こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
今日は、読者さまから届いたご質問にお答えする形で、
「支える私」から「隣に立つ私」へシフトしようとしたときに起きる、関係の“成長痛”
についてお話ししようと思います。
Index
今回いただいたご質問
浅野先生へのご質問と感想
前回、前々回とわかりやすい回答をしていただけてとても助かりました。
自己存在感についても、あれから私なりに日記に書いて整理をしてみました。
そしたら「アプリで他の女性を探さないで」という独占欲的な感情や「彼さんを好きなってよかった」という感情も溢れてきて、自分の感情の広さに驚きながらも、楽しく自己存在感を見つめ直しています。
今回のご質問は「支える私でいようとするほど関係がズレる理由〜“共に生きる”へのシフトの瞬間〜」を読んで感じたことです。
私は彼の隣を歩んでみよう、もう少し頼ってみようなどと、少しずつ自分の立ち位置の変化を受け入れながら彼と接しているつもりです。
LINEで「将来の話をしたいっていうのは、結婚や子どものことの答えを出すわけじゃなくて『こうなれると嬉しいかな』『こういうことが不安かも』という価値観を知りたい感じだよ」「私は不安に振り回されやすいところもあるけれど、今回は不安から伝えたわけじゃなくて、私の思いを知ってほしくてLINEしたんだよ」とLINEで伝えました。
彼からは「読んでみるね」と返信があり、そこから何通かLINEをして、現在は未読の状態です。仕事の忙しさもあるとは思うのですが……。
私には持病があるので、彼は過去から現在の5年間、見守る姿勢で私を支えてくれていました。
定職に就けなかった期間も、あえて口出しをせずに、私の体調を最優先にしていたくらいです。
見守る姿勢というのは、私が彼との関係で疑問に感じて不安になってしまった時に、誠実に回答をしてくれる、という感じです。
今は私の中の不安も、私自身が工夫をしながら対処出来るようになってきました(日記を書く、ストレッチをする、趣味に没頭するなどです)。
彼に不安をぶつけてしまう段階を経て、今は自分の不安に対してセルフケアをしながら、就活の状況を伝えたり、就活をしていく中で感じたコミュニケーションの疑問を彼に相談をしてみるなど、状況の共有や相談をする形に変化をしました。
関係性の変化の段階に入ったのかな?と感じています。
今回の質問は、今まで私に配慮をしてくれていた彼の方が、彼自身の立ち位置の変化に適応できていない、あるいは受け入れられる状態ではない時には、私はどんなふうに彼と接すればいいのでしょうか?ということです。
ご回答していただけると嬉しいです。
ネタ募集ネーム:毛糸さん
関係は「片方だけが成長すると、一時的に不安定になる」
まず、ここまで丁寧に自分と向き合い、自分の在り方を調整してこられたこと。
そして、「彼の立場」も同時に考えながら質問をくださっていること。
その誠実さに、心から敬意を表したいなと思います。
*
さて、結論からお伝えすると、いまお二人の間で起きていることは、
「関係のステージが変わるときに起きる、ごく自然な“成長痛”のようなもの」
と見立てることができるかな、と思います。
これまでは、
- あなた:不安を抱え、支えられる側・見守られる側
- 彼:体調や状況を最優先し、見守る側・支える側
という役割分担が、長い時間をかけて固まってきていました。
そこに今、
- あなた自身の自己存在感が育ち、セルフケアができるようになってきた
- 「不安のぶつけ先」ではなく、「価値観を共有する相手」として彼を見ている
- つまり、「支えられる私」から「隣に立つ私」へと、立ち位置が変化しつつある
この変化は、とても素晴らしいことです。
同時に、彼のほうが“まだ、その新しい関係の形に慣れていない”可能性があります。
人間関係って、「片方だけがスッと次のステージに行く」と、一時的にバランスが崩れるんです。
これは、どちらが悪いわけでもなくて、関係が成熟していくときに必ず通る“段差”のようなものだと思ってもらえるといいのかな、と思います。
彼に起きているのは「役割再編」による戸惑いかもしれない
もう少し、彼側の心理のほうも見てみましょう。
彼はこの5年間、
- あなたの体調や状況に配慮しながら、そっと見守る
- あなたが不安なときには、誠実に答えて安心させる
- 過度なプレッシャーや負担をかけないように気をつける
という、いわば「守る側・支える側のポジション」を担ってきたように見えます。
これはとても尊いスタンスですし、簡単にできることではありません。
ただ、人は長くひとつの役割を続けると、
- 「自分はこのポジションでいるのが“正解”なんだ」
- 「この関係は、こうあるべきなんだ」
という、“関係の前提”を無意識に作り始めます。
そこに、あなたの変化がやってきた。
- あなたは以前より、自分の不安をセルフケアできるようになった
- 不安からではなく、「自分の思い」を伝えられるようになってきた
- 将来や価値観の話を、「答えを迫るため」ではなく「共有するため」に投げられるようになった
これはまさに、
「支えられる私」から「共に歩む私」へと、自己存在感ごとポジションが変わってきたサインです。
つまり、あなたが一歩先に、関係の次のステージに足をかけた状態。
その瞬間、彼の中ではこんな揺れが起きる可能性があります。
- 「あれ? 今までみたいに支えるだけでいいわけじゃないのかな?」
- 「彼女が前より自分で立てるようになってる…俺の存在(役割)って何だろう?」
- 「嬉しいことなんだけど、今までと同じ接し方でいいのか分からない」
- 「将来のことを考えるって、責任の重さも変わる話だよな…」
この戸惑いは、決して「あなたの変化が悪い」からでも、「彼の愛情が足りない」からでもなくて、長く続いた役割が再編されるときに、多くの人が通る自然なプロセスなんですよね。
未読のまま止まっているのは「考えるためのストップボタン」の可能性
では、今の「未読のまま」の状態はどう読めるでしょうか。
もちろん、外側の事情(仕事の忙しさなど)も影響していると思いますよ。
ただ心理的には、
「関係のフェーズが変わりそうな会話に対して、慎重モードに入っている」
と見てもいいかもしれません。
男性は、「将来の話」「価値観のすり合わせ」というテーマに触れると、
- ・この関係をどうしていきたいのか?
- ・自分は何ができるのか?
- ・今の自分のままで、その未来を引き受けていいのか?
…といったところまで、一気に考え始めることがあります。
そのとき、
- 返事を急いで曖昧なことは言いたくない
- 「読んだよ」とだけ返すのも、誠実じゃない気がする
- でも、今の自分はまだ答えが出ていない
となると、
「一旦、止めておこう」
というストップボタンを押すことがあります。
それが結果として「未読」となる可能性もあるわけですね。
ここで大事なのは、
未読 =「あなたをないがしろにしている」ではなく、
未読 =「この関係をどう受け止めるか、自分なりに考える時間を取っている」
という読み方もできる、という視点です。
今、“やらなくていいこと”を先に整理しておきましょう
では、あなたは今、どう動けばいいのでしょうか。
その前にまず、「やらなくていいこと」から整理してみます。
① 返信を急かすこと
「読んだ?」「どう思った?」と催促したくなる気持ちは、すごくよく分かります。
ただ、いま彼の中で起きているのは「関係の形をどう受け止めるか」というテーマなので、
ここで急かされると、彼の防衛が強くなってしまうこともあります。
② 善意から「説明し直そう」とすること
「不安から言っているんじゃないよ」「プレッシャーをかけたいわけじゃないよ」と、
さらに丁寧に説明したくなるかもしれません。
ただ、これも彼にとっては「またちゃんと答えなきゃいけないテーマが増えた」と感じられ、
余計にハードルが上がることがあります。
③ 不安になって「支える私」に戻ってしまうこと
ここが一番大事です。
彼からの反応が止まると、
- 「あ、やっぱり私は隣に立っちゃいけないんだ」
- 「今までどおり、不安を出さない“いい子の私”でいたほうがいいのかも」
と感じて、これまで培ってきた「自分で立つ力」や「思いを伝える力」を引っ込めたくなることがあります。
でも、それをしてしまうと、せっかく始まった「支える関係 → 共に生きる関係」へのシフトが、また元に戻ってしまうんですね。
では、どう接すればいいのか:
キーワードは「追い越さない」&「新しい基準を静かに続ける」
ここからが本題です。
いまの段階で僕が提案したいのは、
「彼の変化を追い越さない」
「でも、あなたが手に入れた新しい立ち位置は手放さない」
という接し方です。
1)“支えられる私”を隠さなくていい
まず、「もう私は支えられちゃいけない」と考える必要はありません。
むしろ、
セルフケアもできるし、自分の思いも言葉にできるようになってきた、
それでもなお、弱さや不安を持つ私のまま隣に立つ、
というスタンスが、とても大事になります。
彼にとっても、
- 以前の「守るだけの彼女」ではなく
- 「自分の足で立ち始めた彼女」でもあり
- それでも「頼ってくれていい彼女」
という姿を、何度も体験していくことで、
新しい関係の形に少しずつ慣れていくことができるからです。
2)“重くない共有”を、細く長く続ける
将来の話や大きなテーマについては、一旦そこで止めておいても大丈夫です。
そのかわり、
- 「今日は就活でこんなことがあったよ」
- 「こんなことで笑っちゃった」
- 「日記を書いてたら、こんな発見があった」
のような、“今のあなた”の小さな共有を、ときどき投げておく。
これは、
- 「私はあなたと日常を分かち合いたい人なんだよ」
- 「不安ではなく、存在そのものを一緒に感じたいんだよ」
というメッセージを、さりげなく伝えていく行為でもあります。
大事なのは、“答えを要求しない共有”にしておくこと。
「返信があったらラッキー」ぐらいの気持ちで、
関係の空気を閉じきらないように、扉を少し開けておくイメージですね。
3)「彼も彼なりに揺れている」という前提を持つ
そして、心の中ではこんなふうに捉えてみてほしいのです。
「今、揺れているのは私だけじゃなくて、彼のほうも“新しい立ち位置”に慣れている途中なんだ」
相手の揺れを「愛情不足」や「誠実さの欠如」とだけ読むと、自分を守るために、
どうしても防御的・批判的な見方になってしまいます。
もちろん、彼の行動があなたを傷つけている側面もあるでしょう。
そこを無視する必要はありません。
ただ同時に、
- 「守る側」だった彼が
- 「隣に立つパートナー」に役割を変えていくためには
- 彼自身の中でも、“責任”や“距離感”の感じ方を調整する時間が必要になる
という視点も持っておくと、
あなたのほうに、少し余白と優しさが残せるようになるかもしれません。
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これは「関係が壊れるサイン」ではなく、「関係が変わる入口」で起きる揺れ
最後に、全体を一言でまとめると、
今お二人の間で起きているのは、関係が壊れる前触れではなく、
「支える/支えられる」から「共に生きる」へ変わる入口で起きる自然な揺れ
と、僕は見立てています。
あなたはすでに、自分の不安と向き合い、自己存在感を見つめ直し、
「不安からではなく、思いから彼に言葉を届ける」という段階に来ています。
だからこそ今度は、
彼が「新しいあなた」と「新しい関係の形」に慣れていくための時間が必要になっている。
その時間をどう過ごすかが、これからのテーマなんだろうな、と思います。
なので、いまのあなたへの僕からのメッセージは、こんな感じです。
「もう、二人の未来について話してもいいくらい、あなたは自分の足で立てるようになってきています。
だからこそ彼にも、“今のあなた”を受け取る時間が必要なのかもしれません。」
そのうえで、どうしても不安が強くなってしまったり、
「ここからどうしていけばいいか分からない」と感じるときがあれば、
そのときは、またいつでも相談してください。
お二人のペースを尊重しながら、一緒に見立てを整理していきましょう。
今日のお話が、同じように「支える私から、隣に立つ私」へシフトしようとしている方の
小さなヒントになれば嬉しいです。
読むから、整えるへ。
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