ほぼ30代からの”仕事に活かせる”心理学

「頼まれると断れない」が続いた結果、いつの間にか“私の仕事”になっていた。〜引き受けすぎて燃え尽きる人の心の構造〜

仕事で悩む女性

こんにちは。心理カウンセラーの浅野寿和です。

毎週月曜は「生きづらさ・仕事」をテーマにした心理コラムを連載中。

今日のコラムはこちらです。

「頼まれると、つい引き受けちゃうんです」

「断り方がわからなくて…」

そう話す方、すごく多いです。

でもそのあと、だいたいこう続きます。

「でも、断ったらその人が困るかもって思って」

「私がやった方が早いし、迷惑もかからないし…」

そうして引き受けた“つもり”だった仕事が、気づいたら「当然のように、あなたの仕事」になってる。

しかも、それが1回や2回じゃない。

小さな“いいよ”の積み重ねが、いつのまにか「あなたがやってくれる前提」を周囲に植えつけている、みたいな状況が続いてしまうんですね。

まぁ世の中「できる人がやらないと回らない」なんてことも多々あるわけでして、できない人に仕事を任せるなんて怖いわけですよね。

よって「できるあなた」が獅子奮迅の働きを見せることになる。

もちろん「仕事ができる」という評価が嫌なわけじゃない。けれど、あまりに丸投げが続くと

「もうむり。マジでしんどい」
「他にサボってる人いるじゃんかー」
「私より仕事せず、毎日さっさ帰る同僚とかありえないんですけど」

って気持ちになるですよ、ほんとにねー。


「できるから任される」は、いつしか“黙ってても背負う人”になる

まず、今日のコラムの大前提をおつたしておきたいと思います。

「頼まれると断れない」が続いた結果、いつの間にか“私の仕事”になっていた。

この状態を「あなたが周囲に利用されている」とか、「断れないあなたが悪い」「周囲が悪い」という話をしたいわけじゃない、ってことです。

むしろ、引き受けてしまう心の構造についてお伝えしたいわけですよ。

そして、この心の構造って、いわば善意で始まっていることが殆どだ、って話なんです。

  • 頼られるのがうれしい
  • 自分にしかできない気がする
  • 人が困ってるのを放っておけない
  • 頑張ってる人を見ると助けたくなる

優しさと責任感がある人ほど、そうなりやすい。

でもこの“助け方”には、ある落とし穴があるんです。

それは、「頼まれると断らないことで、“自分の立ち位置”を確保している」という構造です。

たとえば…

  • 自分が動けば、場がうまく回る
  • 自分が手を出せば、喜ばれる
  • 自分がいる意味が、そこにある気がする

こういうふうに、「やること=存在の証明」になってしまうと、頼まれてないことすら、つい自分からやってしまう。

つまり、役割を“自ら”取りにいく構造が無自覚に動き始める。

そしてその姿を見た周囲は

「あの人は頼めばやってくれる」
「黙っててもやってくれる」

と、学習してしまう。(もちろん、学習したとしても闇雲に仕事を振りまくることに関しては要一考だろ?って感じですけどね。)

そうなると、頼まれるハードルも、感謝の言葉も減っていく。

すると今度は、「認知されないのに引き受ける人」になる。

つまり、「評価もされないのに仕事は増える」という、しんどい状態が静かに出来上がるわけです。


「頼まれると断れない=信頼」になっていませんか?

あなたが今、燃え尽きそうになっているとしたら、それは“頑張りすぎた”からだけじゃないかもしれないんですよねぇ。

もしかしたら、“頑張り方のクセ”が、「引き受けることを通してしか関係を築けない」という信念を作っていたのかもしれません。

ここでの「関係」とは、職場の人間関係だけを指しているわけではないんですよ。

社会との関係、仕事の関係、お金との関係、愛する人との関係、さまざまな要素が絡んできています。

とかく見えにくい心理としては「仕事などを無理してでも引き受ける」ということと、「自分自身が誰かに愛されるという期待が満たされること」が一致してしまっている場合なんですけどね。

ただ、この話を書き始めると、期待の心理や癒着の心理などにふれる必要があって、テキストが膨大になりますので、また別の機会に書きたいと思います。

ただ、この「燃え尽きそうになっている理由」だけを考えるとしたら。ここには2つの大きな構造があります。

1:「関係の主導権を握るために、先回りする」という構造

自分の中に「相手に迷惑をかけたくない」「嫌われたくない」という感覚があると、頼られる前に自分から動いてしまうようにもなるんです。

これは一見すると“献身”。

しかし、裏返すと「自分が主導権を持っていれば安心できる」という不安回避的な動きでもあります。

2:「頼まれると断わらないことが、無意識の“自己価値の証明”になっている」構造

役に立つことでしか、自分の価値が感じられない。

断ると「嫌われる」「役に立たないと思われる気がする」。

心理的には「無価値感」を強く感じているゆえに役に立とうとしている状態です。

こういう感覚が強いと、引き受けることが「生きる手応え」のようになってしまう。

その結果、「疲れていても断れない」「断ると言えない」という「心の回路」ができてしまうのです。

でも、本当の信頼って、「全部任せること」や「我慢して耐えること」ではないですよね。

むしろ

  • 自分のキャパを伝えること
  • 必要なときには“任せること”
  • ときには「NO」と言うことで関係性を守ること

これもまた、大人の信頼関係の一部でもあるんですよね。

ただ、どーしてもそれがいいづらい、という反応が自分の中から消えないとしたら、無理する前に、一度自分の心理パターンを見つめてみる(カウンセリングなどで)こともオススメですよ。

心理的な抵抗を和らげたうえで、意思表示したほうが楽ですからね。

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まとめ:引き受けすぎた人が、もう一度“自分”に戻るために

あなたが誰かを支えてきたことは、とても価値のあることです。

そこに嘘や見せかけはなかったはずです。

でも、あなたがいま疲れているなら、「誰かのために」から「自分のために」へ、一度、視点を戻してみてもいいかもしれません。

「これって、本当に“私の仕事”だったんだっけ?」

この問いかけが、少しでも余白を生み、“あなたらしさ”を取り戻すヒントになればと思います。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー/トレーナー
恋愛や夫婦関係、仕事、対人関係、生き方の”こじれ感”を「甘すぎない心理学」で解決。ただ、気持ちを受け止めるだけでなく、背景にある心理構造や関係性のパターンを整理し、「現実的で納得できる選択」を一緒に探っていきます。 臨床実績9000件/東京・名古屋・オンライン対応。
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