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人をコントロールしたい! 〜思い通りにならないと気がすまない?〜
今日はコントロールの心理に関する解説です。
僕たちさまざまな「クセ(癖)」がありますよね。
実は「クセ」って自分の内面を、いい意味でもそうではない意味でも安定させる要素の一つ、と考えることができるのです。
だから、誰しも1つや2つクセがあるものだと言えそうなんですよ。(実際はその程度の数で済まないでしょうが)
ただ、クセにもいろいろな種類といいますか、自分だけで完了するものもあれば、人を巻き込んで影響を与えるものもあるわけですよね。
今日はその中でも「コントロール・人を思い通りに動かしたいと思うクセ」について考えてみたいと思います。
コントロールの心理
コントロールの心理とは
「自分にとっての『心理的な危機状況』や『自分の内面と外側の不一致』が生じたときに、自分の外側にある状況や、他者(言動・態度・考え・価値観など)を変えようとし、心理的な安定を得ようとすること」
と説明できます。
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もう少し分かりやすく書き換えますと
例えば、自分自身が
「怖い、不安、ヤバい、キモい、納得できない、損してる、理解されていない、愛されていない、罪悪感を感じる、無価値感を感じる、欲しい物がある、相手に望む反応がある」
といった状況に出くわしたときに、「思い通りにしたい」という欲求を感じます。
すると
自分の内面(感情・考え方・価値観など)を変えるのではなく「人を思い通りに動かして、この状態を変えたい」
と感じ、自分以外の何かを変えようとしたくなるわけですね。
自分を変えるのではなく、人や状況を変えることで安心しようと思う、といったイメージですね。
コントロールの種類
また、コントロールにはいくつかの種類があります。人を思い通りに動かす方法もさまざまということですね。
では、コントロールの種類についてご紹介します。
が、読むと嫌な気分がするやもしれません。冷静になりながらご覧いただくことをオススメします。
怒り・怖れによるコントロール
これは「分かりやすく怒る・キレる」という怒りを使ったコントロールです。
怒りを使って相手を怖がらせて思い通りにしようというわけです。
また、相手を脅して怖がらせる場合もありますね。
例えば「今日、あなたが来てくれなかったら、私どうなっちゃうかわからないから!絶対に私の家に来て!」と脅して相手を思い通りに動かしたい、なんて場合がこれにあたります。
権威性によるコントロール
これは権威的な立場を使ったコントロールです。いわゆる「上の立場の者」が使う方法です。
例えば、「上司の命令は絶対」「親の言うことを聞け!」「先輩の意見が聞けないのか」という態度です。
また、「お客さまなのよ、私」「客に対して何だその態度は!」と店員さんを困らせている人も「お客であるという権威性」を使っているのです。
なお、この権威性によるコントロールは「権威性の間違った使い方」を示しますから、コントロールする側も、どんどん権威との葛藤を強めます。
つまり、このコントロールを使えば使うほど、自分自身が「目上の人、立場が上の人から責められる」という恐れが強まるのです。
力(パワー)によるコントロール
これは具体的な力(パワー)によるコントロール。暴力などがこれに当たります。
例えば、ワガママすぎる子どもを殴る、力づくで女性をものにしようとする。
明らかに問題だと分かりやすいコントロールだと言えます。
罪悪感によるコントロール
これは「私は傷ついた」「あなたが悪いのよ」と相手に罪悪感を植え付けて思い通りにしようとするコントロールです。
これは「自分は悪くない(正しい)」と言う代わりに、相手が悪いと伝えているパターンです。
例えば
「付き合いはじめの頃は優しかったのに!やっぱりあなたって口先だけなのね!しょうもない男だわ!」といって優しさを欲しがる。
「ちゃんと約束を守ると言ったのにひどい!私はすごく傷ついた!あなたは最低の男だわ!」といって約束を守らせようとする。
なんてケースが当たりますね。
何もしないというコントロール
これは怒りの一形態である「受動攻撃」を使ったコントロールです。(これも怒りによるコントロールと言えます。)
「受動攻撃」とは、何もしない・反応しないという形で怒りを表現すること。
例えば、夫婦げんかの後で夫が妻をシカトする。挨拶しても反応しないし、目も合わさない。それによって妻から「私が悪かったわ」と言わせたいとか、「こちらの言い分を通したい」というコントロールがこれにあたります。
補償を求めるコントロール
これは「先に相手に恩を売り、それを補償せよと要求する形」で、相手をコントロールしようとするケース。
罪悪感コントロールとも言えますし、罪悪感+脅し+正しさの混合型とも言えますね。
例えば、「お前のことがあのとき助けてやったよな。だから今、お前はオレを助けるべきだ」といった感じです。
正しさによるコントロール
これは「自分が絶対に正しい!」という主張を続けることで、相手の価値観を否定し、相手がこちらの思い通りになるように仕向けるコントロールです。
いわば、「自分を正当化すること」で相手をコントロールしようとしているわけです。
例えば、妻が夫に「どうしてこんなことも理解できないの?常識じゃない。それがわからないあなたってどうなの?どうかしてるわ?」と突きつけて、夫の価値観を否定する。
その結果、夫に「妻の価値観を正しい」と思い込ませ、思い通りにしようとさせようとする。
この場合のポイントは「自分が絶対的に正しい!」と伝えるために、常識など自分の正しさを補強する材料を使って相手を滅多打ちにする、という部分。
だから、このコントロールを行う人は、普段から「正解」を求める傾向があります。
間違いや失敗に寛容になれず、自分自身が間違うことや失敗することも恐れます。
実際に、失敗すると激凹みます。
よって、完璧主義や正解コレクターになり、生きづらさが倍増する傾向もありますね。
コントロールを手放すにはどうすればいい?
コントロールを手放すには、ある程度自分と向き合う必要がありますね。
多くの人は、自分の考えや感じていることが正しい、と思っています。(それが本当に正しいかどうかは別にして)
私はこうしたい、僕はこう思う、私はこれが欲しい、こうしてくれなきゃ嫌だ・・・
こういった思いはある意味欲求なのですけど、その欲求を「正しい」と思うわけです。
このとき「なんでこんな風に思うんだろう?」と疑問を持てる人は、普段から自分を客観的に眺められる能力を身につけてきた人です。
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ただ、自分に正しさがあるということは、人の数だけ「正しさ」が存在するはず。
つまり、自分の正しさが他人の正しさと常に一致するわけではなく、対立することがあっても不思議ではないわけですよ。
これを「正しさのぶつかり合い(主導権争い)」といいます。
このとき「自分に正しさがあるように、人も同じだよね♡」と理解できるなら、前向きなコミュニケーションが可能になるもの。
しかし、「自分が正しい、それ以外に正しさなんてない!」と思っていると、他人や状況を自分の思い通りに動かしたくなるわけです。
そこにある理由こそ「感じたくない感情を受け容れたくないという反応」です。
だから、コントロールを手放すには
「人や状況をどう動かすか」ではなく
「自分が何を感じているのか」を知り、自分の気持ちを客観的に見つめる能力が求められるのです。
コントロールは「してしまうもの」という自覚を持つ
また、どんな人にも正しさや欲求はありますから、程度の差はあれコントロールしてしまうことがあるのです。
闇雲にコントロールを嫌い、最悪だ!と否定するより
「自分も同じなんだよな」と気付いておくことが大切。
だからといって、ガツガツコントロールしてもメリットはありませんし、状況は悪くなるばかりでしょう。
ただ、「これは誰にでも起こり得ること」と理解することで、自分を客観的に見ることができるのです。
これがものすごく重要なことなんですね。
自分を客観的に見ることができると、何かをコントロールしたいという気持ちにはならないからです。
具体例
例えば
夫婦喧嘩でガンガン夫を責めた妻。こちらの言い分を飲ませようとして「夫を正しさで滅多打ちにした」としましょう。
このとき、「自分の言い分や怒りは正しい」としか思っていないので、夫を滅多打ちにしていることも「夫が間違っている」と考えてしまうんですよね。
ただ、コントロールってある意味欲求のようなものなので、その欲求や、自分の内面の危機が過ぎ去ってしまえば、コントロールする動機もなくなってしまうんです。
つまり、夫が「分かった」と言った途端、「夫が悪い」と思えなくなるのです。
逆に、「夫を滅多打ちにした私」という事実と意識の方が強くなるんですね。
だから、「私、なんであんなことをいってしまったのか?」「私も悪いよね」という後悔が残るのです。
このケンカの中で、もし「私は私だけが正しいと思っていないだろうか?」「私、コントロールしようとしてるかも?」と気付けるならば
「相手の言い分を聞こう」「話し合おう」という意識も持てるでしょう。
コントロールされたときの対処法
もし、あなたが誰かにコントロールされている、と感じたときは
「その手には乗らない」
「ん?どうして相手はここまでこちらをコントロールするんだろう」
と考えることがおすすめです。
相手と向き合う意識を持っておく感じですね。
また、相手の正しさを支持できるならいいですが、支持できないのに「めんどくさいから」と従ったとしても、相手から更に要求やコントロールを突きつけられるだけです。
つまり、向き合わずに逃げても、追撃ミサイルのようにまた撃たれることが多いのです。
だから、応急処置としての「その場しのぎの対応」もいいですが、それはなかなか続けていられないはずです。
そんなときこそ、相手と向き合うこと。
「何が言いたいのかな?」
「どうしてコントロールする必要があるんだ?」
「相手は何を感じ、何を理解させたいのだろう?」
このように相手と向き合うことです。
ただ、「それはあんたのコントロールだからやめて!」といっても暖簾に腕押しでしょう。
なぜなら「それはあんたのコントロールだからやめて!」もこちらのコントロールだから。
(※なお、暴力などの実害がある場合はすぐに逃げて、然るべき機関にご相談されることをオススメします)
普段から素直な気持ちを話せる人を持ちませんか?
最後になりますが
実は思い通りにならないときが済まない人ほど、人に自分の素直な気持ちを伝える前に、思い通りにすることを考えてしまうものです。
つまり、自分の素直な気持ちを伝える経験が少ないと、コントロールしたくなるんです。
もし、あなたが今日の記事を読んで
「あぁ、自分のことだな」とか
「私はその傾向があるわ」と思われたのならば、ぜひこう考えてみてください。
「私は私のこと、誰にも教えてこなかったのかもしれないな」
ぜひ、信頼できる人からでいいので、お互いに普段から素直な気持ちを話せる人を持つようにしてみてください。
すると、コントロールしたい気持ちは次第に弱まっていきますよ。
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