こんにちは、心理カウンセラーの浅野寿和です。
夫婦や恋人など、近しい関係にある人から、「厳しい言葉」や「指摘」を受けたとき、思った以上に深く傷ついてしまった、という経験はないでしょうか。
たとえば
「そんなの甘いよ」
「お前っていつもそうだよな」
「もっと考えてから言ってくれない?」
そんな言葉をかけられて、頭では「たしかにそうかもしれない」と分かっていても、心はズキズキして、なんとも言えない痛みを感じてしまう。
言葉の内容以上に、
「自分という存在が否定されたような気がした」
という感覚だけが、じわりと残る感じ。
今日は、そんなときに心の中で起きていることと、その傷との向き合い方について、少しだけお話してみたいと思います。
Index
まず前提として:「厳しい意見」がなぜしんどいのか?
人から厳しいことを言われたときに心が痛むのは、単にその言葉が鋭いからだとは限らないのですよね。
実は、その言葉が
- 自分の中にある「疑念」と響き合ってしまうとき
- 「本当はそうかも」と思っていたことを突かれるとき
- 相手にとって自分の“価値”が下がった気がするとき
僕たちは、強く反応してしまうわけですね。
つまり、厳しい言葉そのものより、「その言葉が自分にとってどういう意味を持つか」が苦しさの正体といいますかね。
逆に言えば、どんな鋭い言葉でも、自分にとって意味を持たない言葉ならば、苦しさまで至らないこともあるってことです。
たとえば、健康診断で超健康だという結果が出ている人に「不健康ってやばいね」とところで影響力はさほどない(失礼だなと思うかも、ですが)ということです。
パートナーの「ひと言」が、なぜこんなにも痛いのか?
では、パートナーからの一言に、なぜここまで反応してしまうのか、について考えていくと。
その理由のひとつは、とてもシンプルです。
「信じている相手だから」なんですよね。
私たちは、パートナーに対してある種の「安心」を預けています。
「この人は、私の味方でいてくれる」
「私のことを分かろうとしてくれる」
「できれば、私の弱さも受け止めてくれるはず」
そんな、目に見えない“信頼の土台”があるからこそ、そこに乗って届く「厳しい言葉」は、とても強く響いてしまうんです。
もし同じことを、職場の同僚やSNSの誰かに言われたなら、まだ「そういう考えの人もいるよね」で流せたかもしれない。
でも、「私の一番近くにいる人」の言葉には、どうしても心が揺さぶられてしまう。
これは、「その言葉が自分にとってどういう意味を持つか」以上に、「パートナーの言葉が自分にとってどういう意味を持つか」という側面を示しています。
たとえば、パートナーとの関係に絶対的な信頼を置いていて、かつ、たとえパートナーがいなくなっても(悲しいけれど)自分の人生を進めていくという覚悟を持てているなら、パートナーの言葉は重いけれど、その影響で自分を見失うことは少ないのかもしれません。
が、どこかパートナーを失うことを恐れすぎていたり、心理的に寄りかかりすぎていたりすると、パートナーの言葉が持つ影響力に自分自身が振り回されすぎることもあるんですよね。
パートナーの一言に敏感に反応してしまうのは、「自分でもどこかで思っていたこと」だから
実は、パートナーの言葉に傷つくときって、おおむね「その言葉が自分の中の痛い場所に触れたから」なんです。
たとえば、
- 自分でも「ちゃんとやれていないかも」と思っていた
- 「優しくないかも」と感じていた自分を、ズバッと言われた
- 「これだけは分かってほしかった」と思っていた部分を否定された
そんなふうに、「自分でもうすうす気づいていた不安や弱さ」を、他人の口から突きつけられたとき、人はとても深く傷つきます。
つまり、自分の中に“引っかかる”ものがあるから痛むんですね。
だからこそ、厳しい言葉に反応してしまったときは、「なんであんなこと言うの?」と相手を責める前に
「自分は何にそんなに傷ついたんだろう?」
と自分に問いかけてみることが、大きなヒントになります。
とはいえ、相手から投げかけられる言葉にも限度というか、程度の問題がありますからね。
あまりにひどい言葉をかけられ続けるなら、それを理解しようとしすぎることが悪い作用をもたらすこともあります。
そんなときは、まず「自分を守ること」が必要なんですよ。
平気になるために必要なのは「感情を鈍らせること」じゃない
ただ、いくらパートナーの言葉を「気にしないようにしよう」「もっと強くなろう」と思っても、人はそう簡単に切り替えられません。
むしろ、平気なふりをすればするほど、心の奥で傷は深くなることもあります。
じゃあ、どうしたらいいのでしょう?
もちろん、心がズキズキしている最中に「自分を見つめよう」なんて難しいことです。
そんなときは、次のようなステップで“心を守る技術”を身につけていく方法をお伝えすることがありますね。
自分で回復できる人になっていくために
1: 傷ついた自分を、優しく受け止める
まずは、とてもシンプルなことをしてみてください。
「あぁ、今、痛かったな」
「それだけ大事にしてたんだよな」
「そっか、自分の想いをわかってもらえなくて寂しかったんだな」
そんなふうに、自分で自分の気持ちに寄り添ってあげること。
これは「甘やかす」とは違います。
痛みをなかったことにせず、自分の中で受け止めるように感じることで、心の深い部分が落ち着いていくんです。
これも一つの「自己存在感(自分らしさのようなもの)」を持つことの一部、と言えるんですよね。
ただ、こう、なんといいますか・・・
この話は「自分の中で痛い思いを探すように感じる」というか「自分を責めるように感じる」という意味ではないんですよ。
稀に真面目な方から「痛みを強力に感じないといけない」と思い込んで、「まるで自分で自分を攻撃するような意識を持つ」人がいますが、それはちょっと違う気がするんですよ、僕は。
もっとシンプルに捉えることを僕はおすすめしたいところなんですけどね。
2: 相手の言葉を「一部だけ受け取る」視点を持つ
パートナーが言ったことが100%正しいわけでもなければ、あなたのすべてを否定しているわけでもありません。
でも、心が傷ついているときは、つい「全部が否定された」ように感じてしまいやすくなりますよね。
だからこそ、こう考えてみるのです。
「これは、私のここには当てはまるかもしれない。でも、それ以外の私は否定されていない」
「たしかに至らない部分はあるかも。でも、それと私の価値は別物だ」
相手の言葉を「まるごと飲み込まない」こと。
それが、自分を守るためのとても大事な視点になります。
3:「怒り」や「悲しみ」の下にある、“大事にしている想い”に気づく
たとえば、怒りの下には「分かってほしかった」が、悲しみの下には「大切にされたかった」があるかもしれません。
そう考えると、厳しい言葉に傷ついたときの感情は、実は、自分が何を大切にしていたかを教えてくれるサインでもあるんです。
だからこそ、
「私は、こういうふうに分かり合いたかったんだ」
「私は、こういう距離感を大切にしてたんだな」
そんな“自分の想い”に出会えたとき、傷ついた経験が、ほんの少し、自分の土台になることもある、といいますか。
補足:本当に信頼できる人の「厳しい言葉」は宝物になる
ただし、本当に信頼できる人がくれる「愛のある指摘」には、ちゃんと耳を傾けた方がいいこともあります。
その違いは、「その言葉に未来への希望があるかどうか」です。
- ただ批判するだけで、あなたを潰すための言葉か
- あなたが立ち上がるための言葉か
それを見極める力が、徐々に「平気さ」を育ててくれます。
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最後に:平気になることが目的ではなく、「見失わない自分を育てる」こと
厳しいことを言われても平気になりたい。
もう、あんなふうに傷つくのはイヤだ。
打たれ強くなりたい。
そう思う気持ち、すごくよくわかる気がします。
でも、多くの人が、全く傷つかない自分になれるかというと、これはかなり難しいことだと僕は考えています。
逆に、一切自分が傷つかないように否認ばかりすることは、対人関係に問題を作り続けることにもなりかねません。
傷つかないようにと否認し続けると、その代償として支払う信用の量が大きくなりすぎる、といいますかね。
僕はそう考えるのです。
だから、大切なことは、「傷ついたときに、自分を丁寧に整えながら、自分を見失わない力」を少しずつ育てていくことがポイントなのではないでしょうか。
確かに、パートナーの言葉で傷つくと痛いものですよ。ただ、その痛みはただ我慢したり耐えるものではない、とお伝えしたいわけです。
そして、あなたの中には、ちゃんと回復していけるだけの力があるのでしょう。
だから、傷ついた自分を否定しないで、その奥にあるやさしさや、想いの深さを信じてみてください。
そうやって自分を大切にできる人は、やがて、誰かをもっとやさしく抱きしめられるようになるはずですからね。
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