執着の手放しは別れた相手への最後の愛の示し方
こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
「別れた相手のことを、いつまでも思い続けてしまう」
そういったお話を伺うことがあります。
もう会えないし、戻れない。
それは頭ではわかっている。
それでも、気持ちだけがその場に残り続ける。
こういうことって、あるんですよね。
そして、その状態にあるとき、多くの人はどこかでこう考えます。
「手放さなきゃ」
でも実際は、手放そうとするほど苦しくなることもあるわけです。
なぜなら、その相手を手放すということは、ただ一人の人を諦めることではなく、
その人と一緒に見ていた未来や、そこで感じていた自分自身まで失うような感覚を伴うことがあるからです。
だから、簡単ではないんですよね。
ただ僕は、執着の手放しって、冷たくなることでも、忘れることでもないと思っています。
むしろそれは、
別れた相手への最後の愛の示し方
になることがあるのだろうと思うのです。
今日はそんな話を、少し丁寧に書いてみます。
Index
手放しの始まりは、「まだ好き」と認めること
別れた相手に気持ちが残っているとき、まず起きやすいのは、
「こんなふうに思ってはいけない」
という禁止なんですよね。
もう別れたんだから。
相手にも迷惑だろうし。
前に進まなきゃいけないし。
こんなに好きでいるなんて、みっともないし。
そうやって、自分の気持ちに蓋をしたくなることもあると思います。
ただ、実際には、この禁止が強いほど、気持ちの消化は進みにくいことが多いのです。
好きだと思ってはいけない。
会いたいと思ってはいけない。
忘れられないなんて思ってはいけない。
そうやって封じ込めた感情は、なくなるというより、心の中に居座り続けやすいんですよね。
だから、手放しの始まりは、案外シンプルで、でも一番しんどいところでもあるのですが、
「私はまだこの人が好きなんだな」
と認めることなのだと思います。
それは、相手を追いかける許可を出すことではないんです。
ただ、自分の気持ちに対して嘘をつかない、ということです。
ちょっと勇気は必要ですけどね。
手放せないのは、心の痛みをちゃんと感じるのが怖いから
「好きだ」と認めると、手放しが進まなくなるように感じる方もいらっしゃると思います。
でも実際には、逆のことも多いんです。
手放せないのは、相手のことを好きだから、というより、
その別れがもたらす痛みを、まだ十分には受け止めきれていないから
ということもあるのですね。
失恋や別れの痛みって、ただ寂しいというだけではないことがあります。
一緒にいた時間。
その人の隣にいた自分。
あの関係の中で感じていた安心。
未来に対して持っていた期待。
そういったものが一度に失われると、まるで自分の一部がもぎ取られたような感覚になることもあります。
心理学では、親しい関係の喪失が、自分のアイデンティティの一部を失うように感じられる、と考えられることもあります。
それぐらい、別れって痛いんです。
だからこそ、その痛みを通りたくなくて、気持ちは相手のところに留まりやすくなる。
それは未熟だからではなく、単純に、つらいからなんですよね。
「相手そのもの」ではなく、「一緒にいた事実」にしがみついていることもある
執着が起きるとき、いつも「相手そのもの」を深く愛しているとは限らないこともあります。
ここは少し切ない話なのですが、
「今まで一緒にいたから」
という事実のほうに、気持ちが強く引っ張られている場合もあるのです。
相手と一緒にいるのが自然だった。
その関係が当たり前だった。
そこに相手の好意や愛情がずっと存在していた。
そうした状態が続いていたとき、人はそれを“あるもの”として受け取ってしまうことがあります。
すると、別れたあとに苦しいのは、相手を失ったからというより、
「その状態が消えた」
ことに対する反応である場合もあるのですね。
こういうと冷たく聞こえるかもしれませんが、悪いという話ではありません。
人の心って、そういうふうにも動くものだからです。
ただ、この場合、戻りたい気持ちが本当に相手への愛なのか、それとも、失った状態を元に戻したいだけなのかは、丁寧に見たほうがいいこともあります。
でないと、仮にやり直せたとしても、結局また同じところで苦しくなる可能性があるからです。
手放しとは、相手の人生を相手に返すことでもある
僕は、手放しって「忘れること」ではないと思っています。
相手との思い出を消すことでもない。
好きだった気持ちを否定することでもない。
なかったことにすることでもない。
そうではなくて、
もう一度つかみにいかないこと
なのではないかと思うのです。
別れたあと、相手の人生は相手のものになっていきます。
もちろん、もともと相手の人生は相手のものなんですけどね。
ただ、関係が終わったあと、それを本当に認めるのって、なかなかしんどいものです。
私はまだ好きなのに。
まだ言いたいことがあるのに。
本当は、もう一度ちゃんと向き合いたいのに。
そういう気持ちがある中で、
「それでも、この人の人生はこの人のものなんだ」
と受け入れていくこと。
これは敗北ではありません。
むしろ、相手を自分の不安の埋め合わせに使い続けない、という意味で、とても愛のある態度なのかもしれません。
手放しとは、相手の人生を相手に返すこと。
そして同時に、自分の人生を自分の手元に戻していくことでもあるのでしょうね。
そのためには、「これから私はどう生きたいか」が必要になる
手放しが進みにくいときって、相手のことばかり考えているように見えて、実は
「相手がいない私は、これからどう生きるのか」
がぼんやりしていることも少なくありません。
これは自然なことです。
ずっと誰かとの関係の中にいたなら、その人がいない人生なんて、急には想像できないですから。
ただ、少しずつでも、
- 私はこれからどんな恋愛をしたいのか
- どんな関係なら自分らしくいられるのか
- どんな生活を望んでいるのか
そういったことを見つめ直していくと、気持ちの重心が少しずつ戻ってくることがあります。
ここで大事なのは、「すぐ前向きにならなきゃ」と焦らないことです。
いきなり新しい未来を描こうとしても、まだ痛みが強い時期には難しいでしょう。
でも、自分の本音を置き去りにしないまま、少しずつ「私はどう生きたいんだろう」と見ていくことは、手放しを助けることがあるんです。
感謝は、頑張って作るものではなく、消化のあとに現れる
手放しについて語るとき、よく「最後は感謝ですよね」みたいな話になりやすいんですが、ここは少し慎重に扱いたいところです。
というのも、まだ苦しいのに、まだ会いたいのに、まだ納得もしていないのに、
「感謝しなきゃ」
とやると、それはだいぶ苦しい修行になりかねないからです。
感謝って、無理に作るものじゃないんですよね。
別れの痛み。
喪失感。
悔しさ。
怒り。
寂しさ。
まだ好きな気持ち。
そういったものを、ある程度の時間をかけて、少しずつ通っていった先で、
ふっと軽くなる瞬間
が来ることがあります。
そのときに初めて、
「出会えてよかった」
「ありがとう」
「私じゃなかったけど、幸せになってね」
と、綺麗事ではない感覚で思えることがあるんです。
これは、無理して作った感謝ではなく、しがみつきが少しほどけたあとに自然と現れるものなのでしょう。
だから、感謝をゴールに据えて頑張るというより、痛みをちゃんと通った先に、結果として感謝が現れることがある、くらいで見ておくほうが自然かもしれません。
執着の手放しは、最後の愛の示し方なのかもしれない
別れた相手を手放すということは、忘れることでも、冷たくなることでもないのです。
相手の人生を相手のものとして認めること。
そして、自分の人生を自分の手元に戻していくこと。
その静かな断念の中にしか現れない愛も、あるのだと思います。
だから、「手放しは別れた相手への最後の愛の示し方」なんて言葉があるのでしょうね。
もしそうだとするなら、
手放しは、愛が終わった証拠ではなく、愛の形が変わったサイン
とも言えるのかもしれません。
最後に
別れた相手への執着が苦しいとき、僕たちはつい「早く忘れなきゃ」「もう考えないようにしなきゃ」と思いやすいものです。
でも実際には、そうやって急いでも、心はなかなかついてきません。
まず必要なのは、
「私はまだ好きなんだな」
と認めることなのかもしれません。
その気持ちに触れると、痛いと感じることもあるかもしれません。
悲しみが溢れてきたり、また会いたくなることもあるかもしれない。
もしそういった気持ちで溢れているなら、一度じっくりお話を聞かせていただいてもいいのかもしれません。
ただ、そういった感情をなかったことにせず、ちゃんと通っていくことで、
あるとき、執着は少しずつ別のものに変わっていくことがあります。
そう考えると、執着しているとき、私たちは相手を愛していないのではなく、
傷ついたままでは、自分の愛を信じきれないだけなのかもしれません。
だからこそ、手放しは負けを認めることではなく、
自分の愛を、もう一度自分で引き受け直すこと
なのだと思うのです。
そんな視点が、どこかでお役に立てば幸いです。
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