決断できない心理とは? 優柔不断・損失回避だけでは説明できない「決められない理由」
こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
「なかなか物事が決められないことで悩んでいる」
そんなご相談を伺うことがあります。
たとえば、
- 今のパートナーと一緒になるべきか、離れるべきか
- 今の仕事を続けるか、転職するか
- 離婚するか、このまま関係を続けるか
そして多くの方が、こう言います。
「私って昔から優柔不断なんですよね・・・」
もちろん、優柔不断が理由で決められないケースもあるでしょう。
また、いわゆる「損失回避(失う痛みのほうが強く感じられてしまう)」の要因や、
不安傾向、完璧主義、情報過多、過去の失敗経験の影響など、
いろいろな要因が重なって「決められない」状態が起きることもあります。
さらに、医療・心理の文脈では、抑うつ傾向、強い依存傾向があると
「自分で決める」ことが極端に苦しくなるとも言われていますよね。
ここは否定しようがないところです。
そのうえで、です。
同じ「決められない」に見えても、
セッションの中で見えてくる景色がまったく違うタイプの方がいます。
今日はその話をまとめてみようと思います。
Index
「決められない」には、いくつかのよくある理由がある
まず、一般的によく挙げられる要因を、ざっくり整理します。
- 優柔不断・決断スキルの未形成:決め方の型がなく、判断の軸が育っていない
- 損失回避:失敗の痛みを強く見積もり、選択のコストが過大になる
- 完璧主義:「正解」を選べないと怖くて止まる
- 不安・反芻:決めた後の未来を何度もシミュレーションして疲弊する
- 責任回避:決める=責任、が怖くて先延ばしになる
- 依存傾向:決めること自体が「関係の揺れ」や「見捨てられ不安」と結びついて苦しくなる
ここまでが「一般的な説明」としては、たしかに妥当なんです。
ただ、ここで終わると、現場の感触としては何か足りないことがあります。
同じ“先延ばし”でも、消耗の質が激しい人がいる
さて、個人セッションの中で、こういった方のお話を伺うことがあります。
確かに「決められない」という事実はあるが、
実際は「決められない」というより、
決めた瞬間に発生する“罪悪感”や“責任感”が重すぎて、決断できないる。
これ、完璧主義や、責任回避が要因と見ることもできるんです。
ただ、悩まれている方は、
常識的で物事に対してきちんと責任を取れる方であることも少なくないんです。
実は、決断の際、
選ばない選択肢を手放すときに立ち上がる”感情”が大きすぎて、
心が耐えきれない感じになっている。
たとえば転職。
「私が抜けたら職場が困るかもしれない」
「一緒にやってきた人に申し訳ない」
そういう罪悪感が、単なる“気にしすぎ”ではなく、
内側でかなり強いリアリティを持って生じている。
たとえば別れ。
「この人を置いていくのは、私が冷たい人間だからでは…」
「ここで別れたら、お互いの人生が崩れるかもしれない」
こういう発想が、うっすらではなく、体感として重くのしかかっているんですよね。
一般的には「気にし過ぎだよ」と言われるような状態です。
このタイプの人は、周りから見ると「決められない人」そのものです。
でも本人の内側では、実はこうです。
「決めようとすると、感情含めた責任が全部こちらに集まってくる」
物事の因果を背負いすぎているんですね。
だから、動けない。
むしろ、決められない現実を前に、すでに燃え尽きている人もいます。
損失回避で決められない人もいる。じゃあ、なぜ“そこまで”怖いのか
「決められない理由」としての「損失回避」の説明、僕もその通りだと思います。
「失う痛みを過大に見積もるから、決められない」
ただ、実際のセッションでお話を伺っていると、
こんな背景が出てくることがあります。
「私は、昔から失敗したときに支えになるものがない」
「失敗したら、一人で全部引き受けるしかない」
ここに、“孤立感”が見えてくることがあるんですよ。
実際には、支えてくれる人がいる場合もあります。
でも、本人の心の中の前提がこうなっている。
- 失敗=終わり
- 迷惑=取り返しがつかない
- 弱音=甘え
- 助けを求める=価値が下がる
- 助けを求めても、振り向いてもらえなかった過去がある
こういう前提で生きてきた人は、決断が怖いというより、
決断のあとに起きる“孤立”が怖いのかもしれません。
だから、決められないのです。
追い込まれる、という未来が想定されすぎているから。
同じ「決めない」でも、
- 責任を負いたくないから決めない人
- 責任を一人で負いすぎるから決めない人
この差は、内側の消耗がまるで違うように思います。
「決められない」人が、実は見えないところで悩んでいる
このように悩まれている方は、かなり見えないところで悩んでいたはずです。
たとえば、
WEBやSNSなどで「決められない理由」と検索すると、「損失回避」に理由があると書かれていた。
それを見ると「そうか、損失を回避するために決められなかったんだ」と思い込んでしまう人もいる。
もちろんWEBの情報に罪はありません。
しかし、たとえ損失回避が理由の一つになり得たとしても、
すでに
「私は、昔から失敗したときに支えになるものがない」
「失敗したら、一人で全部引き受けるしかない」
と強く感じているならば、その時点で決断そのものが重すぎる。
だから、できるだけ決めない、つまり、長いものに巻かれたり、人の決断に載っかっていないと、心が息ができない、ということも想像できることです。
でも、「決断できない」というその姿は、とても臆病で、曖昧で、意思がないように見えてしまう。
だから、本人も言葉にできないまま抱え込む。
で、ある日、限界っぽい顔をして、こう言う。
「もう分からない」
「何も決められない」
ここで周りが、正論で急がせたり、結論を迫ったりすると、たぶん逆効果になりやすいんでしょう。
「決めなきゃ」だけが増えて、なにも決められなくなることが増えるはずですから。
じゃあ最初に何をすればいいのか
このタイプの「決められない」をほどく最初の動きは、
決断術ではなく、こちらではないでしょうか。
①「気づけなかったことに気づく」
つまり、
- 私は何を“背負わされている気がしている”のか
- 私は何を“手放したら罰が当たる気がしている”のか
- 私は今、強く“決断の結果を全て自分の責任に返していないか”
② その気持ちを遮らずに、いったん受け止める
「そんなの考えすぎ」ではなく、
「そうだとしたら、決断はとても苦しくなるかもしれないね」
この受け止めが入るだけで、
気持ちの面で追い込まれることは少なくなるのではないでしょうか。
すると、初めて、「どうしたいか」の選択肢が徐々に見えてくる。
もちろんすぐに決断できるようになるわけではないにせよ、
少なくとも決断できないと悩み続けるより、
「どう考えていけば、決断できるようになるのか」の道筋は見える。
決断って、意志の強さの勝負に見えることがありますけど、
実際には、“自分がどんな心理状態にあるか”で
かなり難易度が変わることが多いんですよね。
最後に
「決められない」には、いろいろな説明があります。
優柔不断の場合もある。損失回避の場合もある。依存傾向が関係している場合もある。
そのうえで、
責任を背負い込みすぎている人の“決められなさ”は、
ただの先延ばしとは違い、罪悪感や孤立感、
そして「失敗したら支えがない」という前提が潜んでいることがあります。
もしあなたが「決められない自分」を責め続けているなら、
責める前に一度だけ、こう問い直してみてもいいかもしれません。
「私は、何を手放せないまま、ここまで生きてきたんだろう?」
今日はこの辺で。
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