深読みさんと忍耐女子

「予感」という心のセンサー 〜幸せの最中に“終わり”を探してしまう理由〜

予感を感じている女性

「楽しい時間を過ごしているときほど、”この時間はもうすぐ終わるかもしれない”と思っちゃうんです」

「今のまま関係を続けていても、きっといいことはないだろうなと思うと、別れたくなってしまって・・・」

そんなお声をカウンセリングの中で伺うことがありますね。

いわゆる「ちょっと切ない予感」です。

せっかく楽しめている時間なのにも関わらず、なぜか心のどこかで“終わりの予感”を探している。

こういったことが繰り返されるなら、確かに切ない気持ちになるかもしれないですよねぇ。

ただ、これ、いわゆる「単なる気のせい」ではなく、心理学的にも説明できる現象でもあるんですよね。

そこで今日は、この「予感」という心のセンサーの仕組みと、それとうまく付き合う方法をお話ししようと思います。


「予感」の正体

心理学的にいうと、予感とは「未来予測のための情動的シミュレーション」と言えますね。

過去の経験や記憶、それに伴う感情を組み合わせて、未来を“予想”する。

つまり、予感は感情のアンテナであり、同時に「防衛システム」でもあります。

私たちは無意識に「次に何が起こるか」をシミュレーションし、それに備えようとします。

たとえば、

過去に人間関係で傷ついた経験があると、似たような状況に直面したとき、脳は「またあの結末になるかも」と予測する。

このとき胸に浮かぶのが「予感」なのです。

つまり、いわゆる”嫌な予感”がするときや、”終わりが来るような予感”を感じているときというのは、何らかの形で「過去と同じような失敗や痛い思いをしたくない」という強い防衛が作動しているとき、って話なんですね。


なぜ「深読みさん」「忍耐女子」は予感が強いのか

僕のカウンセリングや講座に来られる方の中で、特に「深読みさん」や「愛深き忍耐女子」は、この予感の感度が高い傾向があります。

理由はシンプルで、彼女たちは人間関係の小さな変化を見逃さないから、なのです。

もっと言えば、自分の中にある繊細な感情や感覚の変化にも敏感です(ここが防衛作用として作動しているって感じ。)

たとえば・・・

なんとなく感じる相手との距離や空気感。

表情のわずかな曇り。声色の変化。

メッセージの文末の短さ・・・。

それらを瞬時に察知し、「これは何かある」と感じ取ってしまう。

この感覚は、いい意味で「相手を思いやる大事な力」でもあるのです。

ただ、その感度が高すぎたり、過去のネガティブな経験から防衛的な意味合いが強まってしまうと、「まだ起きていない未来に疲れてしまう」のですよね。

その結果、今を悲観しすぎてしまう、といいますかね。


予感がもたらす二つの影響

このように「予感」にはポジティブな面とネガティブな面があるんですよね。

ポジティブな面

  • 備えができる、リスク回避がしやすい。
  • 人間関係において「相手が疲れている」と察して先回りできる。

ネガティブな面

  • 安心している時間にも“終わり”を探してしまう。
  • 未来を先に想像しすぎて、今を楽しめない。

つまり、強い予感に身を任せることは、自分の安全を守る反面、幸せを奪うことにも繋がりかねないんですよね・・・。

ね、このあたり、深読みさんの恋愛や結婚の中で大きなテーマになってくるって、わかりませんかね?

これはいわば「考えすぎ」とか「幸せになれない予感が強い」ということなのではなく、常に「終わり」を予感しながら生きているというテーマだったりするんですよ。

かつ、予感が強い人が常にペシミスト(悲観主義者)か、自己肯定感が低いのか、というと、実はそうとも言い切れません。

いわゆる成功者、優秀な方であっても、なぜか予感のネガティヴな側面の影響を受け続けている人もいるんですよね。


幸せの最中に“終わり”を探す理由

さて、僕のカウンセリングでは結構な確率で伺うことになる

「幸せの最中なのに、なぜか未来の不安が浮かぶ」という話。

これには理由があります。

脳は、強い喜びや充足感を感じると、それを「失うこと」のリスクを同時に計算し始めます。

これは、防衛の一つの形なんですよね。

いわゆる、運や運命の話ではなくてね。

喜びに浸っている間に危険が訪れたら生き残れないから、あえて“喜びの裏側”もセットで意識するようになっているんです。

深読みさんや忍耐女子は、この機能が少し敏感に作用しているのかもしれません。

過去の傷や、長年の人間関係の経験値によって、

「良いことのあとには悪いことが来る」

というパターンを覚えてしまっている場合もあります。

すると、悪いことが来ないように(たとえば今の関係が壊れることなど)、先に別のエスケープルートを探そうとするなんてことも起きやすい。

つまり、

今の関係が壊れる前提で物事を考えて、それでも自分が生き残る道を模索するので、たとえ今の関係に良さがあっても、それを信じられなくなったり。

今の関係が安定しているものであっても、それは逆に”邪魔”で”つまらないもの”で”いつか壊れる幻想”のように感じることもあるんですよ。

・・・しれっと強烈な事を書きましたけど(笑)ここ、「悪い予感から抜け出すため」には、めっちゃ重要なポイントです。


予感の使い方を変える

ただ、そもそもこの「予感」はコントロール不能なものではないんですよね。

大切なことは、「嫌な予感=確定ではない」と理解することです。

「所詮、予感なんぞは変数であって、定数ではない」と思えるかどうか。

言い換えれば、自分が何を信じるか、なんですよね。

そのためにできることを簡単にまとめると、以下のような形になります。

  1. 過去の前提を自覚する

    「幸せ=失うかもしれない」という思い込みが、自分の行動を制限していることに気づく。

  2. ポジティブな予感を意識的に作る

    「この時間が終わったら、次は何を楽しもうか」と、自分で未来の楽しみをセットする。

  3. “距離を変えても壊れない”経験を積む

    相手との関係でも、小さなお願いや提案をして、受け止められる経験を重ねる。

これは、脳や心に「変化しても大丈夫」という新しい記憶を作る作業でもありますね。


「恋愛や夫婦関係は母との延長ではない」と実感する

これはちょっと意外な話と思われるかもしれませんが、予感の感度が高すぎる背景に「母親との関係」が影響していることも少なくありません。

たとえば、母との関係が常に緊張感を伴っていた場合、「近づくと悪化する」という無意識の前提が恋愛や夫婦関係にも持ち込まれます。

ここで大切なのは、母との関係を変えることだけが解決策ではない、ということ。

母との関係を改善できなくても、その影響をほどくことはできます。

  • 過去の前提を自覚する
  • 小さな主張やお願いを試す
  • “距離を変えても壊れない”経験を積む

こうした積み重ねが、母との関係で形成された「距離感のルール」を書き換えることに繋がる場合もあるんですよ。

結果として、自分自身の未来に関して良いイメージが持てたり、今の関係、パートナーと適切な距離を作れるようになることもありますね。


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最後に:予感との付き合い方を身につけてみましょう

予感は、私たちを守るための大切な機能です。

でも、それが未来の不安ばかりを映すと、今を生きる力を奪ってしまいかねないんです。

ポイントは、予感を「今を味わうためのサイン」として使うこと。

「あ、終わりの予感がしたな」と気づいたら、きちんとその予感を精査することも重要なんです。

無理にその予感に抗おうとしても、なかなか難しい。

でも、そもそも予感を合図として捉えて、目の前の時間や相手に意識を戻すこともできるんですよ。

もし、予感で心がどこかに飛びそうになったら、あえて“今の空気や感情”を感じる練習をしてみてください。

予感は敵ではなく、使い方次第で幸せの味わい方を深くしてくれる心のセンサーなのでね。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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