ほぼ30代からの”仕事に活かせる”心理学

仕事を理想化すると不満がたまる? 〜「理想」と「現実」のギャップが生む心の仕組み〜

仕事で悩む女性

「この仕事をやりたい!」

「これこそが天職だ!」

そんな熱い気持ちで仕事に就いたのに、数年経つとどこか不満がたまっている。

そんな経験はありませんか?

「理想を持つこと」は決して悪いことではありません。むしろ、人を突き動かす原動力になります。

でも、その理想が強すぎると、いつの間にか「こんなつもりじゃなかった」という感覚や、「報われない」という虚しさに変わってしまうこともあるんですよね。

僕自身、長い間、ある組織で「カウンセラー養成」に携わる中で、「続く人、結果を出す人」と「そうではない人」の違いを見続けてきた気がします。

そして多くの「そうではない人」の中には、ある意味「カウンセラーという仕事」を理想化しすぎている、という側面があったようにも思うのです。(もちろん”適正”という側面もありますけどね)

あくまで私見ですけどね。

そこで今日は「仕事を理想化しすぎること」が、なぜ不満や疲労感につながるのか。

心理学的な観点から紐解いてみたいと思います。


仕事を理想化する心理

まず、なぜ私たちは仕事を理想化してしまうのか。

心理学でいう「理想化(idealization)」とは、「対象を必要以上に良いものとして捉え、現実以上の価値を投影してしまう心のはたらき」です。

たとえば・・・

「この会社に入れば、自分は認められる」

「この仕事をやれば、ずっとやりがいを感じられる」

「このキャリアに進めば、人生はうまくいく」

こうした期待は、心の奥で「自分を価値ある存在にしたい」という思いが、理想化を後押しするのですね。


理想化の落とし穴

ただし理想化には、いくつかの落とし穴がある、とも言えるんです。

「こんなはずじゃなかった」と感じやすい

理想と現実の差が大きいほど、不満や失望が強まります。

たとえば「やりがいのある仕事」と信じていたのに、実際は雑務が多かったり、下積み時期が長かったり、人間関係がギスギスしていたりすると、強烈な落差を味わうことになります。

理想化が起きれば起きるほど、思い描いた仕事に対して不満が出やすいのですよね。

結果、「こんなはずじゃなかった」「こんなことをして意味があるのか?」と感じやすく、モチベーション維持が難しくなるのです。

言い換えれば、理想通りじゃなかった仕事をマウントしちゃうんですよ。

過剰適応を招く

「理想を裏切りたくない」という気持ちから、無理をしてでも頑張ってしまう人も出てきます。

これは、ある意味理想化した仕事を上に見すぎているから起きることです。

「この仕事は素晴らしいものだ、価値あるものだ」と思うことは問題ないのですが、同時に、どこか気が引けてしまうのです。

「自分にできるだろうか」「見合っているだろうか」などと考えてしまう。

結果、「やりがいがあるから」と言いながらも、実際は、無理をして休めなくなり、疲弊していくケースも少なくありません。

自己評価をゆがめる

理想が高すぎると、達成できない自分を「ダメだ」と責めてしまいやすくなります。

つまり、理想が「自己存在感」を高めるどころか、逆に「自己否定」につながってしまうのです。

結果、続けることができなくなったり、モチベーションが保てなくなってしまうんです。

もちろん継続に必要な能力や研鑽も続かなくなり、実質的に継続が不能になるといいますかね・・・。

なんとも切ない話ではあるのですけれども。


「理想=期待」になったとき、心は苦しくなる

大事なのは、理想を持つことそのものが問題ではなく、理想が「期待」や「ファンタジー」になってしまうことです。

そして、その期待が満たされなければ不安になり、必要以上に膨らめば自分自身が圧迫されるわけですな。

たとえば・・・

「この仕事なら、私を満たしてくれるはず」

「この職場にいる限り、私は幸せなはず」

こうした“自身の不足感から生じる期待”は、仕事そのものに対して受け身の姿勢を強めます。

結果、「仕事が自分を満たしてくれるのを待つ」構図が生まれ、不満を感じやすくなるのです。

とはいえ、環境的に「やりたいことが実現できない状況」もありますよね。

この場合は、「いくら工夫しても、いくら努力しても、やりたいことができない」という状況になりますから、「仕事が自分の期待を叶えることを待つしかない」となりますよね。

となると、まぁ環境の変化も考える必要があるやもしれませんね。


理想化と脱価値化

心理学的には、理想化の後にしばしば訪れるのが「脱価値化(devaluation)」です。

人や仕事を必要以上に高く評価した後、期待が裏切られると、今度は一気に価値を下げてしまうことが起きます。

「あの上司は尊敬してたのに、もう信じられない」

「やりたい仕事だったのに、今は何の意味もない」

これも心の防衛反応の一つですが、脱価値化が強すぎると、「続ける意欲」や「改善の工夫」を失ってしまいます。


理想化が強く不満をためやすい人の共通点

僕がカウンセリングで出会う「仕事に不満をためている人」には、いくつか共通点があります。

  • 真面目で責任感が強く一人で物事を考えるクセがある(自立が強い)
  • 周囲の期待に応えようと頑張る
  • 「できて当たり前」と思われやすい

こうした人ほど、「理想を裏切らないように頑張る」傾向があり、その分「報われなさ」を感じやすいのです。

一般的なイメージでは、いい加減な人が不満をためやすいと思われがちです。

が、まぁいい加減な人がいいか悪いかは別にして、マイペースで動く人は不満を溜め込まないことが多いのかもしれません。(文句は言うかもしれませんし、コロコロやりたいことが変わる可能性はありますけどね〜)

逆に、いつも一人で物事を考えている人や、しっかり者の人ほど、内面での理想化や期待は強まるんですよね。

自分が探し出した理想がここにある、と思えば、期待も強まりますよね。

しかし、あまりに強い期待を持つことで「こんなはずじゃなかった」と感じ、そのときの落差が大きいわけです。

どこかで、自分で自分の首を絞めてしまっている、と言えるかもしれませんね。


どうすれば理想化に振り回されないか?

では、どうしたら仕事を理想化しすぎずに、現実とうまく付き合えるのでしょうか。

1. 理想は「軸」、期待は「オプション」と分けて考える

理想は持っていいんです。

でも、「理想が叶わなかったら終わり」ではなく、あくまで方向性や軸として扱うことが重要です。

企業でいうところの「理念」と「現場」には常に差がある、みたいなものに似ているでしょうか。

このあたりが見えていないことが「過度の理想化」を意味することも多いです。

たとえば、この仕事の理念は素晴らしいけれど、実際仕事するとなると、想定していないような仕事もたくさんあるんだろうな、と推測できるかどうか。

そのうえで、現実的にできることを積み重ねていくといいんですけどね。

2. 「自分の工夫」で満たす部分を増やす

「仕事が私を満たす」ではなく、「自分の工夫で仕事を満たしていく」視点を持つ。

小さな改善や達成を、自分でつかみにいくイメージです。

自分自身の理想を叶えるには、本来は望んでいないような仕事も引き受けることになることも少なくない、といいますかね。

そこを柔軟に引き受けていくか、それとも理想にこだわって「やりたくない」と考えてしまうか。

このあたりの違いって結構重要です。

理想化が強い人ほど、「自分が抱いている理想どおりのプロセスが進まないこと」に幻滅するんです。

そして、せっかく能力も適正もあるのに、止まってしまう。

ある意味もったいない話なんですよね。

ただ、「それは自分の中で起きていることの影響であって、外側の問題じゃないよ」とお伝えしたいわけですね。

3. 不満=自分の成長課題と捉える

「こんなはずじゃなかった」という不満は、自分の価値観や期待を見直すチャンスでもあります。

「なぜこの仕事に理想を投影したのか?」を振り返ることで、自分の本当の欲求が見えてくることがあります。

要は、この仕事に理想を見出した、自分自身の信念ってどこにあるんだろうか、と考えるチャンスだということですね。


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まとめ

仕事を理想化すること自体は、前向きで素晴らしいことです。

ただし、それが「過剰な期待」に変わると、不満や疲労感をためこみ、自分を苦しめてしまいます。

大切なのは、理想と現実を両立させる視点。

理想は「灯台」として持ちながら、現実は「足元の道」として一歩ずつ歩んでいく。

そうすることで、不満に振り回されずに、仕事を自分の糧として積み重ねていくことができるはずです。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛・夫婦・仕事・生き方の中で、「ちゃんとやってきたのに、どこか噛み合わない」そんな感覚を抱えやすい人のご相談を多くお受けしています。 正しさや結論だけを急がず、今どこに立っているのかを一緒に整理する個人セッション(カウンセリング)が人気。 キャリア16年・臨床実績10,000件/東京・名古屋・オンライン対応。リピーターさまが多いカウンセラー。口癖は「どんなことにも事情があるよね」。
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