すれ違う夫婦の心理

相手の気持ちを試してしまうとき思い出せないもの 〜安心感を思い出せないまま頑張ってきた人へ〜

遠くを見つめる女性

恋愛でも、夫婦関係でも、「もう頑張れない」と感じる瞬間ってありますよね。

愛されたいのに、なぜか怖くなる。

信じたいのに、相手を疑ってしまう。

優しくしたいのに、つい冷たくしてしまう。

「どうして、こうなっちゃうんだろう」

そんなふうに、自分を責めてしまうことはありませんか。

この瞬間、一番孤独なのは自分なんですよね・・・。

本心から本気で相手を責めたいわけでもないから、なんだか自分ばかり悪者になった気がしやすいですし、何より悲しいですからね・・・。

地味に心を削る瞬間です。

でも、これは「愛が足りないから」でも、「性格が悪いから」でもありません。

もっと根っこの部分“安心感”の問題なんです。

今日はそんな「安心を知らないまま、愛を試してしまう人」の心の構造を、少し丁寧に見つめてみましょう。


「愛されない私」ではなく、「安心感を思い出せない私」

人は誰でも、安心の上に愛を育てていきます。

“愛”と“安心”は、まるで呼吸と酸素のような関係です。

愛するには、安心が必要なんですね。

けれど、子ども時代に

「本音を言ったら怒られる」
「寂しいと言えない」
「頑張らないと認めてもらえない」

そんな環境で育った人ほど、「安心感」を感じる機会が少ないまま大人になることがあるんですよ。

そうすると、恋愛や人間関係の中で「安心」を探すようになります。

それも、必死に。

相手の反応ひとつひとつを気にしながら、「この人は本当に私を愛してくれるだろうか?」と試してしまうこともあるでしょう。

また、「相手を試すことなんてしたくない」と思う誠実な人は、安心感を思い出せないまま、相手のために頑張り続けることもあるでしょう。

その結果・・・

相手を信じたいのに、試してしまう。
相手が離れると、さらに怖くなって追いかけてしまう。
その繰り返しの中で、ますます「自分は愛されない」と感じてしまう。

でも、それは「愛を知らない人」ではなく、ただ「安心感を思い出せないだけ」なのです。


「安心を思い出す」ことが、人を変えていく

心理学には「修正的情緒体験(corrective emotional experience)」という言葉があります。

少し難しそうですが、意味はシンプルです。

「昔感じられなかった安心を、今、改めて感じ、学習したり、思い出していくこと。」

たとえば、かつて誰にも相談できなかった自分の弱さを、今の友人やパートナーが「そう感じてたんだね」と受け止めてくれる。

すると、心の奥に新しい記憶が芽生えます。

「怖くても話していい」「私は責められない」という“安心感の再経験”です。

人はこの経験を通じて、少しずつ変わっていきます。

“過去を消す”のではなく、“新しい体験で上書きする”。

この積み重ねが、心の回復を生むんですね。

だから、どんな生まれでも、どんな過去でも、「安心を感じられる関係さえあれば、人は更新されていく」。

これは心の世界でも、今やスタンダートになりつつある考え方です。


「相手を試す気持ち」の奥にある、ほんとうの願い

「相手を試してしまう」という行動には、実はとても切実な願いが隠れていることが多いものです。

それは、「ちゃんと信じてみたい」「もう一度安心したい」という願い。

だからこそ、試す行動を「悪い癖」とだけ捉えるのはもったいない気もしますよ。

その奥には、「本当は誰かを信じたい自分」がちゃんと存在しているのです。

しかし、人は安心感を忘れていると、“信じたい”という気持ちを“確かめたい”に変えてしまいます。

「私を大切にしてるなら、もっと連絡してくれるよね?」

「本気なら、行動で示してよ。」

そうやって、愛を証明しようとしてしまう。

けれど、安心は「証明されるもの」ではなく、「感じるもの」なんですよね。

証明を求めるほど、安心は遠ざかってしまう。

これは、まるで鏡を覗き込みながら「私を見て」と言っているようなものです。


「安心感を思い出す」最初の一歩

じゃあ、どうすれば安心感を思い出し、相手を信じられるようになるのでしょうか。

それは、「相手を試すことをやめよう」と頑張ることではないのです。

むしろ、「試してしまう自分を理解すること」から始まります。

怖くなったとき、相手を疑ってしまったとき、

「どうして私はこんなことを」と責めるのではなく、

「今、私は安心を探していて、その結果、相手を試したんだね」と気づくだけでもいい。

その小さな気づきが、次の関係で“違う選択”をする余地になります

そうやって少しずつ、「試す愛」から「委ねられる愛」へと、心は育っていくんです。

愛は、安心感とともに“思い出せる”

過去にどんな事情があっても、人は“今”から愛し合うことをやり直すことができます。

なぜなら、愛は感情的なものでありながらも、「関係の中で体験され、思い出されるもの」だからです。

あなたが、尊重してくれる誰かと出会い、「この人の前なら、少し力を抜いてもいいかも」と感じられた瞬間。

その時、もうあなたの中で“安心の回路”は動き出しています。

それは、愛を“思い出す”プロセスの始まりです。

人は、安心を思い出すことで“試さなくてもつながれる関係”を築けるようになります。

それは、愛の証明を求めなくても、自然に愛が循環する状態なんです。

僕のセミナーカウンセリングでは、「愛される力」を育てるだけではなく、「安心を感じる力」を整えていくことを大切にしています。

そのプロセスの中で、“試さなくても愛が循環する感覚”を体験していただく。

それが、僕の考える「支援」のかたちでもあるんですよね。

あなたが誰かと出会い、「もう一度、信じてみてもいいかもしれない」と感じたとき。

その瞬間こそ、あなたの人生の“再スタート”なのだと思います。

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