なぜか自分の人生を選べないとき|目に見えない「背負っているもの」の話
こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
今日は「カウンセラーのひとりごと」的な話。
長くカウンセリングをしていると、ときどき思うことがあるんです。
- 婚活がなかなかうまくいかない。
- パートナーがほしいけれど、いいご縁に恵まれない。
- 夫婦関係がこじれている。
- 仕事でも人間関係でも、どうにも気持ちが落ち着かない。
それはまさに現実に起きているお悩みなんですよね。
ただ、目の前の問題そのものとは別に、
その人が自分でも気づかないうちに背負っている“何か”が、今の現実に影響していることって、けっこうあるよなぁと。
今日はその辺の話をひとつ。
Index
自分でも気づかないうちに、目に見えない何かを背負っている
カウンセリングの現場に長くいますと、
「自分でも気づかないうちに、目に見えない何かを背負っている」
というケースに出会うことはかなり多いです。
たとえば、親の価値観。家族の期待。兄弟の気持ち。子どもの感情。パートナーの不安。場合によっては、パートナーのご両親の気持ちまで。
ここでの「背負っているもの」って、「ちゃんとしなきゃ」とか「失敗しちゃいけない」といった分かりやすいものだけではないんですよ。
知らず知らずのうちに影響を受けた何か、を背負っていることが多いんです。
よくあるのは、親や家族の気持ちを背負ってしまうので、自分のために生きられない、というケース。
当の本人は、「親や家族のことを考える優しさや誠実さだ」と認識しているだけなんですが、それが自分の行動を縛ってしまっている場合があるわけです。
こうなると「自分の好き」だけで人生を選ぶことって、かなり罪っぽい感覚がしてきます。
他にも、ずっと「自分には自信がない」と感じてきた人が、よくよく見ていくと、親の価値観や自己評価の影響をかなり受けていた、なんてこともあります。
このあたり、なんとも説明が難しいですが、実際に僕がお話を聞いていると・・・
「あれ、それあなたがそもそも持っていた価値観や感覚ではないですよね?」
と思えることも結構あるんです。
もちろん、何でもかんでも「私は家族の感情を背負ってます」というわけじゃないんですよ(笑)
ただ、そういった見えない心理の影響から、「自分のために何かを選ぼうとしたとき、なぜか妙に重くなったり、自信がなくなる」。という感覚が生じている人もいます。
たとえば、ただ結婚したいだけなのに、「家族とうまくやれる人だろうか」「私がこの人を選んだら誰かをがっかりさせないだろうか」まで自然と考えてしまう。
夫婦関係について考えたいだけなのに、「夫はどう思う」「子どもはどうなる」「親が心配する」「相手の親も傷つく」と、心の中の会議にものすごい数の声が聞こえている人もいます。
・・・そりゃ、なかなか決まりませんよね。
自分のために動くことが、誰かへの負担に感じられる
こういう状態が長く続くと、
「自分のために何かを選ぶことそのものが、周囲への負担のように感じられる」
ようになることがあります。
自分が楽になる。
楽しむ。
欲しいものを選ぶ。
嫌なことを断る。
誰かに助けてもらう。
環境を変える。
そういうことに、なぜか申し訳なさがついてくるんです。
「私が楽をしたら、誰かが困る」
「私が自由にしたら、誰かが寂しがる」
「私が自分の希望を通したら、誰かを見捨てることになる」
そんな感覚が、はっきり言葉にならないまま残っていることもあります。
だから本人は「行動できない」「決められない」と悩むんですけど、僕からすると、単純に意欲が足りないようには見えないことがあるんですよ。
だって、自分が一歩動くたびに誰かに負担をかけるような感じがするなら、そりゃ慎重にもなりますって。
「まだ癒されていない自分」まで背負うこともある
ちなみに、心理学やカウンセリングをある程度学んできた方の場合、さらに別の荷物を持っていることがあります。
「母との葛藤を癒さないと、恋愛がうまくいかない」
「見捨てられる怖れを癒さないと、結婚できない」
「自己否定をなくさないと、夫婦関係は変わらない」
もちろん、過去の体験や親子関係が今の人間関係に影響していることはあります。
僕もそういった部分をカウンセリングで扱うこともあります。
・・・ただですね。
「まだ癒されていない自分」まで背負い始めると、これも結構重たい感じがします。
「ここを直さないと幸せになれない」「まだ何か問題が残っている」「もっと自分の心を見なきゃ」と、自分の中を探し続けるわけですから。
だからでしょうか。
疲れてくると、「もう心のことはいいから、さっさと行動したほうがいいですよね」とおっしゃる方もいますよね。
でも、僕はそこもちょっと違うと思うことがあるんです。
その発想自体、まだ「癒されていない自分」を前提にしている感じもするんですよね。
僕が気になるのは、「安心して動ける感じ」があるか
ただ、僕がカウンセリングで特に気にしているのは
「何を背負っているか」より
「その人の心にとって安心・安全な感覚があるか」なんですよね。
自分のものではない何かを背負えば、心は安心・安全ではなくなります。
「自分としては〇〇したいと思うけど、背負っている感覚は自分が無理をしろ、とか、苦手なことをやれと言ってくる・・・」
そんな感じがするわけです。
そういった状態で、自分が望む人生を選べるか、というと・・・ねぇ。
よって、あなたの心の状態が
「自分のままでいい、と安心できているか」。
「自分から何かを選んでも、大事なものが壊れるわけではないと思えているか」。
「失敗してもこれで終わりまで行かずにいられるか」。
「誰かをがっかりさせても、自分を悪人だと裁かず、相手の失望まで自分の責任として背負わずにいられるか」。
そういう感覚があるかないか、をけっこう気にします。
実は、ご自身でも全く気づかないほど、安心感を感じないまま頑張ってきた人も多いですからね。
他人に迷惑をかけないように、という責任感が強い人ほど、「結局は自分次第」と思っていることが多いですよ。
もちろん、何事も自分で選ぶことになるわけですけども。
ただ、自分を癒す方向でも、自らの人生をどうするか選ぶことも、
ずっと自分に「ほら、早く何とかしなさい」と言い続けているなら、
それこそが背負っている感覚そのものなんですよ。
だから、僕がご提供しているカウンセリングやセミナーは、
「もっと頑張れる自分になりましょう」という方向にはあまり進まないんですね。
荷物が少し軽くなると、目の前が見えてくる
背負っているものが少し軽くなる。
この感覚が実際にやってくると、こんな変化を感じやすくなります。
いままでなら、
「どうして私は結婚できないんだろう」
「どうしたら夫婦関係を改善できるんだろう」
「なぜ私はいつも人間関係でこうなるんだろう」
と、ものすごく大きな問いを抱えていた人が、
「じゃあ、この人と今日はどう話そうかな」
「今の私にできることって何だろう」
「ここはお願いしてみようかな」
「これはちょっと嫌だから断ろうかな」
ぐらいに戻ってくることがあるんですね。
現実は大して変わっていないけれど、捉え方に変化が出てくるイメージです。
なんというか、今まで広がりすぎていた視界が、適度にフォーカスされていく感じなんですよね。
で、これが逆説的なんですけど、視界が適度にフォーカスされると、未来のこともいい意味で見通しが立ちやすくなるんですよ。
理由はけっこうシンプルで、「今まで漠然とした問題意識」に使っていたエネルギーなどを、使わなくて済むようになるから。
具体的には
「こんな結婚生活がしたい」
「こういう人と関わっていきたい」
「こんな働き方ができたらいい」
と思いやすくなる。
加えて、「うーん、今はこっちかなぁ・・・」と、そこまでの道筋も見えやすくなる。
ここに「背負っていない感じ」があるんですよね。
むしろ、この状態にならないと、自分のための人生って選びにくいと思いませんか?
それ、本当にあなたが背負うべきものですか?
だから僕は、カウンセリングの中で、目の前の問題をどう解決するかだけではなく、
「これ、本当にあなたが背負うべきものなんでしょうか?」
そう見ることが多いです。
というか、そこはかなり繊細に見ていますよ。
- 親の価値観まで、自分が守る必要があるのか。
- 兄弟の感情まで、自分が責任を取る必要があるのか。
- パートナーの親の気持ちまで、自分が引き受けないといけないのか。
- 相手が不機嫌にならないようにすることまで、自分の仕事なのか。
周囲の気持ちに配慮する、ということはあっていいんです。
しかし、背負ってしまうと身動きが取れなくなるわけです。
もちろん、何でも「それは自分の問題じゃない」と切り離せばいいわけでもないんです。
人は関わり合って生きていますし、誰かを大切にしたい気持ちもあるでしょう。
だから僕は、他人のことなんて放っておけ、それが親や家族であっても、と言いたいわけではないのですよ。
「自分が持つべきものではない何かを、他人のために引き受ける」って、一見、美しい話にみえますよね。
ただ、それが優しさや責任感から出ているものであったとしても、
何かを大切にすることと、何かを自分が背負うことは、意味が違います
とお伝えしたいだけなんです。
他人の面倒を見る、相手のことを考えることと、背負うことは同じことではない。
面倒見がいい人が相手のことを背負っているか、というと、実は背負っていないケースのほうが多い。
背負う分だけ、多くの人と関われなくなるし、全体を見ることもできなくなる。
もちろん、自分のための選択も後回しになる。
だから、背負っているものは下ろす・・・いや、
「押し返す」「退けて」
と僕はよく言いますよ。
「それはあなたのものではないよ」と、元の場所に戻すような感覚ですね。
最後に
今日のこの話は「さぁ、あなたの心の荷物をおろして軽くしましょう」なんて曖昧な話じゃないんです。
むしろ、それをずっと続けていると、自分も相手も尊重した関係を作ることが、だんだん難しくなってくるんですよ。
実は、実際に人を大切にしようとしてきた人ほど、どこかで気づくことがあるんです。
「相手の荷物や他人の価値観を無理に背負う、引き受けるって、誰のためにもならない」と。
目に見えない何かを引き受けたとて、相手の心が軽くなるわけでもない。
引き受けた自分が、自分らしいあり方や価値観で生きられないなら、何のために引き受けたのかわからない。
だから、引き受けなくていいものはそのままにしておく。
つい、責任感や優しさで、自分よりも誰かを大切にしようと思う人には、ぜひ知っておいてほしいことです。
自分が背負わないから、今の自分で相手を大切にできる。
僕がカウンセリングで作ろうとしている「あ、それでいいんだ」といった軽い感じって、こういったものなんですよね。
*
あ、ちなみに、今日の話は「今の自分を超えて、もっと成長したい」という話とは少し違いますよ。
自己成長を伴うテーマの場合は、また別の視点が必要になります。
今日はあくまで、「本当はこうしたい。でも、なぜかうまくいかない」と感じているときの話ですので、その点ご理解くださいね。
こちらの記事も続きにどうぞ
家族のことが気になって、恋愛や結婚を自分のために選びにくくなる心理については、こちらでも詳しく書いています。
▶ 家族が気になって、恋愛や結婚に踏み出せないとき ──それは「家族の問題」ではないかもしれない
「誰かを大切にしてきた自分」を否定せずに、自分の人生をどう選ぶかについては、こちらの記事でも書いています。
相手へのやさしさを残しながら、自分と相手の境界線をどう作るかについてはこちらもどうぞ。
「自分らしく生きましょう」って、よく言いますけど。
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