なにか悩みがあって落ち込んでしまったとき不安な時など、自分を見失う状況に陥ったことはないでしょうか。
どこか自信を喪失して不安を抱えたり、今の環境的には幸せなはずなのに急に何も喜べなくなったりすると、どうすれば気持ちを取り戻せるのかわからなくなることがあるかもしれません。
特に「自分のことなのに(感情・欲求などが)よくわからなくなる」「どうしたらいいのかわからないと感じることが増える」が特徴の一つに挙げられると思います。
そこで今回は自分を見失ってしまった、と感じたときの処方箋などをまとめていきたいと思います。よろしければどうぞ。
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自分を見失ってしまったというご相談事例
私は今、自分でも納得できる仕事に就いていて、それなりにキャリアを積み、社会人としての付き合いも、友達付き合いも普通にできます。
人前で、いつも笑っていようと思えば笑えるし、それなりの収入も時間もありますし。
でも、今の自分が幸せを実感できていないんです。
結婚や将来のことを考えてみるけれど、何がしたいのだろうか、と考え込んでしまうんです。
今の自分のこと、もう少しちゃんと知りたいと思うけど、どうすればいいのかもわからないんですよね。
この「自分を見失った」という話は、恋愛やご夫婦、将来についてのご相談の中に含まれていることも多いんです。
今、彼がいるのですが、本当にこの人と付きあっていてもいいのかな?と感じています。
幸せになりたいことは確かだけれど、今の彼との関係に積極的になれません。迷っちゃうんです。
彼のことが嫌いなの?と自分に問いかけてみても、よくわからない、が正直な本音なんです。
こんな私と一緒にいても彼は幸せじゃないですよね?だから、彼にも申し訳ないって思うんです。
そんな私に気づいたのか、最近、彼は私を疑うようになってきて『もう別れたいの?』と聞いてくることもありますし、Lineもなんかそっけないんです。
その冷たい態度に傷つくこともあります。彼と仲良くしたい気持ちもありますから。
でも、自分の気持ちがわからない。
別れたいかと聞かれれば、別れたくない。でも、今のままでいいとも思えない。
やっぱり私、ワガママなだけですかね?
彼とのことを友達に相談すると、『彼っていい人なんだから委ねちゃえば』と言われます。『嫌なら別れたらいいじゃん』とも。ある友達は『私が何をしたいのかが分からない』とも言います。
彼に委ねればこのまま結婚になるかもしれない。でも、このままでいいのかな?としか思えない。もちろん一人になりたいわけでもない。そう思うと自分が嫌になるし辛くて。
・・・ただ、なにか答えが欲しくて、一度相談してみようかなって思ったんです。
こんな曖昧な相談ですみません。でも、本当にどうしたらいいかわからないんです。
僕自身、10年以上カウンセリングさせていただていますと、「私、こんな風になりたいんです」というご相談と同じぐらい、「私、自分を見失ってしまいました」というご相談は多いものです。
どうしたらいいのか分からないという途方に暮れた感じですね。
ただ「私、自分を見失いました」という言葉を直接お伝えいただくことは稀です。
「今が幸せなはずなのに、幸せを実感できない」
「自分が今から何をして、どうしたらよいかわからなくなった」
「自分に何ができるのか、わからなくなった」
「毎日、不幸じゃないのは分かるけど、ただ時間が過ぎ去っていくだけで」
こういったご相談として伺うことがとても多いのです。
自分を見失ってしまう理由とは
さて、ではどうして自分を見失うという状態になるのでしょうか。
心理的に見ると「自分が何を感じているかわからない」「自分の欲求がよく分からない」と解釈することができます。
自分で自分の感じていることがよく分からないから「自分を見失う」と表現される、と言えますね。
これは「自分の感情を抑圧し続けてきたことによる影響」と見ることができます。
例えば、仕事で、恋愛で、夫婦関係の中で「人に合わせる」「自分の気持ちを我慢する機会が続いた」「自分の意志ではなく他人の価値観の中で過ごす時間が長い」といった状況に置かれていると、自分の気持ちを優先できず、自分のことがよく分からなくなることが起きるのです。
例えば、仕事でならば職場や仕事の目的を優先するがゆえに、自分自身の気持ちを抑え続けていた、とか。
職場の文化に馴染もうと必死で努力しているうちに、自分がしたいこと(欲求)がよく分からなくなった。
この場合は「仕事を優先するときに、自分の感情の重要度を下げ、まるで自分の感じていることを否定するがごとく扱ってきた」というわけです。
その結果「自分の気持ち」の価値が下がるので、自分自身が感じていること自体に信頼を置かなくなってしまう人も出てくるわけです。
こうなると、何をやろうとしても「それでいいのか」「本当にそれはやるべきことなのか」と自分の感じていることを疑問視するようになることもあるのですね。
自分を見失いやすい人の特徴とは
さて、ではどんな人が自分に見失いやすいといえるのでしょうか。
自分を見失う理由が「自分の感情を抑圧し続けてきたことによる影響」であるならば、自分の気持ちを譲る(否定する)傾向が強い人がそれに当たると考えられます。
例えば、
- いつも他者に対して受容的で他者の意見を(無理をしてでも)尊重しようとする人。
- 自分の意見を押し通すより調和を好む平和主義者さん。
- 犠牲してでも他者に対して与えようとする献身的な方。
- なにか問題が起きると「自分の責任だ」と感じる、自責感が強い方。
などがそれに当たります。
※(上記に当たらないタイプの方でも、一時的に強いストレスにさらされたり、深い悩みがあるなどの事情があると、自分のことがよくわからなくこともあります。)
そもそもは調和を好み、人のことを思い、人に寄り添おうという意思がある方が多いので、その自分のことをネガティヴに見る必要もないのでしょうね。
ただ、長い間「自分ではない価値観」の中にいれば、いつしか自分のことがよくわからなくなるものかもしれません。また、起きることのすべてを自分の責任だと感じているならば、自分が自分である理由を見失ってしまうこともあるでしょう。
その結果「自分が何を感じているのか、どう思っているのか」が分からなくなるんです。
もっといえば「自分を愛すること」「自分を満たすこと」が難しくなるわけです。
自分を見失うと愛する人のことも愛せなくなる
また、自分を見失った状態でいると、そもそも自分が何を感じているかピンと来ていないわけですから、大切な人や他者を心から愛したり、理解することも難しいと感じるようになります。
自分が相手に向けている気持ちを疑ってしまうのです。
「私は本当に心から相手のことを思っているの?」というふうに。
ここで「大切な人ですら愛せない」と感じると、更に自分を見失ったような感覚を感じることにもなるんです。
人によっては、「だからいつも自分以上の存在でいなければならない」「どこか特別な自分でいなければまずい」と感じて、更に今の自分をあり方を否定的に見るようになることもあるんですよね。
これは本当に辛いことだ、と思うんですけどね。
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ただ、物事は何事も両面の意味があるように、「人に合わせる」「我慢が募る」など、自分の意志ではなく他人の価値観の中で生活し続けていることで得られるものもあるのです。
それが「ある程度の理不尽やストレスに耐えられるだけの耐性」です。
自分なりに毎日をそつなく過ごすことができちゃうんです。職場でいつも笑顔でいられるし、人に合わせて会話もできる。
いつも人当たりもよく接し、友人もいて、いつも通り仕事もできるし、恋人やパートナーとそつなく過ごすこともできちゃうんです。
ただ「自分が幸せかどうかわからなくなる」のです。
だから「自分と関わる人が幸せであるかどうか」も分からなくなるのです。
なんだか虚しい、寂しい、人と心通わせることができていない気がする、といった「なにか引っかる」を感じている場合が多く、なかなか毎日を思い切り楽しめないんですよね。
「必要以上に人と距離を取りたい」と感じたら、それは自分を見失っているサインかもしれない
また、自分を見失った状態になると、どうしても人と距離を取りたくなることが多くなるようです。
自分を見失うと、自分が透明人間になったかのように、意思も意見も感じられない状態になることもありますから、その「透明=何もないように感じる」自分を隠したくなるんですね。
なにもないとは、自分の価値がない、と感じることだけに限りません。
恋愛や仕事などへの意欲や、パートナーや恋人への愛情、人生の目的・目標などがない、と感じることも同じです。
そんな自分がバレてしまうと批判されると思うからこそ、人から距離を取るようになる、といった感じです。
そんな自分をすごく残念で恥ずかしいと感じれば、更に「人がどう思うか」ばかり気にし始めて苦しい思いを抱えることもあります。
つまり「自分の気持ちがよく分からない状態」が慢性化することで、結果的に劣等感を強めているということもよくあることで、だから、どんどん「自信」から遠ざかってしまうんです。
その理由こそ「自分を見失うほど、自分の感じていることに許可を出していないから」からなのですけど、自分の気持ちほど信頼できないと感じてしまうこともあるわけです。
これはもうグルグルグルグルと悩み続けてしまう方がいても不思議ではないよな、と僕も思うのです。
何より切ないのは、今、幸せだと感じられるだけの環境が整っていたり、仕事や恋愛などで「結果」も出ているけれど、今の幸せを味わい尽くすどころか、気分の落ち込みが続いてしまうことでしょうね。
自分を見失ったときは「もう一度自分の感情を取り戻すとき」です
では、自分を見失っている状態から、もう一度自分を取り戻していくにはどうしたらいいのでしょうか。
一言で言えば「自分の感情をもう一度取り戻す」ということが求められます。
自分を見失うことが「自分の感情がよく分からなくなる」事によって生じるわけですから、やはり自分の好き嫌いすらわからなくなることも少なくないんです。自分が考えていることも「これでいいのか?」と考え込んでしまうことも増えます。
だから、自分が感じていること、自分が存在していること、自分の経験や価値観、才能を認めて、感じて、それによって判断ができるようになることが癒やしの目標になるんですね。
「私はどんな存在なのだろうか?」とか「自分が生きる目的は?」といった哲学的な問の答えを出すこともいいのでしょうが、それよりもっと現実的に、「いろんな物事に対して好きか、嫌いか」で選択できるようになることを目指すような感じ、といえば分かりやすいでしょうか。
そのために必要なことは
「無理をしないこと」「さまざまな価値観を一旦横において、自分なりの思いに注目すること」がとても大切です。
例えば、
頑張っているから素晴らしい、頑張っていないとダメ。
頑張らないことが癒やし、頑張ることは癒やしではない。
こんな能力があるからスゴい、能力がないことはダメ。
成功した自分は優れていて、失敗した自分はどうしようもない。
こういった思考や判断のしがらみから、少し距離をおいて解き放たれていくことです。
言い換えるならば、自分自身が、世の中の常識、家族の価値観、人の意見、社会の風潮、さまざまなものの影響の中にいることを自覚して、「自分の考え方、あり方」を肯定していくプロセスが、自分を取り戻していくことにつながります。
あなたが「今、何を、どう感じているのか」が大切で、ここに様々な判断を入れるよりも「今、自分はこう感じているんだな」と認めていくことを優先します。
ただこれ、人に自分の感じ方に同意を求める、という意味ではないんですよ。
「今、自分がこう感じているのだな」ということを自然に感じていくことを繰り返す感じです。自分の感情を少しづつ取り戻していくために、です。
このプロセスを進めるための具体的な方法としては、以下のようなものがあります。
- 自分の今感じていることを「そう感じているんだな」と俯瞰して認めていく。ときには日記のようにノートに「毎日感じていることを書き出す」ことを続けて、後で読み返す。(感情日記)
- 今日できたこと・努力したことを認めるような習慣を持つ。
- 自分の自由に使える時間を作って、その時間は自由に振る舞う(何をしていてもダメ出ししない)
- とりあえず行きたいかも?と思った場所に行く、会いたい人に会うなど、自分の気持ちを優先する行動をとる。
- 相談ごとをするならば「今の自分の気持ちに共感してくれる人」を優先して選んでみる
などが挙げられます。
これも自分の感情を認め、アテにすることですよね。
できない理由より、できる理由や、自分が「こうしよう」と思えることのほうが大切です。
たとえ、今の自分にうまくできないことがあっても、自分を否定しません。そりゃしゃーない、と感じていけばいいだけです。
ただ、この話は「自分を褒めて自信をつけること」ではありません。結果的にそうなることもありますけど、最初からそう考えると更に混乱することになるかもしれません。
そもそも「見失った自分を取り戻こと」は、正しい、全く間違っていない事実や行動を導くことではなくて、自分が感じている感情をもう一度信頼できるようになることですから。
自分の感情を信頼できるから、その感情の中にある「好き」も「他人に対する愛情も思いやりも意欲」も使いこなせるようになるのです。
だから、たとえ今、自分を見失っていたとしても、どうかそんな自分を責めずにいただければと思います。
自分を見失ってしまうにも理由があり、その状態も一旦信頼して受け容れることが大切なんですよ。
つまり「自分を見失ってしまうこと」自体が悪いことではないのです。
だから、もう少し自分のことを大切にして見る意識を持ってみませんか?
自分の気持ちをコツコツ認めて満たしていく、もう一度自分を取り戻せますからね。焦らず着実に進んでみてくださいね。
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