こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
今日は、恋愛やパートナーシップの中で、わりと頻繁に起きているのに、なぜかちゃんとした説明が少ないように思うテーマについて書いてみようと思います。
タイトルは、少し強めですが
「幸せにしたい男と、愛されたい女は衝突する」
です。
とはいえ、これは男女対立の話ではありません。
どちらが正しい・間違っている、という話でもない。
むしろ、
「同じ愛から出ているのに、表現の向きが違うために起きるズレ」
その心理構造をほどいていく話です。
よろしければお付き合いください。
Index
幸せにしたい男性と、愛されたい女性
まず大前提として。
よほど自分のことしか考えられない人でない限り、
多くのカップルを見ていて感じるのは、
男性も女性も、根っこでは同じものを求めているということです。
- 大切にしたい
- 傷つけたくない
- 安心して一緒にいたい
このあたりは、ほとんど変わりません。
ただし、アウトプットの仕方が違うことがあるわけです。
ここが、静かに、でも確実にズレを生むポイントです。
男女で違う「愛の向き」──同じ想いから生まれる、すれ違いの正体
つまり、「幸せにしたい男」と「愛されたい女」が衝突するとき、
愛の“向き”と“出力の仕方”によって引き起こされることが多いわけです。
まず、この部分から解説していきます。
女性が求める愛──Emotional Bondingという「つながり方」
心理学的に見ると、女性が求めやすいのは
Emotional Bonding(感情的な結びつき)
です。
これは
- 気持ちを共有したい
- 不安や迷いも分かち合いたい
- 「一緒に感じていたい」と思う
といった形で表に出やすい愛のスタイルです。
男性が示す愛──Protective Commitmentという「守り方」
一方で、男性側の愛は、少し別の方向に出やすい。
男性に多いのは、
Protective Commitment(守ることで示す関与)
という愛の形です。
これは
- 問題を減らそうとする
- 安心できる状態を作ろうとする
- 彼女を不安にさせないよう背負う
といった行動として現れやすい。
彼女は「つながろう」として話しかけ、彼は「守ろう」として答えを探す
つまり、
彼女は「つながろう」として話しかけ、
彼は「守ろう」として答えを探す
という、同じ愛から生まれた“方向の違い”が起きるのです。
ここですれ違いが生まれます。
彼女は
「気持ちを分かってほしい」と思って話しているのに、
彼は
「どうすれば彼女を幸せにできるか」を考え始める。
結果、
「話を聞いてほしい彼女」と
「解決しようとする彼」
という構図ができあがる。
どちらも愛しているけれど、解釈がズレているだけなんです。
男性の愛のカタチ|「不安を減らすことで守ろうとする」
もう少し詳しく見ていきましょう。
心理学的に見ると、男性は比較的、
「不安要因を取り除くこと=愛」
という回路を持ちやすい傾向があります。
彼女が不安そうにしていると、
- どうすれば落ち着くか
- どうすれば問題が起きないか
- どうすれば大丈夫な状態に戻せるか
を無意識に考え始める。
これは、いわゆる問題焦点型コーピングとも呼べる反応で、
「感じる」よりも「整える」「解決する」方向に心が動きやすい。
だから男性は、
- 感情の話を短くまとめようとする
- 将来の話を重たく感じやすい
- 安心させるために距離を取る
といった行動を取りがちです。
本人としては、
「彼女を幸せにしたい」「これ以上不安にさせたくない」
という、かなり真剣なんですけどね。
ただまぁ、何のエクスキューズもなく行動すると、女性は「突き放されてる?」と感じる可能性が高いですよね。
だから、「男には期待しねぇ」と思われる人がいるとかいないとか・・・。
ただ、ここで誤解してほしくないのは、
多くの男性は「逃げたい」というより、「ちゃんと守れる自分でいたい」だけだったりする、ということです。
女性の思いのカタチ|「気持ちを共有することでつながろうとする」
一方で女性側は、心理的には、
「感情を分かち合えること=愛されている実感」
になりやすい。
不安や迷いを伝えるのも、
将来の話をしたくなるのも、
相手を責めたいからではなく、近づきたいからなんですよね。
・・・ここまで読むと、「女性は愛されたい生き物」と思われたかもしれませんが(その側面もあるっちゃーそうなのですが)
実は心理構造として見ると、多くの女性は
「愛されたい」より「愛したい人」なんです。
大切な人に深い思いやりを抱き、相手を包んであげたい、といったような深い情愛をお持ちの方が多いのです。
ただ、この女性が感じる「近づきたい」という感覚がよくわかんねーよ、という男性も少なくないんじゃないかな、という部分が僕の臨床現場での実感ですね。
ん?近づきたい?・・・近づいたところで問題は解決しねーだろ?って感じでね(^^;
なので、深い情愛を抱く女性の皆さんは
- 話をそらされる
- 距離を置かれる
- 「今は考えたくない」と言われる
と、
「私は大切にされてないのかな?」
「気持ちは要らないのかな?」
と感じやすくなると言えるのです。
そんなことないんだけど、そう感じやすくなる、という話ですね。
なぜ衝突するのか|愛が逆方向に働く瞬間
ここで起きているのは、とても皮肉な現象です。
- 男性:不安を減らそうとして距離を取る
- 女性:つながろうとして言葉を重ねる
つまり、
近づきたい人と、落ち着かせたい人が、同時に動いている構図なんです。
簡単にまとめるとこんな感じですね。
女性の不安が高まる
↓
「気持ちを確認したい」
「ちゃんと愛されてる?」
↓
男性は「答えを出そう」とする
「どうすれば不安は消える?」
↓
答えが出ない
or
間違った答えになる
↓
女性「分かってもらえない」
男性「何を求められているか分からない」
その結果、
男性は「彼女が落ち着いていないし、なんとかしないと・・・。でもなんか俺、責められている?」と感じることになり。
女性は「こんなに伝えているのに何も分かってない!私のことなんて見ていないんだ!拒絶されているとしか思えない!」と感じることになる。
*
まぁ、そう思う気持ちもわからんでもないのです、僕も。
しゃーないっすよね、といつも思います。
ただ、この話って、より良い関係を導き出すならば、結論を出す必要がないんですよ、そもそも。
どっちが正しいかを決める話じゃない、というか。
いや、むしろ、正しさを決めにいった瞬間、たぶん、その関係はもう疲れ始めています。
人は不安が強まると「正解」を求めやすくなる
ここで、もう一段階、関係をこじらせやすいポイントがあります。
それは、
人は不安が強まると、正解を求める
という心の動きです。
不安になると、
- どっちが正しいの?
- どうするのが正解なの?
- はっきりさせたい
という気持ちが強くなります。
その結果、無意識のうちに、
「あなたは間違っている」
「その対応は不正解だ」
という形で相手を問い詰めてしまう人も少なくないようなんですね。
でも、ここで起きているのは、
行動の是非を問うことではなく、相手の愛そのものを否定する構造なんですね。
「そんなつもりはなかった」としても、
- あなたのやり方は違う
- その愛し方は足りない
と伝わるわけですよね。
ま、実際にそのまんまの言葉をぶつけたり、相手に理解させるために若干脅してしまう人もいるのかもしれませんが・・・。
言い方を変えれば・・・
「私の愛し方、俺の愛し方が正しい、なぜ理解できない?」
と相手を無能扱いしてしまうような態度なのです。
・・・そりゃ揉めますよね?(^^;
これ、よほど深い信頼関係や絆がない限り、関係は壊れやすくなるっておわかりいただけますよね?
もうこれは皮肉でしかないのですが
安心したくて正解を求めた結果、安心できる関係を壊してしまう
そんなことが起きるわけです。
必要なのは「正解」ではなく「翻訳」
このタイプの衝突で必要なのは、
どちらが正しいかを決めることではありません。
必要なのは、
「その行動の奥に、どんな愛があるのか」を翻訳すること。
- 距離を取る=愛していない、ではない
- 不安を話す=責めている、ではない
愛の回路やカタチが違うだけ。
その違いを理解できると、
関係は「衝突」ではなく「調整」に変わっていきます。
最後に
幸せにしたい男と、愛されたい女は、
本当は同じ場所を見ています。
ただ、歩き方が違うだけ。
もし今、ズレや衝突を感じているなら、
それは愛が足りないからではなく、
愛の表現がすれ違っているだけかもしれません。
正解を出そうとする前に、
相手の愛を、少しだけ翻訳してみる。
それだけで、関係の景色が変わることもありますよ。
正解を出そうとする前に、
相手の愛を、少しだけ翻訳してみる。
…まぁ、言うのは簡単で、やるのは難しいんですけどね。
それでも、その一手間を引き受けられる関係は、たぶん、ちゃんと育て直せる関係だと思っています。
必要であれば、その翻訳作業、いつでもお手伝いしますよ。
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