甘すぎない恋愛心理学

「あのとき、ちゃんと話せばよかった」と思ってしまうあなたへ 〜言えなかったのは、弱さではなく“誠実さ”だった〜

空を向いて歩く女性

こんにちは。

心理カウンセラーの浅野寿和です。

あなたには「あのとき、ちゃんと話せばよかった」と思った経験ありますか?

恋人との関係でも、職場でも、家族の中でも

「言えばよかった」「あんな言い方しなきゃよかった」

そんなふうに思うこと、ありませんか。

人は誰でも、関係が大切なほど言葉を慎重に選びます。

それでもうまく伝わらず、後から自分を責めてしまう。

あのとき言えなかったのは、気まずさに負けたからじゃなくて、“いい人でいたかった”自分がいたからかもしれません。

でも、そういう優しさって、いつも自分を後回しにしますよね。

そんな瞬間に出てくるのが、この言葉です。

「あのとき、ちゃんと話せばよかった」

本気で大切にしたいからこそ”言葉を失う”僕たち

人は、本気で関係を大切にしているときほど、言葉を失いやすいものです。

言えば何かが壊れてしまう気がして、喉の奥で言葉が止まる。

その瞬間って、たぶん誰にでもあるんじゃないかと思うんです。

僕もそうでした。

「言えなかった」あとで、自分の誠実さを疑ってしまうとき、結構あったんです。

でも今振り返ると、あれは“怖かったから言えなかった”というより、“相手のことを想いすぎて、言えなかった”んだと思うんです。

そう考えると、あの沈黙も、ちゃんと「関係を守ろうとした反応」だったのかもしれません。

そう思えるだけで、少し心がほどけていく気がしませんか。


なぜ、あのときちゃんと話せなかったのか?

そもそもあのとき、ちゃんと話せなかったのは、あなたが弱かったからじゃないんです。

あなたの心が、“関係を守ろうとして”危険信号を出した可能性が非常に高いんです。

たとえば、恋愛では相手を傷つけたくなかった。

職場では、波風を立てたくなかった。

家族には、もうこれ以上がっかりさせたくなかった。

だから、言葉を飲み込んだ。

それは、もしかすると、あなたなりの誠実さの表れだったのかもしれないのです。


「ちゃんと話せなくなる」理由

僕たちは、相手と本気で関わりたいときほど、心の中で“危険信号”が鳴りやすいのです。

特に、家族、親、恋人、夫、妻、子供・・・

そういった身近で愛着の対象になりえる相手に対しては。

だから、普段は人の反応をさほど気にしない人でも

「相手に拒絶されるかもしれない」

「嫌われるかもしれない」

「責められるかもしれない」

そんな「関係の危険」を感知した瞬間に、防衛モードが働き、思考よりも早く行動を止めてしまう

これは、自分の心の安全を守る反応と言えます

たとえば、「今の言い方、違ったかも」と感じた瞬間、胸の奥がキュッと固まるような感覚、ありませんか。

あれが、防衛のスイッチが入る瞬間かもしれないのです。

ただ、実際、言いたいことがあるのに何も言えない状況に陥ると、結構苦しいはずです。

しかし、その苦しみを感じても、何も言わない方がいい、そのほうが安全だと感じていたこともきっと事実なんだと思うのです。

そして、この事実を自分を責める理由にしてはならない、と僕は思います。

苦しいけれど黙り続けたあなたを、否定する必要はないと考えるからですね。

過去の経験の影響

例えば、過去の経験で「言いたいことを言うと罰された・否定された・わがままだと言われた」と言ったものがあった場合。

または、自分が体験していなくても、身近な人(家族など)が、言いたいことを言うことで被害を受けていた光景を見ていた場合(代理学習といいます)。

こうした過去の経験があると、「また同じことになるかもしれない」と不安になり、つい言動に慎重になってしまいます。

特に、過去に 人間関係で傷ついたことがある人は、自分の言動をあとになって振り返る傾向が強くなるんですね。

なぜなら、「もう傷つきたくない」「失敗を避けたい」と思っているから。

ただ、すべての人が同じ反応をするわけではないんですよね。

まずはそのことを「理解すること」も重要だったりします。

恐れと優しさは、表裏一体

つまり、「あのとき、ちゃんと話せなかった」には理由がある。

それは、あなたが相手を大切にしていたからこそ、怖くなった可能性だってある。

怖れと愛は、いつも似たような場所に存在しているもの。

だから、人を想うほど、心は揺れるんですよね。

怖かったのは、それだけ相手を本気で思っていたからです。

「話せなかった自分」を理解できると、後悔の意味が変わる

僕はカウンセリングの中で、

「どうしても伝えられなかったこと」を抱えている方に、

よくこうお伝えします。

「あなたの心は、ちゃんと動いていましたよ」

人は、心が動かないときには後悔すらしません。

「あのとき話せばよかった」と思えるのは、あなたが目の前にある人や、その関係を大切にしていた証拠だとも言えるんですよ。

罪悪感は、優しさの裏返し

「言えなかった自分が悪い」と思うとき、実はその背景には“優しさ”があります。

相手の気持ちを想像できるからこそ、自分の言葉が怖くなる。

でも、そこで自分を罰してしまうと、優しさが“自分を守る力”から“自分を責める力”にすり替わってしまう。

そこに気づけると、後悔の景色が少し変わっていきます。

関係を壊さないように止まった、その感覚をもう一度信じてみる

僕たちは「ちゃんと話せなかった」経験を通して、コミュニケーションの“痛み”と“誠実さ”の両方を学びます。

だから、あのとき止まった自分を責めるより、

「どう守ろうとしていたのか」を理解することが、あなた自身や関係を立て直す第一歩です。


最後に

「あのとき、ちゃんと話せばよかった」

その後悔は、愛や信頼を失った証ではありません。

むしろ、あなたが誰かを大切に思った証拠です。

その優しさを、責めるのではなく使えるようになると、人間関係は少しずつ変わっていきます。

ただ・・・

もしかすると、あなたの中にはまだ「本当は、もう一度話したい誰か」がいるのかもしれません。

その思いは、後悔ではなく“もう一度素敵な関係を作ろうという意思”なのかもしれませんね。

「これからの私」について考えていきましょう

あのとき話せなかったあなたは、もう“優しさを責める段階”を越えています。

これからは、“どう伝えていくか”を学ぶ段階です。

その誠実さを、怖がらずに使えるように。

必要なときは、話を整理しながら一緒に見ていきましょう。

[浅野寿和のカウンセリングはこちら]

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