諦める癖がついてしまう心理 |「学習性無力感」について
こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
この記事は、
「どうせ無理だと思ってしまう」
「頑張る前から諦めてしまう」
「やる気が出ない自分を責めてしまう」
そんな感覚が続いている方に向けて書いています。
先にひとつだけ。
諦める癖がついてしまうとき、それは「意志が弱いから」でも「根性がないから」でもないのかもしれません。
むしろ心が、傷つかないためのやり方を覚えてしまっただけ、ということがあるんですよね。
今日はその仕組みを、心理学の言葉でいう「学習性無力感」という概念を軸にしながら、できるだけ丁寧に整理してみます。
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私、負け癖・諦め癖がついてます。
いつも「どうせ私には素敵なパートナーなんて現れないし」と思っちゃうし。
「頑張っても思ったようにうまくいかない」と思うし。
一生懸命頑張っても結果は同じだと思ってしまいます。
夢を見るより、諦めたほうが楽なんですよね・・・。
頑張るぐらいなら、最初から負けたほうが楽というか、傷つかないし。
でも、そんな自分を変えたいなとも思っています。
ネタ募集ネーム:匿名さん
「諦める癖」は性格ではなく、心が学習した反応かもしれない
「どうせ私には無理」
「頑張っても意味がない」
「期待するだけムダ」
こういう感覚って、最初から持っている人はあまりいません。
多くの場合、どこかで
- 頑張ったのにうまくいかなかった
- 努力しても評価されなかった
- 行動しても状況が変わらなかった
- 否定されたり、からかわれたりした
- 助けを求めても届かなかった
そういう体験が重なって、だんだんと「期待しない」という方向へ心が寄っていくことがあります。
諦めることで、傷つく回数を減らせる。
諦めることで、失望の痛みを小さくできる。
だから、「諦めるな」「前向きになれ」と言われても、うまくいかないことがあるんですよね。
学習性無力感とは何か(心理学的な整理)
心理学には、学習性無力感(learned helplessness)という概念があります。
ざっくり言うと、
「何をしても結果が変わらない」経験が続くと、人は“やっても無駄”という前提を学習してしまうという話です。
この概念は、心理学者マーティン・セリグマンらの研究で知られるようになりました。
もちろん、実験と現実は同じではないのかもしれません。
ですが、現実の中でも似た状態が起きることがある、と考えられています。
学習性無力感に近い状態になると、
- 行動する意欲が落ちる
- 考える力が弱る(判断が鈍る)
- 「どうせ無理」という思考が強まる
- 期待しなくなる
- 感情が動きにくくなる(または落ち込みやすくなる)
つまり、単に「やる気がない」ではなく、意欲・思考・感情がまとめて弱ってしまうような状態になりやすいのです。
ここを知らないと、自分にこう言ってしまいがちです。
「私ってダメだ」「怠けている」「甘えている」
でも、実際には、心と体が“反応として”止まっているだけかもしれません。
なぜ「気持ちを切り替えよう」「前向きに考えよう」が効かなくなるのか
学習性無力感に近い状態にいるとき、よく起きるのがこれです。
頭では分かっているのに、動けない。
「やったほうがいいのは分かる」
「このままだとダメなのも分かる」
でも、体が動かない。気持ちがついてこない。
このとき、よくある誤解があります。
「気合が足りない」
「やる気スイッチが入ってない」
でも、現場で見えるのはむしろ逆で、
疲れすぎて、これ以上動くと壊れそう
というサインとして止まっているケースも少なくありません。
だから「前向きに考えよう」は、場合によっては空回りします。
前向きになれないこと自体が問題なのではなく、前向きになれないだけの負荷がすでに積み上がっている可能性があるからです。
この段階で大事なのは、「頑張る」より先に、否定的な感情を“敵にしない”ことです。
落ち込み、怖さ、虚しさ、諦め。
それらは、今の自分の状態を知らせる情報かもしれません。
回復の方向性は「自信をつける」より「感情を整える」
「自信をつければいい」
よく言われる話ですが、学習性無力感に近い状態では、これが難しいことがあります。
なぜなら、そもそも“自信をつけるための行動”が取りにくいからです。
また失敗するのでは、また傷つくのでは・・・
そんな気持ちが強くなることがありますからね。
このときの回復は、
自信を作る → 動ける
ではなく、
気持ちが整う → 動ける余裕が戻る → 結果的に自信が後からついてくる
という順番になりやすい。
だから、まずはここです。
- 今の自分は、止まる反応が出ている
- 止まるほどの負荷があったのかもしれない
- それを「ダメ」と断罪しない
この視点だけで、少し呼吸が戻る人もいます。
心理療法の世界でも、否定的な思考や感情を「消す」より、
扱い方を変えることが回復につながる、と考える立場は多いんですよね。
「またこう思ってるな」
「今、怖さが出てるな」
そうやって一段引いて見られるだけで、心の負荷は少し下がります。
スモールステップが意味を持つ理由
学習性無力感に近い状態のとき、スモールステップが大事になるのには理由があります。
それは、スモールステップが
「自分で決めて、やってみた」
という経験を回復させるからです。
大きな成果を出す必要はありません。
むしろ、成果を狙うほど心が固まることがある。
たとえば、こんなレベルで十分です。
- 今日は5分だけ手をつける(終わらせなくていい)
- やるかやらないかを「自分で決める」
- 嫌ならやめてもいい、と選択肢を持つ
- 一回深呼吸してから次の行動を決める
ここで大事なのは、「成功体験」よりも
無力ではなかった、という再学習です。
学習性無力感は、「やっても変わらない」の学習です。
ならば回復は、「小さくても、やると変わる」の学び直しになります。
この積み重ねが、いわゆる自己効力感(自分にはできる感覚)につながっていくことがあります。
諦める癖が強いとき、人との関係が助けになることもある
もうひとつ大事な話をしておきます。
諦める癖が強いときほど、ひとりで立て直そうとして、さらに苦しくなることがあります。
なぜなら、無力感が強いと
「助けを求めても無駄」
という前提までセットで出てくることがあるからです。
でも、心理学の世界では、回復には安全な関係性が大きく関わると考えられることがあります。
安心できる相手と話す。
否定されずに気持ちを言語化する。
「そう感じるのも自然だよね」と受け止められる。
それだけで、心と体の緊張が少し緩み、次の一歩が取りやすくなることがあります。
友人、パートナー、信頼できる人、専門家。
どれが正解というより、「安全に話せる場所」を持つことが回復の足場になり得る、という話ですね。
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最後に
諦める癖がある。
負け癖がある。
その自分を責めたくなる。
でも、そこにはそうするしかない事情があったのかもしれません。
そして今、こうして「変えたい」「理解したい」と思っている時点で、
あなたはもう、少し別の位置に立ち始めているのかもしれません。
諦める癖を叩き壊すのではなく、感情を整えながら、小さく学び直す。
小さくでも「自分で決めてやった」を増やしていく。
それが、心の中にこびりついた「どうせ無理」を、少しずつ現実に合う形に更新していく方法のひとつだと思います。
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