終わった恋に執着しないために|「幸せだったあの頃の思い出」を手放せない心理
こんにちは。
心理カウンセラーの浅野寿和です。
「終わった恋のことが、なかなか頭から離れない」
そんなお話を伺うことがあります。
もう会っていない。
もう戻らない。
それはわかっている。
でも、ふとした瞬間に思い出してしまう。
しかも、思い出すのは別れ際のしんどさだけではなく、幸せだったあの頃だったりするんですよね。
そうなると人は、
「私はまだ彼に執着しているのかな」
と感じやすくなります。
もちろん、そういう面もあるのかもしれません。
ただ実際には、終わった恋が忘れられないとき、手放せないのは彼そのものというより、
彼といた頃の自分
あの頃に感じていた幸せ
今までとは少し違う自分になれた感覚
だった、ということも少なくないようなんです。
今日は、恋愛の執着の中でも、「幸せだったあの頃の思い出」への執着について、少し丁寧に整理してみます。
Index
「幸せだったあの頃」が忘れられない
ご相談の中でも、
「私が幸せだった頃のことが忘れられないんです」
と話してくださる方は少なくありません。
それは、単に元カレや別れた相手が忘れられない、という話とも少し違うんですよね。
たとえば、
- あの人と一緒にいた頃の自分は、今より明るかった気がする
- あの頃は、ちゃんと愛せていた気がする
- あのときの私は、今より自然に笑えていた気がする
そんなふうに、思い出の中にいる「過去の自分」が、妙に輝いて見えることがあるのです。
僕たち人間の記憶って、辛いことから忘れ、良い記憶だけ残るようにできていますしね。
ただ、こうなると、つい今の自分とその頃の自分を比べてしまいます。
今の私はうまく笑えていない。
あの頃ほど心が動いていない。
何かを失ったままみたいだ。
そうやって、恋愛への執着が、いつのまにか
「過去の自分」や「過去の記憶」への執着
に変わっていることもあるのでしょうね。
終わった恋に執着しているようで、実は「あの頃の自分」を手放せないことがある
一般的には、恋愛の執着というと「元カレや別れた相手に向けられるもの」と考えられやすいものです。
実際、そのようなお話も多いです。
ただ、じっくりお話をうかがい、
「今も彼が好きなんですね」
とお尋ねしたときに、少し間があいて、
「いや、そうでもないような気もするんですけどね……」
と返ってくることもあるんです。
こういうとき僕は、
「彼」そのものというより、彼といた頃の記憶や、その頃の自分に気持ちが留まっているのかもしれない
と考えることがあります。
つまり、忘れられないのは彼ではなく、
- 幸せだったあの頃の私
- 心から誰かを愛していた私
- 何かを信じられていた私
- 今までとは違う自分になれた経験
そういったものなのかもしれない、ということですね。
そう考えると、「終わった恋に執着している」というより、
「あの頃の自分を失いたくない」
という気持ちが強く出ている場合もあるのかもしれません。
忘れたくないのは「心から彼を愛せていた自分」なのかもしれない
少し恋愛から離れた例ですが、長く寄り添ってきたパートナーを亡くされた方から、こんなお話を伺ったことがあります。
「浅野さんね、私、今までは夫がいたから、食事の用意や洗濯も、手を抜かなかったんですね。
でも、夫を亡くしてから、自分のためだけにごはんを作るとなると、時々すごく億劫になるんです。
やっぱり私、寂しいんでしょうか。気力が出なくって。」
これは、愛する人を失ったことで感じる寂しさでもあるのでしょう。
ただ同時に、
「誰かのために与えていた自分」
「心から愛を注いでいた自分」
を失った感覚でもあると思うのです。
だから、忘れたくないのは、彼そのものだけではなく、
「私はちゃんと愛せていた」
という自分の感覚だったりもするんですよね。
恋愛でも、これと似たことは起こります。
あの恋が忘れられない、というとき、忘れたくないのは相手だけではなく、
その人を心から好きでいられた自分
なのかもしれません。
思い出への執着が苦しくなる理由
では、なぜ「幸せだったあの頃の思い出」は、ここまで人を引き留めるのでしょうか。
理由はいくつかあると思うのですが、大きいのは、
今の自分と比較しやすい
ということなのだと思います。
たとえば、今がうまくいっていないときほど、過去の幸せは美化されやすいものです。
今の恋愛がしんどい。
もう今は誰もいない。
今の自分には自信が持てない。
そういう時期ほど、
「あの頃はよかった」
「私はあの頃のほうが魅力的だった」
「もう一度あの時みたいになれたら」
と考えやすくなるんですよね。
すると、過去の思い出は、ただの思い出ではなく、
「今の自分にはないもの」
として機能し始めます。
そうなると、思い出に触れるたびに、懐かしさだけじゃなく、今の自分への失望や自責が混ざりやすくなってしまう。
ここが、思い出への執着が苦しくなりやすい理由のひとつなんでしょうね。
「もう終わったんだ」と言い聞かせても、なかなか手放せない
幸せだった思い出を手放したいと思ったとき、よくあるのは、
「もう終わったんだ」
「あの頃は戻ってこないんだ」
「いつまでも引きずってちゃダメだ」
と自分に言い聞かせようとすることです。
お気持ちはよくわかるんです。
でも、それって切ないですよね。
しかも、こういうやり方って、案外うまくいかないことが多いんです。
なぜなら、幸せだった思い出って、
無理に終わらせようとするものではない
からなんですよね。
理屈っぽく言えば、ここには「禁止の心理」が関わることもあります。
忘れようとするほど思い出す。
考えないようにするほど気になる。
人の心って、そういうところがあるのです。
だから、幸せだった思い出を手放すときに必要なのは、
「思い出さないようにすること」ではない
のだと思います。
幸せだった思い出は、否定するのではなく、丁寧に解き放つもの
僕は、幸せだった思い出って、無理に忘れるものではなく、
大切に扱いながら、少しずつ解き放っていくもの
なのだと思っています。
だから、
「もう終わったことだから」
「そんなこと考えても意味がないから」
と切ってしまうのではなく、
「あんな素晴らしい時間があったよね」
「私はあの頃、ちゃんと幸せを感じていたんだよね」
と認めてあげていいんですよ。
幸せだった思い出の中にいる自分に、
「よかったね」
と声をかけてあげてもいい。
そして、その時間や、その相手や、その時期の自分に対して、
「ありがとう」
と静かに言えるようになると、少しずつ心はほどけやすくなります。
ここで大事なのは、過去に浸り続けることではありません。
過去を否定も美化もしすぎず、今の自分が、その思い出を受け取ることなんですよね。
「今の私」を置き去りにしたまま思い出に浸ると、執着になりやすい
ただし、ここにはひとつ大事なポイントがあります。
幸せだった思い出を大切にすることと、思い出の中に住み続けることは、たぶん別なんです。
あの頃はよかった。
あの頃の私は輝いていた。
今はもうダメだ。
そんなふうに、思い出を“今の自分を責める材料”に使い始めると、それは苦しい執着になりやすい。
だからこそ必要なのは、
あくまで「今の私」が、過去を見つめる
という立ち位置なんだと思います。
思い出に浸って今をなくしてしまうのではなく、今の自分が、過去の幸せを受け取り直していく。
この違いは、けっこう大きいのではないでしょうか。
思い出を手放すとは、過去を否定することではなく、今に持ち帰ること
終わった恋に執着しない、というと、過去を消すことのように感じる方もいるかもしれません。
でも本当は、そうではないのだと思います。
過去をなかったことにする必要はない。
幸せだった記憶を消す必要もない。
あの頃の自分を否定する必要もない。
ただ、その時間を
「もう戻れない場所」
として抱え続けるのではなく、
「今の私の中に持ち帰れるもの」
として扱えるようになると、執着は少しずつやわらぎやすくなるのかもしれません。
たとえば、
- 私はちゃんと誰かを愛せる人だった
- 私はあの時間に幸せを感じられていた
- 私はあの頃、本気で生きていた
そうした感覚を、失われたものとしてではなく、今の自分の一部として受け取ること。
それができると、思い出はしがみつく対象ではなく、今を支えるものに変わっていくこともあるのでしょうね。
最後に
もし、あなたが幸せだった頃の記憶をなかなか手放せないのであれば。
それは、ただ弱いからでも、前に進めていないからでもなく、
それだけ大切な時間だった
ということなのかもしれません。
そして同時に、あなたが忘れたくないのは、彼そのものだけではなく、
あの頃の自分
あの頃に感じていた幸せ
心から誰かを愛せていた自分の感覚
なのかもしれません。
だからこそ、無理に忘れようとしなくていいのだと思います。
否定せず、大切に扱いながら、少しずつ今の自分のところへ持ち帰っていく。
そんなふうに整理していけると、気持ちは少しずつ落ち着きやすくなるはずです。
終わった恋を手放すということは、過去を消すことではありません。
思い出の中に閉じ込められた自分を、今の自分のところへ連れ戻してあげること。
その視点が、どこかでお役に立てば幸いです。
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