こんにちは。

心理カウンセラーの浅野寿和です。

今日は、

「彼・彼女のことが好きなのに、どうしても信じられなくなる」

そんな感覚について、少し整理してみます。

実際のカウンセリングでも、

「好きなのに、どうしても相手の気持ちを信じきれず、関係を壊してしまった」

そんなお話を伺うことがあります。

例えば

  • 疑う必要がない場面でパートナーを疑うような発言を繰り返したり。
  • 口では「信じてる」と言いながら、実は疑う気持ちがあるので、自分の嘘が辛くなったり。
  • 相手の気持ちは離れていないのに、離れていくような気がして、相手を傷つけるような言葉を伝えたり。
  • 相手の好意を信じたくとも、どうしても信じきれず、相手を突き放してしまったり。

すると、

「自分は疑い深いのではないか」
「信頼できない性格なのではないか」

と、つい自分を責めやすい話題でもあります。

ただ、心理的に見ていくと、

必ずしも「信頼できない人」だから起きているとは限らない。

そういったケースも多いのです。


「好きなのに信じられない」という矛盾した感覚

彼・彼女のことは好き。一緒にいたい気持ちもある。

なのに、

・相手の言葉をそのまま受け取れない
・安心できたと思った直後に、不安が湧く
・小さな違和感を何度も反芻してしまう

そんな自分に、戸惑いや自己嫌悪を感じている方も少なくありません。

「こんなふうに疑ってしまう私は、おかしいのでは?」
「本当に好きなら、もっと信じられるはずなのに」

そう考えてしまうのも、無理はないと思います。

ただ、この状態は、愛情が足りないから起きているとは、必ずしも言えないのです。


信じたい、でも傷つくのが怖い ──心の中で起きている葛藤

この状態にある方の心の中では、しばしばこんな声が同時に存在しています。

「信じたい」
「でも、信じて傷ついたら怖い」

「疑いたくない」
「でも、また裏切られたら立ち直れないかもしれない」

そんな、「近づきたい気持ち」と、「近づきたくない気持ち」が、同時に強く存在している

この状態にいるとき、人は「どう信じるか」ではなく、

「どうすれば傷つかずに済むか」を無意識に優先し始めます。

すると、信じる、信じないの前に、

「なにもできない」「判断不能」という状態になるのです。

つまり、

信じる・信じないを決められないまま、心だけがずっと緊張状態に置かれている

ということですね。

だからこそ、疑いや確認が増え、関係はどこか落ち着かないものになりやすいのです。


心理学的に見ると「接近回避」の状態に近い

心理学では、こうした状態を

「接近回避葛藤(approach-avoidance conflict)」

と呼ぶことがあります。

簡単に言えば、

・近づきたい対象であるほど
・同時に避けたい理由も大きくなる

という心の動きです。

相手がどうでもいい存在であれば、ここまで葛藤は生まれません。

つまり、相手を信頼したい気持ちは存在している、ということです。

しかし、何らかの理由で、

相手を失うこと・自分が傷つくこと・裏切られることへの想像も強くなっている。

つまり、

「好きなのに信じられない」状態は、

実は“信頼し、愛したい気持ちがあるから疑っている”という状態なのです

言い換えるなら、

相手に魅力や好意、近づく価値を感じているからこそ、

心が慎重になりすぎている、とも言えるのです。


「信頼できない」のではなく、実際に起きていること

ここで、一度視点を反転させてみましょう。

この状態を、「相手を信頼できない問題」として捉えるのではなく、

「相手に近づいたときの自分が不安定になる問題」

として見てみる、という視点です。

相手の行動や言葉そのものよりも、

  • 期待してしまう自分
  • 安心したい自分
  • 一気に不安が膨らむ自分

そうした自分側の反応が、コントロールできなくなる感覚。

その怖さがあると、人は無意識に距離を取ろうとします。

疑う、確認する、試す、突き放す。

それらは冷酷さではなく、

これ以上心が揺れないようにするための防衛反応とも言えます。


疑いが強くなるほど、関係が苦しくなる理由

ただ、この防衛反応には副作用があります。

疑いを強めるほど、相手の行動一つひとつが判断材料になり、

  • 安心できる瞬間は一時的
  • 不安の再燃は早く、強い

という状態になりやすいのです。

この状態が続くと、少しずつ関係の質が変わっていきます。

次第に、相手との関係は、自然なやり取りというより、

「自分自身が安心を感じるための観測と評価」

ばかりになっていきます。

「安心を感じるための観測と評価」が起きている具体例

① 連絡頻度・文面を“気持ち判定”に使ってしまう

たとえば、彼からLINEが返ってきたとき。

  • 返信が早い →「今日は大丈夫そう」
  • いつもより遅い →「何かあった?」「気持ち冷めた?」
  • 絵文字が少ない →「なんかそっけない」
  • 文章が短い →「私、何かした?」

というように、

連絡そのものを会話として受け取る前に、気持ちの採点が始まる。

ここで見ているのは、彼の話の内容というより、

「私は今、安心していいかどうか」

なんですよね。


② 会ったあとの余韻より「答え合わせ」をしてしまう

デートのあと、帰り道や家に着いてから、

  • あの言い方、冷たくなかった?
  • 今日、ちゃんと楽しそうだった?
  • 前より優しくなった?それとも雑?

と、頭の中で何度も振り返る。

楽しかったかどうかより、

「私はちゃんと大事にされていたか」
「この関係は安全か」

を確認する作業になっていきます。

その結果、会っている最中より、会ったあとにどっと疲れることも多くなります。


③ ちょっとした変化に過剰に反応してしまう

  • 呼び方が変わった
  • スキンシップが減った(気がする)
  • 前はしてくれた気遣いがない(ように感じる)

こうした“曖昧な変化”があると、

「前はこうだったのに」「やっぱり気持ち下がってきてる?」

と、不安が一気に広がる。

相手に確認するほどでもない。でも放っておけない。

だから、観測だけがどんどん増えていく。


④ 自分の本音より「不安にならない行動」を選ぶ

本当は、

  • もう少し甘えたい
  • ちゃんと気持ちを聞きたい
  • 寂しかったと言いたい

のに、

「これ言ったら重いかな」「嫌われたら怖い」

という気持ちが先に立って、

  • 明るく振る舞う
  • 平気なふりをする
  • 何もなかったことにする

結果、関係は続いているけれど、自分の感情は置き去りになる。

これもまた、「安全確認を優先した関係」の一例です。


⑤ 安心できた瞬間はあるのに、長続きしない

彼が優しい言葉をくれたとき、

ちゃんと大事にされていると感じたとき、

一瞬、ほっとする。

でも、その安心は長く続かない。

次の沈黙、次の違和感、次の不安で、また観測が始まる。

つまり、

安心感が「積み上がらない」状態になっているんですね。


では、どう扱えばいいのか ──「信じようとする」前に整えたいこと

ここで大切なのは、無理に信じようとしないことです。

「信じられないのは自分の問題だ」

「私が不安でも信じればいいだけ」

このように信じられない自分に手当をせず、

意識だけで無理やり矯正しようとすると、かえって葛藤は強くなります。

それよりも、

「私は今、相手を信頼しようとすると、不安が大きくなる位置に立っているのかもしれない」

そう理解することが先です。

そして、

「なぜ、私はここまで不安が大きくなるのだろう?」

という視点から、自分を見つめ直すことです。

このときの注意点は、

「信じられなくなる理由は、相手にも、そして自分の内側にも存在する」

という視点で見つめ直すこと。

現実的に考えて、彼や彼女のことを信じられなくなるときには

  • 「パートナーの要因(相手が疑わしいことをしたなど)」
  • 「自分の内面の要因(自分が不安になる理由、など)」

これが組み合わさっていることがほとんどです。

実際の個人セッションでも、最も丁寧に扱う部分です。

これ抜きに「自分が信じればいいんだ」とか「相手が100%悪い」と考えたところで、何の問題解決にもなりません。

「もうどうしたらいいのかわからない」が強まるだけです。

それから

  • 距離を少しゆっくり縮める
  • 安心できるペースを自分側で選ぶ
  • 相手の反応だけで自分を評価しない

こうした立ち位置の調整が、結果的に関係を安定させやすくします。


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最後に|信じられない自分を、問題にしすぎない

彼や彼女のことが信じられないと、やはり辛いですよね。

ただ、いわゆる「落ち着いたいい恋愛・夫婦関係」は、

「疑わない努力」から生まれるのではなく、

「たとえ相手を疑う気持ちで揺れても、自分を見失わない位置に戻れる感覚」

そこから生まれることが多いのです。

もし今、好きなのに信じられないことで苦しくなっているなら、

それは「愛が足りないサイン」ではなく、

近づく準備を整えようとする心の反応なのかもしれません。

この記事が、自分を責める視点から一度降りるための、小さな足場になれば幸いです。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛・夫婦・仕事・生き方の中で、「ちゃんとやってきたのに、どこか噛み合わない」そんな感覚を抱えやすい人のご相談を多くお受けしています。 正しさや結論だけを急がず、今どこに立っているのかを一緒に整理する個人セッション(カウンセリング)が人気。 キャリア16年・臨床実績10,000件/東京・名古屋・オンライン対応。リピーターさまが多いカウンセラー。口癖は「どんなことにも事情があるよね」。
大切だからこそ、考えすぎてしまうときに

このサイトでは、

「人は裁かない。でも、構造はごまかさない。」

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