「自分を大切にする」とは?|難しく感じる理由と、自分を大切にする具体的な視点
こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
今日は、「自分を大切にする」という言葉について整理してみたいと思います。
たとえば、
- 本当は断りたかったのに、また引き受けてしまった
- 言いたいことを飲み込んだあとで、ひとり反省している
- 「また自分を後回しにしてしまったな」と感じる
- 期待に応えるために無理をし続けて疲れ果てている
- 自分のことをあまり良く思えない
そんな気持ちがあるとき、「自分を大切にする」という視点は、自分自身の心を健全に保つために、とても重要です。
この記事は、
「自分を大切にする」とはどういうことなのか
「自分を大切にできない自分を、これ以上責めなくていい理由」
を整理するために書いています。
Index
「自分を大切にする」とは、どういうことなのか
まず、僕なりの定義をお伝えしますね。
この記事では「自分を大切にする」ということを、
自分の心と体の反応を無視せず、その人なりに誠実な選択を重ねていくこと
と捉えています。
美味しいものを食べることや、休むことも大切です。
でも、それだけでは足りない場面もあります。
たとえば、
「本当は嫌だった」
「実は苦しかった」
「本当は腹が立っていた」
そう感じていた自分を、あとから否定しないこと。
その積み重ねも、立派な「自分を大切にする」行為だと思うんです。
なぜ「自分を大切にする」ことは、こんなに難しいのか
自分を大切にすることが難しい理由は、意志の弱さではありません。
むしろ多くの場合、それなりに頑張ってきた人ほど、ここで立ち止まりやすいのかもしれません。
その背景にある心理を、いくつか見てみましょう。
変化することが怖いと感じる
人は、たとえ苦しくても、慣れた状態を手放すのが怖いものなんです。
「このままじゃ良くない」と分かっていても、変えることで何かを失う気がしてしまう。
たとえば、我慢することで人間関係を保ってきた人ほど、
「私だけ楽になっていいのかな」
そんな罪悪感を感じやすいんですよね。
何かを失う痛みを避けている(損失回避)
心理学では、「損失回避」といって
人は「得る喜び」より「失う痛み」を強く感じると言われています。
自分を大切にする選択をした結果、誰かに嫌われたらどうしよう。
関係が壊れたらどうしよう。
そう考えると、動けなくなるのも無理はありません。
過去の自分を否定してしまうような気がする(認知的不協和)
これまでずっと自分を後回しにしてきた人ほど、
急に「自分を大切にしよう」とすると、心がザワつきます。
それは、過去の自分を否定してしまうような感覚が生まれるから。
だから無意識に、「やっぱり私には無理だ」と思ってしまうこともあります。
頑張っても変わらないという実感(学習性無力感)
過去に何度か変わろうとして、うまくいかなかった経験があると、
「どうせまた同じだ」
「頑張っても無駄だ」
そんな感覚が残り続けることがあります。
これが自分を大切にする意味やモチベーションを削ることも多いです。
昔からのパターン(愛着スタイルの影響)
幼少期から、
「ちゃんとしていないと愛されない」
「我慢しないと関係が続かない」
そんな経験をしてきた人ほど、自分を大切にすることにブレーキがかかりやすくなります。
昔から、周囲から期待されること、求められた自分でいることを優先するクセがついている感じですね。
「自分を大切にする」ことの本当のメリット
自分を大切にし始めると、人生が急に楽になるわけではありません。
でも、確実に変わることがあります。
- 自分の感情に気づくのが早くなる
- 無理をしている場面に、自覚が持てる
- 関係の中で、我慢役に固定されにくくなる
結果として、心の回復力が高まり、人間関係も少しずつ健全になります。
誤解されやすい「自分を大切にする」という考え方
「自分を大切にする=わがまま」
そう感じてしまう方も多いですが、本来の自己尊重は、他者への配慮と両立します。
また、完璧にできなければ意味がない、というものでもありません。
できない日があってもいい。
戻ってきて、また考えればいい。
そんなスタンスでご自分と向き合ってみてはいかがでしょうか?
「自分を大切にする」とは、立ち位置を少しだけ動かすこと
ここまで、自分を大切にすることがなぜ難しいのか、その理由を見てきました。
じゃあ、どうすればいいのか。
正直に言うと、「ありのままの自分を受け入れましょう」「自分を褒めましょう」だけだと、なかなかピンと来ないと思うんですよね。
だから、ここでは少し違う角度から見てみます。
自分を大切にするとは、「今、自分が立っている位置」を、ほんの少しだけ動かすことだ、と僕は考えています。
抽象的な話に聞こえるかもしれないので、具体的な場面で見てみましょう。
「何でも引き受ける係」から、少しだけ動く
「頼まれると、反射的に「大丈夫です」と言ってしまう。
それが、いつのまにか昔からのくせになっている」。
こうなると、たしかに自分を大切にできなくなることが増えますね。
これ、さっき書いた「損失回避」が働いているケースが多いんです。断ることで、相手ががっかりするかもしれない。そのほうが、引き受けるより怖い。
ここで動かす位置は、ほんの少しでいいんです。
「それは今週は難しいので、来週なら」。
全部を断る、ではなく、一つだけ、条件をつけて返す。
それだけで、「何でも引き受ける」から、「引き受けられるものを、自分で選べる係」に、位置がわずかに動きます。
「察してもらうのを待つ」から、少しだけ動く
「不満があっても、黙って耐える。
分かってもらえないと、心のどこかで拗ねてしまう」。
これは、過去に「言っても分かってもらえなかった」経験(愛着スタイルの影響)が、関わっていることがあります。
「実はさっきの件、ちょっと引っかかってて」。
相手に察してもらうのを待つのではなく、自分から、小さく言葉にしてみる。
うまく伝わらなくてもいいんです。
「待つ」から「一言だけ差し出してみる」へ。それだけの動きです。
「誰かの機嫌を直す」から、少しだけ動く
「相手が不機嫌だと、反射的に「私が何とかしなきゃ」と思ってしまう」。
これは、特定の誰かと過度に一体化してしまう「心理的な癒着」が関係していることがあります。
相手の機嫌と、自分の心の状態が、いつのまにかセットになっているんですね。
相手の不機嫌は、いったんそこに置いておいて。自分の夕食を、いつも通り食べる。
これだけです。
相手の機嫌を直しに行かない、というだけの、小さな位置の動きなんです。
「結果が出ないと動けない」から、少しだけ動く
「どうせ変わらない」「前もやってダメだった」。
過去にうまくいかなかった経験があると、動く前から諦めてしまう(学習性無力感)。
ここで目指すのは、大きな成功じゃなくていいんです。
一つだけ、小さく試してみる。
結果が出るまで動かない位置から、「小さく試して、確認するだけでもいい位置」へ。
これも、立派な動きです。
それでも、簡単には動けないこともあります
4つとも、共通しているのは、
「自分を全部変える」んじゃなくて、「今の位置から、ほんの少しだけ位置を変える」
ということです。
ただ、正直に言うと、この「少しだけずれる」が、思ったより簡単にできない、という場合もあるんですよね。
ここは、大事な話なので、丁寧に書きますね。
実は、「自分を大切にしない」という反応にも、意味があるんです。
自分を大切にしないことで、感じたくない悲しみや苦しみから、逃れられている場合があるんですよ。
もし、いざ自分を大切にしようとしたときに、なぜか悲しくなったり、虚しく感じたりするなら。
それは、あなたが、それだけ自分自身を追い込まなければいけない事情があった、ということなのかもしれません。
だからこそ、自分自身と向き合って、自分の扱い方を見直してみることには、ちゃんと意味があります。
ただ、大切にしないことで、何かを抑え込んでいるのだとしたら、それを見直すのは、すぐには難しい、ということもあると思うんです。
世の中には、難なく自分を大切にできる人もいます。
でも、いろんな環境を生き抜いてくる中で、「自分自身を大切に扱わないほうが、楽だった」という場合もあるんですよね。
この場合、その事情をきちんと理解することも、自分を大切にすることにつながります。
一度動けば終わり、というものではなく、その後も、継続的に、自分の立ち位置を見直し続けていくことになります。
*
それでも、この「少しのズレ」を許可できるようになっていくと、断れなかったところで断れる。頼れなかったところで頼れる。相手の反応だけで自分の価値を決めなくなる。
そうやって、自分が使える人生の範囲が、少しずつ広がっていきます。
▶この「立ち位置」という視点については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。よければあわせて読んでみてください。
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まとめ
自分を大切にするとは、理想の自分になることではありません。
これ以上、自分を責めなくていい位置に戻ること。
そして、そこから、ほんの少しだけ、自分に合った位置へ動いてみること。
その「少し」がすぐにできる人もいれば、すぐにはできない人もいます。
すぐにできないとしたら、それは意志が弱いからではなく、これまで、自分を大切にしないことで、何かを守ってきたからかもしれません。
もし今日の記事の中で、「これ、私のことかもしれない」と感じるところがあったなら、それが「自分を大切にする」入口なのかもしれませんね。
自分では”意志が弱いだけ”だと思っていたことが、話してみると、”何を守るための事情だったのか”が、少しずつ輪郭を持って見えてくることがあります。
それが分かると、責める材料が一つ減るだけじゃなく、”次は、どこまでなら動けそうか”も、一緒に探せるようになります。
もし、自分の立ち位置を、誰かと一緒に確認してみたくなったら。
僕でよければ、いつでもお話をうかがいます。
「自分らしく生きましょう」って、よく言いますけど。
その“自分らしく”が分からないから困ってるんですけどね。
ちゃんとやっているのに、なんとなく疲れる。
人に合わせられるけど、これでいいのかなと思う。
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