甘すぎない恋愛心理学

「見返りを求めてしまう心理」とは?恋愛や職場で苦しくなる理由と手放し方

腕組みして考え事をする女性

「こんなに尽くしたのに、どうして伝わらないんだろう」
「見返りを求めちゃいけないってわかってるけど……やっぱり虚しい」

恋愛でも、家族でも、職場でも、誰かのために動いたのに、その気持ちが返ってこないと、切なさや寂しさを感じること、ありませんか?

「見返りを求めてしまう自分」を責めそうになる。
でも、それって、そもそも“わがまま”なんでしょうか?

この記事では、「見返りを求めてしまう人の心理」について、恋愛・家族・職場・友人関係など幅広い場面の実例をもとに、その背景にある心のメカニズムと、手放すための実践的なヒントをまとめています。

「見返りを求める自分が嫌だ」「つい相手に期待してしまい、苦しくなる」と感じる方は、ぜひ最後までお読みください。

あなたも「見返りを求めてしまう」ことで悩んでいませんか?

「見返りを求めてしまう」と言っても、その現れ方や感じる場面は人それぞれかもしれません。

  • 恋愛・パートナーシップで: 「こんなに好きなのに、同じくらい愛してくれない」「尽くしているのに、大切にされている気がしない」
  • 友人関係で: 「いつも相談に乗ってあげるのに、私が困っている時は助けてくれない」「私ばかり誘っている気がする」
  • 家族関係で: 「親のために色々やってあげているのに、感謝の言葉一つない」「兄弟(姉妹)ばかり贔屓されている気がする」
  • 職場で: 「他の人より頑張っているのに、正当に評価されない」「手伝ってあげたのに、お礼も言われない」

こんな風に感じて、相手を責めたくなったり、逆に「見返りを求めるなんて、自分はなんて嫌なやつなんだ…」と自分を責めたり。どちらにしても、心が疲れてしまいますよね。

「見返りを求めてしまう心理」は、単なる“わがまま”ではなく、心の深層にある感情の未処理や、関係性のパターンによって生まれることが多いものです。

特に、見返りを求める人の心理には、自己価値の低さ、過去の傷つき体験、そして愛情の確認欲求など、複雑な背景が重なっていることが多く見られます。

「見返りを求める」とはどういうことか?

そもそも見返りを求めるとはどういうことなのでしょうか?

言葉の意味としての「見返り」はこういう意味となります。

見返り:相手のしてくれたことにこたえて何かをすること。(出典:goo辞書

これを日常レベルで登場する意識として表現すると、おそらくこうなります。

「自分の頑張りや行為などを他人から認めてほしい」
「自分が差し出したものの反応や見返りとしての何かがほしい」という気持ち

心理的な意味でとしての「見返り」とは、こう考えられます。

自分の行動・反応に対する報酬となる刺激や快を感じる感情を他人から望む気持ち。
もしくは、その刺激や感情などが得られなかったときの不快感から、さらなる要求をする気持ち。

もう少し突っ込んだ書き方にすると、見返りとは「取引の中で求めるもの」であり、「自分の好意に対して、自分が納得できたり、良い気分になるだけの反応がほしい」ということかもしれませんね。

見返りを求める人と、求めない人の違いはどこにある?

見返りを求める人は、感情の満足や充足感を「他人からの反応」から得ようとしています。

一方、見返りを求めない人は、それよりも「自分の納得感」や「やりたかったからやった」という“内的な理由”で完結できる傾向があります。

また、他人に期待しないのではなく、「期待が裏切られることがある」ことを前提に、人間関係を見ていることも多いです。

これは、自己肯定感というより「他人との心理的な距離の取り方」の違いとも言えるかもしれません。

このような視点からも、自分のパターンを見直してみると、よりラクな人間関係のヒントが見えてくることがあります。

見返りを求めない人との違い

なぜ?「見返りを求めてしまう」5つの心理的な理由

では、どうして僕たちはそんなにも見返りを求めたくなってしまうのでしょうか?

一般的に「損得勘定が強い人」と誤解されがちですが、心理学的に見ると、もっと深いところに原因が隠れていることが多いんです。

主に考えられる5つの理由を見ていきましょう。

理由1: 強い「無価値感」や「罪悪感」を抱えている

「どうせ私なんて…」「私には価値がない」「幸せになってはいけない」

心の奥底でこのように感じている(無価値感・罪悪感)と、「ありのままの自分では、何も与えてもらえない」という思い込みが強くなります。

だから、何かをしてもらったり、認めてもらったりするために、必死で何かを提供し、その「見返り」として承認や愛情を得ようとしてしまうのです。

理由2: 「私の気持ちは誰にも届かない」と感じている

自分の気持ちや思いが、大切な人に理解してもらえなかったり、受け止めてもらえなかったりした経験が続くと、「どうせ私の気持ちなんて、誰にも届かないんだ」という諦めや孤独感を学習してしまうことがあります。

これも対人関係における「学習性無力感」と呼べるのかもしれません。

その結果、「ちゃんと私のことを見て!」「私の気持ちに反応して!」という心の叫びが、「見返りを求める」という形で現れる場合があるんですね。

理由3: 「自己犠牲」の代償を求めている

本当はやりたくないのに断れなかったり、自分の気持ちを後回しにして相手に合わせてばかりいたり…。

このような「自己犠牲」を続けていると、心の中には「こんなに我慢しているんだから」「これだけ譲ってあげているんだから」という不満が溜まっていきます。

その不満の埋め合わせとして、無意識のうちに相手に「見返り」を期待してしまう、というパターンです。

理由4: 「愛されている証拠」「認められている証拠」が欲しい

根源的には、「愛されたい」「認められたい」「大切にされたい」という誰もが持つ自然な欲求が関係しています。

しかし、自己価値を感じられていないと、その欲求を健全に満たすことが難しくなります。

「今のままの自分では愛されない」と感じているからこそ、相手からの具体的な行動や言葉という「見返り(=愛されている証拠)」を過剰に求めてしまうのです。

理由5: 子どもの頃の経験が影響している

多くの場合、見返りを求めてしまう傾向の根っこは、幼少期の親子関係や家庭環境での経験にあります。
例えば…

  • 「いい子」でいる時だけ褒められた。
  • ありのままの感情表現を否定された。
  • 親の期待に応えようと必死だった。
  • 家族のために良かれと思ってしたことで叱られた。
  • 親や家族を心配しても、何もできなかった無力感を感じた。

このような経験を通して、「ありのままの自分ではダメなんだ」「何かをしなければ認めてもらえない」「私の思いは伝わらない」といった思い込み(学習)が形成され、大人になってからの人間関係でも、無意識に「見返りを求める」という形で繰り返してしまうことがあるのです。

見返りを求め続けることの辛さ

このように見返りを求めてしまう心理には、上記のような切実な背景があるわけですが、このパターンを続けていると、やはり自分自身が一番つらくなってしまいます。

  • 期待が裏切られて傷つく: 相手が期待通りの反応をしてくれないたびに、深く傷つき、悲しくなったり、怒りを感じたりします。
  • 人間関係が悪化する: 過度な期待や要求は、相手にとって負担となり、関係がギクシャクしたり、人が離れていってしまったりする原因にもなりかねません。
  • 常に心が満たされない: 見返りを「外側」から得ようとしている限り、根本的な心の不足感が満たされることは難しく、常に何かを追い求める状態が続いてしまいます。
  • 自己嫌悪に陥る: 「また見返りを求めてしまった…」と自分を責め、さらに自己肯定感が下がってしまう悪循環に陥りがちです。

「見返りを求めない自分」になるための具体的な5ステップ

扉を開けるイメージ

では、この苦しいループから抜け出し、「見返りを求めなくても大丈夫な自分」になるためには、どうすればいいのでしょうか?

ここからは、具体的なステップをご紹介します。焦らず、できるところから試してみてくださいね。

Step 1: 自分の価値を「内側」で認める練習をする

見返りを求めてしまう根本には、「自分の価値を感じられていないこと」があります。

だから、何よりも大切なのが「自分で自分の価値を認める」ことです。

誰かからの評価ではなく、自分自身で、です。

  • 「できたこと」を認める
    毎日、寝る前などに「今日できたこと」を3つ書き出してみましょう。「掃除をした」「ご飯を作った」「仕事で〇〇を終えた」「人に親切にできた」など、どんな些細なことでもOK。「私、ちゃんとやってるな」と意識的に認めることが大切です。
  • 自分の「良いところ」を見つける
    短所ばかりでなく、自分の長所や好きなところ、頑張っているところにも目を向けてみましょう。ノートに書き出すのもおすすめです。

Step 2: 「見返りを求めていた自分」を許し、理解する

今まで見返りを求めてしまっていた自分を、「嫌なやつだ」と責めないでください。

そこには、そうせざるを得なかった切実な理由や事情があったはずです。

  • 自分を責めるのをやめる
    「見返りを求めてしまう気持ちがあったんだな」「それだけ辛かったんだな」と、まずはその気持ちを否定せずに受け止めてあげましょう。
  • 「仕方がなかった」と許す
    完璧な人間なんていません。「そういう時もあったよね」と、過去の自分を優しく許してあげてください。
  • 怒りや悲しみは安全な場所で扱う
    もし、「誰もわかってくれない!」という怒りや悲しみが強い場合は、信頼できる人に話したり、カウンセリングを利用したりするなど、安全な方法で感情を表現・消化していくことが大切です。(周りの人に直接ぶつけてしまうと、関係が悪化しやすいので注意が必要です)

Step 3: 過去の「与えたかった愛」に気づき、受け入れる

見返りを求めてしまう背景には、実は「それだけ誰かのことを大切に思い、役に立ちたかった」という純粋な愛情や真心が隠れていることが多いんです。

特に、子供時代に無力感を感じた経験がある方は、親や家族に対して届けたかったのに届けられなかった愛情があるのかもしれません。

  • 誰を大切に思ってきたか?
    あなたが一生懸命になれた相手、役に立ちたいと願った相手は誰だったでしょうか? その時の純粋な気持ちを思い出してみましょう。
  • 自分の「愛」を認める
    見返りを求めてしまうのは、「私はあなたにとって価値ある存在ですか?」と確認したかったのかもしれません。
    だとしたら、その根底にあるのは、相手を大切に思う素晴らしい気持ちです。その愛情深さ、優しさを持っている自分自身を、まずはしっかりと承認してあげてください。

Step 4: 「自分がしたいこと」を大切にする練習をする

自己犠牲を続けていると、その代償として見返りを求めやすくなります。

だから、少しずつで良いので、「自分が本当にしたいこと」「心地よいと感じること」を優先する練習をしましょう。

  • 小さなことから選択する
    「今日何が食べたい?」「本当はどっちに行きたい?」など、日常の小さな選択で、自分の気持ちを優先してみる。
  • 断る練習をする
    無理な頼まれごとや、気乗りしない誘いに対して、勇気を出して「ごめんなさい、今回は難しいです」と断る練習をしてみましょう。
  • 自分のための時間を作る
    忙しい中でも、少しでも自分の好きなことやリラックスできる時間を持つことを意識しましょう。

Step 5: 健全な「ギブアンドテイク」を意識する

見返りを「求めない」と言っても、人と人との関係には、自然な「与え合い(ギブアンドテイク)」があります。

大切なことは、過剰な期待や「~して当然」という要求を手放しつつ、お互いを尊重し合える対等な関係性を目指すことです。

  • 与える喜びを感じる
    見返りを期待せず、純粋に「相手のために何かしたい」という気持ちから行動できた時、その喜びを味わってみましょう。
  • 感謝を伝える・受け取る
    相手に何かしてもらった時は、素直に「ありがとう」と感謝を伝えましょう。また、相手からの感謝も、遠慮せずに受け取るようにしましょう。
  • 対等な関係か見直す
    もし、いつも自分ばかりが与えている、あるいは相手に求めすぎていると感じる関係があれば、そのバランスについて考えてみることも大切です。

それでも、一人で抱えるのが苦しい時は…

これらのステップを試しても、なかなか気持ちが変わらなかったり、過去の経験がフラッシュバックして苦しかったりすることもあるかもしれません。

そんな時は、決して一人で抱え込まないでください。

信頼できる友人や家族に話を聞いてもらうのも良いですし、僕のような心理カウンセラーに相談することも、有効な選択肢の一つです。

サポートを得ながら、自分の心とじっくり向き合うことで、より早く、そして安全に心の整理を進めることができます。

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「見返りを求めてしまう」気持ちは、決してあなたが「悪い人」とは限りません。

その奥には、満たされなかった深い愛情欲求や、過去の経験から学んだ心の癖、そして「誰かの役に立ちたい」という健気な願いが隠れていることが多いのです。

大切なことは、そんな自分を責めるのではなく

「その気持ちの背景にあるもの理解し、受け入れ、自分を見つめ直す方法」を学んでいくことです。

ステップでお伝えしたように、

  1. 自分の価値を内側で認める
  2. 過去の自分を許し、理解する
  3. 与えたかった愛に気づき、受け入れる
  4. 自分がしたいことを大切にする
  5. 健全なギブアンドテイクを意識する

これらを少しずつ実践していくことで、「見返りを求めなくても、私は大丈夫」という感覚が、きっと育っていくはずです。

焦らず、ご自身のペースで、自分自身ともっと優しい関係を築いていってくださいね。応援しています。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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