こんにちは。

心理カウンセラーの浅野寿和です。

今日は、「パートナーのこと、いったいどこまで受け入れたらいいんでしょう?」という話を書いてみます。

このテーマ、以前から何度か書いているんですけどね。

カウンセリングでも、まぁよく出てくる、とても悩ましい話の一つかもしれません。

相手にも事情がある。仕事で余裕がないのも分かる。

過去に傷ついた経験があることも知っている。

自分だって完璧じゃない。

だから、できるだけ理解しよう。受け入れよう。今回は私が折れよう。

・・・とやってきた。

ただ、最近ふと思う。

「これ、いつまで私が受け入れ続けるんだろう?」と。

そんな話です。

先に結論めいたことを書いておくと。

パートナーをどこまで受け入れるかを考えるとき、「相手にも事情があるかどうか」だけで決める必要はないと僕は思っています。

受け入れることで、自分の希望が言えなくなっていないか。

心や身体の負担が積み重なっていないか。

相手もこちらを理解しようとしているか。

そういった「受け入れている自分が、今どうなっているのか」も、大切な判断材料です。

ただし。

だからといって僕は、すぐに「もう受け入れなくていいですよ」とも思わないんですよね。

もう一つ、見たいことがあるんです。

「受け入れる」と「自分を引っ込める」は、同じじゃない

まず最初に、ちょっと言葉を整理しておきましょう。

「相手を受け入れる」という言葉の意味って、かなり広いんです。

たとえば・・・

夫が仕事で疲れていて、今日は話をする余裕がなさそう。

「そっか。今日はしんどいんだね」と、その状態を理解する。

これは一つの「受け入れる」でしょう。

一方、夫が仕事で疲れていて、不機嫌。

でも私は何も言わない。嫌な言い方をされても飲み込む。

こちらも疲れているけど、頼み事はしない。

となると、ちょっと話が変わってきます。

相手の事情を理解することと、自分の気持ちや思いを引っ込めることは別なんですよね。

ここがごっちゃになると、「相手を理解するなら、私が我慢しなきゃ」になりやすい。

でも、本来は、「あなたが大変なのは分かる」という気持ちと、

「でも、その言い方をされると私は辛い」という気持ちは、同時に存在していいわけです。

どちらかを消さなきゃいけない話ではないんですよ。

「今回は私が折れよう」が続くと、何が起きるのか

もちろん、パートナーシップなんて、お互い様の部分があります。

毎回毎回、「私はこう思います!」「私の希望はこれです!」と、何かの選挙運動かのように主張し続ける必要もないでしょう(^^;

いや、毎回そんな広報活動する方がリスクかもしれない・・・。

あと、「今日はこっちが折れよう」って思うこと、誰しもありますよね?

もし、それが問題になるとしたら、それが「ずっと続いたとき」なんですよね。

最初は、「今回は私が折れよう」だった。

それが、「これ言うと、また揉めるな」になり。

そのうち、「どうせ言っても分かってもらえない」になり。

最後には、「もう私が我慢したほうが早い」となっていく。

一見合理的なんです、この考え方。実際にケンカは減ることもありますしね。

でも、冷静に考えると、「そりゃそうだ」って話でもあるんですよ。

「一人(私)が何も言わなくなっている」わけですから。

これを「物わかりの良さ」と理解するのはなんかちょっと違うと思いません?

そもそもですね・・・。

ケンカが減ったことと、関係が良くなったことは同じではないのです。

ここ、結構大切です。

ケンカがない、対立がないというだけで「関係の質が良くなった」と判断するのは、ちょっと早いんですよ。

「一人が少しずつ、関係の中から消えていっている」

一人が自分を引っ込めることで平穏を保っているなら、その人が関係維持のコストをかなり引き受けていることになりかねないんですよ。

自分の気持ちを言わなくなる「自己沈黙化」という反応

心理学には、自己沈黙化(self-silencing)という言葉があります。

ざっくり書けば、

関係を壊さないため。

衝突を避けるため。

相手とのつながりを失わないため。

自分の希望や感情、意見を表に出さなくなるような反応のことです。

もちろん、これも一時的には自分を守ることがあります。

今ここで言ったら余計に揉める。

そういう場面なら、あえて言わない選択だってありますから。

ただ、長く続けば別の問題が出てくることがあります。

もちろん、「言いたいことを我慢したら、必ず問題になる」なんて話ではありませんよ。

そういう雑な因果関係の話ではないです。

ただ、関係を維持するために、自分を黙らせ続けていると、やっぱり心の負担が大きくなることがある。

これも大切な視点なんですよね。

パートナーをどこまで受け入れる?|まず見ておきたい5つのポイント

では、「私は受け入れすぎているのか?」を考えるとき、何を見ればいいのか。

僕なら、たとえばこんなところを見ます。

見るポイント 自分で選べている状態 少し見直してみたい状態
自分の意思 「私はこうしたい。でも今回は受け入れよう」と選べる 自分が何を望んでいるのか分からなくなっている
受け入れる理由 関係を大切にしたい、歩み寄りたい 怒らせたくない、嫌われたくない、見捨てられたくない
自分への影響 受け入れたあとにも納得感が残る 疲れ、怒り、諦め、虚しさが増えている
相互性 相手もこちらを理解しようとしている いつも自分だけが「理解する側」になっている
自分の声 「私はこれは辛い」と言える 言うこと自体が怖くなっている

全部右側に当てはまったら即アウト、という判定表ではありませんので、念のため。

人間関係、そんなに簡単に○×つけられませんからねぇ。

ただ、「相手をどこまで受け入れられるか」だけでなく、「受け入れている自分がどうなっているか」も見ること。

これはかなり大切だと思います。

受け入れることや、相手のために譲ること自体が悪いわけじゃない

ここも大事なので書いておきます。

僕自身、「人のために自分を譲るなんてやめましょう」とは思っていません。

好きな人のために何かしてあげたい。

今日は自分が折れてもいいから、相手を楽にしてあげたい。

それも人の思いですし、愛情である場合も大いにありえますよね。

何でもかんでも「我慢は良くない」と考えること自体に無理があると思っています。

ただし、「実際に犠牲になること」まで手放しに肯定できるわけでもないんです。

つまり、「あなたのために何かしたい」という気持ちそのものが問題なのではない。

その気持ちを実現するために、自分がどれだけ削れているのか。

そこは別に見たほうがいい、ということなんですよね。

そこまでして、何を大切にしてきたんだろう?

さて、ここまで書いておいてなんですが。

僕は先ほどの表を見て、

「右側が多いですね。はい、もう我慢して受け入れなくていいですよ」

とは、あまり考えないんですよね。

・・・カウンセリングでいきなりそんなことを言ったら、

「じゃあ今までの私の努力は何だったんだよ!」

って話にもなりかねませんし。

だから、僕はもう一つの視点も大切にするんです。

「私は、何を大切にしたくて、ここまで受け入れてきたんだろう?」

たとえば・・・

  • 相手を傷つけたくなかったのかもしれない。
  • 関係を壊したくなかったのかもしれない。
  • 分かり合える二人でいたかったのかもしれない。
  • 一度好きになった相手を、簡単に悪者にしたくなかったのかもしれない。
  • 家族を守りたかったのかもしれない。

それって、僕は全部、雑に捨てていいものだとは思わないんですよ。

もちろん、受け入れ方としては自分自身に対して無理があったのかもしれない。

でも、そこで大切にしようとしてきたものまで、間違いだったことにする必要はない。

僕はそう思っています。

でも、実際に関係が良くない状態になると、襲ってくるんですよ、無力感や無意味感が・・・。

だからホント辛いんですよね。

「大切にしてきたもの」は残して、守り方を変える

たとえば。

「私はこの関係を大切にしたかった」という気持ちがあった。

だから、今までは黙ってきた。

相手が不機嫌になれば、自分が折れた。

何か言われても、理解しようとした。

そのやり方では、もう自分がしんどくなっている。

だったら、関係を大切にすることをやめる必要はないんですよ。

ただ、その大切な関係の守り方を変えればいいんです。

今までは、「関係を大切にしたいから黙る」だった。

これからは、「関係を大切にしたいからこそ、私はこれは辛いと伝える」でもいい。

今までは、「相手を傷つけたくないから、自分が我慢する」だった。

これからは、「相手を傷つけない言い方を考えながら、自分の気持ちもそこに置く」でもいいわけです。

要は、大切にしてきた価値まで変えなくてもいいんです。

その価値を守るために使う方法を、少し変えてみればいい。

僕は、この考え方のほうがしっくりくることが多いんですよね。

相手を「理解すること」と、相手の言動を「引き受けること」は別

ここまで来ると、もう一つ分けて考えやすくなります。

相手を理解することと、相手の言動を全部引き受けることは違います。

たとえば・・・

「仕事が大変だから、今は余裕がないんだな」

これは理解できる。

でも、「だから私に何を言ってもいい」にはならないでしょう?

「この人は将来を考えるのが怖いんだな」

それも理解できる。

でも、「だから私は、相手が決めるまで何年でも待たなければならない」とも限らない。

「過去に傷ついたから、人を信じるのが怖いんだな」

そういう事情もあるでしょう。

でも、「だから何度傷つけられても、私が理解役でいなきゃいけない」ではない。

理解できることと、受け入れ続けることって違うんですよ。

だから、場合によっては、

「あなたがそう感じることは分かるよ。でも私は、これは続けられない」

という言葉も成り立つ。

これは相手を切り捨てる言葉ではないんです。

相手だけではなく、自分も関係の中に置く言葉なんですよね。

・・・ただ、この言葉をなかなか使えない、とお感じの方がいらっしゃることも、経験上知っています。

ここで出てくるのは「関係の中に自分を置くことへの恐れ」ってヤツでして。

誰かとの関わりの中に自分が登場する、ということ自体に心が反応することもあるんですよ。

だから、我慢する、つまり、自分の気持ちを関係の外に追い出すことや・・・

我慢する役割、支える役割、などを使って、自分自身の心が関係の中で登場しないようにしている人もいるんです。

ちょっと分かりにくい話ですが、まぁ、そんなこともあるのね、程度に覚えておいてほしいことでもあります。

では、どうしたらいい?|いきなり大きく変えなくていい

とはいえ。

長い間、受け入れる側だった人に、「じゃあ今日からバンバン自己主張してください」とお伝えしても

「・・・それができりゃ苦労しないし、あんたに(カウンセラーに)相談してねぇよ」

みたいな話になることも少なくないんですねぇ。

なので、大きな一手を狙わなくていいです。

まずは、自分は何が辛いのか。

ここを自分で分かってあげる。

次に、それでも今まで受け入れてきたのは、何を大切にしたかったからなのか。

そこも見る。

そのうえで、その大切なものを守りながら、別のやり方がないかを考える。

たとえば、夫がこちらの愚痴を聞いて、すぐに「こうすればいいじゃん」と解決策を出してきた。

いつもなら、「そうだね、ありがとう」と言って終わる。

そこで、ほんの一言。

「ありがとう。でも今日はね、ただ聞いてほしかったんだ」と足してみる。

これぐらいからでいいんですよ。

相手が完璧な反応をしてくれるかどうかより、自分の気持ちを、関係の中から消さなかった。

いつも我慢しがちな人ほど、まずはそこから、です。

それを繰り返しながら、「これなら言える」「これはもう飲み込まない」「これは私が譲ってもいい」を少しずつ選べるようになる。

そうすると、今まで

「受け入れる」か「拒絶する」か

の二択だったところに、いろんな選択肢が出てきます。

もし、こちらが伝えても相手が何も受け入れようとしないなら

もちろん。

こちらが丁寧に伝えれば、必ずパートナーが受け止めてくれる。

・・・というほど、人間関係は都合よくできておりません(^^;

こちらが言葉を選んでも、怒る人はいる。

「そんなこと言われても困る」と逃げる人もいる。

何度伝えても、こちらの話を聞こうとしない人もいるでしょう。

そういうときは、「私の伝え方がまだ足りないのかな」だけを考えなくていいと思います。

相手がこちらを理解しようとしているか。

自分だけがずっと理解役になっていないか。

そこも関係を見るための情報です。

特に、暴力、脅し、強い支配、人格を傷つけるような言動がある場合は、「もっと理解しなきゃ」よりも、自分の安全を優先して考えてください。

カウンセリングでは「何を大切にしてきたのか」まで見ます

こういったケースでカウンセリングをしていると、

相談者さんご自身が、「私、我慢しすぎてました」と気づかれることもけっこうあります。

それは大切な理解ですよ。

でも僕は、そこで話を終わらせないことが多いんですよね。

「じゃあ、そこまで我慢して、何を大切にしてきたんでしょう?」

ここが大切な部分だと思うんです。

  • 本当は家族を大切にしたかった。
  • 夫と分かり合いたかった。
  • 自分がされたような思いを、相手にはさせたくなかった。
  • 簡単に諦める人にはなりたくなかった。

そんなものが出てくることがあります。

それが自分の中で腑に落ちると、「私はただ我慢していた」だけではなくなるんです。

同時に、

「その大切なものを守るために、これからも自分を黙らせ続ける必要があるんだろうか?」

とも思えるようになってくる。

ここで、自分がやってきたことへの見え方が変わったり、これから選べるものが増えていくんですよね。

受け入れる。伝える。断る。頼る。距離を取る。相手に任せる。

今まで一つしかなかった関わり方が、少しずつ増えていく。

僕がカウンセリングで見させていただいているのは、そんな部分でもあります。

最後に|どこまで受け入れるかを考えるなら・・・

パートナーをどこまで受け入れれば、いい関係になるのか。

この問いに、「ここまでです」という画一的な線を引くことはかなり難しいと思います。

人によって違いますし、同じ人でも、今の自分の余裕や生活状況によって違うでしょう。

なので、もし今、

「もうどこまで受け入れればいいのか分からない」

と思っているなら、

一度、問いを少し変えてみてほしいんです。

「私は、何を大切にしたくて、ここまでやってきたんだろう?」

そして、

「その大切なものを守るために、これからも同じやり方を続ける必要があるのかな?」

関係を大切にしたい気持ちは、残していい。

相手を理解したい気持ちも、別に捨てなくていい。

今まで大切にしてきたものまで、「全部間違ってた」にしなくていいんですよ。

ただ、そのために、自分を黙らせ続けなくてもいい。

大切にしてきたものまで捨てなくていい。

ただ、大切にする方法は変えていい。

さて、あなたはどうお感じになりましたか?

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浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛・夫婦・仕事・生き方の中で、「ちゃんとやってきたはずなのに」そんな感覚を抱えやすい人のご相談を多くお受けしています。 相談しなくても日常が回っている。でも、どこかしんどい。そんなとき、丁寧にあなたの生きづらさやお悩みをほどいていきます。 キャリア17年・臨床10,000件超。東京・名古屋・オンライン対応

「もっとうまく関わり合えないだろうか」

夫婦の相談では、まあ、ほんとうによく聞く言葉です。

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