夫婦のための心理学

恋愛下手は卒業!「相手の気持ちを考える」ことの重要性と5つの実践方法

手を繋ぐ男女

恋愛や夫婦関係において、「もっと相手の気持ちを考えなさい」と言われたり、あるいは自分自身で「考えなければ」と感じたりした経験はありませんか?

「相手の気持ちを考える」こと。

これが、良好な人間関係、特にパートナーシップを築く上で、とても大切な秘訣の一つであることは、多くの方が頭では理解されていると思います。

でも、不思議なことに、職場や友人関係では相手への配慮ができる人でも、こと恋愛や夫婦関係になると、なぜか気づかないうちに自分本位なコミュニケーションになってしまい、相手を傷つけたり、関係がこじれたりしてしまう。

そんなケースが後を絶ちません。

僕自身、カウンセリングで「大好きだったはずなのに、すれ違って別れてしまった」というお話を、これまで数えきれないほど伺ってきました。

なぜ、私たちは一番大切にしたいはずのパートナーに対して、「相手の気持を考える」ことが難しくなってしまうのでしょうか?

そして、どうすれば、本当の意味で相手の気持ちに寄り添い、心を通わせる関係を築けるのでしょうか?

今日は、この「相手の気持を考える」というテーマを深掘りし、その重要性、難しさの背景にある心理、そして具体的な実践方法まで、詳しくお話ししていきたいと思います。

なぜ恋愛・夫婦関係で「相手の気持ちを考える」のが大切なのか?

相手の気持を考える女性

そもそも、なぜパートナーシップにおいて「相手の気持ちを考える」ことが、これほどまでに重要なのでしょうか?

答えはシンプル。

「人は、自分のことを理解しようとしてくれる人、自分に関心を持ってくれる人に、好意や安心感を抱きやすいから」です。

かのマザー・テレサは「愛の反対は無関心」と言いましたが、これは深層心理にも通じるものがあります。

相手の気持ちを考えようとせず、無関心な態度をとることは、相手に「自分は大切にされていない」「理解されていない」という感覚を与え、心の距離(分離感)や、時には怒りさえ生じさせてしまいます。

逆に、たとえ相手の気持ちを完全に理解することはできなくても

「あなたのことをもっと知りたい」「どう感じているかに関心がある」という姿勢を示すこと自体が、相手にとっては「大切にされている」「愛されている」という強力なメッセージになる

というわけです。

私たちには皆、「自分のことを分かってほしい・理解されたい・興味を持ってもらいたい」という根源的な欲求があります。

「相手の気持を考える」という行為は、まさに、相手のその欲求に応え、関係性の土台となる信頼感や親密さを育むための、最も基本的な方法の一つと言えるでしょう。

「相手の気持ちを考える」とは? – 想像との違いとメンタライゼーション

どちらを選ぶか悩む女性

ここで一つ、大切な注意点があります。

「相手の気持ちを考える」ことと、「自分なりに相手のことを想像する」ことは、似ているようで少し違う、ということです。

私たちはよく、「あの人はきっとこう思っているだろう」「普通はこう感じるはずだ」と、自分の経験や価値観、常識を基準にして、相手の気持ちを“想像”してしまいます。

これは、いわば「自分の中にいる相手」を見ている状態です。

しかし、本当の意味で「相手の気持ちを考える」とは、「相手は自分とは違う価値観や感じ方を持っているかもしれない」という前提に立ち、相手自身の言葉や表情、状況に注意を向け、「相手の心の中では、今、何が起こっているのだろう?」と、純粋な興味を持って理解しようと意識することです。

このように、自分の視点だけでなく、相手の内面にあるであろう気持ちや考え、意図といった『心の状態』に想像力を働かせ、理解しようとする心の働き。

これを心理学では『メンタライゼーション(Mentalization)』と呼んだりします。

これは、相手の心を正確に読み取る超能力のようなものではなく、あくまで『相手の心に関心を持ち、思いを馳せる力』のことですね。

「分かろうとする姿勢」「興味を持つ意欲」そのものが大切ってことですね。

その姿勢が、相手に安心感と信頼感を与えることが多いのです。

なぜ近しい相手ほど「相手の気持ちを考える」のが難しくなるのか?

職場や友人関係では比較的、相手の立場や状況を考えられるのに、なぜか一番身近なパートナーに対してだけ、それが難しくなってしまう…。

これは、多くの方が経験することかもしれません。その背景には、親密な関係特有の心理が働いています。

私たちは、心を許した相手、つまりパートナーに対しては、他の人間関係では抑えているような、より深い依存心や、満たされたいという根源的なニーズ(愛されたい、分かってほしい、認められたい、など)が、無意識のうちに強く顔を出しやすくなるのです。

これは、人間にとって非常に自然な心の動きといえます。

心理学の愛着理論(Attachment Theory)などで指摘されるように、私たちが幼少期に親との間で形成した「人と繋がり、安心感を求めるパターン(愛着スタイル)」は、大人になってからの最も親密な関係性であるパートナーシップにおいて、最も強く、そして無意識的に再現されやすいと言われています。

愛情と執着の違いについて愛情と執着の違いについて今日はまとめています。そもそも執着とは「自分のためになにかにしがみついている状態」で、相手を愛している状態とは全く異なるものなのですよ。...

つまり、パートナーとの関係は、私たちの最も深い部分にある「愛されたい」「見捨てられたくない」といった欲求や不安が刺激されやすい場でもあるのです。

そして、この強い感情やニーズを強く感じると、一時的に視野が狭くなり、冷静に相手の気持ちや立場を考える余裕を失ってしまうことがあるわけです。

自分の欲求を満たすことや、自分の不安を解消することに意識が集中し、結果的に自分本位に見える言動をとってしまう…。

これが、近しい相手ほど「相手の気持を考える」のが難しくなる大きな理由の一つです。

そして、具体的には以下のようなパターンとして現れやすくなります。

「自分の正しさ」を押し付けてしまうパターン

自分としては相手のためを思っているつもりでも、「これがあなたにとって一番いいはずだ」「普通はこうするものだ」と、無意識に自分の価値観や「正解」を相手に押し付けてしまう。

相手の気持ちを聞く前に、自分の「与えたいもの」を与えようとしてしまう。

「相手の気持ちを考える」よりも「自分の正しさを証明したい」「自分の不安を解消したい」という欲求が強くなっている状態です。

「無力感」を避けたいパターン

「相手の期待に応えられない自分はダメだ」「役に立てない自分には価値がない」といった無力感を強く恐れている場合、相手の本当の気持ち(例えば、不満や期待など)を知ることが怖くなります。

相手の気持ちを直視すると、自分の無力さを突きつけられるように感じるからです。

だから、相手の気持ちを考えることを避け、一方的に尽くしたり、逆に距離を取ったりしてしまう。

これも、根底には「無力な自分を感じたくない」という強いニーズがあります。

「依存心」が強すぎるパターン

パートナーに対して、「私の気持ちを分かってほしい」「私を満たしてほしい」という依存的な欲求が、相手の気持ちを考えるスペースを奪ってしまうほど強くなっている状態です。

関心が「自分がどう満たされるか」に集中し、「相手がどう感じているか」への興味が薄れてしまうのです。

相手を、自分をケアしてくれる親のような存在として、無意識に見てしまっていることもあります。

これらのパターンは、多くの場合、無意識的に働いています。

そして、根底には自己肯定感の問題や、先ほど触れた愛着のパターンなど、過去からの影響が隠れていることも少なくありません。

実践!「相手の気持ちを考える」(メンタライゼーションを高める)ための5つの方法

相手の気持を考えて手を繋ぐ男女

では、具体的にどうすれば、この「相手の気持ちを考える」能力を高めていけるのでしょうか?

そのための実践的な方法を5つご紹介します。

1:傾聴する(相手の話を「心」で聞く)

まずは、相手の話を遮らず、最後まで丁寧に聞くことを心がけましょう。

言葉の内容だけでなく、表情、声のトーン、仕草など、非言語的な情報にも注意を向け

「相手は今、どんな気持ちでこれを話しているんだろう?」

と感じ取ろうとすることがポイントですね。

2:自分の「思い込み」に気づく

話を聞きながら、「どうせこう思ってるんでしょ」「それはつまりこういうことでしょ」といった自分の解釈(思い込み)が浮かんでくることに気づきましょう。

そして

「これは私の考えであって、相手の本当の気持ちとは違うかもしれない」

と、一旦保留する意識を持つことが重要です。

自分の思い込みで相手をジャッジしないことなんですよね。

3:確認のための「質問」と「要約」を上手に使う

分からないこと、疑問に思ったことは、「~ということ?」と質問して確認すること。

「〇〇って言ってたけど、それは△△って気持ちだったのかな?」

のように、相手の気持ちについて質問するのも有効です。

また、

「つまり、あなたは〇〇と感じているんだね」

相手の話を要約して伝えることで、自分の理解が間違っていないか確認し、相手に「ちゃんと聞いてもらえている」という安心感を与えることができます。

4:安易な「否定」や「アドバイス」を控える

相手の気持ちや考えに同意できない場合でも、すぐに「でも」「だって」「それは違うよ」と否定したり、「こうすればいいのに」とアドバイスしたりするのは避けましょう。

まずは

「そう感じているんだね」

「そういう考えもあるんだね」

と、相手の心の状態を一旦受け止める姿勢が大切です。

アドバイスは、相手から明確に求められた時に限りましょう。

5:「なぜ?」という興味と想像力を働かせる

相手の言動に対して、「理解できない!」と突き放すのではなく

「なぜ、相手はそう言動するのだろう?」

「その背景にはどんな気持ちや事情があるのだろう?」

と、相手の内面に対する純粋な興味と想像力を働かせてみてください。

いわば「相手には相手なりの理由があるはずだ」という視点を持つことが、よりよい関係性の出発点になるのですね。

「相手の気持ちを考える」ことで得られる、本当のメリット

「相手の気持ちを考えること」を実践していくと、どんないいことがあるのでしょうか?

それは、単に相手との関係が良くなる、というだけではありません。

実は、相手の気持ちを考えようと努めることで、巡り巡って

「自分自身がいかに相手から大切に思われているか」を実感しやすくなる

という大きなメリットがあるのです。

自分が相手に関心を持ち、気持ちを汲み取ろうと努力していると、相手が同じように(あるいは別の形で)自分に関心を示してくれた時に

「あ、今、私のことを考えてくれてるんだな」

と、その意図や愛情をより敏感にキャッチできるようになります。

つまり、「相手の気持ちを考える」ことは、相手を大切にすることであると同時に、自分自身が愛されているという感覚を受け取るアンテナを磨くことでもあるのです。

これこそが、関係性の中に「そこはかとない愛し合う喜び」をもたらしてくれるのではないでしょうか。

まとめ

「相手の気持ちを考える」こと。

それは、恋愛や夫婦関係を、そしてあらゆる人間関係を、温かく、深く、そして長続きさせるための、基本でありながら、最も重要な要素の一つです。

ただ、特に親しい関係においては、私たちの深い部分にある依存心やニーズ、そして過去からの愛着パターンなどが顔を出し、冷静に相手の気持ちを考えることを難しくさせることがあります。

もしあなたが、パートナーとの関係で「すれ違っている」「うまくいかない」と感じているなら、一度、相手への「興味」と「想像力」を意識的に働かせ、「相手の気持を考える」というシンプルな原点に立ち返ってみませんか?

そして同時に、「なぜ、自分はそれが難しいと感じるのだろう?」と、自分自身の心の動きにも目を向けてみてください。

完璧に理解できなくてもいいのです。

その「分かろうとする姿勢」こそが、二人の間の氷を溶かし、再び心を通わせるきっかけとなるはずです。

あなたのその優しい気持ちが、大切な人に、そしてあなた自身にも、温かい形で届くことを願っています。

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浅野寿和 | 心理カウンセラー
恋愛・夫婦関係・対人関係・性格・生きづらさなど様々なお悩みに心理学でお答え。活動歴16年し、9,000件を超える臨床実績。口癖は「どんなことにも事情があるよね」。名古屋・東京・オンラインでカウンセリングを行う現場主義のカウンセラー。
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