ほぼ30代からの”仕事に活かせる”心理学

「無理しない」を選ぶ前に考えておきたいこと

深読みしすぎる女性

こんにちは。

心理カウンセラーの浅野寿和です。

今日は、最近よく聞く言葉について、少しだけ立ち止まって考えてみようと思います。

「無理しなくていいですよ」

この言葉自体は、とても優しいし、間違っていないと思います。

実際、無理をしすぎて心や体を壊してしまう人もたくさん見てきました。

ただ、カウンセリングの現場で人の人生を長く見ていると、同時に、こんな場面にもよく出会うのです。

「無理しない」を早く使いすぎて、あとで取り返しがつかなくなるケースに。

今日はそんなお話です。


「無理なものは無理」は、確かに正しい

まず、大前提として。

無理なものは、無理です。

体力的に限界なとき。
精神的にすでに削り切れているとき。
これ以上踏ん張ったら壊れる、と自分で分かっているとき。

こういうときに「まだ頑張れるはず」と自分を追い込むのは、ただの自己破壊です。

なので、僕は基本的に「無理しなくていいですよ」と言う側の人間でもあります。

安易に

  • 「甘えるな」
  • 「努力不足だ」
  • 「逃げている」

と語るのは危険だと思うぐらいです。

なぜなら、相手のあり方を理解しないで、どうしてそう言える?と思うので。

ただし、問題はここからなんですね。


「今は無理」と「そもそも無理」は、まったく別物

心理学的に見ても、人の成長や変化には段階(プロセス)があります。

たとえば学習理論や発達理論では、

  • 慣れていない段階では負荷が大きく感じられる
  • 繰り返し経験することで処理能力が上がる
  • ある地点を超えると、同じことが「無理」ではなくなる

という流れが確認されています。

つまり、

「今はしんどい」=「一生できない」ではないんですね。

ここを混同すると、問題が起きます。


量を通過しないまま「質」を語ると、何が起きるか

少し別の角度から見てみましょう。

以前、元サッカー選手の本田圭佑さんが、ある動画の中でこんなことを言っていました。

「仕事も練習も、質が大事と言えるのは、量をこなした人間だけだと思う」

その後で、彼はこうも言っていた記憶があります。

「どこまで体を追い込むと怪我をするのか、など、わからないことは危険」

そういえば、僕もお師匠さんも「カウンセラーに必要なのは量」といつも言っていましたっけね。

たとえば、

  • 人と深く関わる経験
  • 失敗する経験
  • うまくいかない中で踏ん張る経験

こうした量のフェーズを通らずに、いきなり

「自分に合うやり方だけで生きたい」
「無理しない働き方がしたい」

と言い始めると、どうなるでしょうか。

だいたい、その後で行き詰まります。

応用が効かんのです。そして、経験した場面が足りない。

それは、その人がダメって話ではなく、経験から学ぶことの重要性は無視できないってことなんでしょう。

なので僕もずっと、カウンセラーの先輩には追いつけないままですよ(^^;

基本、僕の師匠や先輩はエゲツないので?、誰よりも動くんですよ。

実力あるベテランに本気でやられたら、そりゃフォロワーは追いつけないっすよ。

天才に必死で努力されたら、凡人(=僕)にはどうしようもない、ってアレと同じです(^^;

ただ、比較をやめれば、自分なりの蓄積はきちんと確認できますよね。


心理学的に見る「無理できない状態」

ここで大事なのは、
無理ができない=怠けているではない、ということです。

ここは勘違いしてほしくないんですよ。

心理的には、

  • 慢性的なストレス状態
  • 失敗体験の蓄積
  • 自己効力感(やればできる感覚)の低下

が続くと、人は「挑戦そのもの」を危険だと認知するようになります。

この状態で

「無理しないほうがいい」

という言葉に出会うと、それが回復のための休息ではなく、撤退の理由として使われてしまうことがある。

これが一番もったいないところかな、と思います。

あと、撤退の理由にしたくなくて、無理をし続ける人もいますしね・・・。


「無理しない」を選ぶ前に、見ておきたい視点

なので、僕はよくこんな問いを投げます。

  • それは今までの結果から生じる無理?
  • それとも「怖くて手前で止まっている」無理?

どちらが良い・悪いではありません。

怖くて止まっていることが罪でもなんでもないし、なぜ怖いのかを突き詰めると、実は「向いてなかった・合わなかった」なんてこともザラにありますからね。

ただ、必要なことなのに「無理なことは無理だ」とを見誤ると、

本当は越えられたはずの地点で、人生が止まることがある。

これは、その時のプライドを優先して、結果後でプライドは傷つく、みたいなプロセスです。

これが「あとになって取り返しがつかなくなる」と感じるポイントです。

もちろん「できた、のに、やらなかった」ことに、大して価値はなかったのかもしれません。

でも、今、振り返って後悔するならば、きっと価値があるものなのでしょうね。

ただ、気づいた時点からでも、プロセスは再開できますよ。


無理を卒業するタイミングは、必ず来る

誤解しないでほしいのですが、
僕は一切「ずっと無理しろ」と言いたいわけではありません。

むしろ逆です。

しないでいい無理はする必要ありません、まったく。

ただ、しないでいい無理を見極めるにも、経験が必要かな、と思います。

言い方はアレですが、好きだなと思った人が常に理想の相手とは限らん、みたいなものですよ(笑)

そこを見極められるようになるには、望ましいことじゃないけど、まぁ手痛い失恋などが学びにつながりますよね。

これは、”先に傷つけ”と言っているのではありません。

いろんな経験をするうちに、それがどんなものか分かるようになる、ってことですよね。

なにより「無理は、必ず卒業するもの」であるべきだ思います。

ただしそれは、

  • 量を通過し
  • 失敗を経験し
  • 自分なりの手応えを掴んだあと

に訪れるもの。

その段階での「もう無理しなくていい」は、人を壊さないし、むしろ人生を安定させます。


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最後に

「無理しない」は、とても大切な言葉です。

でも同時に、使うタイミングを間違えると、人生を止めてしまう言葉でもあります。

もし今、

「これは本当に無理なのか」
「それとも、まだ通過途中なのか」

で迷っているなら。

一人で判断しなくていい。

あなたの今のプロセスを一緒に整理するだけで、「無理」と「今はしんどい」の違いは、かなり見えてきます。

必要であれば、いつでもお手伝いします。

ではまた。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績10,000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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