ほぼ30代からの”仕事に活かせる”心理学

仕事は好き。でも、“私じゃなくてもいい感”が消えない 〜自己存在感と感情とのつながりの話〜

仕事に疑問を感じている女性

「この仕事、嫌いじゃない。むしろ好きだと思う」
「でも・・・なんだろう、私じゃなくてもいい気がする」

そんなお声をカウンセリングで伺うことがあります。

やりがいや責任もある。
評価もされているし、信頼もされている。
でもどこか、むなしい。

もちろん、「なぜそう感じるのか」については、いくつかの理由が考えられるものです。

たとえば、「今、彼や夫と絶賛ケンカ中で、自分の意味を見失いがち」という場合もありえるでしょう。

仕事のミスで自信喪失していて、だから自分を疑いがちという場愛もあるでしょう。

ただ、中には慢性的な感覚として、いつも「私じゃなくてもいい感が消えない」という場合があるようです。

「存在してるはずなのに、実感がない」

そんな“正体不明の空虚さ”を、僕は「自己存在感の不在」と捉えています。

そこで今日は、「仕事は好き。でも、“私じゃなくてもいい感”が消えない」という謎を「自己存在感と感情とのつながり」という視点から解説していきたいと思います。

「できている」「任されている」だけでは、満たされないことがある

外から見れば十分に機能している人ほど、この「私じゃなくてもいい感」に苦しみます。

でもそれは、やる気がないわけでも、環境に不満があるわけでもない。

むしろ「自分に期待してくれている人たちを裏切れない」と思っている。

それなのに心のどこかで、

「私のことなんて、本当は誰もちゃんと見ていない」

そんな感覚が、ふと顔を出す。

もちろんこの感覚はすぐに心の検閲機能に引っかかり、言葉にされることはないでしょう。

むしろ「そんな依存心を抱いているなんて、私もまだまだ自立女子として修行が足りん」と認識する人も少なくないはず。

ただ、このような気持ちを感じるにも理由があるとしたら・・・。

その視点で見つめると、これは「承認」と「自己存在感」の違いが関わっている可能性がある、と考えることができるのです。

自分への承認があっても、自分の感情とつながっていない

実は、いくら周囲から評価されても、

「自分の中の“ある”に気づいていない」と、満たされづらいものです。

たとえば、

  • 「疲れてるけど、まあいっか」と流す
  • 「本当は嫌だけど、これも成長のため」と納得する
  • 「寂しいけど、私がしっかりしなきゃ」とスルーする

こんなふうに、自分の気持ちを“先送り”するクセがあると、感情と自分自身とのつながりが薄れていきます。

この「感情とのつながり」が、心理学的に言う“非認知的な自己理解”につながっている部分です。

非認知的スキルとは、数値や成果では測れない、自分の感情・直感・価値観など「内的な世界」とつながる力のこと。

これが薄れていくと、どんなに承認されても、「自分がここにいるという実感」が得られにくくなってしまいます。

自己存在感とは、「ただ、自分を感じる」こと

ここでいう“非認知的な自己理解”は「自己存在感」という部分に大きく関わってきます。

自己存在感に関する詳しい定義は、先日書いたコラムにありますので、そちらをご覧いただくとして。

疑問を感じる女性
信頼されてるのに満たされない心理 〜承認だけでは埋まらない“自己存在感”という視点から〜こんにちは、心理カウンセラーの浅野寿和です。 今日は「信頼されてるはずなのに、心は満たされない」。そう感じている方に向けたコラムを書い...

いわば

「自分がここにいるという実感」

と感じられる感覚こそが自己存在感と言っていいでしょうね。

だから、自己存在感は、“誰かやなにかに証明されるもの”ではなく、「自分の中に感じていくもの」。

誰かからの承認はありがたいけれど、それだけで「満ちる」かどうかは、自分のあり方次第。

もし、あなたが「私じゃなくてもいい感が消えない」と感じるなら、本当に必要なのは、「ちゃんと感じる」ことだったりするんです。

じゃあ、どうすればいい?

いきなり自分の感情と深くつながるのは、難しいかもしれません。

でも、まずは小さな習慣で十分です。

  • 朝、体の疲れ具合を確かめる
  • 好きなものを、理由なく選んでみる
  • 「あ、今、さみしかったかも」と気づいてみる

そんなふうに、内側の“ある”に触れる時間を持つだけで、少しずつ「私がここにいる」という感覚が戻ってきます。

つまり、仕事は好きでいいし、そこを疑う必要はないんです。

でもその前に、「自分のこと、ちゃんと見てるかな?」と立ち止まることも、きっと、次の力になりますよ。

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最後に:心なんて見なくても生きていけるけど

仕事をまわすことはできる。

人に合わせることも、期待に応えることもできる。

でも、それだけじゃどこかでふと、止まりたくなるときがある。

「これ以上、自分を置いてきぼりにしたくないな」って思う瞬間が、たぶん、あるんです。

確かに、心なんて、見なくても生きていけるのでしょう。

僕もこの仕事をしながらよく思いますし・・・。

何でもかんでも心のせいにするのは違うよな、とも(笑)

ただ、「見つめたほうが楽になること」も、たしかにあるんですよね。

自分の気持ちに気づいても、すぐに何かを変えなくていいし、完璧に整える必要もない。

でも、自分の中に「今、何を感じてる?」と問いかけてあげるだけで、人生がすこしずつ「自分のもの」になっていく感じがするはずです。

この記事をご覧になって、「私がここにいる」という感覚を取り戻したいと思われたら、ここでご紹介した方法を試してみていただいたり、じっくり自分と向き合うカウンセリングをご利用いただいてもいいのかもしれませんね。

では、今日はここまで。最後までご覧いただきありがとうございました。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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