理的メカニズムが関わっていることが多い、と見ることもできます。

ただ、先に断っておきますが、自分の人生観やライフスタイルを変えたくない男性、つまり「結婚や子供を求めていない人」もいます。

この部分はその男性の自由と権利でもありますので、僕はどうのこうのお伝えするつもりはありませんよ。

この記事では、そうではない男性・・・

「心の奥底では好きな人との結婚や子供を求める気持ち」があっても、何故かそこに踏み出せない人の心理についてフォーカスしていきたいと思います。

できるだけ多くのカップルの衝突の要因が解消され、良い関係が長く続くことを願いつつ、ですね。


なぜ「好きなのに前に進めない」のか?

好きなのに前に進めない。

本当は求めているのに躊躇してしまう。

これは、結婚や子供に限った話ではなく、仕事でも将来のヴィジョンに関しても「本当は求めているけど、それに近づかない」という反応を見せることがありますよねぇ。

僕もそうですよ、そういった反応を見せる部分があります。

そして、このような反応に、いわば”脚本”をつけてしまうことってあると思うんです。

例えば、「自分が〇〇だからダメなんやな」とか「愛がないからだろう」と推測すること。

これって、確かに叙情的というか、人間的というか、ある意味ドラマチックなものですよねぇと、僕も理解しているところです。

ただ、カウンセラー目線でみると、その脚本が見えなくしている「反応」も多いな、と思います。

別にドライな視点で現実を見ろ、とか、感情なんて邪魔ですよ、とお伝えしたいわけじゃありません。

心の反応のことを考慮せず二人の脚本を書いてしまったがゆえに、すれ違っているカップルはめちゃくちゃ多いよね、とお伝えしたいだけなのですねぇ。

では、まず「なぜ好きなのに前に進めないのか?」

そこにまつわる心の反応について代表的な事例をいくつか書いておきますね。

1. 自立が強すぎる

多くの男性は「誰にも頼らず、自分でやるのが当たり前」と思って生きてきている人が多いです。

今、誰かに頼る生き方をしている人であっても、心の奥底で「誰も頼らない」ということに価値を見やすい、といいますかね。

だから、結婚や子供に関しても「一人で背負う責任から考える人」も少なくないのです。(実際にどこまで背負おうとするかは別にして、ですよ。)

要は考え方の問題といいますかね。

そもそもパートナーシップとは、どちらか一方に何かを丸投げするようなものではないはず。

本来は「二人で支え合い、分け合うもの」のはず。

なのに、真面目な男性ほど「俺が全部やらなきゃ」と思い込んでしまうわけです。

特に、「まだ経験していない未来のこと」に関して、自分ひとりで背負い込もうと考える事自体、結構なストレスなはずなのです。

仕事や将来設計のことに関しては青写真を描けている人でも、恋愛・結婚・家庭・健康などの麺に関しては、その青写真が描ききれない、なんてことも起こり得ると思いますしね。

だから、ある意味「準備しづらい」んですよね、結婚や子供などの未来に対して。

しかし、自立が強い人ほど、その準備しづらく不確定要素の多いことに対しても一人で責任を取ろうとする(誠実な)人も少なくないのですよ。

さらに「完璧主義」が絡むと、「絶対に失敗したくないけど、失敗しない方法がわからん」となって身動きが取れなくなる場合も・・・。

だから、足がすくむ。

でもまぁ、「そりゃそうっすよね〜」と僕は思いますよ。

「好きな気持ちだけじゃどうにもならん」と思う人のお気持ちもわからんでもないですよ。

ただ、これは心理的に言えば「過剰な自立」の表れと言えそう。

一人で解決できないことを一人で解決しようと考え続けている状態に近い、と思いますよ。


2. 競争心の裏返し

また、潜在的に男性の内面には「競争心が内蔵されている」という見方もできます。

要は、何かをやるなら「勝たなきゃ意味がない」「結果を出さなきゃ意味がない」と考えやすいってことですね。

これは男性の中にあるヒロイズム的要素と結びついているだろうと僕は見ています。

だから、結婚生活や父親になることでさえ、日々の営みではなく「人生の舞台」みたいに捉えてしまう男性も少なくないんじゃなかろうか、と。

いいか悪いか別にして、そこには若干の理想主義が見えるんですけども。

ただ、この理想主義ってのはちょっと厄介で。

理想通りにしたいという思いには「パートナーや家族を不幸にしたくない」という願いと共に、「そうできないなら行動しないという消極性」を作るんですよね。

パートナーを不幸にしたくないと願える人ほど、「理想のとおりに行動できない自分を批判する原因になる」といいますか。

ただ、日々の営みって、計画通りに進むものではない側面がありますよね?(計画することが悪いと言っているのではなく、イレギュラーなことは起きるという意味です。)

つまり、よく男性が考えるであろう「結婚してちゃんと相手を養えるのか」とか「父親として立派でいられるのか」といった先の見通しを考えている時点で、いい人であることは確かなんだろうけど、立たない見通しを考えすぎて消極的になりすぎてしまったりします。

で、その状態にある男性の無意識には“他の男性や父親との勝ち負け”が意識されていることも少なくない。

要は、”負け”を見せたくないからこそ、最初の一歩が出ない、みたいなね。

でも、そもそも幸せって人それぞれで違うもので比較できるものじゃないので、勝ち負けなんて決められるものじゃない、と思いません?

つまり、「とりあえず進まないと始まらないじゃん」と女性が思う場面で、男性は「始めても負けを晒すリスク」を考えてしまう人もいるのでしょうね。


3. 「心をシェアする」経験の乏しさ

恋愛では、好きだとか一緒にいたいなどの感情を見せられても、結婚や子育てのように「生活も心も丸ごと分け合う」経験をしたことがない男性もいますよね。

また、そこまで丸ごと分かち合おうとしたけど別れることになった、なんて手痛い経験をすることだって人生の中では起こり得ること。

すると、女性の「心も体も想いも愛する人とシェアして生きよう」という覚悟に、気付けないし、うまく受け止められない人もいるやもしれません。

結果として「なんか怖い」「先が見えない」とブレーキをかけてしまうわけですね。


女性が感じる「不安と警戒」

そんな彼を前に、女性はこう感じやすくなるのではないでしょうか?

「気持ちがないのかな」
「本気じゃないのかな」
「このまま進んで傷つくのが怖い」

この手のお話は僕もたくさんうかがわせていただいております。

たしかにこれは女性の存在理由を揺るがす不安なので、なかなか一人で対処することが難しいものでもあります。

そもそも彼の意思はコントロールできるものでもないですしね。

さらに「それでも彼と一緒に未来を見たい」という思い、つまり、本気が強ければ強いほど、気持ちの揺れ幅が増して苦しくさせることもあるでしょう。

だから、本意ではないにしても、「苦しすぎて諦めようとする」。

そんな女性の皆さんのお声、うかがうことも少なくありませんよ。

ただ、僕としては「そこまで思えるから苦しいけれど、でもそれ自体は素晴らしいことなんだ」というスタンスで受け止めさせていただいております。

そして、「そこまでハードコアに自分の価値をぶつけようとしなくてもいいっす」とお伝えすることも少なくありません。

これは決して「愛するな」という意味じゃありませんよ。

「今のあなたで十分ではないでしょうか?」とお伝えしたいだけなのです。

今、彼は「未来を拒んでいる」ように見えるけど、それでもあなたのそばにいようとするなら、「女性の中にある愛と共に生きる道を知らない」だけ、ってことも少なくない。

つまり、女性の意思や覚悟を受け止めるという発想や、心のキャパが育まれていないだけかもしれない。

だから、彼もあなたも悪くない。

そのスタンスで考えない限り、まぁ「罪と罰」「愛がある・愛がない」という二元論にハマって白黒思考という適応的ではない認知が生じる可能性もあるんですよ。

まぁ、基本僕にご相談いただく女性のみなさんって、愛する気持ちが強い人(それだけ人を幸せにできる可能性が高い人)が多いので(^^;

それ以上やるとオーバーワーク、いや、単独で大気圏突入し燃え尽きかねないので・。

そのあたりのバランスを取るようにカウンセリングさせていただいております、はい。

ボヤキをひとつ

まぁ、男性心理ってややこしいと思われる方も少なくないのかもしれません。

特に、女性の「愛そう」という意思に気付けないなんて、もったいない話です。

でも、僕の経験上、そんな不器用な彼ほど「一度その感覚を知ったら」めちゃくちゃ誠実にコミットする人も少なくないですよ。

「知らないから、動けない」だけ。

「そんなに思われているとは知らなかった」って言葉、聞いたことないです?

だから、女性が「私も一人で抱え込まなくていい」と思える関わり方が、案外カギだったりします。

逆に、女性のみなさんが一人で右往左往されている姿を見て、「自分は好きな人も幸せにできないのか」と感じて、距離を取ろうとする男性も少なくない、といいますか。

ね〜、なんか切ないすれ違いっすよね、これ。


男性心理を理解するためのヒント

1. 「怖さ」を理解する

彼は「愛してない」から進まないのではなく、「知らないから怖い」だけかもしれない。

まずこの発想は持っておいて損はないと思います。

ただし、彼が怖れている未来の不安を女性側が解消することって、相当難しいとも僕は思います。

僕もカウンセラーを長くやっていますが、未来の不安を今すぐ消す魔法は持っていませんし。(徐々に解消する方法はないわけじゃないですけどね〜)

なぜなら、この手の不安は(先程も書きましたように)

「まだ起きていないこと」

に向けられていることが多いからです。

結婚や子供に対して躊躇する人にとって、結婚や子育ては未知の冒険でもありますね。

ある程度のリファレンス先(親や親戚、友達など)があったとしても、自分の身に起きることまで想像はできないですし(想像してもしきれないでしょうし)。

ならば、大切にするべきは、「今」なのですよ、きっと。

それ以外、できることない、って僕は考えます。

なので、彼の態度を見て「あ、私、未来のパートナーに選ばれていないんだ」とか考える必要はそこまでないわけですよ。

そもそも「予測できない不安の中に突入する怖れ」と感じるときって、ぶっちゃけ誰が傍にいても一緒ですから(笑)

これを例えるなら「受験」の時のことを思い出してくださいな。

合格祈願のお守りを握りしめて受験会場でドキドキしていたとしても、いざ試験が始まって集中して問題を解いているときに、お守りのことまであまり思い出さないでしょ?

そして、問題を解いている最中に効いてくるのは「今までの準備」ですよね。

どれだけ過去問を当たったか、復習したか、時間を投資できたか・・・。

そんな「心の足場」がしっかりしているからこそ、落ち着いて取り組める。

これはきっとパートナーシップでも似たようなことが起きるのだと僕は考えています。

今の関係がしっかりしているから、見えない未来に飛び立てるときが来る。

あとで彼が「うわーめっちゃ怖かった〜」って思ったとき、あなたがそばにいればいいだけではないでしょうか?


2. 「信頼を差し出す」伝え方

あと、未来に対して不安を抱えている人に対して

「私はあなたと未来を見たい」と迫るのは、まぁ不安を喚起しやすいかもしれませんよ。

それよりも「一緒に不安を持つよ」と”軽く”伝える方が響く場合があります。

真面目な男性ほど「全部俺の責任」と思っているからこそ、女性から「一緒に持つ」というメッセージを受け取った瞬間、ふっと肩の力が抜けることがあるんです。

それは確かに「依存」なのですが、見方を変えれば「心理的な軽快感がある」とも言えるのです。

いわば、「緩和」の要素があることで前向きな発想になることは、何も結婚や未来のことだけじゃなく多くに当てはまる考え方です。

つまり、今の関係の中にある深刻さや緊張感をいかに解くか、が鍵。

よって、僕のカウンセリングを受けていただいた方はご存知かもしれませんが、こいつ(アサノ)は、ふわっと受け答えしている事が多いし、「それ、考えなくていいっすよ〜」みたいなことを平気で言うわけでございます(笑)

それは向き合っていないのではなく、どれだけ深刻さや緊張感を解くかを考えているから。

・・・ということにしておいてくださいm(_ _)m


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まとめ

ということで今日の話をまとめると・・・

  • 男性が「結婚や子供に踏み込めない」のは、気持ちがないからではなく、心理的な自立心や競争心、未来をシェアする感覚の乏しさが原因のことも多い。
  • 女性の「覚悟や思い」に気付いていない男性は少なくない。
  • 不安を理解しつつ、「一緒に抱えていこう」という信頼の差し出し方が、彼の一歩を後押しすることもある。

その感覚を、彼に気付かせてあげられるかどうかが、関係を進める大きなポイントになるのかもしれません。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー・トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績10,000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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