甘すぎない恋愛心理学

「将来の話になると、彼が黙ってしまう」 ──真面目な2人が歩む“心のプロセス”とは?

疑問を感じる女性

こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。

今日は読者の方からいただいたご質問にお答えしますね。

ご質問内容はこちら

浅野先生へのご質問

「スマホばかり見てる彼」にモヤッとするあなたへ 〜スマホやアプリがもたらす恋愛不安と信頼の心理〜の相談をした毛糸です。

あれから私自身のスマホの使用時間を見てみたら、私もスマホをよく見ていることがわかりました。私もスマホにふれることで安心感を得たり、不安を紛らわしているように感じました。

今回は結婚に対しての質問です。
彼は誠実で真面目なのです。私の持病を考慮しているので結婚話を進められずにいます。
結婚に対しても「経済基盤と感情を分けて考えることは出来ない」と言っていたので、慎重さ、経済的自立、精神的自立を重んじる現実検討力も持ち合わせていると思います。

持病も回復してきたこと、就職の目処が立ってきたことから、私としては少しずつ、彼との将来のことを話したい気持ちがあります。
私は環境適応が苦手なので、少しずつ話していけたら安心しやすいし、シュミレーションもしやすいと感じています。

私からは、浅野先生のブログを参考にしながら「彼さんと過ごす時間はホッとするよ」「将来のことを話すタイミングはいつでも大丈夫だよ。彼さんが話したいタイミングで大丈夫。ただ、私も一緒に考えたり話したり出来たら嬉しいなあって思いました。無理に話してほしいわけじゃないので、そこは安心してね」と、私なりに彼に寄り添う形で私の意思を伝えました。

彼は「わかったよ」と言っていました。

彼は将来の話、彼自身の不安を飲み込んでしまったり、私の持病に配慮をして将来の話を避けてしまう(私にとって結婚の話は負担になると思ったそうです)傾向があります。優しさ故に回避してしまいがちといいますか……。

彼は言葉で愛情表現をするのがとても苦手で、行動ベースで愛情表現をするタイプなので、余計に将来のことを話すのは、彼にとって心の防御になるのかな?とも感じています。

彼は、アプリを辞めないことを含めて、将来設計について、私の想像以上に葛藤や不安を抱いているのかな?と感じています。

私の持病が回復傾向にあることは、必要に応じて伝えています。私は体力も落ちてしまったので、少しずつ生活の工夫も取り入れながら、体力をつけてもいます。これも雑談ベースで彼に伝えています。

たくさんの葛藤を飲み込んでしまいがちな彼と将来設計のついて共有し、寄り添いあえる対等な関係になるにはどうしていけばいいのでしょうか?

ご回答していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

ネタ募集ネーム:毛糸さん

彼が「将来の話になると黙る」背景にあるもの

今回のご質問にある彼さんは、とても真面目で誠実な方のようですね。

一般的に真面目な人ほど、こんな心理を持っています。

「自分の判断が相手の人生に影響するなら、軽々しく決めたくない」
「相手を不安にさせたくない」
「自分が背負える責任を越えたくない」

つまり、彼が将来の話を避けるのは、

責任感 × 優しさ × 不安

この3つが重なっているからなんです。

誠実な人ほど、軽い気持ちで「結婚しよう」とは言えません。
逆にいうと、それだけあなたを大切に思っている証拠でもあります。


真面目な人ほど「自分次第の関係」を作ってしまう

ここで今回のご相談において非常に重要なポイントをお伝えしたいのですが・・・

ご相談者さんも、彼さんも、どちらも“とても真面目で優しいタイプ”のように僕は感じるんですよね。

真面目な人の恋愛には、こんな特徴があります。

「私さえちゃんとしていれば、関係はうまくいく」

これ、自己責任型の関係形成と言われることがあります。

  • 相手に負担をかけたくない
  • 弱音を言いたくない
  • 相手の不安を奪いたい
  • 本音より“正しさ”を優先してしまう
  • 頼るより“自立していなければ”と考える

すると、どうなるか。

“自分だけで抱え込み、相手に頼れない関係”になりやすいのです。

実はこれが、未来の話をしにくい背景をつくります。

なぜなら、将来の話って、相手を頼らなければ進まないテーマだからです。

この「相手を頼らなければ進まない」という部分が、「結婚や将来の話を進めることへの心理的抵抗感」となっている場合も少なくないんです。

このとき、こちらとしては「なんだか話が進まないなぁ・・・結婚したくないのかな?」と思うものなんですよ。

ただ、相手は「結婚したくないわけじゃないし、今の関係を大事にしたい」と思いつつ・・・

「でもなぁ、なんか漠然とした抵抗を感じるんだよね」

と、口にはしない”何か”を感じている事が少なくない、といいますか。

この漠然とした抵抗感、その理由を本人も明確に捉えていないと、「あれ、自分は結婚したくないのだろうか?」と考え始めちゃうこともあるようですね。


「頼れない2人」が未来の話でつまずく理由

ご相談者さんも、彼さんも、実は同じところで苦労しているのかもしれませんね。

  • 不安は自分で処理しようとする
  • 相手の不安も引き受けようとする
  • 相手を困らせたくない
  • 問題を持ち込むことに罪悪感がある

だから将来の話になると、

彼:責任を背負わせないように黙る
あなた:彼を困らせないように慎重になる

こうして、“優しさゆえの沈黙” が生まれます。

このとき、万が一「今のままでは彼女を(彼を)幸せにできないかもしれない」という思い(罪悪感ですね)があると、一人で引き受ける形でしか未来を考えることができなくなるんです。

相手に妙な影響を与えることは避けたいなぁ・・・と思いやすいのです。

でも、そもそも結婚レベルの関わり合いって、めちゃくちゃ相手に影響を与えるものですしねぇ。

いや、もうすでに影響を与え合っているのでしょうけれどもね。

この事実を「良くないこと・迷惑なこと」と認識するクセが付いていると、まぁ支え合って生きることは「迷惑をかけること」になってしまうのですよね、無意識的に。


では、どうすれば“対等で寄り添える関係”になれるのか?

ここからが本題です。

ポイントは4つあります。

1:お互いに「頼ってもいい」を許可し合うこと

真面目な人の課題は、「頼る=迷惑をかける」と感じやすいことかもしれませんねー。

これは本当に真面目な人の宿命的なテーマと言っていいぐらいの話です。

ただ、先程も書きましたけど、パートナーシップとは本来、“2人で歩む未来”なんですよね。

だからこそ、今回のあなたの声がけは素晴らしいのです。

「話したいタイミングはいつでも大丈夫」
「無理に話してほしいわけじゃないよ」
「私も一緒に考えられたら嬉しい」

これは相手の“安全基地”をつくる言葉です。

この相手の安全基地を作ってあげるアプローチは、真面目な人に対して有効なんですよ。


2:「将来の話=プレッシャー」ではなく、「共有=安心」に変える

将来について話すときに大事なのは、

“決めるために話す”のではなく、“理解し合うために話す”ことでしょうね。

真面目な男性ほど、

  • 話し合い=決断
  • 決断=責任の固定
  • 責任=重荷

と感じやすいものなんです。

だから、まずは

“正解を出さなくていい会話”を積み重ねる

これがとても大切です。

そもそも不安が強いときに正解を出すと「そうしなければ」的な”べき思考”が顔を出しやすく、「そうできない自分は・・・」と自己否定しがちです。

そんなことが二人の間で繰り返されることのリスクを僕は考えるのですよねぇ。

僕も結婚して17年ほどになりますけど、そもそも未来のことをきっちり正解として出すプロセスなんて、あまりなかった気がしますね。

なんとなく「お互いがそれでいいと思えること」が増えていくことの方が多かったような気がします。

つまり、「こうしてよ!」「こうしないとダメなんだ」と思えることが、二人で生きていると、「ま、いろいろあるよね〜」と思えるようになっていくこと。

個人レベルのこだわりが二人で生きていくことで徐々に減っていくこと。

それが関係性の進化なんだろうと僕は思うんですよね。


3:あえてテーマを上げるとしたら「相互性(Mutuality)」

今回のご質問への僕なりと回答を一言でまとめるとこうなるかもしれません。

「自分で背負いすぎる2人が、“一緒に歩む”段階に来ている」

これは、関係が成熟してきたサインと捉えることもできます。

だからこそ、焦らず、丁寧に、しかし確実に、

“頼り合うチーム”

をつくっていくことが、未来への鍵になるのではないでしょうか?

・・・とはいえ、そこが一番難しいねん!と思われるかもしれませんが。

4:自己存在感について目を向けてみる

このとき、テーマになることこそ「自己存在感」なんですよね。

「自分が自分であるということ」という感覚が、愛するパートナーと共に生きる事を考えたときに、悪い意味ではなく”揺らぐ”と、いうことは普通に起こり得ることです。

自分は自分のままでいいのか?とね。

すると、結婚も将来のことも目を背けたくなるわけじゃないけど、ちょっと遠くに置きたくなるんです。

それぐらい、誰かと共に生きるプロセスの入口では「自己存在感が揺れる」ものなんですよ。

ここでつまづかないようにするには、自分と向き合うことがオススメなんですよね。

自分が想像する以上に、自分の中には愛情だったり、思いを抱いていたり・・・

自分でも驚くほど、こだわりやわがままを感じている自分がいたり・・・

それ故の自責や罪悪感も存在するものなので。

でも、どんな自分も自分であって、それでも目の前の人は愛してくれているんだよなぁ、と思えたとき、心から「寄り添って生きていきたいし、相手のために生きていきたい」と思えるものじゃないでしょうか?

そう思う第一歩は、自分を知ることだと僕は思いますよ。

あるべき姿ばかり見るのではなく、ですね。


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まとめ

今回のご相談は、悩みというより、お二人が次のステージに来た証拠だと僕は感じています。

  • 誠実だからこそ慎重になる彼
  • 優しいからこそ配慮しすぎるあなた
  • 頼れないまま抱え込んでしまう2人

これはまさに、真面目で優しい人たちが通るプロセスです。

だから、責める必要はどこにもありません。

むしろ、ここからのテーマはひとつ。

「一緒に背負っていい未来」を許可できるかどうか。

その最初の一歩は、すでにあなたが踏み出しています。

きっと彼も、あなたの言葉を受け取っているのではないでしょうか?

どうぞ、お二人のペースで。安心できるペースで。

ゆっくり関係を育ててみてはいかがでしょうか?

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績10,000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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